東方転雷録   作:龍覇

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26話

「あらあら…これはとても面白いことになりそうね」

青娥は三人の様子に、笑っていた。

別に、自分の力を見せるだけだったのに、こんなことになるとは思わなかった。

思わなかったし、見せただけでこんなに面白いことになるとは思わなかったのだ。

特に、蘇我屠自古は面白いのだ。

最初は興味などなかった。ただの神子の妻。それだけである。

だが、布都の心を知らずとはいえ破壊の一歩手前までさせ、神子と共に何か隠し事をしているのだ。

その隠し事を探ろうにも、なにも証拠などない。

屠自古の部屋をこっそり見ても、何も無い。

一つ、書物みたいなものがあったが、墨で塗りつぶされて読めなくなっている。

恐らくそれがカギだと思われるが、恐らく見られるのを恐れて、こんなことをしているのだ。

だから、今日は屠自古にちょっかいを掛けてみる。

「蘇我様、失礼します」

「…青娥…?」

屠自古の声は少し枯れている。咳をずっとしていたためか、声を出すのが辛い。

「お加減はいかがですか?」

「…良さそうに…見える?」

「全然、良くないですわね」

「………」

呆れてため息をついた。

だが表情には覇気がなく、目は少し腫れていた。

でも少し、安堵した気配を漂わせている。

「もしかして、寂しかったのですか?子どもたちに会えるのも時間が決まってますものね」

「………うるさい」

「あらあら…」

本当に怒る気配がない、というより怒る気力がないのだろう。

元気な時はもっとキャンキャンと吠えているはずだ。

それに子どもたちの前では笑顔を装っているが、決まって屠自古は子どもたちが去った後に寂しそうな顔をする。

「かわいそうな蘇我様」

屠自古の額を掻き上げる。

「なにを、言いたい」

「何も知らず、病気に喘ぎ苦しみながら、親や子どもたちに見送られて。そして、豊聡耳様や物部様と共に尸解仙になって。でも周りには貴女の愛する方はもう、死んでい…」

バチ

電気のはじける音が聞こえた。

「…黙れ」

バチバチバチバチ

「あら」

手に痛みが走った。

「もう帰れ。…私に構うな」

「ふふ、本当に面白いお方。では帰ります」

青娥はああ、そうだと口にした。

「多分ですけれど。貴女にはもう時間が残されていません。恐らく、火事場のなんとやら。貴女の中に半分流れる物部の血が起きているようですね。その雷が証拠ですね」

「……」

「では」

今度こそ、青娥は去る。

屠自古もまた、自覚していた。

太媛の時よりも、生きていけないことに。

「わざわざ…いうなよ…」

涙は出なかったが声は震える。

一人きりの部屋は、寂しくて寂しくて、仕方なかった。

主人公を尸解仙にする?

  • プロローグ詐欺になるし亡霊で
  • 尸解仙にする
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