東方転雷録   作:龍覇

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15話

その日の夜。

屠自古は一人、悶えていた。

(あああああああああああああああ……!!!!)

顔は赤く、この時間まで上の空である。

一時期は心配されるほどに。

どうすればいいのか、この感情を。

「こんっの人ったらし…!」

こんなの、ときめいてしまう。

どうしてこんなにときめくのだろう。

「……違う。こんなの違う」

好きじゃない。

好きじゃない。

友人としては好きだとも。

だが恋愛は違う。違う。

「……でも、まだ小さいから。初恋だと、思うけど…!!」

自分でも何を言っているのか分からない。

【貴方の中身がおばさんとか、そういうのは関係ない。あなたはあなた。屠自古は屠自古です。】

【私はあなたの事をお慕い申しております。今は頼りないですが、いつの日か貴方を振り向かせてみせます。それまで、待っていてください】

フラッシュバックするは、神子が屠自古に送った言葉たち。

思い出すだけで心臓が出てきそうだ。

だが、その言葉でふと思い出す。

「…私を私として、見てくれてるのかな」

この、名前の思い出せない自分を。外面の屠自古ではない、内面の自分を。

手を掲げてみる。

細く、小さな丸い子供の手。

昔の自分の手は、まだそれよりも大きい、大人の手。

そしてその手に持つものは、東方神霊廟。

といっても出会いは二次創作から始まって、調べて、原作をプレイして。

その時の中で買ったもの。

一番好きなシリーズは他にあるものの、神霊廟はかなり好きの部類に入る。

箱推しであるので、誰が一番かは決められないが。

「………」

神子のことで頭いっぱいになったが、その言葉をきっかけにして、頭の中はすっかり前世一色。

前世のことはあまり考えないようにしていたが、それでもまだ引きずっていた。

トントン

「…誰だ」

突如、ノックの音が聞こえた。

「屠自古、私です」

「……!どうぞ」

「失礼しますね」

神子はまだ、蘇我の家にいた。

というのも、もうすっかり日が落ちてしまい、妖などがうろついて危険だからという理由である。

「…太子様、いくら私たちが7歳とはいえ、こんな夜に男女二人きりは…」

「いいではありませんか。私たち夫婦になりますし。」

神子は屠自古の隣に座る。

「ねえ、屠自古。寂しく、ないのですか?」

「…何を?」

「前世のことです。いきなりだったんでしょう」

「寂しくないと言えば、嘘になります。ある日突然目が覚めたら知らない天井、知らない人達…最初は怖かったです。名前もこうなるきっかけも何も。思い出せませんから」

「……」

神子は黙り込む。

「でも、太子様。ありがとうございます」

「?」

「私を、私として見てくれて」

「いいのですよ、屠自古。それなら私だってそうです。私を私として見てくれたのは、あなたが初めてです」

ああ、そうか。

お互いがお互いのことを、個人としてみてくれていた。

「……太子様、お願いがあるのですが」

「はい」

「一緒に、寝てくれませんか」

「……!!!」

突然の屠自古のお願いに神子は固まる。

「寂しくて、寂しくて。でも、私のことを知っている太子様となら、安心して眠れそうです」

「……………ちょっとまってて下さいね」

神子は急ぎ足で部屋から出ていくと、少し経てば寝具を持ってきていた。

「…じゃあ、一緒に寝ましょ」

「はい」

屠自古は神子の布団を広げる(神子は使用人が普段からやってくれているためできない)。神子はその光景を目に焼き付けた。

「おやすみなさい、屠自古」

「ええ、おやすみなさい。太子様」

フッ、と灯りを消すと、真っ暗になる。

今日の星空はとても輝いていた。

主人公を尸解仙にする?

  • プロローグ詐欺になるし亡霊で
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