こういうのは守護輝士の仕事だと思う   作:シャケ@シャム猫亭

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Force好きなのにForce物見つからない問題




エーテルは全てを解決する

 はるか宇宙の彼方。

 外宇宙を目指すオラクル船団、その内の一隻であるアークスシップには日々様々な任務が届けられ、ゲートエリアやショップエリアは任務を受ける者やその準備をする者が、絶え間なく行き交っている。

 そんな喧騒から少し離れた所にあるフランカ’Sカフェ、その二階は人が少なく、静かに落ち着いて何かをするには丁度いい場所だ。

 アークスの少女、ミズーリもそれを求めてこの席に座った。

 コーヒーを飲みながら、ゆったりと報告レポートを作成する。流れているBGMも渚のようなゆるりとしたもので、それがまた集中を乱すことなく心地よい。

 

「よーすミズーリ、何してんの?」

「……なんだ、ザンバか」

 

 だからこそ騒がしい彼の登場に嫌な顔をしながら、うっとうしそうに彼女は顔を上げたのだろう。

 

「相棒に向かって”なんだ”とは酷いな。探したんだぜ?」

「ザンバだから”なんだ”なんでしょ」

 

 クラス教官や各部署の司令、あるいは守護輝士といった目上の人ではなく。武器職人ジグや、このカフェのオーナーであるフランカ、メディカルセンターのフィリアのようなお世話になっている人でもなく。ナウラ三姉妹やミケーラ、歌姫クーナといった会えること自体が意外な人でもない。

 相棒なんて言ってくるが、ミズーリにとってザンバは”なんだ”で済ます程度の人だ。

 

「まあいいや。んで、何してんの?」

 

 木目の美しい椅子を引き、ザンバはミズーリの隣の席にどかりと座った。

 そのデカイ体躯に押され、ミズーリは一気に手狭になる。

 

「見てわかるでしょ、映像資料観てるの。邪魔しないで」

 

 テーブルにはミズーリが頼んだオレンジジュースと、仮想端末が宙に浮かんでおり、飲み物片手にそれを見ていたことがうかがえる。

 

「へー、どれどれ……」

「ちょっ、邪魔しないでって言ったでしょ! 今いいところなんだからっ!」

「なにこれ? 絵が動いてるんだけど」

「データ送るから自分の端末で見なさい! 近い、邪魔、暑苦しい!!」

 

 ミズーリは悪態をつきながら端末を操作してザンバにデータを送る。一方のザンバは言われても気にした様子はなく、届いたデータを隣で開く。

 

「で、何なのこれ?」

「一緒に送った説明資料読みなさいよ」

「百ページ越えの資料読むのめんどい。三行でよろしく」

「はあぁ……この間ひと騒動あった地球って惑星の、アニメーションって技術資料。一秒に何枚もの絵を連続で見せることで動いてるように見える。これはその中でも人気な”リリカルなのは”シリーズ」

「……ようは、動く絵本か?」

「わかったなら邪魔しないで。私は続きを見るの」

 

 そう言ってミズーリは端末に向き直った。もうザンバの方はちらりとも目を向けない。

 ザンバも用があってミズーリを探していたのだが、これでは話を聞いてくれそうにない。肩をすくめたザンバは、ミズーリのキリがよくなるまでの暇つぶしに送られた資料を読み始める。

 

(一話三十分……魔法をテーマ……記憶媒体は円盤と呼ばれる……)

 

 とはいえ、もともと興味なかった上、堅苦しい言葉で書かれた資料は読んでも全然頭に入ってこない。結局五分もすれば飽きてしまい、席から立ち、背負っていたソードで素振りを始めた。

 無論、そんなことをすれば嫌でもミズーリの視界に入るわけで。

 

「ああもうっ! ブンブンうっとうしいのよ、余所でやりなさい!」

「どっか…ふんっ…行けと……ふんっ…ふんっ…言われても、オレも用があって……ふんっ……ミズーリ探してたわけだし?」

「いいから素振りをやめなさい!」

 

