東方転雷録   作:龍覇

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9話

屠自古という娘は、まるで雷のような娘だ。

「ふざっけんじゃねーよ!!!」

「屠自古!?」

まるで雷のように、突然怒った。

布都は9ヶ月前に亡くなった、物部の娘であった太媛の後釜で入った。

自分の名前と似ているのはたまたまだろうか。

馬子から聞いたのは、使用人を少々困らせるお転婆娘らしい。

布都は特に思わなかったが、まあいいかと屠自古に挨拶しに行った。

このザマだ。

これも当然である。

母親を亡くした9ヶ月後にこれである。

7歳という多感な時期真っ只中の娘に、これは怒る。

布都が同じ立場だったら怒るかもしれない。

「…屠自古があんなに怒るとは…」

「そりゃあまあ、お主。怒るじゃろ…だから今は止めておけと言っておいたのに」

「…くっ」

「まあよいわ。お主が追えば屠自古の琴線を余計に触れる。我が追うのも少々アレだが、…まあ致し方ない」

「…すまない。頼む」

「あいわかった」

印をサッサと組む。

物部の秘術で、屠自古がどこにいるかを視る。

顔を隠しながら走っているが、泣いているのがバレバレだった。

 

 

 

 

 

 

後を追うと、屠自古の後ろ姿が見えた。

後ろからでもわかるくらい、背中を震わせて泣いている。

屠自古の緊張を少しでも解かせようと、あえておどけた口調で言ってみせる。

が、やめた。

何度も布都にあたるさまは、まるで雷のようだ。

最終的に弱々しくなる。

布都は屠自古の目線を合わせる。

母は好きか。

父は好きか。

今はどう思っているか。

一つ一つ、屠自古は答えてくれる。

屠自古は、雷のようで花のような娘。

我ながら意味がわからないが、屠自古のクルクルと表情が変わる様は、飽きない。

スンスンと啜りながら隣で歩く屠自古はだいぶ落ち着いた。

「なあ屠自古」

「なに、布都」

「…おおう、一応継母となる我に呼び捨てか」

「まあね。…でも父上と色んな人の前だけ母様って呼んであげる。なんか布都に母上とか呼ぶの違和感しかなくて」

「まあそうじゃろうな。いきなりじゃしな。許す」

「ふふっ、ありがとう。布都」

「お主、笑えば可愛らしいのにな」

「るっさい」

本当にクルクルと変わる表情だ。

口も随分お達者だ。

布都はかかっ、と笑う。

「いきなり何笑ってんの…?」

屠自古が引いた顔でこちらを見る。

「なに、お主の成長が楽しみなだけだ」

「どうだか」

ふん、とムスッとした顔になる。

丸い目が鋭くなる様を見て、馬子を思い出す。

正直蘇我は嫌いだが、娘は何も罪はない。

(…これから、お主を巻き込ませて貰うぞ)

これからの一計のために。

(太子様のために、な)

表情は変わりないが、腹の底は真っ黒である。

主人公を尸解仙にする?

  • プロローグ詐欺になるし亡霊で
  • 尸解仙にする
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