TSロリ化ランドルフ将軍 作:村娘
「そうだ、少し話をしよう。
君にも喋ってほしい。」
「…」
「話しをしてくれるなら、俺から君の食事を温かくするように言ってあげるよ」
「…わかった」
持ち込んだイスに座った
「もし、君が俺の目を盗んで大修道院を脱出したとしよう。君はそのあとどうする?」
「…できるとは思えないが、ここから出られたのなら勿論、帝国軍に合流する。」
「その姿で?」
「俺だからこそ知っていることだってある。これでも一軍の将だ、指揮能力だってある。確かに元の地位に戻ることは難しいかもしれないが、それでもエーデルガルト陛下は…」
「…ふむ、俺はかつてエーデルガルトの教師をしたことがあるんだ。彼女の素に近い表情も何度か見ている。彼女を知っているからこそわかる、君は帝国軍に戻れない。」
「ッ何故!その様なことを断言できるッ!」
ランドルフは恐らく捕虜となって初めて声を荒げた。弱った身体ではそれ程声量が出なかったが、明確に感情の籠った声。
「君程の才能の持ち主なら、
探せば結構いる。」
ランドルフは自分が戦の天才達には劣ると言えども、かなり上位に位置する人種と考えていた。だからこそ新皇帝が即位した後、自分が将軍に抜擢されたのだと信じて疑ったことなどなかった。
「エーデルガルトが即位する前、彼女が士官学校に在籍していた時、ほんの数節だけいた帝国将…名は確か、メトジェイと言った。知っているか?」
「…?いや、聞いたことはない。」
「そいつは盗賊あがりの将だった。元盗賊と納得のできる性格だったが、アサシンとしての腕は確かで兵を率いる能力もあった。兵を指揮し、また自らも前線で戦う将……君と同じタイプじゃないか?」
「だがッ、たまたまその男が有能であっただけで、その様な者が多く存在するなどということはないだろう?!」
「…そもそもの話、一騎当千の実力を持ち、皆を導ける者。それが将としての条件ではないのか?例えば、ヒューベルトはその条件に当てはまるし、当時の君もそう。」
「だが、いまの姿の君についてくる兵はいない。
いまの君に戦う力はない。
そんな君に
帝国軍での居場所はあるのか?」
『あるに決まっているッ!』そう叫ぶために口を動かそうとして、しかし声は出なかった。
言い返せないのだ。
「…しばらくはその身体の経過観察だ。何、特別なことはなにもしない。今日は俺もやることがあるから、ここで切り上げる。また昼と夜に食事を持ってくる。残りの時間はさきほどの話について、ゆっくり考えるといい。」
固いベッドに寝転がり瞳を閉じる。『自分の居場所はない』その一言に言い返せなかったランドルフは、自分を恥じた。弱気になっていることを自覚する。だがどのような姿になろうと、己は帝国軍人、陛下の下が己の居場所。そう強く念じることで、精神を強固にする。ランドルフの心は揺らがない。
されど針は入り込んでいた。
ー
「おはよう。今日は快晴で、生け簀の魚たちも調子がいい。絶好の釣り日和だ。」
「おは…よう」
ランドルフが新生同盟軍の捕虜となってはや二週間が過ぎた。今日まで毎日、己の姿と立ち位置についての話を聴かされていただけで、拷問どころか尋問すらされていない。しかし、ハードな“洗顔”を毎日続けられ流石に参ったのか、ランドルフは挨拶を返すようになっていた。
その日は先に食事を済ましてきたのか、
ランドルフが最後の1口を飲み込んだことを見届けた
「聞きたいことができた。」
「…なんだ。」
「同盟領に睨みを利かせている帝国軍について。師団数と布陣場所、兵力、それから率いる将の情報。…知っていることは全て、話してほしい。」
『把握してはいるが』
『それは』声を発しようとしたところで、ランドルフはハッと息を飲む。同盟領近辺に駐屯する帝国軍の存在は、この戦争の勝敗を左右しかねない。同盟に対する抑止を担う彼らが急襲・撃破されれば、ただでさえファーガス地方の旧王国派を攻めあぐねている帝国軍に、そして敬愛する皇帝陛下に更なる負担が押し寄せることだろう。それは防がねばならない。この日のランドルフは、幸か不幸か頭がよく回った。
