その日、サキュバスは“人間”を知った 作:とある組織の生体兵器
「「……。」」
帰りだが、2人はまだ啀み合い、顔を合わせない。
「…2人とも、そろそろ仲直りしたら?」
「「断る。」」
「もう…。」
Cは全くと言う顔だ。
「…そうだ!貴方も、私たちの組織に入らない?」
「はぁ!?」
Cが言い出し、Dが驚く。
「えっと…。ごめんなさい。流石に、私はそんなに強くないし…。」
「コイツに務まるわけないだろう。あんな、弱小の蟲に手こずるような奴だ。足を引っ張って、俺たちの身を危険に晒すだけだ。」
「ム…。」
Dが嫌味ったらしく言い、レイがムッとする。
「…やる。」
「は?」
「そう。」
「ちょっと待て。勝手にスカウトなど、組織にバレたら俺が始末書を書かされるんだ!ふざけるな!お前、俺が監視役と言うことを最近忘れているだろ!」
「ようこそ。日本の組織へ。」
「聞け!」
Dが言うが、Cとレイは知らん顔だ。
「んー…。でも、やっぱり正直言って、貴女じゃ少し弱いかな…。」
「やっぱり…。」
「でも、大丈夫。組織で鍛え直せば私たちのように強くなれるから。」
Cは笑顔で言う。Dはギャーギャー言っているが、聞こえないフリだ。
「それに、彼が鍛えてくれるから。」
「「は?」」
レイとDは顔を見合わせる。そして、すぐにお互いにそっぽを向いた。
「レイ、貴女も私と同じ歳でしょ?そんな子供にならないで。Dは尚更。一緒にあの地獄を乗り越えたでしょう?…それとも、ストレスでも溜まってる?」
「溜まっているな…。特にお前の監視役や、家庭のことでな…。」
「…やっぱり、あのアルラウネが心を開かない?」
「今頃家の中を暴れ回って、後片付けが大変だ…。吸血鬼も一応止めているがな…。」
「何人目だっけ?」
「3人目だ…。」
「吸血鬼と、誰がいるの?」
「鬼だ…。吸血鬼が一番初めで、次に鬼。そして、最後にアルラウネだ…。」
「こっちは、2人くらいだけどね。」
「いきなり組織の改変だの…。全く、俺たちの気持ちを考えて欲しいよ…。」
「『○○○のD』だもんね。」
「その名を娘達の前で言うなよ…。」
「分かってるって。家庭崩壊だもんね。」
2人が話す。
「とにかく、レイを鍛えてあげて。」
「……。」
「お願い。」
「…分かった。今までのよしみだ。ただし、お前の監視役であるから、お前も来てもらうがな。」
「レイも、戻る部隊がないなら、Dの言うことをしっかり聞いて、強くなって組織の選抜試験を受けて。」
「…ん…。」
しかし、2人の間にはまだ壁がある。
「…これで上手くいくのかな…。」
…………
数年後
「ここは組織の管轄している地下40kmの場所だ。」
「地下40km…。」
Dがエレベーター内で案内して、レイが少しワクワクする。ちなみにアレから数年経っているため、レイは日本語をマスター。そして、選抜候補に選ばれるだけの実力になっている。Dもその時なんだかんだで口頭で指導をして、推薦してあげたのだ。
「人類が地下の最高深度に到達出来たのは12kmだ。表の記録では。つまり、裏の記録では我々の組織が初めてとなる。」
「そんなに深く…。でも、地表と変わらない…。」
「組織の技術力のおかげだ。本来なら、ここの温度は平均1000度を超える。人間など、骨しか残らん。重力も、人間がペシャンコになるほどだ。」
そして、エレベーターから降りる2人。
「え…?ここ…地下…?」
レイは驚いた。街があるのだ。しかも、空は明るく太陽のようなものまである。さらには雲まで流れているではないか。
「第二の日本。『地下日本国』だ。」
「…日本の技術、ここまであったなんて…。第二次世界大戦の時、中々落とせなかったわけね…。」
レイは早速街へ行くが…。
「あれ…?」
誰も、人のいる気配がない。どの店を覗いても、遊園地も、人がいない。
「人がいない…。」
「俺たちだけだ。」
「え?」
「貸し切った。」
「!」
レイは、ドミナントの言葉に心が躍る。街一つに自分たちしかいず、遊び放題だと思ったからだ。しかし…。
「…そこ、気をつけろ。」
「?」
Dがレイの足元を指さす。
「!?」
そこにあったのは、小型地雷だ。
「え…?どゆこと…?」
「忘れたか?鍛えると言ったはずだ。」
「?」
「ここは第三戦闘訓練場。俺くらいのライセンス持ちじゃないと貸切は無理だ。場所も気温も自由自在の場所だ。市街戦、湾岸戦、水中戦、湿地戦、砂漠戦、密林戦、山岳戦、雪中戦…。その他色々夜戦も有りだ。ステージによる妨害有りのな。市街戦なら地雷、密林戦なら毒生物、雪中なら雪崩…。などなどだ。しかも、一定時間を過ぎると戦闘場所が瞬時に変わる。臨機応変な対応や冷静さが必要になる。合格するには、俺たちナンバー持ちの腰に吊るしてある合格表を奪うことだ。」
Dが端的に説明する。
「…あの時より強くなったからって、油断するな。常識を捨てろ。ここじゃ通用しない。自衛隊やアメリカ軍が攻めて来ようが、全軍1日も持たないぞ。」
「…そんなに厳しいところなの…?」
レイは驚愕する。
「ここは最終試験で使われる場所だ。生存率0.18%の地獄だ。俺とCとGはクリアしている。ここで訓練を行う。…最終試験で死なないためにも。」
