アサルトリリィ-Deus EX Machina-   作:揺れる天秤

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第04話 実験成果

 こちらへと帰ってきてから美姫はミナトのリビングのソファで伸びていた。その隣で蒼士は本を読んでいる。

 

「うーん…、身体がなんか変…」

「大丈夫か?」

「身体がなんか変…。モヤモヤする~」

「はい、こんにちはー!!」

 

 扉を叩き開けて月華が入ってくる。

 

「美姫、身体はどう?」

「なんかモヤモヤする~…」

「たぶんだけど、人造ケイブを越える際にマギの干渉が起きて身体に不具合が出てるんだと思うけど」

「そんなことあるのか?俺、なんともないぞ」

「蒼士と美姫だと根本的に違うわ。蒼士のベースはゴッドイーターであるオラクル細胞だけど、美姫は向こうの世界で研究されてるマギだからね。ただ、この二つは似て非なるものだけど性質上は極めて近似値を現している」

「それは、研究結果か?」

「ええ。でも応用力はマギの方が高そうね。エネルギー効率だけで考えるならオラクル細胞なんだけど」

「うー…」

 

 美姫はソファの上をゴロゴロと転がる。調子が悪いのか顔色が悪い。

 

「まあ、リリィって調べれば調べるほどに凄い性質を保有している存在ねー。ゴッドイーターはあくまでもオラクル細胞をその身に入れることでアラガミと同質の力を使用しているわけですが…」

「凄い性質を保有?」

「ゴッドイーターはあくまでも特定因子ごとのアーティフィカルSNSのコアがある神機と繋がっている。それ以外の神機を持とうとすれば喰らい尽くされるかアラガミ化するか」

「えっ、神機ってそんなに危ないの?私、そんな話聞いたことないんだけど…」

「話す内容でもないし、ゴッドイーターは本能で理解しているからな。神機と繋がっているからこそ真価を発揮できるとも言える」

「そう。マギによる制御下にあるCHARMはリリィが使い分けることができる。これはゴッドイーターでは先の話から不可逆性を持って不可能」

「なんか理由あるの?」

「ゴッドイーターに入るオラクル細胞と最も相性が高いのはそれぞれの神機にあるコア。ちょっとでも合わないと性能をしっかりと引き出せないのよ」

「代わりに相性最高の神機とゴッドイーターは基本的に化物揃いだ」

「よく言うわよ、化物の一人のくせに~」

「うるせぇよ、月華」

 

 蒼士は本を置いて立ち上がると部屋に備え付けられたポットからお茶を三人分用意するとテーブルに置き、自分で一つを飲む。

 

「──で、そんな当たり前なことを話に来たわけでもねーんだろ。なんか俺等に用か?」

「人造ケイブで人を輸送できる方法が明確にわかったの」

「ほう。朗報じゃねーか」

「ところがそれほどの話でもなくてね~」

「なんかあるのか」

「ええ。扱えるマギの量が一定値以上じゃないとケイブの移動に耐えられないみたいでね~。蒼士くらい無いと通れないのよ」

「俺がそもそもどれくらいなのかわからないんだが…」

「美姫の半分くらい?隼人や香苗様で美姫の四割くらいで少し足りないのよ」

「私基準だと向こうの子達、全員越えてこれるわよ?」

 

 美姫はソファに座り直し、お茶を冷ましながら飲んでいた。そんな美姫の答えに月華は笑う。

 

「なるほどなるほど~。当初の予定通り、向こうから戦力供与の話をできそうなのはありがたい話ね。問題は、隼人と香苗様のマギの量をどうするか…」

「基本的なマギの量ってあんまり変化しないからね。レアスキルに目覚めるとかすれば変わるみたいだけど」

「それが簡単にできれば苦労しなさそうだがな」

「蒼士は持ってないわけ?」

「俺か?ぽいのはあるが…」

「えっ、マジ?」

「こんな感じだ」

 

 蒼士の中心に蒼い光が一瞬広がる。それを見て美姫は目を細める。

 

「『テスタメント』…、か。蒼士って本当にいろいろ持ってるよね」

「なんなんだ、これ。俺に影響なさそうなんだが…」

「『テスタメント』って言ったわね美姫」

「『テスタメント』の性質は周囲のリリィの『マギ関連の強化』だからケイブを越える前に蒼士が使えば隼人や香苗もケイブを越えられるかも」

「さすがはうちのエース!」

「偶然だと思うがな」

「偶然でも引き当てたのはあんたなんだから十分でしょう!」

「そうかよ。…で、具体的にはどうする?お前としては向こうと技術提携したいみたいだが…」

「そうなんよ~。チャームの解析が行き詰まってからは美姫のための強化案が丸々頓挫しててさ~」

「怪しい強化案が無いことだけ祈るわ…」

 

 

 

 

 ★

 

 

 

 

 

 工廠科、真島百由は腕を組んで唸っていた。

 

「何を悩んどるんじゃ?」

「おや、ぐろっぴ。いつの間に」

「何度もノックはしたし声もかけたんじゃがなぁ。百由様、集中しとる時は周りの声や音が聞こえなさすぎじゃろ…。で、何を悩んどるんじゃ?」

「これよ」

 

