その日、サキュバスは“人間”を知った   作:とある組織の生体兵器

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いき〜なり〜。


その日、サキュバスは姉妹と朝を過ごした

「…ん…?」

 

サキュバスが起床した。ニワトリが鳴くには遅すぎて、人が起きるには早すぎる時間。

 

ガチャ…

 

「おはよう。早いね。サキュバスちゃん。」

 

「おはよう…狼お姉さん…。…もう支度してるの?」

 

狼女はもう朝食の支度をしていた。

 

「今日は日曜日も明けて、月曜日だからね。みんな学校や高校、大学や仕事があるから、お弁当とか作らなくちゃ。」

 

「…手伝う。」

 

「ほんと?ありがとう。」

 

サキュバスは狼女の苦労を想い、手伝ってあげる。

 

ガチャ…

 

「おはよう。二人とも早いわね。ふふふ。」

 

スーツを着た鬼が部屋から出てきた。洗面所で顔を洗ったり、歯を磨いいて、化粧も薄くしている。…あまりスーツ姿は似合っていないが…

 

「はい。お弁当。」

 

「ありがとう。ふふふ。行ってきます。」

 

鬼はそれをカバンに入れて仕事へ行った。

 

「おはよう〜…。鬼お姉さんはもう行ったんだ〜…。」

 

「うん。巨人お姉さんも東京の大学だからもう行かないと遅刻しちゃうよ?これ、お弁当。」

 

「ん〜…。ありがとう〜…。」

 

巨人もリュックにお弁当を入れて、電車の定期を確認して玄関へ行ったが…。

 

「巨人お姉さん!髪とかして顔を洗って!」

 

「ん〜…?」

 

巨人が寝ぼけている。そして狼女が髪をとかして、顔を洗わした。そしてやっと、巨人が行った。

 

「あとは、少し時間あるけどお弁当全部使っちゃおっかな〜。どうしようかな〜…。」

 

狼女は手伝ってもらいたそうにサキュバスをチラチラ見ている。

 

「分かった。手伝う。」

 

「嬉しいなぁ〜。」

 

狼女とサキュバスが手分けをして作っている。サキュバスのやるべきことはお弁当にご飯を入れることと、水筒を作ることだ。

 

「二人分だけでいいから。あとは学校で給食が出るし。」

 

「んー。」

 

そうしているうちに、全てお弁当が作られた。途端…。

 

ジリリリリリ…!

 

部屋から目覚まし時計がなる。7時だ。

 

ガチャ…

 

「おはよ…。」

 

「おはよー!」

 

「スリープモード解除。おはようございます。」

 

出て来たのは三人だけ。

 

「アルラウネお姉さんと、サンドガールちゃんのお弁当出来てるから。ご飯食べたらそれ持って高校行って?機人ちゃんは、朝ごはん食べてから中学校。」

 

「「「はーい。」」」

 

狼女はパタパタと急いでいる。誰よりも早起きをして朝食を作り、お弁当を準備してすぐに洗濯物を干すために移動している。

 

「通るよ。」

 

「はい。」

 

洗濯物カゴをもった狼女がベランダへ行き、窓を開ける。

 

「いい風…。」

 

開けた途端に風が吹き、部屋の中が風に包まれた。ういういしく感じる。狼女は急いで洗濯バサミに洗濯物を吊るしてゆく。

 

「朝から大変…。」

 

「本当…。」

 

「そうだよ。狼の姉貴は学校とかに行かない代わりに全般の家事をやってくれてるの。」

 

「お父様の分までやってくださっています。狼女さんは働き者です。」

 

アルラウネ、サンドガール、機械人が口々に言う。

 

「ほら、喋ってないでたべないと遅刻するよ?」

 

「あ、はい。」

 

皆食べて、食器を下げる。その間に狼女は部屋に行き…。

 

「吸血鬼ちゃん!起きて!今日こそ学校行って!」

 

「んー…まだ眠い…。」

 

「眠くてもダメ!先生から電話がかかってきたんだから!」

 

「んー…。」

 

布団から潜って出てこない吸血鬼。

 

「学校行きたくない…。」

 

「行きたくなくても行かなきゃダメ!」

 

「んー…。」

 

吸血鬼が布団から出てこない。何をしてもダメだと悟り、落ち着いて話しかけた。

 

「どうして、学校行きたくないの?」

 

「…勉強やだ…。」

 

「それは、人間だって嫌だよ?でも、一生懸命やってるじゃん。人間より劣っていいの?」

 

「…やだ…。」

 

「だよね?なら、行ったほうが良いと思うよ?」

 

「だって…。…本当は、みんな私に声かけてくるからやだ…。」

 