 こうなってしまっては流石にミズーリもアニメを見てられず、ザンバを無理やり対面の席に座らせると自身の端末で再生していたアニメを閉じた。

 

「それで、何の用なのよ?」

 

 テーブルに指をコツコツと当て、苛立ちを隠そうとしないミズーリ。

 

「指名任務だってさ。もちろん、オレとミズーリで」

 

 そんなアピールもザンバには効きはしない。にこにこと笑みを浮かべながら端末を操作し、任務の辞令データをミズーリに送った。態度で示しても無駄だということを早々に悟ったミズーリは、ため息をひとつ吐き、頭を切り替えて任務の辞令を読む。

 場所は惑星地球。エーテルの異常励起を確認したため、その調査を現地協力組織アースガイドと共に行ってほしいという内容だ。

 さっと目を通して思うことは───

 

「これ、私たちを指名する必要ある? そもそも私たちの専門、調査じゃないし」

「さあ? そういう難しいことはミズーリに任せる」

「この脳筋め……げっ、この辞令出したの情報部司令(カスラ)じゃない! 絶対ろくでもない任務だわ」

 

 行きたくない。ものすごーく行きたくない。

 カスラからの任務は都合三度ほど受けているが、果てしもなく気を使う任務と、権謀術数渦巻く中で支援なく立ち回る任務と、とんでもなく後味が最悪な任務だった。どうせ今回もそれに漏れないはずだ。

 

「……止めましょ。辞退よ、辞退。見えてる地雷だわ」

「でも、さっきカスラさんが昼飯奢ってくれたとき、『頼りにしてる』って言ってたぜ?」

「しっかり買収されてるんじゃないわよっ!」

 

 何でこんな奴と毎回パーティを組まなきゃいけないのかとミズーリは頭を抱える。

 

「もうザンバだけで行ってきなさいよ。私はフィリアさんに病気の診断書書いて貰って休むから……」

「あ、そういえばカスラさんが、ミズーリが休むって言ったらこれ渡せって」

「……何よ」

 

 ぺらりと渡された一枚の封筒。中からは一枚の紙が出てきた。

 書類のほとんどが電子化された中、わざわざ紙で印刷されているというだけでも異質だが、そこに記されていた内容は少なかった。

 

「辞令、下記の者を情報部特務二課への配属を命じる……」

 

 特務二課はカスラ直属の課であり、超絶ブラックと名高い。何をやっているかまったく見えてこない上、みんな目の下に隈を張り付けながら幽鬼のように働いている。しかも負傷率が高いくせに、なぜか入れ替わりがない。

 何とか抜け出せた者たちは口をそろえて言う。

 

『あそこに戻されるくらいなら、ダークファルスに特攻する方がマシ』

 

 そんな悪名高い特務二課への配属を命じる指令書には、今年アークス士官校を卒業する予定の妹の名が────

 

「……行くわよ、ザンバ」

「お、その気になったか。キャンプシップの用意は出来てるぜ」

 

 書類は正式なものではなかった。なぜなら、そこにカスラのサインが入っていなかったから。だがそれは、サインさえすれば正式なものになるということでもある。

 

「帰ったら絶対ぶん殴る……」

 

 ミズーリには任務に従う他なかった。

 

 

 

 

 

 

 

「この度はご足労いただきありがとうございます」

 

 エリア東京から少々離れた海沿い街。その海浜公園にてミズーリとザンバはアースガイドの支部長と握手を交わす。

 

「こちらこそ、調査の間お世話になります」

 

 ザンバは脇に控えさせ、ミズーリはにこやかに対応する。

 カスラがミズーリ達を指名した理由の一つは、地球人に対してこうした円滑なコミュニケーションを取れるからだ。もちろん言語的な意味ではない。

 

「それにしても……お二人ともカジュアルスーツでいらっしゃるとは思いませんでした」

「これが一番目立たないと思いましたので。普段の戦闘服では場に馴染めないでしょうから」

「あー……そうですね」

 

