その日、サキュバスは“人間”を知った   作:とある組織の生体兵器

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その日、サキュバスはDの経歴(浅)を知った

「…来た?」

 

「多分…。」

 

吸血鬼と狼女が言う。まだ日は頭の先の方しか登っておらず、ニワトリが鳴く少し前のようだ。

 

「ただいま…。」

 

「おかえ…て!どうしたの!?」

 

「色々忙しかった…。」

 

全身返り血を浴びて、ほぼ真っ黒のD。

 

「立て篭った…、人質を取った…。立て続けに事件発生…。計画的であると睨み…敵を拷問…。結果…集団的だということがわかって本拠地へ乗り込んだ…。その際、一匹だけ敵を逃した…。」

 

「…まさか…。」

 

「赤いハーピーを逃した…。今夜に狩る…。また夕食は共に食べれそうにない…。」

 

そのことを聞いて、黙る狼女たち。一方、玄関から見えないリビングでは…。

 

「う…!く…!」

 

ハーピーが這ってでも逃げようとする。

 

「え、えと…どうしよう…!」

 

吸血鬼は取り押さえるべきなのかどうか迷っている。

 

「待ちなさい。」

 

ビクッ!

 

鬼が静かに言う。

 

「今、無理矢理でも逃げようとしたら逆にやられちゃうわよ?ふふふ。」

 

「……。」

 

「ちゃんと事情を話せば、彼も見逃してくれるかもしれないわ。ふふふ。」

 

鬼は優しく言う。すると、ハーピーは逃げるのをやめて、安静にする。一方、玄関でブーツを脱ぐD。

 

「…あ、雑巾あるか…?」

 

「う、うん。はい…。」

 

「ブーツの中が…、返り血で溜まっちゃって…。」

 

Dの足は真っ赤に染まっている。ブーツの中がチャプチャプ聞こえる。

 

「そのハーピーの親と思われる者がその集団を操っていた。もちろん、親の二人の首は跳ねた。残るは子だ…。」

 

「……。」

 

それを聞いて、複雑な気持ちになる狼女。一方、ハーピーはそのことを聞いて、Dにとてつもない殺意を抱いた。

 

「攻撃されたからな…。肩に…。」

 

「血が…。」

 

Dの左肩に深い切り傷があった。しかし、もう治りかけている。

 

「まぁ、1日前後で治るだろうが…。攻撃される際に止血防止ナイフで脚を切ってやった…。さらには飛んで逃げようとしたから翼をこのボウガンで撃ち抜いた。今頃虫の息だろう…。…夕食時は死体探しか…。」

 

Dが少し残念そうにした。

 

「すまない…。今夜こそは皆んなで夕食を食べれると思ったんだがな…。」

 

「…ううん。いいの。大丈夫。」

 

狼女はそんなことを言われて、尚複雑な気持ちになる。

 

「それより、身体を洗う。血塗れで気持ちが悪い。朝食はなんだ?」

 

「昨日の夕食の残り…。」

 

「そうか。楽しみだ。」

 

Dは浴室に入った。狼女はタオルを置いて、リビングへ行く。

 

「…貴方、そんなことをしちゃったんだ…。」

 

「……。」

 

ハーピーは何も言わない。

 

「攻撃されたからじゃなくて、攻撃しちゃったんだ…。お父さんのことだから忠告したと思うんだけど…。」

 

「いいえ、彼は最後まで忠告していたはずよ。彼が進んで殺すことは絶対にないわ。ふふふ…。」

 

吸血鬼と鬼が考えだす。すると…。

 

「今日の朝食はなんだ?」

 

「「「!?」」」

 

Dがもう出てきたのだ。仕事がスピード勝負のため、早いのだ。

 

「……。ハーピー…?」

 

Dが包帯を巻かれて、治療を受けた後のハーピーを見つけた。昨晩のハーピーを見つけた。

 

「お前か…。探す手間が省けたな…。」

 

すかさずボウガンを出すD。そして、狙いを定めた。

 

「待って!」

 

しかし、サキュバスがその間に入る。

 

「…そこをどきなさい。」

 

サキュバスは首を振る。

 