「いじめられてるの?」

 

「そんなんじゃなくて…。だって、何かあるたびに呼んだり、声かけてくるんだもん…。」

 

「どんな?」

 

「たとえば…。体育館裏に放課後来てくれとか…。私、日向に行くの嫌で、すぐ家に帰りたいのに…。まぁ、行ったことないけど…。」

 

「それはひどいね。私も、家事で疲れているのに不登校の件で学校行かなくちゃいけなかった時もあるし。」

 

「…あとは、沢山の人から…主に男子からお土産を貰ったり…。お返しにどこか行かなくちゃいけないじゃん…。夜なんて、どこでもお店閉まってるし…。コンビニなんかじゃ売ってないし…。」

 

「難しいよね。私も、学校に呼び出された時に手土産を忙しい家事の途中でも買いに行かなくちゃいけないし。」

 

「……。女子会とか誘われても、皆んなと話題合わないし何百年も生きてきた私には退屈なだけだし…。愛想笑いしなくちゃいけないし…。」

 

「愛想笑いは疲れるよね。不登校で学校に呼び出されて、愛想笑いして私が悪くもないのに謝らなくちゃいけないし。」

 

「……。なんか、チクチク嫌味言ってる?」

 

「ううん。共感してる。」

 

「…とにかくやだ…。」

 

「ダメ。いかないと、夜ご飯抜きだよ?」

 

「えぇー…。それはいやぁ…。」

 

「なら、さっさと起きて学校。」

 

狼女は他の姉妹たちの食べた食器を片付ける。

 

「…学校へ行きましょう。」

 

「機人姉さん…。姉さんは、私のような苦労してないし…。」

 

「…最初は、同じ悩みを抱えていました。」

 

「え?」

 

「ですが、ある日気付いたんです。」

 

「何を…?」

 

「誰からに対しても無視し続ければ、いずれは誰からにも声をかけられることはありません。」

 

「…確かにそう思うけど…。友達とかいんじゃん…。」

 

「?。本当に面倒なら、友達を辞めても別に何も困ることはないと思いますが。」

 

「それはそうだけど…。…やっぱ、機人姉さんは思考が機械的でなんかやだ…。」

 

「機械ですので。」

 

機人と吸血鬼が話す。

 

「…それが感情というものですか?」

 

「…まぁ…多分、そうなのかもしれない…。多分…。」

 

「…面倒な感情ですね。」

 

「面倒…?」

 

「それがなければ、苦しんだり悲しんだり悩んだり迷ったり怒ったりしないと思いますがね。」

 

「…でも、多分…。それが良いんだと思う…。」

 

「何故ですか?」

 

「だって感情がなければ、楽しんだり嬉しんだり喜んだり愛したり感動したりしないと思うし。」

 

「…なるほどです。」

 

機械人が何やら納得する。

 

「これでまた、思考プログラムが一歩進化しました。ですが、人間の感情を知れるのはまだまだ先ですね。」

 

「…機人姉さん…。そういうところだよ…。」

 

二人で話し合っていると…。

 

「吸血鬼ちゃん…。」

 

狼女に見つかる。しかし、声色が変だ…。

 

「ねぇ…。いい加減…。行こ…?」

 

「う、うん!わかった!起きるし行く!」

 

包丁を持ち、目に光が無い状態で笑顔のまま言われれば、吸血鬼も飛び起きるだろう。そしてすぐに制服に着替え、機人と共に学校へ走って行った。

 

「ふぅ…。やっと行った…。」

 

狼女が包丁をしまう。

 

「布団干して、掃除しないと…。それが終わったら家計簿つけて、お昼の準備。それから食べて、洗濯物たちを取り込んで買い物をして夜ご飯の準備をして…。そこからバイトに3時間いかないと…。」

 

「そのうち過労死しちゃうよ…?」

 

「大丈夫。妖怪は人間よりは強いから。最近ちょっと貧血なのか、フラフラしそうになったり眩暈がするだけだから。少し怒りっぽいだけだから…。」

 

「うん。ダメ。私がやるから…。」

 

「ううん。サキュバスちゃんはまだ分からないから見てて?休むわけにもいかないし…。」

 

「ううん。倒れる方がダメ。」

 

「倒れないから…。」

 

そんな風に言い合っていると…。

 

グイッ…

 

「「!?」」

 

狼女が持ち上げられる。

 

「…話は聞いたぞ。休め。」

 

「で、でも…。」

 

Dが持ち上げて、狼女を布団に下ろす。狼女の心拍数はとんでもないほど上昇しているだろう…。

 

「…脈拍が早い…。やはり、無理をしているな。」

 

