東方転雷録   作:龍覇

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16話

二人が熟睡している中、他はバタバタとしていた。

「おい布都。太子様を知らないか」

「太子様じゃと?部屋におらんのか?」

「いや、いない。どこに行ってしまわれたか…」

「しかしこんな夜更けに太子様に用とは何事じゃ?」

「なに、改めてまた挨拶をだな…」

「それはあとでよいじゃろう。蘇我の家にわざわざ太子様がおいでなさったのだ、疲れておるだろうに」

「む…それもそうだな…」

「なに、後で我が太子様に言っておくゆえ、お前はもう休め」

「……では失礼する」

「おう…。……やれやれ」

馬子が去った後、布都はため息をついた

馬子は子煩悩である。

屠自古の他にも兄弟はいるものの、兄は気難しく、人一倍蘇我の血に誇りを持っている。

それ故か、太媛のことをよく思っていないし、自分の中に流れる物部の血を人一倍恨んでいるし、太媛に似た屠自古を嫌っているせいかあまり会わない。

姉は崇峻天皇に嫁ぎ、妹はまだ小さい。

布都は屠自古と妹以外、面識がない。

挨拶にも来ないから余程嫌いなのだろう。姉は仕方ないとはいえ、屠自古は恐らくこの兄弟の中で一番素直だろう。

「さて、太子様の居場所は…」

物部の秘術を使って、屋敷中を探し回る。

本当に探してもどこにもいない。

(ああ、もしかしたら…)

まだ探していない、屠自古の部屋の中を見る。

部屋の中を見ると、神子と屠自古が一緒に寝ている。

(寝て…いる!?)

布都は驚いて飛び上がった。

さらに注視する。手を、繋ぎあっている。

二人の寝顔は子どものそれ。とても可愛らしい。

そしていずれは夫婦となるものだから感慨が深い。

「……すぅーっ………」

普段は人間味を見せない神子。

その神子が人間味を屠自古に全面的に見せている、というところか。

屠自古は人見知りはなくなってきたがそれでも、だ。

あまり心を開かない屠自古は神子に気を許している。

布都の心にはどうしようもない何かが満たされた。

屠自古に髪が綺麗と言われた以来の、何かが。

この、宗教戦争で荒みきった心が潤うような。

「……早く大きくなれよ……」

布都の顔は少しの寂しさを滲ませながら呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

「……ん」

神子は、ふと目を開ける。

誰かに見られたような気がするが、特に害は無いものらしい。

こんなにも休ませてくれるのは久しぶりのことだ。

「……ふふ」

隣にいる屠自古の寝顔は実年齢よりも更に幼く見える。

更に、丸まって寝ている様はまるで猫のよう。

このまま眺めるのもいいが、ただでさえ眠れない日が多い。

このまま寝てしまおう、そんな時。

「たい、し…さま……」

「!!」

夢の中に神子がいる。

その事実が嬉しい。

「ああ、本当に君は…」

神子の心が満たされる。

くくっ、と静かに笑いをこらえたあと、満足気にまた眠りに落ちるのだった。

主人公を尸解仙にする?

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