その日、サキュバスは“人間”を知った   作:とある組織の生体兵器

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今年初雪降らず。


その日、サキュバスは吸血鬼の姉をもった

Dの家

 

「彼女は新たな養子の一員となった。仲良くしてやってくれ。では、長女から順に自己紹介をしてもらいたい。」

 

Dが言う。すると、養子縁組たちは顔を見合わせた後…。

 

「…私が長女。種族は鬼。1000年以上生きているわ。ふふふ。この姉妹の中では私が1番強いわよ。ふふふふふ。」

 

「俺と同じくらい強い。マジだ。将来、組織で一緒に活動してほしいと要求が送られてくるほどだ。」

 

先の大学生くらいの女性が自己紹介をする。緑色の肌を持つ、片手で2本の角を触れたり、もう片方の手で腹の腹筋を隠している。サキュバス少女は微妙な顔。

 

「…Zzz…。」

 

「…次はお前だ。」

 

「…?」

 

炬燵で寝ていた、1番身長の高い女性が起きた。

 

「…?紹介〜?…私は次女〜…。種族は巨人…。おやすみなさい…。Zzz…。」

 

黒髪のロングヘアで先っちょに若干ウェーブがかかっている、ぶかぶかの服を着たトロールが炬燵から起きておっとり言ったと思ったらすぐに寝てしまった。

 

「次。」

 

「儂は三女。種族はドラゴン。魔法研究が日課じゃ。」

 

ウェーブをかけたセミロングの茶髪の子が興味もなさそうに言う。

 

「…四女…アルラウネ…。…花好き…。」

 

とても短く、本を読んだままで言う四女。人の姿は黒髪で目元まで前髪が伸びてインキャのイメージだ。

 

「私は5番目。種族は狼女。家事とかなら任せて。狼女だけど、いつかお嫁さんに…。」

 

「う、うん…。」

 

尻尾をふりながら、人懐っこい笑顔をして挨拶してきた。サキュバス少女はとりあえず曖昧な返事。

 

「あたしは六女だー!種族は比較的新種のサンドガール!砂人間だ!砂かけ婆とは違うよ!いつかエジプトを牛耳る!」

 

「お、おう…。」

 

「エジプト牛耳ったら狩られるからやめとけ。血に酔っているわけじゃないんだから…。」

 

めちゃくちゃ元気ハツラツとした挨拶。

 

「七番目。正確には七女と呼ばれるわたくしの立ち位置。種族名は機人…正式名称はオートマタと呼ばれております。以後お見知りおきを…。好きなことは…自分の改造です。」

 

「……。」

 

機械のように淡々と挨拶する機人。無表情であるが、人の姿の影響か口も動き瞬きもする。

 

「8番目。種族名は吸血鬼。貴方、血は好き!?」

 

吸血鬼が身を乗り出して、同意を求めるように聞いてきた。

 

「私はサキュバ…。」

 

「私の夢は吸血鬼の女王になること!そうなればお金も沢山…。グフフフ…。」

 

「話聞いてる?」

 

人の話を聞かない吸血鬼。

 

「末っ子。種族は妖精。これと言った特徴はない。」

 

「へ、へぇ…。」

 

サキュバスはそれぞれインパクトが強すぎてなんと挨拶すればいいか困る。

 

「「「じー。」」」

 

その場にいる全員がサキュバスを見る。

 

「えと…。種族はサキュバス…です。好きなことは…えーと…。…ありません…。」

 

モジモジとサキュバスが言うが…。

 

「好きなことがないモンスターなんていないよ〜。お姉さんに隠さないで教えてよ〜。」

 

吸血鬼が抱きついて、近くで言う。

 

「…キマシ…じゃない。ごほん。あとは勝手にやってくれ。俺は自室に戻る。…必ずノックしろ。」

 

「はいはい。ふふふ。」

 

Dが奥の部屋に入る。

 

「ね〜ね〜。」

 

「近い…。」

 

吸血鬼にまとわりつかれて、戸惑うサキュバスだが…。

 

「こら。嫌がっておろう。」

 

ポカ

 

吸血鬼が竜に軽く頭を叩かれる。

 

「痛くなーい。」

 

「…半妖怪の姿で殴るぞ?」

 

「へーん。やってごらん。どうせ避けるし。」

 

そんなことを言い合っていると…。

 

「こらこら、喧嘩はやめなさい。新しい子の歓迎会をするわよ?ふふふ。」

 

鬼が仲裁に入ってくれる。

 

「ほら、貴女も起きて。」

 

「ん〜…。鬼お姉さん…眠いよ…。」

 

巨人が鬼に起こされ、立ち上がる。サキュバスは今気づいたが、巨人が完璧な人の姿とは言え2mを超えた姿だ。

 

「…そう思ってみれば、貴方は半妖怪の姿だけど、本来の姿になれるの?」

 

吸血鬼がサキュバスに聞いてきた。

 

「本来の姿…?」

 

「そう。私は吸血鬼で今は半分妖怪の姿だけど…。本来の姿だと身長200cmくらいになるし。巨人姉さんは285mになるけど…。」

 