「多分、Dが持ち上げたから…。」

 

「それがどうした?…まぁ、とにかく休め。いいな?」

 

「…ひゃい…。」

 

布団を被せてあげて言われるのだから、狼女は従うしかない。その後、数分もたたないうちに寝てしまった。

 

「…やはり、疲れていたか…。…俺はそういうところが見抜けないな…。」

 

「……。」

 

「…どうした?」

 

「…別に。」

 

サキュバスは気づいた。今この家で、すぐに動けるのは自身とD、そしてハーピーだ。ハーピーと協力してDを倒せば…。…いや、無理であろう。相手が悪すぎる。

 

「なんでもない。」

 

「…そうか。」

 

Dは狼女が干そうとしていた布団を手に取る。そして、干す。

 

「…この大きな洗濯バサミではさんでおけば良いのか?」

 

Dは布団に大きな洗濯バサミで、風に飛ばされないようにはさむ。そして…。

 

バァン!バァン!バァン!…!

 

布団の埃を取るためにはたく。力の強い音が響く。

 

「そうすると、布団が痛まない?」

 

「…力強く叩けば良いというものではないようだな。」

 

サキュバスとDが試行錯誤して布団を叩いた。

 

「む。そろそろ掃除だ。」

 

時計を見て確認するD。掃除機をかけて、テレビの埃をとる。

 

「サキュバス。トイレの掃除はできるか?」

 

「…一応。」

 

「なら頼む。」

 

「わかった。」

 

サキュバスはトイレ掃除を一生懸命やる。

 

「終わった。て、何してるの…?」

 

「家計簿とやらの付け方が…。」

 

「……。」

 

「…倒したり、任務をこなす方が何倍も楽だな…。」

 

そうは言いながらも、家計簿を少しずつつけている。

 

「…赤字が続いているな…。組織へもう少し給付してくれるように申請しなければ…。ハーピーやサキュバスも増えたからな…。」

 

Dがふと、ハーピーを思い出してベランダ付近を見る。

 

「…いるな。」

 

ベランダ近くの、テレビの戸棚の中から鋭い目で睨んでいるハーピーを一瞥して、また家計簿をつける。

 

「…こんなもんか。サキュバス、ハーピー。昼食は何が良い?」

 

「…なんでも。」

 

「……。」

 

「それが一番困るが…。」

 

Dはそう言いながらも、冷蔵庫を漁る。

 

「…特になし…。これでどうやって狼女は飯を作っていたんだ…?」

 

Dが僅かな材料、朝の残りなどを見る。

 

「仕方がない…。」

 

Dは自室に戻って、数分後持ってきた。

 

「肉だ。」

 

「肉の塊…。」

 

「…食えるか?」

 

「まぁ、一応…。」

 

「狼女のスタミナを回復させるには肉だ。これで料理を作る。」

 

「へぇ。」

 

サキュバスは興味のなさそうに返して、椅子に座る。

 

「少し待ってろ。」

 

Dがキッチンで何かゴソゴソしている。

 

バフォー!

 

「ばふぉ?」

 

サキュバスが異様な音を聞きつけて、キッチンを覗いた。

 

「コンロで…。」

 

Dがガスコンロを四台出して、換気扇を全開にして丸焼きにしているのだ。隣には、フライパンで玉ねぎや他の野菜などを炒めている。

 

ジュ〜!ジュ〜!

 

「いい匂い…。」

 

「…まだだ。焼き目がついていない。」

 

肉肉しい香りがキッチンを包む。まぁ、丸焼きではなくブロック肉なので見た目に問題はない。

 

「いい匂い…。」

 

「狼お姉さん、起きたんだ。」

 

「うん。」

 

狼女が起きて来た。

 

「もうすぐだ。」

 

Dが丁度良い焼き加減で火元から外し、肉を薄く切ってフォークとナイフを使って皿に乗せる。

 

「…アレルギーや肉が苦手とかは…ないな?」

 

「…アレルギーはない…。」

 

「私もないよ。」

 

「…ハーピーはどうだったか…。」

 

Dがそう呟いてしゃがみ、コンロの下にある戸棚を開いて、頭を突っ込んだ時だった。

 

ビュンッ!

 

「ハーピー!?」

 

「ちょ!」

 

ハーピーがサキュバスたちの頭の上をジャンプして通過し、Dに向かってハサミを持って飛びかかった。

 

ガギィ!