「……。」
レイが嫌な顔をした。
「それと、もう一つある。」
「?」
「合否は関係なく、必ず生きて帰れ。不合格になっても良い。無理なら断念しても良い。ギリギリを攻めるな。必ず死ぬ。だから、必ず生きて帰れ。」
Dが重く言った。すると…。
『緊急のお知らせです。』
アナウンスが鳴った。
『第三戦闘訓練場はただ今を持って、国の方針により立ち入り禁止区域となりました。Dと候補生はすぐに立ち退きなさい。』
「…だとさ。行くぞ。」
「え?う、うん…。」
Dが素直にエレベーターに乗り、レイが後を追う。そして、レイが何気なく振り向いたそこは密林に変わっていた。よくよく見ると地面が白骨だらけで白い蛇が賑わっていた。ギリギリを攻めた者の末路なのは見て明らかだった。
…………
「第四戦闘訓練場だ。」
「さっきとだいぶ違う…。」
Dが連れてきたのは、マシンがある場所だ。どちらかと言うと、先ほどの場所より全然生やさしいところだ。鍛える道具もあり、戦闘能力を図る場所もある場所だ。
「ここでは実技訓練をしない。機械が筋力やら戦闘力を全てを図る。」
「いいじゃん。」
「だが、ここでは経験を積めない。先程のところで、やっと最強と謳われる一角となる。」
「最強にならなくてもいいから…。この組織で活動できるくらいまででいいから…。」
「…分かった。」
Dが、その部屋の中のリングに上がった。
「レイ、まずは実戦だ。どのくらい強いのか知りたい。」
「…?良いの?私、あれから相当強くなってるわよ…?」
「まぁ、俺はどちらかと言うと後方支援型。近接格闘型では無いから、相当弱いぞ。武器なし肉弾戦は特にな。だが、手加減するな。本気で来ないとどれくらい近接戦が強いのか分からない。俺を一歩でも動かせば勝ちだ。」
「…分かった。」
レイがリングに上がり、構える。
……軽く小手調べ…。
「軽く小手調べなどと考えるなよ。本気で来ないと、手遅れになるぞ。」
「……。…分かった。」
レイがDを見る。隙だらけだ。
「フンッ!」
右ストレートに見せかけて、顔面を右足で蹴りに来た。それは見事に当たり、埃の煙が舞う。が。
「!?」
「…格闘があれから強くなったと聞いていたが、この程度か?シャレにならんぞ。」
片手で止めていた。Dは立っていた場所から1ミリも足が動いていない。
「へやっ!とう!えい!」
「……。」
様々な技を繰り出すが、どれも全く効かない。しばらくして…。
「…やめるか?」
「ハァ…ハァ…?」
「はっきりと言う。この数年、俺の口頭指導でこれなら素質はない。普通に働いた方が良い。この組織のお茶汲み係にもならない。」
「…!」
レイは歯を食いしばり…。
「戦ってもくれない貴方に言われたくない!」
Dの足を、今まで以上に素早く、重く蹴ろうとした。
ゴン!
何か鈍い音がした。
「……。」
Dがその蹴りを足で蹴り返したのだ。
「…っ!」
レイは悶絶しながら足を押さえて膝をつける。
「なら…。」
「?」
「戦って教えなさいよ…!何もしてくれないなら…!強くなれるわけないじゃない…!今まで以上に守れないじゃない…!」
「……。」
レイが俯きながら、痛みなのか知らないが涙声で言う。
「……。たしかに。それもそうだ。肉体で教えてすらいないのに、成長スピードが分かるわけがない。」
Dが納得した。そして…。
「頭を使え。発想が貧弱だ。俺は最初に、訓練を受けるときになんと言った?」
「なんと…?」
レイが思い出す。
(常識を捨てろ。)
レイが思い出した。
(なら、どうする…?相手は絶対に勝てない相手…。リングから動かすこともできない…。…なら…?…!)
レイが閃いた。
「なら!これは!」
「?」
レイが思いっきり重い攻撃をDに向かって繰り出す。
「学ばないか…。」
Dが軽く受け流そうとしたが…。
バッギャァァァァ!!
「「!?」」
直前のリングにクリーンヒットさせた。周りが崩れ、Dは動かざるを得ない。咄嗟に飛びのいた。
「私の勝ち!」
「…ほう。中々やるな。普通なら、ここにある道具を使って攻撃してくると思ったが…。」
「貴方相手だったら意味ないし、奪われたら更に不利になる。」
「…正解だ。」
Dが歩き、レイの前に来る。
ナデナデ…
「よく出来た。」
「?」
レイの頭をDが撫でる。小学生以来の久々に撫でられた感触が心地よい。誰だって、師に褒められれば嬉しいだろう。
ピシッ…
「…だが、問題発生だ。」
「?」
ピシシ…
「先程の攻撃が強過ぎたようだな。」
「え!?」
バキャァァァ!!!
「きゃぁぁぁぁぁ…!!」
「……。」
2人は大きな穴に飲み込まれた。
うーん…
第三訓練場…説明はDの言う通り。様々な戦闘場所に変わり、臨機応変な対応が求められる。事前にどこに変わるかなどの告知も、本当ならどんなステージ妨害があるかも分からない。1秒以内に変わり、真下が溶岩に変わり、落ちるのもザラ。ここに入隊する人数は世界中の人間の中でも僅か一握り(何十億分の1)。一回の試験で10人程度しかやらない。0.18%とは、その一握りの中での合格率であり、世界中を含めると限りなく0に近いパーセンテージとなる。