真・女神転生square root   作:長月 海里

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暑いですね


異を覗く-2

「...その後はまた気絶しててどれだけ経ってたかわかりません。とにかく全身が痛くて考える暇もありませんでした。だから暫く経った頃としか言えませんが、僕にも、周りの人にも『それ』は発生しました。」

 ガチャガチャピーガシャンガシャンと隣の部屋から聞こえる騒がしい音が再び言葉の間を支配する。

 

「僕はかなりマシな方でした。痛みがひどくなった場所が出来たと思ったらコイツが出て来たんです。」

 と、のたうった線の浮いた右腕を持ち上げる。

明るい室内でも瞬くように光るそれはただの刺青や落書きとは違うことをひしひしと感じさせた。

「マシっていうが他の連中はどうなったんだ?」

「それは...。」

 

 

「T-ウィルスって知っとる?」

 

 

 調整作業を終えたイサカが唐突に尋ねた。

「は?」

 何言い出した?コイツ。という顔でハヤトはイサカを見る。

「別にGでもAでもウロボロスでもええんやけどまァご存知バイヨ... BIOHAZARDに出てくるウィルス。あれ、ゾンビになるイメージが強いけど元々何か知っとる?」

「バカにしてんの?」

「フィクションを交えてわかりやすい説明にしとると言って欲しいな。あれ、生物兵器作るための材料なわけよ。10人に9人は感染すればゾンビ、後1人は抗体持ちで感染耐性持ち、そいで、1000万人に1人はウィルスを制御しきって優れた身体構造に変えてしまう。わかった?」

「...コイツが10人か1000万に1人で後は10人中の9人ってことか。」

 イサカがイスカの話を戯けたような喩え遮った理由に気付いたハヤトの瞳に怒りが宿る。

「まァこの人も弾いたわけでも完全に適合してるわけでもなさそうやしあくまでそれまでの手持ちとガイア教が態々人攫ってやってるって事を統合して出したヤマ勘やけどな。遊んだ事ないし。」

「ないのかよ。」

「あ、コピー終わった。」

 どこまで本気かわからない口調で言いたい事だけ言うととコピー機の方に戻っていく。

 

 

「そういう事か?」

 尋ねるヒロ。何も言わずに頷くイスカ。

「...人の形じゃなかった。5人はいたのに正気...正気というかわからないけど正気だったのは僕以外いませんでした。意味がわからなくて怖くてそれから暫くまたあんまり覚えてません。痛みや怠さは感じましたが空腹とか、水が欲しいとかはなかったです。いや...空腹...みたいなのはあったんですけど...。」

「学者ー。」

「マグネタイト補給とちゃう?病院なら少なからず人は集まるから供給はそんな難しないやろしそもそも人間やから光合成みたいにできるやろ。あの虚数マグネタイトは気になるけど...ウエノ来てたのはその方が楽やからちゃう?」

 ガタガタとどこからか持ってきた簡易テーブルを2つ並べながら疑問に仮説を重ねるイサカ。そのままコピーして来た紙を並べるとまた何か書き始めた。

 

「逃げられたのは本当に運です。あんな状態になってたのに逃げる意思も気力もあった理由もわかりません。足音がして扉が開いた所を突っ込むように飛び出して地下から飛び出しました。エントランスには人や悪魔...?悪魔もいたんですがそれもどうやってか振り切って...。あとはさっき話してもらった通りです。」

「言葉通り火事場の馬鹿力だな。」

ユンガブラ(半魔)の能力かもしれへんな。ウエノまで来たのはだいぶ凄いけど。...人攫ってやっとるんやでコレ相当不味い話やで。ヘタこいたらオールドエイジに突っ込まれるどころか警察だななんだのの大騒ぎや。けど、ゴールデンウィーク末からならまだ何が狙いか知らんがまだ始まって2、3日や。」

「2、3日!?」

「この世界は現実世界より時間の流れが早いんだ。今は大体向こう1日で5日くらいだ。長い間随分頑張ったな。」

 愕然とするイスカにヒロは説明し、労う。

「犠牲者はなくせんけど今なら片せばかなり減らせる。...いや、倫理とかそんなん置いても時期的に早く片さんとマズイな。」

「何?」

「今年何あるかわかるか?...オリンピックや。人がアホみたいに集まって来る。年齢性別なんなら国籍までよりどりみどり、それこそヘタこいたら入れ食いで連れてかれる。一歩違えば国際問題やぞ。」

「イスカ、どこの病院に連れて行かれたかわかるか?イサカ。」

「もうできる...よっしゃ。」

 先程からイサカが書いていたのはA4紙4枚から構成された新宿区の地図からの病院のピックアップだ。病院の地図記号が赤い丸で囲まれている。

 

 

「縄張り差し引いてもウエノまで来れるちゅー事はブンキョーとの境周辺や。チヨダなんか通れたもんじゃないしミナトは遠回りすぎる。精々トヨシマか。」

「それでもって手術室...外科があって人を何人もぶち込める病室がある...みたいな感じか。意外と絞れるな。」

「やからこの辺のハズや。」

 ぐるぐると怪しい病院を指で示す。

「絞れたが直接確かめるには手間だな。どうする?」

「ヤマトにガイア教の息が掛かった病院とか聞けないか?そういうのも調べてるだろ?」

「その手があった。」

 パン、とイサカは手を打つ。

「どうせこうなった時点で巻き込み確定や。善は急ぐで。」




さりげなくこの時にレポートの写真もコピーしている学者。


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