「今から危うくアリエスに股を開きそうになったエリスへの説教を始めたいと思います」
リオスが突入してきて、その後。俺はリオスの部屋へと連行されて、正座させられるかと思いきや「女の子が床に座ったらあかんやろ」とベッドに座らされた。スマートが過ぎてこいつがモテる理由をなんとなく察し、俺の前にしゃがみ込んでパンツをのぞこうとしてきやがったので蹴り飛ばして制裁し、頬を赤くしたリオスの説教が始まった。
「おいエリス。私には全然股開かんクセに、アリエスに開きそうになった理由教えてもらおか!」
「男としての誠実さ、性格」
「はっきり教えるなや!」
お前が教えろって言うたんやろ。
実際、リオスは俺以外の女性に対しては誠実も誠実。少しちゃらけたところはあるが、セクハラはしないし、セクハラはしないし、セクハラはしない。
つまり、こいつからセクハラを取ればただのいい男になる。顔とスタイルがよくて優しくて強い。だからと言って股を開くかと言われればそうじゃないんだが。
「まずセクハラやめろや。二人の時はまだええとして、他の目があるところでセクハラって普通にあかんやろ」
「え? じゃあ今エリスの足をしゃぶりつくしてええってこと?」
「じゃあの意味もわからんしそのセクハラをやめろ言うてんねん!」
俺の足に手を伸ばしてきたリオスを避け、ベッドから降ろしていた足をベッドにあげる。あぐらをかくと見えてしまうので、正座の姿勢から左右の足を外側に向ける女の子のような座り方をすると、リオスが興奮したように頷いた。
「エリスってこうしてみるとほんまに可愛いよなぁ」
「は? 黙れ」
「アリエスと対応の差激しない?」
そらセクハラしてくるクズと聖人とじゃ対応も変わってくるだろ。てかリオスも前世じゃ女だったんだから、やられて嫌なこともわかってるはずなのになんでこんなことになってしまったんだ?
「どうやったらセクハラやめれんねん?」
「うーん、無理やな」
「努力はせえや」
うーん、と考えたフリをしてきっぱり「無理」と言うリオスに青筋を立てながら、俺の今後にも関わるのでセクハラをやめられるような提案をしていく。
「俺がきったない格好するとかは? それやったら流石に萎えるやろ」
「それって一緒にお風呂入りましょうっていうアピール?」
「ポジティブでセクハラお化けとか最悪やなお前」
汚い女の子見たら萎えろや。……と思ったが、好きな女の子なら別に汚れていても気にはするが萎えるなんてことはない気がする。あれ? 俺もおかしいのかこれ?
「じゃあありえへん話やけど、俺が他の男と付き合ったら? 流石のリオスでも他人の女に手は出さへんやろ?」
「エリス以外やったらそうやけど、エリスが他の男にとられたら絶対取り返す」
「喜んでええのか悪いのか……いやキショいわ」
女の子ならドキッ、の一つや二つするんだろうが、ただただキショい。なんでこいつ俺にこんな執着してるんだ? そりゃ前世から一緒だってのはあるが、こいつの容姿ならよりどりみどりで、俺に執着する必要なんかないだろ。
「セクハラするってことは性欲を発散できてへんってことやろ? それやったら店行って女抱いてきたらええんちゃう?」
「私そんなことしたら『エリスの方が絶対にええんやろなぁ』ってヤってる最中に言うてもうて、女の子泣かしてまうやん」
「我慢しろや! お前のええとこは俺以外の女の子を傷つけへんとこやろが!」
「セックス最中の男なんて正常な判断できひんに決まってるやろ!」
「経験ないから知らんねんボケ! 悲しいこと言わすな!」
最中に正常な判断はできないんだろうな、なんてイメージでしかわからない。悲しいことに俺は前世でそんな経験もなく、もちろん今世でも経験がない。けどリオスなら性欲まみれだから正常な判断はまったくできなさそうだ。こいつアホだし。
「それやったらオナニーして性欲発散せえや! 毎日朝一発やってたらセクハラする気も起きひんやろ!」
「お前私の性欲の豊富さ舐めてんのか!」
「なんで怒られてんねん!」
リオスが眉間に皺を寄せてベッドに上がってくる。そのまま俺に顔を近づけてくるので、俺も負けじと近づけて睨み合った。
「オナニーなんてもうしてるに決まってるやろ!」
「だからそれを朝にせえって言うてんねん!」
「朝も昼も夜もやってるわ! 抑えきれへん性欲をそこで発散してセクハラしてるに決まってるやろが!」
「それ発散できてへんねん!」
