その日、サキュバスは“人間”を知った   作:とある組織の生体兵器

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その日、サキュバスはRの過去を知った 中編2

「「……。」」

 

帰りだが、2人はまだ啀み合い、顔を合わせない。

 

「…2人とも、そろそろ仲直りしたら?」

 

「「断る。」」

 

「もう…。」

 

Cは全くと言う顔だ。

 

「…そうだ!貴方も、私たちの組織に入らない?」

 

「はぁ!?」

 

Cが言い出し、Dが驚く。

 

「えっと…。ごめんなさい。流石に、私はそんなに強くないし…。」

 

「コイツに務まるわけないだろう。あんな、弱小の蟲に手こずるような奴だ。足を引っ張って、俺たちの身を危険に晒すだけだ。」

 

「ム…。」

 

Dが嫌味ったらしく言い、レイがムッとする。

 

「…やる。」

 

「は?」

 

「そう。」

 

「ちょっと待て。勝手にスカウトなど、組織にバレたら俺が始末書を書かされるんだ!ふざけるな!お前、俺が監視役と言うことを最近忘れているだろ!」

 

「ようこそ。日本の組織へ。」

 

「聞け!」

 

Dが言うが、Cとレイは知らん顔だ。

 

「んー…。でも、やっぱり正直言って、貴女じゃ少し弱いかな…。」

 

「やっぱり…。」

 

「でも、大丈夫。組織で鍛え直せば私たちのように強くなれるから。」

 

Cは笑顔で言う。Dはギャーギャー言っているが、聞こえないフリだ。

 

「それに、彼が鍛えてくれるから。」

 

「「は?」」

 

レイとDは顔を見合わせる。そして、すぐにお互いにそっぽを向いた。

 

「レイ、貴女も私と同じ歳でしょ?そんな子供にならないで。Dは尚更。一緒にあの地獄を乗り越えたでしょう?…それとも、ストレスでも溜まってる?」

 

「溜まっているな…。特にお前の監視役や、家庭のことでな…。」

 

「…やっぱり、あのアルラウネが心を開かない?」

 

「今頃家の中を暴れ回って、後片付けが大変だ…。吸血鬼も一応止めているがな…。」

 

「何人目だっけ?」

 

「3人目だ…。」

 

「吸血鬼と、誰がいるの?」

 

「鬼だ…。吸血鬼が一番初めで、次に鬼。そして、最後にアルラウネだ…。」

 

「こっちは、2人くらいだけどね。」

 

「いきなり組織の改変だの…。全く、俺たちの気持ちを考えて欲しいよ…。」

 

「『○○○のD』だもんね。」

 

「その名を娘達の前で言うなよ…。」

 

「分かってるって。家庭崩壊だもんね。」

 

2人が話す。

 

「とにかく、レイを鍛えてあげて。」

 

「……。」

 

「お願い。」

 

「…分かった。今までのよしみだ。ただし、お前の監視役であるから、お前も来てもらうがな。」

 

「レイも、戻る部隊がないなら、Dの言うことをしっかり聞いて、強くなって組織の選抜試験を受けて。」

 

「…ん…。」

 

しかし、2人の間にはまだ壁がある。

 

「…これで上手くいくのかな…。」

 

…………

数年後

 

「ここは組織の管轄している地下40kmの場所だ。」

 

「地下40km…。」

 

Dがエレベーター内で案内して、レイが少しワクワクする。ちなみにアレから数年経っているため、レイは日本語をマスター。そして、選抜候補に選ばれるだけの実力になっている。Dもその時なんだかんだで口頭で指導をして、推薦してあげたのだ。

 

「人類が地下の最高深度に到達出来たのは12kmだ。表の記録では。つまり、裏の記録では我々の組織が初めてとなる。」

 

「そんなに深く…。でも、地表と変わらない…。」

 

「組織の技術力のおかげだ。本来なら、ここの温度は平均1000度を超える。人間など、骨しか残らん。重力も、人間がペシャンコになるほどだ。」

 

そして、エレベーターから降りる2人。

 

「え…?ここ…地下…?」

 