 支部長はこれまで会ったアークスのことを思い出す。

 ゴムのような素材でできたダイバースーツの上からプロテクターを付けたような恰好ならまだマシだった。ラッピーと呼ばれる黄色い鳥の着ぐるみを着てマグロの模型を振り回す者や、胸や局部を申し訳程度に隠しただけの服と呼べるか怪しい恰好で踊る者、はたまた濡れたバスタオル一枚を巻いただけの恰好で空中戦を繰り広げる者もいた。

 

「ええ……常識ある方でよかったです」

「一応言っておきますが、あれはあれで彼らの常識なのです」

 

 アークスは多くの惑星に行って任務をこなす。そこには当然、多種多様な文化があり、余計な軋轢を生まないためにもアークスは常識を上書きするのだ。

 獣人の中ではケモ耳を生やし、肌を露出する程正装になるなら水着になり、無機物を所持することが禁忌なら冷凍本マグロを振り回す。様々な文化に染まった彼らが集まるアークスという組織は文化のるつぼであり、地球人からすれば非常識が闊歩しているように見えるのも当然ではある。

 実際は坩堝(るつぼ)というより蠱毒(こどく)であるが。

 

「まあ、宇宙は広いってことです」

「す、すみませんでした。常識がないなんて言ってしまって」

「いえ、気にしてませんから」

 

 正直なところ、ミズーリにしたら常識がない輩はまだマシで。常識が通じない奴の方がもっとヤバい。

 三英雄とか守護輝士とか、二度と肩を並べたくないとミズーリは思う。命がいくつあっても足りない。

 

「さて、挨拶も済んだことですし、早速ですが情報交換といきましょう」

「そうですね。事の発端はひと月前です。私たちがいる此処、山鳴市にて異常なエーテル励起が確認されました」

 

 すぐにアースガルドは反応のあった市街地周辺を空間隔離し、エーテルから生み出される幻想種の襲来に備えた。しかし、待てど暮らせど幻想種は現れることなく、エーテル励起も現れた時と同様、唐突に止んでしまう。

 今までなかったケースであるため本部への報告を行ったが、被害があったわけでもないため、要警戒の指令のみが出されただけだった。

 状況が変わったのは昨日。今度は街の近くの海上でエーテルの異常励起が確認され、そしてまたもや何事も起こらずに反応が消失した。

 流石に二度目となると偶然で片づけるのも難しい。アースガイド本部は本格的な調査をするためアークスに協力を依頼し、ミズーリたちが派遣されたのだった。

 

「海上でのエーテル反応は、この海浜公園からほど近い場所でしたよね?」

「はい、ここから二、三百メートルほど海に出た辺りです」

「……とりあえず、行ってみます。ザンバ、ライドロイド呼んで」

「あいよ」

 

 ザンバが端末を操作すると、すぐに空からウサギを機械化して翼を付けたような物が二機飛んできて、二人の傍に着陸した。キャンプシップに搭載していた二人のライドロイドだ。

 

「よしよし、ラビィ。今日もよろしくね」

「prrrrri」

 

 二人はそれぞれ自分のライドロイドに乗ると上空に浮かび上がる。

 

「では、少し見てきます」

「お気をつけて」

 

 敬礼で見送る支部長に向かって片手を上げてから、ゆっくりと海上を進む。

 海上は凪とは言わないまでも穏やかで、陽の光を反射してキラキラと光っていた。

 

「今のところ変な反応は無いわね。エーテル値もフォトン係数も安定してるし、ダーカー反応もない」

「いやー海風が気持ちいいな!」

「……ザンバ、邪魔だから帰って」

「なして!? オレのライドロイドもデータ取りしてんじゃん」

「じゃあ、なおさらザンバ要らない。ライドロイドから降りて海でも泳いでなよ」

 

