その日、サキュバスは“人間”を知った   作:とある組織の生体兵器

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過去の話から始まります。


その日、サキュバスはRの過去を知った 前編

「ハァ…ハァ…!」

 

一人の、大学生くらいの女性が森の中を懸命に走っている。(中国語は全面的に省きます。排除します。)

 

『こちら本部。そっちの状況は?』

 

「最悪よ!!味方部隊は私以外全て全滅!蟲の餌になっていたり、慰み者になってるわ!」

 

『耐えてくれ。今日本に、ある組織に所属する、専門家ではないが二人に救援を求めた。少し時間がかかるかもしれないが来るそうだ。』

 

「そんなの当てになるわけないじゃない!」

 

……一昨日くらいからお腹がずっと痛くて走れないのに…!

 

そんな通信を走りながらしていると…。

 

ヴゥゥゥゥン!!

 

「来た…!」

 

沢山の人並みの大きさのアブが追ってくる。

 

「ひぃぃ!」

 

必死に逃げているが、腹痛に気を取られた途端捕まってしまった。そして、衣服が破られる。

 

「や、やめ…。」

 

覚悟をした途端…

 

バシュシュシュシュ…!

 

スパァァァァァァァン!!

 

蟲たちは頭を狙撃されたり、頭部を真っ二つにされた。

 

「ぁ…ぅ…。」

 

女性は意味がわからない。分かったのは目の前に立つ、狼のお面をした女性一人だ。

 

『…こちらD。狙撃完了。敵感知続行する。』

 

「こちらC。了解した。目視、近くに敵なし。数38。終わり。」

 

『了解。終わり。』

 

通信を切り、狼のお面を被った女性が、こちらを向いてしゃがみ込んで同じ高さの目線になった。

 

ジッ…

 

「…?」

 

ビュッ!!

 

しばらく見られた後、次の瞬間拳が目の前に迫り…。

 

「…?」

 

しかし、痛みも何もない。

 

「…やっぱり…。脳に寄生する線虫が潜り込んでた…。」

 

その女性の握っている手には、線虫がウネウネ蠢いていた。中々の大きさだ。

 

「貴女の耳から少し出ていたから…。こいつに寄生され続けると、脳みそが麻痺して元の身体じゃいられなくなる。もっとタチが悪いと、寄生された瞬間にイジられる…。組織の医療機関で正常に戻ることが出来るけど…。…貴女、大丈夫?」

 

「……。」

 

コクリ

 

「立てる?」

 

「……。」

 

フルフル

 

「無理もないよね。危うく初めてを奪われそうになったんだから…。じゃ、これ被って、背中に乗って。」

 

Cが毛布を渡して、背中を向けてしゃがみ込む。

 

「通信。」

 

『了解。通信。』

 

「知らされた状況の通り、女性を保護。一度支部に預け、依頼を達成する。」

 

『了解。』

 

「援護必要。北東に移動。敵感知続行せよ。」

 

『了解。』

 

「戦闘不能。出来ればこっちに来て護衛を頼みたい。終わり。」

 

『了解。終わり。』

 

短い通信をした後、Cは一先ず周りを警戒しながら動かない。

 

「…色々聞きたいことがあるけど…。」

 

「?」

 

「仲間はどうしたの?」

 

「…皆んな…。男はその場で食べられたり、肉団子にされて…。女は連れて行かれた…。その場で慰み者にされたりした…。その人たちも奥へ…。」

 

「…そう…。辛い体験だよね…。」

 

「うん…。」

 

女性…のちのRがCを見た。同じくらいの大きさで、同い年か年下か…。顔はお面で分からない。

 

「…怖くないの…?」

 

「…これ以上の経験をしているからね…。感覚が麻痺しちゃって…。染まりすぎちゃったんだと思う。それに、頼れる彼氏もいるし。」

 

「誰が彼氏だ。お前には本物の彼氏がいるだろ。多分。誤解されるような言い方はやめろ。」

 

いつの間にか、蜂のお面をした男がいた。こちらも、同い年くらいの男だ。

 

「あいっかわらず、隠語を理解できないようだね。こういう仕事のパートナーのことを彼氏彼女の関係って言うの。」

 

「言わん。」

 

「ほら、ファンタジーの冒険メンバーも、パーティをしないのに、『パーティー』って言うでしょ?」

 

「…まあな。」

 

「冒険のことを『デート』って言う人もいるし。」

 

「…いるな。」

 

「だから、こっちもアレンジしてみたってわけ。」

 

「なるほど。」

 

蜂のお面をした男が納得してしまった。

 

「まぁ、そんな冗談は置いておいて…。しっかり護衛頼むよ?」

 

「冗談だったのか…。任せろ。護衛はな。」

 

そして、一行は歩き出す。その途端…。

 

「うわっ…。なんかたくさん来た…。」

 

「気持ちが悪いな。」

 

蜂やら蝿やら…とにかく、飛虫が沢山来て、ハンターのように狙っている。

 

「援護、本当に大丈夫?」

 