レイは驚いた。街があるのだ。しかも、空は明るく太陽のようなものまである。さらには雲まで流れているではないか。

 

「第二の日本。『地下日本国』だ。」

 

「…日本の技術、ここまであったなんて…。第二次世界大戦の時、中々落とせなかったわけね…。」

 

レイは早速街へ行くが…。

 

「あれ…?」

 

誰も、人のいる気配がない。どの店を覗いても、遊園地も、人がいない。

 

「人がいない…。」

 

「俺たちだけだ。」

 

「え?」

 

「貸し切った。」

 

「!」

 

レイは、ドミナントの言葉に心が躍る。街一つに自分たちしかいず、遊び放題だと思ったからだ。しかし…。

 

「…そこ、気をつけろ。」

 

「?」

 

Dがレイの足元を指さす。

 

「!?」

 

そこにあったのは、小型地雷だ。

 

「え…?どゆこと…?」

 

「忘れたか?鍛えると言ったはずだ。」

 

「?」

 

「ここは第三戦闘訓練場。俺くらいのライセンス持ちじゃないと貸切は無理だ。場所も気温も自由自在の場所だ。市街戦、湾岸戦、水中戦、湿地戦、砂漠戦、密林戦、山岳戦、雪中戦…。その他色々夜戦も有りだ。ステージによる妨害有りのな。市街戦なら地雷、密林戦なら毒生物、雪中なら雪崩…。などなどだ。しかも、一定時間を過ぎると戦闘場所が瞬時に変わる。臨機応変な対応や冷静さが必要になる。合格するには、俺たちナンバー持ちの腰に吊るしてある合格表を奪うことだ。」

 

Dが端的に説明する。

 

「…あの時より強くなったからって、油断するな。常識を捨てろ。ここじゃ通用しない。自衛隊やアメリカ軍が攻めて来ようが、全軍1日も持たないぞ。」

 

「…そんなに厳しいところなの…?」

 

レイは驚愕する。

 

「ここは最終試験で使われる場所だ。生存率0.18%の地獄だ。俺とCとGはクリアしている。ここで訓練を行う。…最終試験で死なないためにも。」

 

「……。」

 

レイが嫌な顔をした。

 

「それと、もう一つある。」

 

「?」

 

「合否は関係なく、必ず生きて帰れ。不合格になっても良い。無理なら断念しても良い。ギリギリを攻めるな。必ず死ぬ。だから、必ず生きて帰れ。」

 

Dが重く言った。すると…。

 

『緊急のお知らせです。』

 

アナウンスが鳴った。

 

『第三戦闘訓練場はただ今を持って、国の方針により立ち入り禁止区域となりました。Dと候補生はすぐに立ち退きなさい。』

 

「…だとさ。行くぞ。」

 

「え?う、うん…。」

 

Dが素直にエレベーターに乗り、レイが後を追う。そして、レイが何気なく振り向いたそこは密林に変わっていた。よくよく見ると地面が白骨だらけで白い蛇が賑わっていた。ギリギリを攻めた者の末路なのは見て明らかだった。

 

…………

 

「第四戦闘訓練場だ。」

 

「さっきとだいぶ違う…。」

 

Dが連れてきたのは、マシンがある場所だ。どちらかと言うと、先ほどの場所より全然生やさしいところだ。鍛える道具もあり、戦闘能力を図る場所もある場所だ。

 

「ここでは実技訓練をしない。機械が筋力やら戦闘力を全てを図る。」

 

「いいじゃん。」

 

「だが、ここでは経験を積めない。先程のところで、やっと最強と謳われる一角となる。」

 

「最強にならなくてもいいから…。この組織で活動できるくらいまででいいから…。」

 

「…分かった。」

 

Dが、その部屋の中のリングに上がった。

 

「レイ、まずは実戦だ。どのくらい強いのか知りたい。」

 

「…?良いの?私、あれから相当強くなってるわよ…?」

 

「まぁ、俺はどちらかと言うと後方支援型。近接格闘型では無いから、相当弱いぞ。武器なし肉弾戦は特にな。だが、手加減するな。本気で来ないとどれくらい近接戦が強いのか分からない。俺を一歩でも動かせば勝ちだ。」