 百由が表示したのは前回の戦闘でもたらされたメモの情報。ミリアムが見ているが──

 

「なんじゃあ『人造ケイブ』というのは…」

「人も通れるようにしたケイブ、と言うとわかりやすいかしら。これを実用化できれば今のヒュージとの戦いはリリィが圧倒的に有利になるわ。なにせ、ヒュージの出入口をこちらで流用できるようになるのだもの」

「研究内容としては大層くすぐられるものがあるが百由様がそこまで悩むようなものなのか?」

「これはあくまでも『世界間を接続するためのケイブ』であって、ヒュージのケイブに干渉はできないみたいなのよね~。それは向こうは気にしていないから仕方ないと言えばそれまでなんだけど」

「それと、この下にある特殊なマギの運用方法とやらはなんなんじゃ?」

「そっちはたぶんだけどあの謎の獣をCHARMでどうにかするための術式なのよ。そっちは現行のCHARMでも後付けできるパーツでも作り出せば簡単にどうにかなる代物なんだけど…」

「それだけでも十分にヤバイ代物にしか見えんがのぉ…」

「ぐろっぴの言うこともわかるわ。少なくとも、このメモにある二つの技術は私達では普通は思いつかない観点から作られた技術といえるの。特に後者の術式はマギに精通していないと組み上げられないでしょうし」

「となれば、作ったのはあの伏柴美姫となるが…」

「悔しいわよ。居なくなった『異才』がこうやって自分達を越えてくるなんて…」

「それを形にできる百由様も大概じゃとわしは思うがな…」

 

 メモの近くにはおそらく試作品の山。それと自分なりに立てたであろう仮説資料が雪崩れた跡。

 

「とにかくっ!ある程度の試作品の数は作って、みんなに試してもらおうとは思うのよ!…思うんだけど」

「なんぞ問題でもあるのか?」

「あの謎の獣があれ以降の出現報告が無いのよ…。対アレ用の専用装備だから普通のヒュージにはあまり効果のなさそうな術式だし」

「なるほどのぉ。いざというときの装備じゃが、そもそも機能するかわからん装備ともなるとレギオンとしては少々信頼には欠ける装備じゃなぁ」

「そうなのよね~。でも、あの生物が現れないに越したことはないから困りものなのよ~」

「そうじゃな。アレを相手にしたからわかるが、アレは普通には対峙したくない類いの敵。現れないのならそれでよいというのが普通じゃ」

「でも、対策しておかないといざというときが困るわけで…」

「難しい問題じゃの~」

 

 工廠科備え付けのソファに座り、ミリアムは持参したせんべいをかじる。

 

「あっ、ぐろっぴ何食べてるのよ。私にも寄越しなさい!」

「好きに食べたらええじゃろ。にしても、伏柴美姫はいったい今になってどうして帰ってきたのやら」

「どういうこと?」

「伏柴美姫は姿を消してから数年。ケイブに巻き込まれて消えたのだとして、何故今さら『人造ケイブ』なんぞを作成してまでこちらへと帰ってきたのか。理由なく帰ってくることはあるまい」

「…確かに、言われてみればそうね。しかも、その技術をわざわざこちらへと渡してきた」

「何かしら企みはあるのじゃろう。しかも、それにはその『人造ケイブ』をこちらで造らせることにも関わっておるように感じる」

「なるほど。ただ単に『造ってみよう』とか思ってたけどそう言われると不可解よね。…よーし、ぐろっぴ!あんたにお願いがあるわ!」

「嫌な予感しかせぬが一応聞いておこうか?」

「次に伏柴美姫が現れたらどんな手段を用いてでも私の前に連れてきなさい!」

「無茶苦茶言う…」

「何がよ?」

「前回の戦闘情報は見ておらんのか?」

「見たわよ」

 

 謎の獣をわずか数分で討伐。ケイブから現れようとした『何か』を押し返し、すぐさまケイブも破壊。この間に一柳隊はほとんど何もできなかった。

 

「そのような状況なのに、どうやって連れてこいと言うんじゃ…」

「少なくとも戦闘後に話をする時間はあったんでしょう?だったら話し合うなりして連れてきたらいいじゃない」

「そう上手く事が運ぶような状況があればいいのだがのぅ…」

「そこは現場の貴女達に期待するわ!」

「最終的に全部現場に丸投げする気満々じゃし…」

 

 さすがのミリアムでも少々げんなりせざるをえない頼み事を聞くことになりそうである。

 




 【金雀枝 香苗(えにしだ かなえ)
 ミナト『リーリエ』のオーナーにしてAGEの一人。01話終了時点で22歳。ショートボブの黒髪にそれなりの高身長。
 本来はミナトのオーナーがAGEになることはないのだが『リーリエ』はゴッドイーターそのものが少なかったためにAGEへとなった。
 『あらゆる技術は人類存亡に役立てる』ことをモットーにしているため、月華とともに未知の技術への探求心が強い。今は美姫が有していたリリィに関する技術に執着しており、できるならリリィの世界と技術提携をできないものかと試行錯誤している。
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