ガキン!ガチン!と激しい音を立てて病室の扉に取り付けられた南京錠が破壊される。
「もー!腕痛い!疲れた!終わり!」
『撃って壊せばいいモンを...。』
「弾もったいない。」
現実世界とは対照的に構造上、属性弾の使用できない上に武器屋では弾倉が製造できないオートマ銃を使用するサマナーは少数だ。
その少数派の1人がセヲリというわけで、戦闘以外で無闇に使うと財政負担の元になる。
そういう訳で南京錠を片っ端から槍の石突で叩き壊していたセヲリは若干痛む手首をぶんぶん回しながら足で病室の扉を開いた。
「これで全員か?」
「2階から4階までは全部一応見て来たけど。もう一回見てくる。」
「よし、こっち俺に任せろ。」
『セヲリ、ヤマト、今大丈夫か?』
ハヤトから通信が入る。
『今』大丈夫か?という言葉に2人の実力が見て取れる。
「丁度終わったから確認中。そっちは?」
『イサカが地下で色々やってる。資料なりなんなりあるモン全部回収して来いってよ。あと地下来たら殺すってさ。』
「殺意高ッ。」
最後の言葉は正確ではないが誰か向かえば確認なしで撃ち抜かれる事は概ね間違いない。
「あいつ基本動くモノの認識能力あらんよな。反射神経はあるのに。」
「反射神経と認識能力バカなのと『あの』運動神経を合成した結果何かわかる前に撃ってんだよ。」
そういう評価である。
「リャナンシー、頼むわ。」
「効くのかしらねぇ...。」
イサカの指示に疑問も呈しつつもドルミナーを発動。
肉塊の灯す光を見てイサカは頷く。
「...多分効いたかな。今から3分に1回掛け直して。それでも痛みや耐性であかんだら...まァ。」
そう言ってストレージからメスを取り出すと足元の肉塊に刃を入れた。
パンパンパンパン!と、火薬の弾ける音が立て続けに聴こえ、被害者達が悲鳴を上げた。
「イサカか?」
『ごめん、サプレッサー忘れとった。ついでにそっちどう?』
当の本人から通信が入る。
「救出完了。アンタに言われた資料集めも大体終わった。あとは捕まってた人をどうするかかな。」
「あとハヤトが屋上で見張ってくれとる。」
『今んとここっちも問題なし。だーれもいねえし来ねえ。』
『こっちももう少ししたら終わると思う。じゃ、よろしく。』
「待ったさっきなんでそんなぶっ放した。...切られた。」
ゴーイングマイウェイめ、とセヲリは舌打ち。
『...悪魔出たんだろ。』
「どうだか。なんか妙だったけどな。」
普段は銃に負担がかかるからと言って絶対しないような連射だった。
余程危険な相手がいるかそれとも...。
『セヲリ、妙な連中が見えた。』
「何。」
『先頭は燃えてるバイク。アレ多分あく...。』
「ゲッ、それ魔人。」
『ハァ!?』
予想外の言葉にハヤトは驚愕。足を纏らせでもしたか転んだ音がした。
「ヤバイな今来られたらあの人達死ぬかも。」
『その魔人ってガイア教か?バイクと一緒にいるし。』
「...。」
『おい黙んな。』
「お前そうですっつったら飛び掛かるだろ。」
騎兵戦に優れたハヤトも魔人相手では流石に少々危険だ。
しかし、安全は確保したい。魔人が彷徨いていては被害者達を連れ出せない。
イサカとハヤトせっかちはここでしっかりと仇になった。
「うーんジレンマ。」
腕を組むセヲリに元凶1号...ハヤトから再び通信が入る。
『セヲリ、ヤマト、ヒロから連絡来た。仲間に協力してもらって捕まった人の移動手段確保したから指定の場所に連れて来いってさ。』
「バスでも呼んでくれたんかね?」
そういやアイツも噛んでたなァと呟くヤマト。
「聞いてないんだけど。」
『無理して頼んだから速やかに済ませろってさ。俺はあのバイク誘って安全確保する。』
「お前が殺りたいだけだろそれは。」
『うるせぇ、一石二鳥だろ行くからな!』
金網を飛び越える音がして通信が途切れた。
「飛び降りたなアイツ。」
どいつもこいつも無茶苦茶だと呟くが、特大のブーメランである事を忘れている。
『セヲリ、ヤマト、こっち作業完了。手伝う事ある?』
「ハヤト暴走。ヒロが手配して被害者の移動手段確保。現実世界のここに連れて来いってさ。」
『暴走てなんやねん。とりあえずそっち行くわ。早よ終わらせてしまお。』
現状
イサカ:地下にて『各種』回収作業完了。今日は学校サボりたい。
ハヤト:ガイア教勢力の魔人とだけ聞いて暴走。殺す。
ヤマト:被害者確保中。帰って寝たい。
セヲリ:院内調査中。1番何も分かってない。