呪術師・碇シンジはエヴァパイロットである   作:けし

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テストが終わったのでまた頑張ります。

ただここからはオリジナル感が溢れるので悪しからず。


漆. 呪いの福音

緊急招集、という言葉がリフレインしたシンジは、特段急ぐこともなくNERV本部に足を運んでいた。

 とりあえずはエヴァ格納庫の近くに赴いていると、ミサトが現れた。

 

「遅いわよシンジくん…、って顔腫れてるじゃないの! どーしたの!?」

「色々ありまして」

「っ…、そう。…分かったわ、そこには触れない。とにかく使徒がやって来たわ。これに着替えて格納庫(ハンガー)に行ってちょうだい」

「これ着るのヤなんですけど」

「着るだけで全然違うのよコレ」

 

 プラグスーツとよばれる装備。裸の上に着用する感覚が嫌でたまらないのだという。諸々の機能がついているのは分かるが、学生服がシンジの戦闘着でもあるからか、拒否したくて仕方がない。

 

「…はぁ」

 

 嫌々ながらもそれを着込み、コクピットに座り込む。種々の調整が施される中で、シンジは密かに呪力を巡らす。

 エヴァンゲリオン初号機。シンジの乗る紫の巨人の銘だ。自分の体以上に呪力の巡りが良く、呪力との相性が良すぎる機体であった。シンジの初号機での戦闘はこの性質のおかげで成り立っていたといえる。

 

『L.C.L.注水』

 

 この血生臭さを感じる液体も嫌いだ。まるで生きているような、包まれているような感触に不安と安堵を覚える自分に、右頬を抓って釘を刺す。

 

「使徒の姿、能力、現状は?」

『姿は赤いイカみたいな感じかしら。ちょっち形容し難いわね。能力は不明。触手のような腕を複数本振り回して、物を斬ってるわ。現在は国連軍が足止めという名の金の無駄遣いなう、ってところね』

「鞭って感じですかね。面倒くさいなぁ」

『地上に上がり次第、銃火器での殲滅を試みて。それ以降はシンジ君に一任するわ』

「それでいいんですか作戦課長」

『いーのよ』

 

 なんて適当な、とため息を一つ。液体には泡すら立たない。違和感を呑み込み、シンジはコクピットのシートに脱力して背を預けた。

 

『出撃要請を確認、総員出撃準備! シンジ君、いいわね?』

「いつでも」

『特訓の成果、期待してるわよ? シンジ君』

「期待しないでくださいよ。弾をばら撒くより銃身投げつけた方が強いですもん、僕」

『それは困るわ』

 

 リツコの苦笑に、シンジはまたも息をついた。銃火器は嫌いだ。ばら撒くなら同じ質量の『茈』をばら撒いた方がシンジとしては気が楽なのだ。呪力制御に難があるために、シンジにそれができるとは言わないが。

 そんなシンジだが、銃火器に関して、とりあえずは弾を当て続けることはできるようになった。その場から動けばクソエイムになるが、ならば動かなければ良いという暴論である。そうまでして銃火器を使わせたいかとシンジは内心で毒づくが、ないよりマシだと無理矢理に納得することにした。

 地上に多数の銃火器を仕込んでいることがその理由なのだが、シンジは知る由もない。

 

『使徒、市内に入りました!』

『よし、エヴァンゲリオン初号機、発進!』

 

 猛烈なGが身体を襲い、シンジは歯を食いしばった。上へ登る紫の機体が、陽の光に晒されて止まる。

 

『リフトオフ!』

 

 固定具が解除され、初号機が前傾姿勢となる。シンジの意思ではなく、初号機の自然体である。直後、初号機は各部をモーターではなく筋肉で制御し、シンジの望む体勢を獲得する。

 初号機の向く方向には、件の使徒が背を向けていた。

 

 ──赤いイカ、かぁ。後ろからだとこれは確かにそう見える……かな? …今夜のご飯にイカでも入れようかな? 

