TSロリ化ランドルフ将軍 作:村娘
帝国暦1185年、ガルグ=マクにて帝国軍に対抗する策を練っていた同盟軍だったが、その動きはすでに帝国軍の知るところとなっていた。ガルグ=マク近郊に駐留していた帝国軍の尖兵は、若き将軍ランドルフの号令下、ガルグ=マクを再び陥落すべく進軍を開始する。
しかしこれを迎え撃つ同盟軍も強く、帝国軍は壊滅。残された将軍ランドルフも討ち取られてしまう
…はずであった。
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「…ッぅう、ぐぅ…?」
将軍が呻きながら目をあける。
視界に広がるのは深い暗闇。部屋の中には灯のついた燭台1つない。
とにかく起き上がろうと手足を動かすも、枷によって硬いベッドに固定されており、ただ鎖の擦れる音が部屋に響いた。
「こんなもの…ッ?!冷たっ!」
枷を引き千切ろうと左腕を力任せに引き寄せる。その行動で起きた振動が暗闇の中で仕掛けを起こし、理解が追い付かないランドルフの頭上から『落ち着け』と言わんばかりに冷や水を浴びせた。
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ずぶ濡れになった身体を隙間風が撫でる。全身に鳥肌がたち、震えが止まらなくなる。それは寒さによるものか、それとも現状を理解した為か…
そうして震えているランドルフに光が差す。扉が開き、誰かが入ってくる。その者は部屋に明かりを灯した。
「よぉ、遅めのお目覚めだったな、将軍殿?」
「黄色の外装、パルミラ人に似た肌の色…
ッ貴様、まさか同盟盟主クロードか?!」
「ご名答。だが口には気をつけた方がいいぜ?
あんたはいまの自分の立場がわからない程、
馬鹿じゃないはずだ。」
ランドルフは目の前にクロードが現れた時点で現在の己の立ち位置を確信した。いや、始めからわかっていたが『そうではないはずだ』と違う可能性を模索し、勝手に抱いた希望に止めを差されたのだ。
「…俺は例えどんな拷問をされようと、
決して何も喋らん。帝国を、エーデル
ガルト陛下を裏切る様な真似は絶対に
しないッ!」
「…そうか。では早速、キツーゥい拷問でも
始めようか…と言いたいところなんだが、
あいにく俺も忙しくてね。俺の代わりに
あんたの相手をしてくれる人がもうじき
来るはずさ。まぁあんたの態度次第では
優しく扱ってくれるかもよ?」
「あっ、おい待て!」
短いながらも、明確に上下を意識させられた会話。言うべきことを言った盟主は『がんばれよ』と一言を残し部屋を出ていった。
ー
再び部屋は静寂に包まれる。灯りがあるだけで先ほどよりマシになった部屋を見渡す。そこはまるで…いや牢の中だろう。とても質素な部屋だ。あるのは硬いベッドと小さな机、それから雑な便所だけ。天上の暖かな光を伝えるはずの窓はなく、頼りになる照明は壁に掛けられた燭台が二つ。
先程隙間風を感じたと言うことは、どこかにこの部屋の外に通じる隙間があるということだろうが、そこから光が漏れていないので地下か敵拠点の離れの中央部か……どちらにせよ、武器も鎧もない現状での脱出は不可能だろう、とランドルフは結論付けた。
何にせよ己は生きている。生きてさえいれば確率は低いとは言え、友軍が助けてくれるかもしれない。
とにかく明るく考え、希望を持ち、これから自身が受けるであろう苦痛に耐えられる様に精神を固めることだけが、ランドルフにできる精一杯の抵抗であった。
ー
外界へ繋がる唯一の扉が重苦しい音を立てながら開く。三歩で部屋に入りゆっくりと扉を閉めたそれは、人をふやけさせる優しい声で語り掛ける。
「おはよう、ランドルフ将軍。目覚めはどう
かな?これから君の相手をする《ベレト》
だ。俺は君にできるだけ手荒な真似はしたく
ない。だから、早めの協力をお願いするよ。」
「…」
ランドルフの返しは沈黙。それも顔を背け、一度も目を合わせずに。それは『決して自分は喋らない』という意思表示。本気の抵抗。帝国軍人としての誇りを抱きしめて自らの夢を叶えるために戦うのだ。
ベレトは喜色満面の笑みを浮かべた。
「そうだな…事に取りかかる前に1つ、謝罪し
なければならないことがある。黙ったままで
いいから聞いて欲しい。」
「…?」
「まず、君は自分が負けた時の事を覚えているか?」
その程度のこと、覚えているに決まっているッ!
自らの戦いと記憶能力を侮辱されたと見当違いな怒りを抱いたランドルフは、自身の記憶にアクセスする。
ー
部下が炎に飲まれ、陣形は壊滅。己も少なくないダメージを背負い、撤退を余儀なくされたあの戦い。自分は最後に華を咲かせようとやたらゴテゴテした衣装を纏う大将首らしき人物に特攻を仕掛け、ダークペガサスに騎乗した魔法兵に横から鋭い一撃をもらい倒れてしまったのだ──
ー
「君に魔法を撃った兵なんだが、あー…少し
変わった魔法を創ることで有名なんだ。
戦いが終わったあと、彼女が君に創作魔法
を使ったと自己申告してくれてね。その魔
法に攻撃能力がなかったから君はいま生き
ているんだ。」
「…元々俺を捕虜にするために使わせた
のではないのか?」
『そうだよ』
「俺としては、あの時に君を討つつもり
だった。ただ、捕虜にできるのであれば
しておくべきだと、そう思ったから君を
捕まえた。」
『そうか』と一言口にした後、再びランドルフは口を閉じベレトを見る。
「そして…
彼女の創作魔法は君の身体に作用し
君の身体を創り替えてしまった。」
『…どういうことだ?』
そう言葉を発して始めて気がついた。
じぶんのこえはこんなにたかいこえだったか?と
「姿見、お持ちしました」
ふと、ランドルフは幼い頃のフレーチェを思い出した。ちょうど騎士教育を受け始めたあたりの自分の後ろをついて回っては『兄さん、兄さん』と、いまのランドルフの様な声で笑っていた姿を。
「そこに置いておいて」
魔法というものはサンダーやライブと言った黒魔法や白魔法が有名だが、なかには仕様もない魔法だってある。ランドルフの頭は最悪の答えに見て見ぬふりをし、『声帯を変化させる魔法』『聴覚を狂わせる魔法』といった存在しそうな魔法を受けたのではないか?と思考し続ける。
「落ち着いて、自分の姿を受け入れて欲しい。」
ランドルフの前に平均的な成人男性程の大きさの姿見が設置される。『自分がどうなっているのか、確かめなければ』『いやだ、見たくない。』相反する二つの感情がランドルフの中で巻き起こり、それは更なる混乱をもたらした。そして伏せていた目を姿見へ向ける。
そこにかつての筋骨隆々な己の慣れ親しんだ肉体はなく、鏡に写るのは幼きあの頃の妹の姿であった。