「…矢が尽きたらすまん。」

 

「明らかな人選ミス…。」

 

「……。」

 

蜂のお面をした者は、どこからかボウガンを取り出した。

 

「強度はどれくらいだ?」

 

「私の鋼線によると…。強度7ってところかしら?」

 

「中々だな…。アブでそれなら、蜂は8か。蜂だけに。」

 

「つまんな。」

 

「……。」

 

軽口を叩き合う二人。後のRは、逆に震えている。ここでやられてしまうのではないかと…。

 

「まぁ、強度8なら連射可能か。」

 

「スピードは?」

 

「50本/sってところか。2秒あれば終わる。」

 

「私は3秒だと思う。賭ける?」

 

「いいとも。ジュース一本な。」

 

蜂のお面を被ったものがボウガンを構えるのと同時に、蠅たちがくる。

 

バギュギュギュギュギュギュギュギュ!!!

 

何か、ボウガンにしては鈍すぎる音がした。そして…。

 

「…チッ。」

 

「2.002秒。私の勝ち。」

 

「…そうか…。」

 

二人はそんな呑気なことを言う。まぁ目の前に、今いた全ての蟲の頭に突き刺さったままのボウガンの矢を見たら呑気にもなるだろう。粉砕している蟲もいた。

 

「矢の回収はどうする?回収している最中に来そうだけど…。」

 

「…諦める。支部に戻ればいくらでも貸すだろうな。」

 


 

「「「……。」」」

 

支部は巨大な蟲たちによる襲撃で壊れていた。

 

「…この近くのはずだが…。」

 

「いやいや…。現実逃避しないで。これが支部…。…だったものだから。」

 

Cは一先ず崩れている基地の中に入り、食料や水、通信機を探す。キッチンのような場所であり、所々崩れている。

 

「建物を住処にする蟲もいるから気をつけないと…。ご飯とかたかられてないといいな…。……。」

 

Cが動かなくなる。そして…。

 

「?」

 

Cが右腕を上げて、何かを握った。

 

ズビシャァァァ!!

 

「!」

 

「ギュァェェェェェ!!」

 

「!?」

 

思い切り振り下ろした途端、後ろからバラバラになったデカいゴキブリの体が転がってきた。

 

「…これだから嫌なの…。蟲型モンスターは…。」

 

そして、Cがまだ少し動いている蟲の体に手を突っ込んだ。黄色い体液が吹き出し、Cは露骨に嫌な顔をする。そして出したのが…。

 

ズリュリ…

 

「コイツの胃…。缶詰とかは消化されてないと思うし…。」

 

Cが近くの瓦礫でその胃袋を割く。

 

「…缶詰はあったけど…。貴女は見ちゃダメ。」

 

Cがその胃袋の内側を隠して、缶詰を置く。

 

「…人…?」

 

「…うん。」

 

Cが缶詰を全て取り出した後、その蟲の頭を瓦礫で叩き潰す。

 

「燃やしたら、臭いで仲間が集まってきちゃうからね…。」

 

「…?」

 

そこで、Rは初めて気付く。

 

「…もしかして…経験済み…?」

 

手慣れた仕草、詳しすぎる情報、体験したような言葉だ。気づかない方がおかしいが、Rは初めてで、しかも今までのショックで動転していたのだ。

 

「…前…つまり、2年前も、中国は生体兵器問題でやらかしているし…。その残党が日本に来てね…。まぁ、民間人が何人も犠牲になったけど、仇はとった。中国側にも大きな被害が出て、もう懲りたと思ったんだけど…。その時も貴女みたいな人はいた。中国は倒しきれなくて貴女たちみたいな部隊は完全に全滅。その時も派遣された。今回は貴女だけでも何もなく、生きてくれていて良かった…。」

 

Cが言う。

 

「ところで、どこに住んでるの?」

 

Cがお面を取り、朗らかな、優しそうな表情をして聞く。警戒心を解かせるためだろう。やはり、同い年のようだ。

 

「私は日本の…んー…。田舎かな。山や森が遊び場だった。」

 

「そう…。」

 

「でも、良いところだよ?都会よりずっといいと思う、誇れる場所。」

 

「そうなんだ。」

 

Cが笑顔になり、Rも気が緩む。

 

「私も…田舎かな。こっちも、誇れる場所よ。」

 

「ふふふ。一緒だね。」

 

笑う二人。

 

「実は、この森の近くよ。」

 

Rがその雰囲気のまま言ったが…。

 

「…貴女、この事件が起きる前…5日前カントロ社の『ICT』って言う薬の被験者のバイトしてないわよね?」

 

Cが先程の朗らかな顔から一変、真剣な表情に変わった。

 

「え…?」

 

「してないわよね?」

 

Cが真剣な表情で迫ってくる。

 

「し、してないわよ…。」

 

Rが嘘をついた。

 

「良かった…。あの時のバイト高額で、被験者が多かったからもしやと思ったんだけど…。違うなら本当に良かった…。」

 

「…ど、どうして…?」

 