「に、にひゃ…。」

 

サキュバスは立ったままうとうとしている巨人を見る。完璧な人の姿で妖怪だとは一般人にはまず気がつかないだろう。

 

「…今の体だと、小さな箱に少し体を詰めたような感覚でしょ?」

 

「……。」

 

サキュバスは全く知らなかった。記憶を失った時からこの姿のため、ずっとこの姿が本来の姿だと思っていたからだ。

 

「ん〜…。その顔だと本来の姿を忘れちゃった感じだね…。でも大丈夫!本来の姿になることはそうそうないし。お姉さんに任せなさい!」

 

吸血鬼が胸を張る。妹が増えたと感じて嬉しいのだろう。

 

「ところで、あなたいくつ?ふふふ。」

 

「サキュバスちゃんは何歳?」

 

ローソクを用意していた鬼が聞く。その尻馬に乗って吸血鬼が聞く。

 

「…342歳…。」

 

ピシッ

 

吸血鬼が石化した。

 

「ふふふふふ。年上だったのね。ふふふふふ。」

 

鬼が笑い、吸血鬼は石化したままだ。

 

「私の方が年下だったぁ〜…!私はまだ230歳だよぉ〜…!」

 

「よしよし。」

 

石化が解け、吸血鬼が狼女に泣きつき、頭を撫でてもらう。

 

(可愛い…。)

 

サキュバスはグスグス泣いている吸血鬼を見て思う。

 

「まぁ、次は妹が良いっていつも言っていたし…。ふふふ。」

 

「…どんまい…。」

 

「良いことあるって!」

 

「日頃の行いじゃ。」

 

「ははははは!」

 

辛辣な言葉を投げかける竜と妖精を除いて、なんとか励まそうとする姉妹たち。

 

「うわーん。」

 

バタン!

 

「ちょ、待…。」

 

吸血鬼は部屋に閉じこもってしまった。

 

「…どうする?ふふ。」

 

「日本古来より扉の前で祭りをひらくのが良いと…。」

 

「それ…神話…。」

 

「ドアを破壊します。お姉様方、少しばかしわたくしの後ろに…。」

 

「壊しちゃダメです!私が説得を試みます。」

 

狼女がドアの前に立つ。

 

「吸血鬼ちゃん。出てきてお願いです。」

 

シーン…

 

「ダメでした…。」

 

「説得ってそれだけ!?」

 

短い説得にサキュバスが驚く。

 

「やはりドアを破壊します。」

 

「ダメだって…!」

 

砂女が機人を止める。

 

「あたしや狼の姉貴やアルラウネの姉貴の部屋でもあるんだよ!」

 

(めちゃくちゃ迷惑!)

 

砂女が叫び、サキュバスが心の中で思う。

 

「頭を使わないと相手は出て来んぞ。」

 

竜が部屋の前に立つ。

 

「ほれ。いたりあ?の新鮮なとまとよ。出てこないなら、儂が頂くぞ?ふっふっふ…。」

 

竜がトマトを片手にドアの近くへちらつかせる。

 

ガチャ…。

 

「じー…。」

 

吸血鬼がとても物欲しそうな目で見ている。しかし…。

 

バタン!

 

「!?」

 

数秒後、扉が閉まった。

 

「吸血鬼がトマトを欲しがらないとは…!?」

 

「そもそも血でしょ。欲しがるのは。」

 

砂女が竜に冷静に返す。

 

「むぅ…。出てこんな…。」

 

竜が呟く。

 

「……。」

 

そして、サキュバスが前に出た。

 

「…吸血鬼…。」

 

『……。』

 

「…吸血鬼お姉さん!開けて!」

 

サキュバスが叫んだ途端…。

 

「いいよー!」

 

「「「はやっ!」」」

 

ドアを思いっきし開けた。色々な意味で全開である。

 

「何やら騒がしいな…。」

 

Dが部屋からケーキを持ってきた。メッセージに[歓迎]と書かれたホールケーキを。

 

「そろそろパーティーを盛大に始めようと思うんだが…。」

 

「ご飯出来ました〜!」

 

Dがコタツの真ん中にケーキを置いた。狼女はお祝い料理を沢山持ってきてくれる。

 

「…サキュバス。」

 

「……。」

 

「…まぁ…。…歓迎しよう。盛大にな。」

 

「…まぁ、ここにいるわ。吸血鬼お姉さんが寂しがると思うし…。」

 

「…お姉さん?」

 

「なんでもない。」

 

Dの困惑を他所に、彼女たちは盛大に歓迎パーティーをした。

 