 

 シンジの思考が不意に明後日の方向に飛ぶ。そんな思考を引き戻したのは、ゴトンという大きな音だった。横の建造物の外壁が外れ落ち、中からエヴァサイズの銃火器が姿を表した。

 つや消し加工が成された黒い銃身。『エヴァンゲリオン専用大口径209mm小銃 AU Assault Rifle Type MM-99改』という正式名称だが、そんなことは当然、シンジにとって知ったことでもなんでもない。

 初号機は乱暴にそれを取り出し、腰ダメに構える。同時に思考を戦いに割き、コアを探し出そうと目を凝らす。

 

「コアの位置……。あの体勢だと内側が見えないな…」

 

 赤いイカのような外殻は背部にしかないことを見てとったシンジは、地面に向いた腹側にコアがあると推測した。

 シンジはライフルのトリガー近くにあるスイッチを切り替え、フルオートであることを確認。引き金を引いた。

 爆音を立てて吐き出される弾丸。空の薬莢が足下に積み重なる。

 的の大きさのおかげか、シンジのエイム力でも弾丸は命中していく。

 当たった弾丸に反応して、赤い使徒がその方角を向いた。シンジはそのあまりにもスムーズな動きに違和感を覚えながら、ライフルのスイッチを3点バーストに切り替えた。

 

「そーいう見た目してるのか。真ん中の足が違和感すごい」

 

 人知れず漏らした感想だ。司令室には届かない。

 赤い外殻に、子供が描いたかのような大きな目。模様か本物の目なのかは分からないが、外殻で狙うならいい的かもとシンジは思い直すことにした。

 よく見ると、赤い使徒の頭上には薄らと輪がかかっていた。先の黒い使徒にはなかった特徴だ。そしてふと足下を見てシンジは違和感の正体を知った。

 

「浮遊…、リツコさんこれは…」

『見たまんまよ。自立歩行できないから浮いてるだけ。そもそも使徒には浮遊能力がある個体が多いわ』

「初出の情報多すぎませんか…」

 

 とはいえ、シンジのやることは結局変わらない。右手のライフルの引き金を押し込み、3発ずつ撃ち放つ。とりあえず撃てば大体当たる距離感だ。それはすでにライフルのレンジには少し近すぎるものだが、コアを視認できていない以上、下手に近づくのは得策ではない。

 そして、使徒がそれを待つはずもない。ずっと振り回していた触手をしならせて、初号機へとその矛先を向けた。ふわりとこちらへ近づきつつ、光る腕が空を切る。

 シンジはA.T.フィールドを展開する準備をした。無下限のイメージがベースになるからか、相も変わらず無限と共にあるA.T.フィールドである。

 衝撃がA.T.フィールドに激突し、触手が無下限に囚われた。その違和感に使徒は後ろに動く。

 

「──見つけた」

 

 そのコアはやはり腹側に。蠢く腕の直上に位置していた。この位置だと懐に潜り込まなければ攻撃を叩き込めない。プログナイフを肩より引き出し、右手で構えた。

 シンジの構えは、八極拳をベースにした我流である。八極拳などは当然習得していないので構えだけではあるが、低重心の体勢から、拳や足技を駆使した三次元的格闘を行う。『蒼』を利用した破壊力強化も組み合わせ、生身での戦闘ならかなりのレベルに仕上がっている。

 しかしそれを初号機で応用するとなると、間合いのズレと反応のズレがあるからか難しいという。そこでシンジは初号機で徒手格闘を行うにあたり、初号機の肉体に呪力を回していた。これは半ば無意識のものだったが、実は呪力を流すことでシンクロ率が上昇している。

 以前リツコに相談していた反応のズレは、もはや自己解決したといってもいい。

 

「さて……」

 

 初号機の脚部に力が籠る。装甲具に覆われて直視はできないが、その力強さは見て取れる。

 使徒は触手をもう2本増やした。シンジはその様にマジですか…、とこぼしながらプログナイフを外向きに持ち直した。

 

「──戦闘開始」

 

 死界文書に曰く、其は第5の使徒。呪いで満たされた福音が動き出した。

 

 

 




実は本作のエヴァに関しては少しだけ旧劇の設定が採用されてたりします。
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