 ライドロイドは自立AIを搭載しており、ザンバなしでもデータ取りには全く支障がない。

 というかザンバが乗らない方が、乗り手を考えないでデータ収集に動けるから効率良い気がしてきた。

 

「ほら、ザンバの好きな鍛錬してきなよ。泳いでラスベガス向かうとかさ」

「太平洋横断しろと? 流石に体力持たないぜ」

「じゃあフォトン有りでいいわよ」

「ならなんとかなるな! バータで氷塊作れば、その上で休めるし」

「はい、行ってらっしゃい」

「おう、行ってきま───行かねえからなッ!?」

「じゃあせめて喋ら(いきし)ないで」

「さらっと無茶いうなぁ……」

 

 二人のライドロイドは、上で騒ぐマスターたちに呆れの感情を覚えながらも飛び続け、粛々とデータを集め続ける。

 水面と同じく、データも穏やかなままだ。何かがあったのに、その証拠が何もない。

 

「あ~、やな感じ」

 

 異変が起きたのにその痕跡がまるで無いのは、すなわち、予想外のことが起こりえるということに他ならない。

 なぜなら、そもそも予想もできないから。

 痕跡が隠蔽されたとか、事件の捏造とかは、また別の話。それはエーテルの異常励起が起きた後か、起きる前の話だから。

 

「ザンバ、どう思う?」

「そういう難しいことはミズーリに任せる!」

「言い方が悪かったわね。ザンバ、どう感じる?」

「ワクワクしてる!」

 

 あ、これアカンやつだ。

 脳筋バトルジャンキーがワクワクしてるなんて、つまりはそういうことでしかない。

 ミズーリはすぐさま回れ右し、陸地に向かおうとしたのだが、

 

 頭上でガラスが割れる音がした。

 

「うおおおおおぉぉぉぅ!? なんだあれ、空が割れてるッ!?」

「やっぱりぃぃぃぃ! ちょっ、吸い込まれる吸い込まれる! ラビィ、緊急離脱っ!!」

 

 言われる間でもなく二人のライドロイドは全力でブースターを吹かし、その場からの脱出を試みていた。だが、空間の裂け目に引き寄せられる力の方が強く、徐々に裂け目へと吸い寄せられていく。

 

「っ、ラビィ、メッセージパックを射出! 未整理でいいからありったけの情報詰め込んで!」

「Ppp!」

 

 逃げられないというのなら、せめて手がかりを。

 今まさに滅茶苦茶な数値を出している計器のデータがあれば、きっとシエラなら……。

 ミズーリが海浜公園にメッセージパックが着弾するのを確認するのと、二人が裂け目に飲み込まれるのはほぼ同時だった。

 二人を飲み込んだ空間の裂け目は、もう要は済んだとばかりに消え、後には穏やかな空が広がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───ぃ、おーい、ミズーリ」

「……ん………ぁ?」

 

 ぼんやりとした視界。誰かが自分の頬を叩いている。

 聞き覚えのある声。それから、草の香り。

 

「──っ!」

「お、やっと起きたか。体調は?」

「…………平気。ザンバは?」

「問題なし……と言っても、感覚だからなぁ」

 

 未知の空間に取り込まれたのだ。

 何かしら不調が起きてても不思議ではない。

 

「帰ったらメディカルチェック受けなきゃね。ところで、ここは何処?」

「さあ?」

 

 右を見る。深い森が続いている。

 左を見る。深い森が続いている。

 上を見る。木々の隙間から星空が見える。

 

通信(コール)、アークス管制室」

『アクセスエラー。通信先が見つかりません』

 

 ミズーリは仮想コンソールを呼び出し、管制室と連絡を取ろうとしたが繋がらない。

 エラーコードを見る限り、通信が阻害されているわけでなさそうだ。

 単純に通信先を見つけられないでいる。

 あの空間の裂け目によって、宇宙の果てにでも飛ばされたのだろうか。

 

「とは言っても、連絡取れないなんて、いつもの事よね……」

「なんだ、長期戦になりそうなのか?」

「一応救難信号出しておくけど、正直望み薄ね。またサバイバル生活かぁ…………」

 