 

「…!」

 

「殺気で、何をどこに突き刺そうとしているのか丸わかりだ。」

 

Dはフォークとナイフで見ずに止めた。ハーピーはハサミを捨てて、一歩飛び退く。ハサミは床に落ちた。

 

「…あった。」

 

しかし、Dはハーピーに何もせずに赤ワインを取り出した。

 

「…ハサミは戻しておけ。誰かが踏むと危ない。…散々世話になった狼女たちに迷惑をかけるものではないぞ。」

 

「……。」

 

Dが玉ねぎなどを炒めていたフライパンに赤ワインを入れ、煮詰めながら言った。ハーピーはハサミを拾わない。

 

「…はぁ…。」

 

Dはため息をつきながらハサミを拾い、ワークトップの邪魔にならない所に置いた。

 

「…ハーピー。お前が俺をどんなふうに思っているか知っている。だが、関係のない狼女らに迷惑をかけるのは違うのではないか?」

 

「……。」

 

「…昨晩?一昨日の晩?日付感覚がないな…。まぁいい。その時、介抱したのは狼女らだぞ。」

 

Dがキツい目で言う。しかし、その目に殺意や敵意がないことは素人が見ても分かった。

 

「…これくらいか。出来たぞ…。」

 

Dが人数分、ソースをかけて皿をテーブルに持っていく。

 

「ローストビーフだ…。ソースは一応かかってないものもある…。残りのソースはキッチンにあるから、足りなければかけると良い…。」

 

「美味しそう。」

 

狼女がそれを見て、嬉しそうな顔をしている。まぁ、店でこれを出されたら、何千円か取られそうだ…。

 

「さぁ、飯だ…。…ハーピー、食え…。食わないと傷は治らないぞ…。」

 

「……。」

 

「…サキュバスもだ。毒は入ってない。」

 

Dが淡々と言い、席に着いて狼女と共に二人が座るのを待っている。

 

「…どうした?」

 

「…Dさん、流石に二人とも食べる気にならないんじゃないかな…?だって、サキュバスちゃんは来てから一週間も経たないし、ハーピーちゃんは一昨日だし…。」

 

「…そうか…。…上手く作れたと思ったんだがな…。…まぁいい…。お前たちが食わないのなら、俺たちも食わん…。それが平等とやらだろう…?」

 

「え?…ぁ…うん…。」

 

目に見えてガッカリする狼女。尻尾も耳も下がってしまっている。まさか、自分まで巻き添えを食らうとは思ってもみなかったようだ。

 

「…分かった。食べる。」

 

「……。」

 

「ハーピー、食べよう?多分、毒も入ってないし…。…ここで狼お姉さんをガッカリさせるのは違うと思う。私も、同じような気持ちだけど…。」

 

「……。」

 

そう説明して、ハーピーと共に席に着いた。狼女は尻尾を振る。

 

「いただきます…。」

 

「いただきます!」

 

「…いただき…ます…。」

 

「……。」

 

四人は出された料理を食す。

 

(ナニコレ!めっちゃウマ!この柔らかなお肉にソースがものすごく合う…!A級グルメと同等…いや、それ以上…!)

 

サキュバスはガツガツ食べる。ハーピーも同様に食べている。

 

「流石、Dさんのお料理は美味しいっ!」

 

「…そうか…。そう言ってもらえると助かる…。」

 

「逆に、どうしてそんな料理を作れるのか知りたいくらい。」

 

「…昔、二人一組行動の時があった。当然、食事を担当するときもある。飯がマズければ士気はだだ下がり、美味ければ士気は上昇する。と、なれば後者を選ぶだろう。だから『組織』が、そこに属する者に料理などを伝授したり、研究させたりする期間を設けさせているわけだ。…まぁ要するに、組織に属する者は全員、飯が美味いんだ。」

 

「…まさかYも…。」

 

「ああ。奴の作る料理も美味いぞ。奴は天ぷらなどの揚げ物を得意とするがな。…もう一度食したいものだ。アレを味わったら、そこらの飲食店や専門店では満足できないからな。」

 

「…想像できない…。」

 

狼女がYの料理姿を想像するが、全く想像が出来ない。

 

「…おかわりならキッチンにある…。足りないなら勝手に取れ…。だが、狼女のことを忘れるな…。」

 

「…分かった…。」

 

「……。」

 

二人はすぐに食べ終わり、キッチンへ行く。

 

「…やっぱり、優しいね。Dさんは。」

 

「…優しい?俺は優しくなんかない。優しい奴と言うのは、誰かを救える奴のことだ。助けられる奴のな…。」

 

Dは自己嫌悪のような口調で言い、狼女は悲しそうに目を細めた。




もしかしたら、次の話はないかもしれません。というより、ないことを前提に今10話ほど投稿しました。次話は途中でずっと止まっていますし…。要望があれば書きます。
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