「…この事件、それが原因で…。」

 

「…え…。」

 

「その薬、実はこの蟲たちの卵が入っていて…。そのカントロ社は裏政府の会社でさ。こういう、田舎の人たちをターゲットにした卑劣な行為をしたの。高額なお金に、欲に目がくらんで、明らかにおかしいと思えない人に、生体兵器の実験をさせたわけ…。成功すれば、その人たちの体内に蟲を住まわせて、共存関係にあたらせて、戦争でその人を殺した途端に蟲が食い破って出てきて混乱させる兵器にさせるつもりだったの。でも、この通り失敗。データを見たけど、アレじゃ絶対に生き残れない。育った途端に生きている人の腹から蟲が食い破って出てきちゃう。…貴女の前で、なるべく言いたくないけど…。…中国政府は、そこまでの犠牲を出してまで、戦争をしたいのかなって…。世界を支配したいのかなって思う…。だっておかしいじゃん!国民あっての国なのに、その国民を守るどころか、騙して実験体にするなんて…。」

 

Rは国辱だとわかりつつも、同意するしかなかった。

 

「……。ごめんなさい。貴女の国の侮辱を…。」

 

「ううん。その通りだと思う…。…あと…。」

 

「?」

 

「その蟲の卵って、いつくらいで羽化しちゃうの…?」

 

「え?えっと…。早いうちはもうその日から。遅くて…今日くらいかな?」

 

「……。」

 

Rの顔が真っ青になる。

 

「…もしかして…。」

 

「……。」

 

コクリ

 

「何で早く言わないの!?D!通信!」

 

『了解。通…。』

 

「今すぐ来て!緊急手術を行う!!輸血袋と今いる部屋近辺の警戒!!」

 

『手術!?了解!』

 

「来たぞ!」

 

「よし!早いね!」

 

「???」

 

Dが通信を終えた途端に部屋に入ってきた。Rは迫力で動けない。

 

「どういう状況だ!?」

 

「体内に卵、もしくは羽化したて!もしかしたら育っているけど、まだ食い破られていないだけかも!」

 

「緊急だな!火を焚く!そっちは準備!輸血袋はここに置いておく!」

 

「了解!こっちは貴女の意思の準備!そして、気力!」

 

「え?え?え?」

 

Rは言っている意味がわからず、困った顔をする。

 

「どこか、身体に変化はある!?」

 

「えっと…。」

 

「変化はあるかって聞いてるの!?」

 

「お、お腹が一昨日から痛くて…。」

 

「どこらへん!?」

 

「腸のところ…。」

 

「良かった…!まだこれくらいで済んで…!」

 

Cが少し安堵した次の瞬間…。

 

「そこに横になって!」

 

「え?」

 

「早く!!」

 

「は、はい!」

 

Rが仰向けになり、CがRの手の位置などを動かす。手をあげられ、足は開いた状態にさせられた。

 

「貴女に覚悟を問う!生きたい!?」

 

「え…。」

 

「生きたいかどうか聞いてるの!?この先も生きたい!?死にたくない!?」

 

「い、生きたい!死にたくない!」

 

「分かったわ!なら、このまま緊急手術を行う!麻酔なしの腹部の切開をするから!死ぬほど痛いから、気をしっかり持って!」

 

「ええ!?嘘!?」

 

「嘘じゃない!緊急事態だから!」

 

Cが背中のポーチからメスや手術の道具を取り出す。

 

(冗談じゃない…!逃げなくちゃ…!)

 

Rが思い、気づかれないように逃げようとしたが…。

 

「う、動かない…!?」

 

身体がその位置のまま動かないのだ。指と頭しか動けない。

 

「逃げないように、固定した。生きたくないと答えていたら、固定しなかった。」

 

「うそ…。」

 

Cの鋼線で固定されてしまったのだ。

 

「火が焚けた!」

 

「遅い!」

 

「すまん!」

 

Dが焼けた石を持ってきた。それと、薪と一緒に火そのものも。

 

「血液型は?」

 

「ちょ、ちょ!ホントにやるつもり!?麻酔なしで!?」

 

「時間がない!早く答えて!」

 

「お、O型…。」

 

「なら!抗体反応はないね!輸血袋をそれと繋いで!」

 

「わかった!」

 

Dがテキパキと助手のように働き、Cはメスや道具を熱している。

 

「傷口が残ったらごめんね…。」

 

「そ、それより、ホントにやるの!?ねぇ!?」

 

「やる!ここから脱出した後じゃ助からないかもしれない!」

 

Rは泣きそうな顔になる。今麻酔なしで切開されそうなのだ。瞳の奥は恐怖に変わった。

 

「これを噛め。…一応言っておくが、使用済みではない。」

 

Dがマウスピースを無理矢理はめる。

 

「…辛いだろうが、我慢しろ。助かる唯一の方法だ。」

 

「んー!んーー!」

 

「やるよ…!腹部切開用意!」

 

「OK。」

 

「んーーーー!!!」

 

「開始!!!」

 

ズパ…




C登場。
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