 こちらの通信が届かないということは、当然、救難信号も届かない。

 信号を出し続ける(・・・・・)以上の役割はないが、やらないよりはマシだろう。

 

「前はひと月くらいだったな。今回はどのくらいになると思う?」

「なに、賭け?」

「おう。オレは二ヶ月にマイルームのドゥドゥサンドバックを賭けるぜ」

「超絶要らないわね…………ひと月にラッピー人形」

「またかよ。もうオレの部屋に置ける場所無いぜ」

「金剛地蔵の方がよかったかしら?」

「もっといらねえや」

 

 そんなやり取りの間にも、ミズーリはテキパキと情報を集めていく。

 気体の割合、土壌の成分、それから星空の位置。

 そうした情報から、自分たちの居る惑星を特定しようとしたのだ。

 

「解析完了……あー……やっぱ不明か」

「お、未開惑星に飛ばされたのか! いいねいいね、冒険の匂いがしてきた!」

「……あんたもう先遣隊に異動したら?」

 

 新しく発見された惑星に真っ先に降り立ち、マッピングや原生生物調査を行う先遣隊になれば、いつでも未開惑星、未開地域へ一番乗りだ。

 ザンバの求める冒険が待っている。月単位でサバイバル生活する職場なんてミズーリは真っ平ゴメンだが。

 

「ああ、我ながらいい考えだわ。ザンバは冒険ができる。私はザンバと組まなくてすむ。一石二鳥じゃない」

「や、オレにとっては冒険はできるけどミズーリと組めなくなるから一長一短だわ」

「~~~~っ」

 

 そういうところだ。そういうところだぞザンバと言いたいところであったが、言ったら負けな気がして、結局ミズーリはぷるぷると震えながらも言葉を飲み込んだ。

 

「そ、そういえばラビィたちは?」

「わっかんねえ。あの空間の裂け目に飲まれた途端、意識がぶっつり切れちまって、気づいたらここだったから」

「はぐれちゃったか……同じ惑星に飛ばされてたら御の字ね」

「ま、大丈夫だろ。何だかんだライドロイドって強いし」

 

 元々その名の通り移動用の機体ではあるが、そんじゃそこらの原生生物だったら(なます)に出来るくらいには、豊富な武装が取り付けられている。搭乗者がいれば、一惑星の神にも立ち向かえるのだ。

 それよりも目下の課題は、拠点作りだ。

 衣も食も持ち込みがあるのでしばらくは平気だが、住については何もない。

 雨風夜露が凌げる場所を確保しないと、精神にも肉体にも疲労が溜まる。疲労は長期任務の天敵だ。

 

「ザンバ、アンタ何持ってる?」

「何持ってきてたっけ? ええっと……戦闘服に各種武器と、各種メイト、アトマイザー、ハーフドール、ドーナッツ、から揚げ、デリシャスバーガー、肉野菜炒め、ジャーキー、東京風ハンb──」

「もういいわ。アンタが最低限の装備以外に料理しか持って来てないことはよくわかったから」

「お陰でメイト生活にならないだろ?」

「そうね、それについては素直に喜んでおきましょ」

 

 メイトも不味くはないのだが、如何せん流動食ではお腹は満たせても気分が満たされないし、回復剤でもあるので、食事として使いたくはない。

 予想以上……そう、予想以上にザンバの持ち込みがあるため、本当に食に関する心配は消えた。

 が、ミズーリとしては、もう少し使える物も持ってきていて欲しかった。

 

「ミズーリは?」

「同じ物は省くとして……」

「え、料理あんの?」

「ないわよ…………ドーナッツはある。こほん……迷彩パッチ三種、フォトンスフィア、ツルハシ、釣り竿、簡易医療キット、武具メンテキット、環境調査キット……くらいかしら」

「ツルハシと釣り竿あるのか。じゃあ尚更食材に困らないな」

「この惑星でのギャザリングで食べれる物が採れるなら、ね」

 