 

「…分かった。」

 

レイがリングに上がり、構える。

 

……軽く小手調べ…。

 

「軽く小手調べなどと考えるなよ。本気で来ないと、手遅れになるぞ。」

 

「……。…分かった。」

 

レイがDを見る。隙だらけだ。

 

「フンッ!」

 

右ストレートに見せかけて、顔面を右足で蹴りに来た。それは見事に当たり、埃の煙が舞う。が。

 

「!?」

 

「…格闘があれから強くなったと聞いていたが、この程度か?シャレにならんぞ。」

 

片手で止めていた。Dは立っていた場所から1ミリも足が動いていない。

 

「へやっ!とう!えい!」

 

「……。」

 

様々な技を繰り出すが、どれも全く効かない。しばらくして…。

 

「…やめるか?」

 

「ハァ…ハァ…?」

 

「はっきりと言う。この数年、俺の口頭指導でこれなら素質はない。普通に働いた方が良い。この組織のお茶汲み係にもならない。」

 

「…!」

 

レイは歯を食いしばり…。

 

「戦ってもくれない貴方に言われたくない!」

 

Dの足を、今まで以上に素早く、重く蹴ろうとした。

 

ゴン!

 

何か鈍い音がした。

 

「……。」

 

Dがその蹴りを足で蹴り返したのだ。

 

「…っ!」

 

レイは悶絶しながら足を押さえて膝をつける。

 

「なら…。」

 

「?」

 

「戦って教えなさいよ…!何もしてくれないなら…!強くなれるわけないじゃない…!今まで以上に守れないじゃない…!」

 

「……。」

 

レイが俯きながら、痛みなのか知らないが涙声で言う。

 

「……。たしかに。それもそうだ。肉体で教えてすらいないのに、成長スピードが分かるわけがない。」

 

Dが納得した。そして…。

 

「頭を使え。発想が貧弱だ。俺は最初に、訓練を受けるときになんと言った?」

 

「なんと…?」

 

レイが思い出す。

 

(常識を捨てろ。)

 

レイが思い出した。

 

(なら、どうする…?相手は絶対に勝てない相手…。リングから動かすこともできない…。…なら…?…!)

 

レイが閃いた。

 

「なら!これは!」

 

「?」

 

レイが思いっきり重い攻撃をDに向かって繰り出す。

 

「学ばないか…。」

 

Dが軽く受け流そうとしたが…。

 

バッギャァァァァ!!

 

「「!?」」

 

直前のリングにクリーンヒットさせた。周りが崩れ、Dは動かざるを得ない。咄嗟に飛びのいた。

 

「私の勝ち!」

 

「…ほう。中々やるな。普通なら、ここにある道具を使って攻撃してくると思ったが…。」

 

「貴方相手だったら意味ないし、奪われたら更に不利になる。」

 

「…正解だ。」

 

Dが歩き、レイの前に来る。

 

ナデナデ…

 

「よく出来た。」

 

「?」

 

レイの頭をDが撫でる。小学生以来の久々に撫でられた感触が心地よい。誰だって、師に褒められれば嬉しいだろう。

 

ピシッ…

 

「…だが、問題発生だ。」

 

「?」

 

ピシシ…

 

「先程の攻撃が強過ぎたようだな。」

 

「え!?」

 

バキャァァァ!!!

 

「きゃぁぁぁぁぁ…!!」

 

「……。」

 

2人は大きな穴に飲み込まれた。




うーん…

第三訓練場…説明はDの言う通り。様々な戦闘場所に変わり、臨機応変な対応が求められる。事前にどこに変わるかなどの告知も、本当ならどんなステージ妨害があるかも分からない。1秒以内に変わり、真下が溶岩に変わり、落ちるのもザラ。ここに入隊する人数は世界中の人間の中でも僅か一握り(何十億分の1)。一回の試験で10人程度しかやらない。0.18%とは、その一握りの中での合格率であり、世界中を含めると限りなく0に近いパーセンテージとなる。
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