てかマジか。こいついつの間に? 男が隠れてオナニーすることの難しさを俺は知っている。朝と夜はまだしも、昼はどこで? 大体一緒にいるが、そんな様子はまったく見たことがない。もしかして『迅雷の騎士』はそっちも迅雷の如き速さなんだろうか。
「大体わかってんのか! エリスの女の子らしい格好見せられた私の性欲の溢れ具合を! エリスがアリエスと喋ってる間、計5回やったぞ!」
「無尽蔵か! この短時間に何億の種無駄にしとんねん!」
「あ、無駄打ちって言うてみて?」
「やかましいわ!」
セクハラをかましてきたリオスにビンタを打とうとするが、寸前で受け止められる。こいつ力強っ、男と女だから当たり前だけど、こうしてみるとやっぱり全然力の差がある。俺、筋力はほとんどないからなぁ。
「それやったら目隠しして俺を見いひんようにしたらええやろ! そしたらある程度性欲も抑えられてマシになるわ!」
「私はエリスの匂いでも興奮できるに決まってるやろ!」
「じゃあ鼻に栓でもせえや! これで俺で興奮せえへんやろ!」
「じゃあ聞こえてくるエリスの声はどうすんねん! 正直今エリスの声聞いてるだけで興奮してるんやぞ!」
「じゃあ耳にも栓しろや!」
「なんでセクハラやめるためにほとんどの感覚奪われなあかんねん!」
「しゃあないやろお前がセクハラしてくるんやから!」
でも確かに、セクハラをやめるためだけにほとんどの感覚を奪ったら、いざ戦闘ってなった時こいつは役立たずになってしまう。こいつなら目と鼻と耳が機能しなくても戦えそうな気はするが、それで勝てない相手と対峙したら死ぬのは確定だ。それは困る。
「せやったら仙人になるために修行行けや! そこで性欲も断ち切ったらセクハラもせえへんくなるわ!
「お前私のエリスに対する想いみくびんなよ!」
「綺麗な風に言うな!」
ラブソングの歌詞みたいなことを言っておいて、その中身は性欲濡れ。ぜひさっきの言葉をリオスのファンに向けてやってほしい。幸せすぎて死んでしまうくらい効果があるだろうから。絶対に俺には向けずに。
「確かに仙人になったら性欲も断ち切れるわ!」
「断ち切れるやろがい!」
「でももし修行の途中でエリスへの想いが爆発した場合、私は全世界を敵に回してでもエリスに襲い掛かってたまりにたまった性欲をぶつけてもうたらどうすんねん!」
「それを我慢して我慢してなるのが仙人やろ!」
「我慢できひんほど好きやから言うてるんやろが!」
「さっきから何惚れさせるような言い回ししてんねん!」
相手がリオスだとわかっていてもちょっとドキッとしてしまった。こいつ、セクハラしてくる上性欲からくる行動なのに、好意はマジなんだよな。だからやりにくい。わかりやすいセクハラならぶっ飛ばすだけでいいのに、こうやってストレートに好意をぶつけられるとちょっと困る。
しかし、どうするか。感覚を奪うのもだめ、他で発散してもらうのもだめ、仙人になるのもだめ。かくなる上は。
「……ほな俺を妊娠させろや!」
「お前何言うてんねん」
勢いが止まってぽかんとするリオスに、一気に捲し立てる。
「感覚奪うのも他で発散すんのも仙人になんのもあかんやったら、俺と一回セックスして妊娠させたらセクハラする気もなくなるやろ! セクハラしようとしても『あ、今お腹の中に二人の子どもがおるんやな』って思って冷静になれるわ! もし子どもが生まれたとしても、そんときには父と母になっててセクハラするような間柄でもなくなってるからこれで、」
「もうええわ!」
「押し倒すな!」
捲し立てている途中に肩を押されてベッドに押し倒される。リオスを見ると、悲しそうな目で俺を見ていた。
「私子ども作んのってそんな流れでするもんちゃうと思うねん」
「お前がセクハラやめられへんって言うからやろが……」
「別に私セクハラやめたいって言うてへんし」
「思うとけよそれは」
ごめんな、と言いながら俺を抱き起こすリオスの胸を小突く。確かにこいつはセクハラをやめたいなんて一言も言ってなかった。危ない。勢いでこいつの子どもを産まされるところだった。
「でもそんなにセクハラが嫌やったんならもうセクハラせえへんわ」
「でもどんなことしてもセクハラやめられへんやろ。どうすんねん」
「エリスに彼女になってもらうわ」
「誰がなるか!」
バカなことを言ったリオスを殴り飛ばしたところで、アリエスが部屋に入ってきて「俺放置……?」と寂しそうな目で聞いてきたので、リオスを放置して二人で出て行った。
頭冷やしとけバカ。