 東京エリアみたいに空き缶や空き瓶が採れるようでは、流石にアークスと言えども食べられない。

 あと欠点として同じ食材ばっか取れるので、大豆のような穀物ならいいが、唐辛子のようなスパイス系だと役に立たない。

 

「さて、本当に食事には困らないとして、拠点どうする?」

 

 シートの類があれば、木に掛けてタープを作れるのだが、それもない。

 

「こんだけ木があるし、ログハウスでも作るか?」

「崖をくり抜いて洞窟にするって手もあるし……やっぱりまずは周辺の地形調査かしら」

 

 手っ取り早いのは、やはり空からだろう。ライドロイドがいないのは痛いが、いないならいないで手はある。

 

「ザンバ、発射台よろしく」

「よっしゃ、まかせろ!」

 

 腰を落とし、背負っていた大剣の腹を上にして低く構えるザンバ。

 ミズーリはその大剣に乗り、しゃがみ込んで力を溜める。

 

「カウント、三、二、一」

「ぅおおおおおおおりゃああああぁぁぁぁッ!!」

 

 ザンバが力の限り大剣を振り上げ、その頂点に達するタイミングでミズーリは跳躍。

 弾丸のような速度で、ミズーリは空へと打ち上げられた。

 

 この惑星には月があるようだ。おかげで思ってたよりも明るく、夜でも細部まで地形が分かる。

 どうやらここは大森林ではなく、丘陵地帯のようだ。

 360°見回して周辺の地理データを取得する。

 

「巨大生物なし、火山等の危険地域なし。街明かり………なし。知的生命体は居ないのかしら? それとも龍族のように住居を必要としない?」

 

 ひとまず、周囲に危険な場所があるわけではなさそうだ。

 これなら原生生物だけに気を付けて調査ができる。

 

「……ん?」

 

 落下がはじまり、次の行動の算段を立てていたミズーリの視界の端に何かが映った。

 ぽんっと(くう)を蹴り、見えた高さまで跳び戻る。

 ほんの一瞬、木々の隙間から弱い明かりが見えた。

 方角と距離を確認し、ミズーリは地上に着地する。

 

「どうだった?」

「周囲に危険は無し。それと、(みょう)な明かりが見えた」

 

 色味からしておそらく焚き火だろう。

 そうでなければ野火ということになるが、それだと山火事になる危険がある。

 生憎、消化活動に使うレスキューガンは持ってきてない──というか、あんなの常備してる奴などいないので、消すとなると少し手間がかかる。

 

「知的生命体?」

「わかんない。もしかしたらリリーパの機甲種みたいなのかもしれないし」

「ん~~~~、行ってみるか」

「まあ、そうなるわよね」

 

 ミズーリもザンバに賛成である。

 正直、今は少しでも情報が欲しい。本来なら未開惑星における知的生命体との接触は手順を踏んで行われるべきだが、そうも言ってられない。

 

「ザンバ、周辺のマップと目的地のデータ送るわ」

「サンキュー……わりと近いな」

「直線距離で、およそ三キロってことかしら」

「さてさて、鬼が出るか蛇が出るか、楽しみだな」

「アンタは戦うっていう選択肢しかないの? 大体、蛇は二度とごめんよ」

「前に一回丸呑みにされたもんな」

「思い出したくもないわ」

 

 ミズーリは身震いしながら、そう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




Tips

PSO2:惑星航行船団オラクルの戦闘部隊アークスがダーカーという悪い奴と戦う話。外宇宙を目指すという当初の目的は完全に放り投げられている。

フォトン:すごいパワー。魔力みたいなもん。大抵のことはフォトンが解決してくれる。

エーテル:別次元の地球にあるすごいパワー。人々の思いに反応して様々な現象を起こす。これのせいでアークスシップがエヴァの第六使徒に襲われたり、SAOのキリトとアスナがやってきたりした。クロスオーバーに便利な舞台装置。
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