歓迎しよう。盛大にな。

登場人物紹介コーナー
半妖怪の姿…文字通り半分妖怪の姿。本来の姿より力が半減している。
人型の姿…半妖怪の姿より力が半分以下にされる代わりに、完璧に人間に姿を変えられる。
鬼…名前不明。長女。人間で言う大学生くらいの者。いつも不敵な笑みをこぼす鬼。養子の姉妹の中でもパワーは1番で次女の次にあり、戦闘ではDに全く引けを取らない。ある意味、今作敵になったらもっともヤバい妖怪。
半妖怪の姿だと身長は3m。体重は235kg。妖怪の姿だと角が2本、肌の色は緑色。本人は気にしているが、引き締まった筋肉がモリモリで腹筋が割れている。
人型の姿だと身長は175cm、体重は100kg。黒ロングの髪の毛のままだが角は生えていない。筋肉モリモリのことはなんとか誤魔化しているが、加減しているとはいえ素手で木を折れるほどの怪力。
トロール…名前不明。種族は巨人。次女。今回は人の姿のまま。人間で言う社会人くらいの者。姉妹の中では1番大きい。お腹周りを気にしているのか、身長の割には痩せ型。胸の大きさも巨人並み。力もあるが、長女には腕相撲で勝ったことがない。比較的おっとりキャラ。力は2番目に強いが、戦闘では3番目に強い。
人型の姿では身長215cm。体重は88kg。黒髪のロングヘアで先っちょにウェーブが若干かかっている。人型の姿でも大きい。ぶかぶかの服を着ているのは妖怪になった時破れないようにするためだとか…。おっとりとしていて、すぐに寝てしまう。
ドラゴン…名前不明。竜と記載される。三女。今回は人の姿のまま。高校生くらいの見た目。姉妹の中で3番目に力が強い。胸の大きさも3番目にでかい。姉妹の中では1番頭が良く、物事を冷静に判断する。そのため、ボケても真面目に捉えられてしまう。一人称は『儂』。
人型の姿では身長は165cm、体重は55kg。ウェーブをかけたセミロングの茶髪。少し親の言うことが分かってきたような歳で、Dに気を遣ってくれる優しい子。しかし、空回りもして困らせることもしばしば…。
アルウラネ…高校生くらいの見た目。四女。今回は人の姿のまま。読書が好きで、いつも読んでいる。他にもプランターの花の水やりが日課で、綺麗に咲くことが嬉しいんだとか…。非常に無口で冷静なツッコミをしてくる。
人型の姿だと身長は175cm、体重は60kg。黒髪ロングで目元まで隠れている。いかにもインキャの感じ。目を出したら可愛いらしいが、本人曰く絶対に出さないらしい。ちなみに、いじめようとすれば容赦なく弱みを握り、報復以上のことを要求してくる。
狼女…高校生くらいの見た目。五女。淑女を目指している。料理も得意で笑顔は見た者を元気にさせる。姉妹の中でも1番家事が得意。戦闘などは興味がなく、幸せな生活を望むだけだとか…。どちらかと言えばツッコミが多いボケ役。
半妖怪の姿だと身長は155cm、体重は48kg。獣耳に尻尾を出した人型。銀髪のショートボブに変わる。さほど人型とは変わらない。家にいる時は尻尾の出るところを切り取った下着やスカート、ズボンを着るとか…。また、耳を触られることを極端に嫌う。
人型の姿では身長は155cm。体重は48kg。ショートボブで斜め前髪を編み込む髪型をしている。色は黒。割烹着を愛用している。汚されたりすると怒る。
サンドガール…高校生に入りたての後輩のような見た目。六女。今回は人の姿のまま。比較的新種の希少な種族。砂女と記載される。とても元気で活発。ボケを全力でやって怪我をするほど笑いに命をかけている。頭はあまり良くないらしく、姉の竜に教えてもらっている。
人型の姿だと身長は170cm、体重は55kg。黒髪ポニーテール。運動神経が抜群でとても足も速い。胸がないのが悩みどころだとか…。
機人…中学生くらいの見た目。七女。今回は人の姿のまま。とても機械的で冷静な判断力を持つ。時々自分の身体を改造したがる。比較的無口だが、家庭料理などもそつなくこなす。
人型の姿?だと身長155cm、体重は45kg。流石に街中で機械の肌を晒すことは出来ないので、擬態はしている。瞬きや口を動かすことや滑らかな動作が出来る。
吸血鬼…中学生くらいの見た目。とてもヤンチャな性格。ちょうど反抗期に差し掛かっているが、料理も当番なら作ってくれる優しい一面を持つ。吸血鬼の影響なのか、ご飯の当番になると大抵がトマトジュースとなり、皆から苦情を言われるのが日課となっている。
半妖怪の姿だと身長143cm、体重は43kg。黒いローブにシルクハットを被る。笑ったりすると若干短い牙が見える。蝙蝠と会話をすることくらいは可能。翼は見せない。
人型の姿では身長は143cm、体重は43kg。妖怪の姿と同じくショートボブの黒髪。しかし、どうしても血が欲しくなるのか、飲み物は大抵トマトジュースを飲んでいる。
妖精…小学生くらいの見た目。養子の中で1番の末っ子。幼いためなのか種族なのか不明だが、悪戯好きでわがまま。
半妖怪の姿では身長は146cm、体重は39kg。妖精伝統の服に羽を持っている。髪の毛はこの時は茶髪に変わる。飛ぶことも出来て、何キロ先の遠くも見ることが可能。
人型の姿では身長146cm、体重は39kg。髪の毛は黒髪のロングウェーブ。まだまだ成長途中。

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