咄嗟に手で口を押さえ、それ以上の言葉が溢れ出ることを阻止する。決して吐いてはならないものは喉の一歩手前で止まる。帝国を裏切らずに済んだことに、ランドルフは安堵した。
「迷いを晴らす!」
「──ウ゛エ゛?゛」
突然、ランドルフの腹に衝撃が走った。
子供特有の柔らかい腹は、衝撃を素直に内臓に届け全身を揺らす。理解が追い付かぬ内に、煉獄の谷[アリル]を思わせる熱さがランドルフの内側から混み上げてくる。
「信じるもののため!」
「ェ゛ク゛」
衝撃がもう一度。今度は反動で頭が揺れ動き、ランドルフの視線が灼熱地獄と化した己の腹を捉える。
ところでだが、各々の軍で生徒を導く先生諸兄は【素手格闘】と呼ばれるスキルをご存知だろうか。中級職である拳闘士となり、これを極めることで習得できる高度な技術であり、またこれを更に熟練することで堅いフォートレスの鎧さえも貫けると言う。
当然の様に
「これで決める!」
その拳がランドルフのまだ幼い体を刺すこと三度目。今度はみぞおちに入った様で、熱は自覚できる痛みになり、無意識に手で腹部をおさえうずくまった。
衝撃は肺にまで到達しダメージを与えた様で、ランドルフは上手く呼吸を行えなくなっていた。必死に酸素を取り込もうと空気を吸い込むが気管を通ってくれない。また体内の二酸化炭素を排出することもできなくなり、少しずつ苦しみが増していく。
永遠にも感じる苦しみから思考がままならなくなっていき、ついには意識を手放す……前に次は背中に衝撃が走る。その反動で気管が詰まった感覚はなくなり、ランドルフの身体は呼吸の仕方を思い出した。
呼吸を取り戻したランドルフだが、いまは顔が青い。時折えづく声も聞こえる。
ランドルフは自分を中心にぐるぐると世界が回転している錯覚を受けている。自分が遠く感じ、また近く感じ、その感覚に酔ってしまい口元を押さえた。
一発、大きいのが喉の狭い関所を通過した。が、その一発は口内で止められ、本陣へと退却していった。
『やけに静かだな』吐き気を押さえこみ、思考に少し余裕を持てたが故に抱いた不思議。ランドルフはベッドの端に座り、丸まっていた顔を上げ耐えきったぞ、と視線を向ける。
瞬間、ゾッとランドルフの背中に冷たいなにかが貼り付いた。
「─コ゛ポッ、オ゛ッ゛コプ、─ゲホッ!ウ゛オ゛ェ、ンカ゛…ァ」
ビシャビシャと胃の中にあった物を吐き出す。いまだ消化されず残っていた黒パンだけが固形物として存在を放ち、残りは黄色い胃液が殆どの吐瀉物。
それからツンとした臭いが部屋に広がり始め、それがランドルフに次の嘔吐を誘発させた。
「フゥーッ、フゥー…ングフ゛?!ウ゛ェ゛、カァ゛ン゛ッ…ハーッ、ハーッ、ハーッ…」
吐き気は収まった。全てを出しきったことで身体全体が軽くなった様に感じ、少しだけランドルフの気分は良くなった。だが腹の痛みは収まらない。背中もジンジンとするし、先程の嘔吐で喉も痛めていた。
「“吐く”気にはなったか?」
「ハーッ……もう“吐くもの”は、全部吐いてしまったよ。」
掠れた声で皮肉る。ランドルフは
「…そうか。なら、もう何度か吐いてもらうことにしよう。」
『──ッ、フ─ッうぅ、く゛ッウ
エ゛ホッケホッ、コ゛ッこの…程度゛ッ』
『9』
『フゥーッ…?え、ちょっと─ッあ゛っはハハぁッ!脇はやめてく゛れッ!脇は─ウ゛グゥ゛?!ゲ…ぇ』
『22』
『い゛やだッ!もう゛やめてウ゛ゥエ、う…あっ、ちがう!俺は屈じでなんか─ッアキ゛?!』
『53』
『ぁ、もォて゛なイ゛ぃ゛?!ェ、オ゛ッ──ッハァ、ハーッ!ウエ゛ェエッぐ、グうぇエ゛ェエ゛っア…─ッカ、ゲッホケ゛ホッかひゅ…ウ゛ゲェッ!』
『71』
『…ぅぁ、ぇ゛、……んウ゛、エく、ははう゛え…カッ──』
『87』
『──…─』
『100』
気がつくと、ランドルフは意識を失っていた。
やりすぎたか─どろどろになったランドルフの胸に耳を当て心音を確認する。少し弱いが確かに鼓動が聴こえた。
「失禁している。シーツを取り替えて、身体を清めないと。」
ー
今日もぴったりいつもの時間に、ランドルフは目を覚ます。机の上には今日一日分のパンが4つ、既に用意されていた。もそもそといつもより少し柔らかいパンを齧りながら、今日から一週間、
ランドルフは、
『来節はどうしようか、楽しみだ。』