描写は大変拙いですが書けるだけ書き切ろうと思います。
どうぞよろしくお願いします。
異殻の少女
I regard the brain as a computer which will stop working when its component fail.
なぜこんな世界に放り込まれたのかはいつまでたっても理解できない。
きっかけなんて御大層なものはなかっただろう。物語はうっかり期限がその日までなのを忘れていた通販の支払いをコンビニで済ませた夜十時半の帰り道から始まる。
家まで7,8分の帰り道、別に家でやってもよかったが人もいないし大丈夫とスマホで送金完了のメールを確認してポケットにしまおうと―――
「アンタ、まだ気づいてないの?」
ほぼ目の前で声がした。
しまった、やっぱり歩きスマホなんてするんじゃなかった、と思い顔を上げて一歩下がり、謝ろうとしてようやく相手の出で立ちの随分奇妙なことに気がついた。
只今ゴールデンウイークの終わる5月の初め。そろそろ半袖が活躍しだしてもいい頃だ。が、彼女(女性だった)は耳付きの分厚い帽子にモッズコート、今から登山できそうなゴツいブーツとブラックジャックにすら心配されそうな厚着具合だった。
それだけならまだ寒がりなんだなぁ...で無理やり済ませてもOKだったのだが槍だ。
小柄な彼女の身の丈ほども長さのある棒。先っちょにぎらつく(ように感じた)黒っぽい穂先。
紛うことなき槍である。槍なんて初めて見た。
新手のカツアゲだろうか。
「...こんなドンくさいのマジでいるのか...私ばっか見てないで周りを見なさい。周りを。」
意味がわからず呆然としていた僕にヒラヒラ動く左手とあきれた声で促され、ようやく状況を理解した。
いつものアスファルトの道、鉄筋コンクリートのマンションビル、愛想のない街灯、見慣れた光景が全部赤茶けた蝉の抜け殻みたいな物に覆われて異形の世界と化していた。
「なんじゃこりゃ。」
なんで気付かなかったんだろう。歩きスマホって怖い。
「こいつアホだホ。スライムの徒競走よりニブニブホ。」
「は?」
つまらない反応ばっかりしていて申し訳ないとは僕も思う。が、ひょこっと彼女の隣に現れた雪だるまに可愛い声で罵倒されれば誰だって間抜けな声が出ると思う。なんだコイツは。
この二人だけ季節が違う。
「ごめんな、よくわからないところで口の悪い雪だるまに罵倒されて家に早いとこ帰りたいだろうけど色々こちらとしてもルールはあるし...あいつらは新参者の匂いを嗅ぎ付けたし質問はちょっと待っててくれ。5分で済ませるから。」
話がつかめない。あいつらって誰だ?
「フロスト、そこの重要参考人キープしておいて。」
「ホ。」
振り返りながらおもむろに両手に槍を構えたと思うと女の子の腕力とは思えない力強さで中空を薙ぎ払った。
『ぎゃ!!』
耳につく、不愉快な悲鳴(あまりに不愉快で奇声に近かった。)がして、ヒト型にしてはいやに小さくでどす黒い物体が3つ彼女の足元に転がった。
「さまなーが忙しいからオイラが説明してやるホ。あいつらは『ガキ』。バカで弱っちくてオイラ達より食いしん坊なバカホ。オマエの匂いにオイラ達のことの考えずにオマエを食いに来たバカホ。」
僕の方にてとてとと近寄ってきて呑気にその『ガキ』の解説をはじめる『フロスト』。
説明は(雪だるまにしては)大変上手いがすごく『ガキ』をバカにしている。口が悪い。
そんな間にも無双の如く彼女は次々現れる『ガキ』を薙ぎ払い(あのごつくて重そうな)ブーツで蹴り飛ばしていく。
「で、疑問に思ったかホ?あのバカは何でこの可愛~いオイラは何なのかって。思ったかホ?」
真顔で迫って可愛~いとか言わないで欲しい。
「思ってなくともご紹介だホ。バカもオイラもみ~んな"悪魔"。オマエみたいなニンゲンをぱくっと出来る超スゴイ存在なんだホ。」
「カイロを食い物と勘違いしてとろけた雪だるまだけどね。」
迫った『フロスト』に遮られて見えなかったがいつの間にか『ガキ』の山を後ろに彼女が立っていた。
こんなにいたのか...。
「説明お疲れ様。で?どこまで説明した?」
家で親御さんは待っていないか、時間に余裕はあるか?と尋ねる彼女に問題ないと答えるとじゃあちょっと来てくれと彼女に緑の生き物(これも『フロスト』の言う悪魔なんだろうか?)に乗せられ赤茶けた夜道を走る。
「悪いね、ニュービー見つけたら救助と説明は絶対やれって決められてるんだ。死者行方不明者なんて出したくないからさ。まず荒川行こうな。帰りも送るから。」
遠っ。
「今遠いって思ったホ。」
「あと20分もかからず着くよ。」
待って。今時速何キロ?チーターの倍は早い計算になるんですが。
最速のバイクは670㎞/h出せるんだとか。
次は7日に投稿予約しています。
ガキ:仏教の六道の一つである餓鬼道に生まれた存在。閻魔大王が支配する世界に生息するとされている。
様々な姿があるとされるが、飲食物を口に入れようとすると火に変わって消えてしまうため、常に飢えと渇きに苦しんでいるものが一般的。しかし、供養によって施されたものは飲み食いすることができるという。
造魔ジード:獣のような姿をした忠実かつ強力な悪魔。
詳細不明。一説によれば土の人形と悪魔を合成することで生まれたものの一体とされている。
悪魔達が姿を保つのに必須の物質である生体マグネタイトを一切必要としないが、月の無い間は力が失われる。