とうとうこの日が来た。来てしまった。
「こんにちは、屠自古」
「…ごきげんよう、太子様」
両者共に、気が気でない。
神子は政で培ったポーカーフェイスを。
屠自古もまた、ポーカーフェイスを。
だが屠自古から聞こえる欲に、心臓がバクバクである。
(すごい緊張してるのと……くっ、好きなのか好きじゃないのかわからない!)
欲が相反して分からない。
(平常心平常心平常心平常心……)
屠自古の方は平常心を保とうと心の中で唱えるが、緊張しているのが神子に筒抜けである。
「馬子殿から聞きましたか?」
「ええ。…正直驚いています」
「私には屠自古が必要なもので」
「……そうですか」
屠自古から聞こえる欲は、未来のために必要なのか、というものとどういう意味だという疑心。
(私はまだ屠自古の信頼に足る男ではないようだ)
その事に少し心が堪えた。
(いや、今からなら大丈夫だ。弱気になるな)
ああ認めよう。
これは恋だ。初恋だ。
これを結婚などで無理やりくっつこうとする、ずるくて最低な男だ。
「ああでも、太子様と一緒なら安心できますね?知らない人といるよりは大分マシです」
屠自古は少し笑うだけだ。
「…屠自古。私の事、どう思ってますか」
「太子様のことですか?…正直言って、前世の記憶もあるせいか太子様のことを時折弟のように見えてしまいます。ここまで凄い弟なんて中々いませんが。こんな中身がオバサンみたいなもので嫌かもしれませんし、今は同い年ですし。結婚した後も今までどおり接しましょう?」
ちく。
胸が少し痛い。
「……弟、ですか…」
やはり自分は幼い。
だが悲しいのはやはり、屠自古が自分の事を貶しているからだろうか。
そしてそんなことを言わせる、自分の身を呪いたくてしょうがない。
(…なんかごめんね)
屠自古の方も、中身が本物だったらと思うばかり。
当然なのだ。
自分は内面の汚い、おばさん。
申し訳なくて、しょうがない。
神子は恐らくほかにも妻を娶るであろう。
それは皇族の子どもをより沢山産ませるため、誰が殺されても大丈夫なようにするため。
神子は恐らく、他の妻を寵愛するだろう。
だが今、神子の世界に屠自古がいようと、それは一時の事にすぎないのである。
「屠自古」
「太子様…?」
神子は黙って屠自古の手を握る。
「貴方の中身がおばさんとか、そういうのは関係ない。あなたはあなた。屠自古は屠自古です。前世の記憶を引き摺っているのはわかります。…遠い未来を生きてきたあなたに、この年で結婚するのは早いと感じているでしょう。」
現に戸惑いの欲がチラホラと聞こえている。
どうして、結婚をしなくてはいけないのか。
カルチャーショックが大きすぎて、頑張って馴染もうとしている屠自古に、追い打ちをかけるような。
「私が弟みたいだというのは、仕方の無いことです。ですが、屠自古。これだけは言わせて頂きたい」
神子の目は真っ直ぐに屠自古を捉える。
蜂蜜色の目には、困惑の色をうかべる屠自古が映る。
「私はあなたの事をお慕い申しております。今は頼りないですが、いつの日か貴方を振り向かせてみせます。それまで、待っていてください」
「……っ!!」
屠自古はブワリと顔を赤くした。
神子はそれだけ本気だった。
これは、己に課せられた戦いのひとつ。
恐らくこれは、長期戦。
「屠自古、これからよろしくお願いします」
「……う、あ……」
屠自古の方は驚きと人生でこんな歯が浮くような告白をされたことが無い。
故に、心臓が更にバクバクと高鳴る。
知らない。こんなの、知らない。
屠自古は、もう平静を保っていられなかった。
主人公を尸解仙にする?
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プロローグ詐欺になるし亡霊で
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尸解仙にする
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その他(感想の方に必ず記載)