左腕で顔を覆い目を閉じていた怜は、騒ぐ周囲の気配とそれを囲む人達に、目を向けた。
それから目に入ったのが巨大な壁画だった。長い金髪を靡かせ微笑む中性的な顔立ちの人物の後ろには、神々しい光が溢れていた。
回りには動植物がその人物を崇めているかのように頭を垂れていた。
その壁画を見た時、怜が感じた感情は、言葉にできないほどの
そんなことを思っていると、豪奢で煌びやかな衣装を纏い、高さ三十センチはある烏帽子のようなものを被っている七十代ほどの老人が歩み出てきた。
「ようこそ、トータスへ。勇者様、そして御同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は、聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル•ランゴバルドと申すもの。以後、宜しくお願い致しますぞ」
そう言ったイシュタルと名乗る老人は優しげな笑みを浮かべた。
だが怜はその奥にある歪さに気づいていた。
-------------------------------------------------------------------
現在、怜達は場所を移り、テーブルがいくつも並んだ大広間に通されていた。
恐らく、晩餐会をするためのものだろう。
上座に近い位置に社会科の畑山愛子先生と天之河達四人組が座っている。
他の人達は適当に座っており怜は南雲の隣に座った。
ここまである程度静かだったのは理解が追いついていないことや天之河が落ち着かせたからだろう。
全員が着席したのを確認すると、絶妙なタイミングでメイド達が入ってきた。
もちろん美女、美少女メイドだ。
それを見た男子は鼻の下を伸ばしてメイド達を凝視していた。最もそれを見た女子達の視線は凍えるかと思うほどの冷たさが宿っていた。
怜の隣に座っている南雲も凝視しそうになっていたが、白崎がにこやかな笑みを浮かべ南雲をジッと見ていたのに気づき視線を前に固定した。
それを見た怜はため息を吐いた。それから南雲に注意をした。
「南雲、メイド達に目を移すのはなんとも言わないが、こいつら飲み物の入れ方が不格好だ。恐らくこのためだけに顔が良い奴だけを集めたんだろう。飲み物も何が入っているか分からないから、飲むのはやめとけ」
「うん、神崎くんがそういうならそうなんだと思う。それから!メイド達に目を移してなんてないから!」
小声で話しているのに声に力をいれるという器用な事をした南雲であった。
「さて、あなた方においてはさぞ混乱していることでしょう。一から説明させて頂きますので、私の話を最後までお聞きくだされ」
そう言いイシュタルはテンプレで、勝手な話をし始めた。
要約すると、この世界はトータスと呼ばれていて、この世界では3つの種族に別れていた。人間族、魔人族、亜人族である。
その内の、人間族と魔人族は何百年もの間戦争を続けている。最近は力が均衡していたこともあり大きな戦争は起きなかったみたいだが。
魔人族は、人間族には数で及びないものの個人の持つ力は強大でその差に人間族は数で応戦していたらしい。
だが突然、魔人族が魔物を使役できるようになり、人間族のアドバンテージである数を上回ることになった。そもそも魔物を使役できても良くて一、二匹であったとのこと。
そのことから魔人族は人間族に再び宣戦布告をし、人間族は滅びの危機を迎えていた。
それから怜達を召喚したのはエヒトと名乗る人間族が崇めている神様らしい。
そのエヒトからこのままでは人間族は滅ぶと信託を受け召喚を行ったとのこと。
地球はこの世界より上位の世界らしく例外なく強力な力を持っている。
この話をしていた時のイシュタルは、恍惚とした表情を浮かべていた。
なお人間族の九割以上がエヒトを崇めている聖教教会の信徒らしい。
怜は本来ならありえないことが起きている現状について人だけではなく、この世界の歪さも感じ危機感を覚えていた。その時、突然立ち上がり猛然と抗議する声が響いた。
畑山先生だ。
「ふざけないでください! 結局この子達に戦争をさせようってことでしょう!
そんなの許しません!私達を早く帰してください! ご家族も心配しているはずです!あなた達がしていることは誘拐ですよ!」
ちなみに迫力はまったくと言っていいほどない。今年二十五歳になるにもかかわらず百五十センチ程の低身長に童顔、ボブカットの髪を跳ねさせながら生徒のためにいつも動いている姿はその一生懸命な姿と空回ってしまうギャップに庇護欲を掻き立たされるからだ。
その事で空気が幾らか和らいだが、次のイシュタルの言葉で凍りついた。
「お気持ちお察しします。しかし........あなた方の帰還は現状では不可能です」
「ふ、不可能ってどういうことですか!?喚べたのなら帰せるはずでしょう!?」
「あなた方を召喚したのはエヒト様ですが故、我々ではどうすることもできないのです。あなた方が帰還できるかどうかもエヒト様の御意思次第ということですな」
そう言ってイシュタルは無責任に説明した。
それを聞いた畑山先生は、脱力して椅子にもたれこんだ。それと同時に生徒たちも騒ぎ始めた。
そんな中でも怜は周りを深く警戒し、何時でも動けるように足を椅子から出していた。それ故に、イシュタルの目の奥にある侮蔑を感じ取れた。
未だにパニックに陥っている中、天之河が立ち上がりテーブルを叩いた。その音にクラスメイトはビクッとなり注目を集めた。
曰く、俺は戦う、滅亡の危機にあるのを知っていて放っておくことなんて出来ない。
曰く、救済さえすれば帰してもらえるかもしれない。
曰く、大きな力があるから人々を救い、皆が家に帰れるように、世界も皆も守ってみせる。
そんな、何も理解していない発言を聞いた怜は意見をぶつけた。
「お前は戦争の意味を理解しているのか?」
その発言に天之河は力強く頷いた。
「いいや、理解していない。しようともしていない。戦争をするということは一重に人を殺める覚悟を持つということだ。」
「なっ!? 殺さなくても済む方法があるはずだ!」
「断言出来る。そんな方法はない。大多数の人間を救うとお前は豪語した。こと戦争において救うということは他の誰かを殺すということだ。」
「そんなわけないだろう! 皆、安心してくれ!俺が誰も傷つけずに殺さずに皆を救ってみせる!」
怜が吐いた言葉に不安になっていたクラスメイトも、天之河の言葉を再び聞き、そんなことは忘れたと言わんばかりに、キラキラした目を天之河に向けていた。
その光景に怜は舌打ちをし黙り込んだ。
その後に渋々、八重樫も白崎も賛同し、結局、全員が戦争に参加することになってしまった。
怜はイシュタルがわざと正義感の強く、一番影響力がある天之河に魔人族の残酷さを強調するように話していたことに気づいていた。
怜は、要注意人物にイシュタルを加えたのだった。
ここまで読んでくださりありがとうございます!
感想お待ちしておりますm(_ _)m
原作とほぼ同じ内容なのは申し訳ないです
ヒロインって公表した方がいいですか?
-
YES
-
NO