「……。」

 

Dはサキュバスに当たらないよう、ハーピーに当たるように僅かな隙間を照準を定めたが…。

 

「D。」

 

鬼がボウガンに手を添えて、首をゆっくり振った。

 

「…分かった。」

 

Dは素直に下ろす。

 

「彼女を何故狙うの?ふふふ。」

 

「昨晩の戦いで組織の一人が重症だ。仇をうつためだ。」

 

「でも、彼女がやったわけではないわ。ふふふ。」

 

「……。昨晩、俺は首謀者であるこいつの両親を殺した。復讐しに来て、お前たちに危害を加えるかもしれん。」

 

「そりゃ、両親を殺されたら復讐する気にもなると思うけど?ふふふ。」

 

「……。」

 

Dが黙る。鬼の気持ちが分かるからだ。

 

「…しかし、コイツは抵抗したし、人間にも危害を加えている…。組織からなるべく殺すように命令を受けている…。」

 

「なるべくってことは、必ずってわけでもないわけよね。ふふふ。」

 

「…生かしたいのか…?」

 

Dが単刀直入に聞いた。

 

「ええ。ふふふ。」

 

鬼は迷いなく言った。自身の一族も皆殺しにされているからだ。

 

「…そうか…。…組織からは発見の報告をする。…ハーピー、貴様に一つ質問がある。答えなくても良い。」

 

「……。」

 

「これから、人間に危害を加えようと思うか?」

 

「……。」

 

「…なるほどな。」

 

憎しみたっぷりに睨まれていても、Dは報告書に記載する。

 

「俺を殺そうと考えていることは分かった。ただし、他の民間人には手を出さないと言うことも分かった。俺を殺そうと思っていることは記載しないでおく。」

 

Dは報告書を書き終えた後、ベランダに出る。すると…。

 

カァー…

 

闇色の鴉が来た。

 

「すまないな…。場所は本部…。Cによろしく頼む…。それと、これは速達だから上質な餌だ…。」

 

Dが闇色の鴉の足に紙を巻き付け、固形の餌を渡した。

 

カァー…

 

闇色の鴉は食べ終わり、時速200kmくらいで飛んで行く。(ちなみに、普通は時速60km)

 

「……。」

 

ハーピーはDを睨みつつも、内心鴉に驚いていた。

 

「さて、君の処遇は本部が決める…。それより朝食…。」

 

「!」

 

Dがお腹を空かせて、狼女が急いで準備をする。ハーピーは何やら思い浮かべたようだ。

 


 

「「「いただきます。」」」

 

ハーピーの分も一応よそってあり、食して行く。

 

「……。」

 

「…どうしたの?Dをそんなに見て…。」

 

ハーピーがDの様子をジッと見て、狼女が聞くが答えない。Dの飯に毒を入れていたのだ。

 

「…もしかして、毒入れた?」

 

「!」

 

何故分かったと、驚いた。

 

「分かるよ。だって、同じことしてるもん…。」

 

狼女がDを見る。Dは全くダメージなし。それどころか、毒の入った食べ物をすすんで食べている。

 

「同じこと…?」

 

「うん。私もあなたと同じでね…。拾われた当時、ものすごい警戒していた。ここから出たかったから、殺したほうが手っ取り早いと思って何回か襲撃したけど…。全部失敗。隙もないし、どんな術も無効。聞けば、昔の組織の訓練の最後の合格者だとか…。」

 

「…最後の合格者?」

 

「ふふふ。今は廃止された、生存率が0.18%の最終試験よ。妖怪を含めてね。ふふふ。」

 

鬼が割り込む。

 

「あの最終試験を乗り越えた、現役の組織の人間は今はもう4人しかいないわ。ふふふ。彼がその一人。」

 

「……。」

 

ハーピーはDを見る。隙だらけだ。とてもそうに思えない。

 

「もっと深く、彼の経歴を知っちゃダメよ?今は…。多分、今すぐにでも逃げたくなって、傷の完治も出来ないから…。」

 

そんなことを、サキュバスも聞いていた。

 

「…何を話しているんだ…?」

 

「いいえ。ふふふ。」

 

「…そうか…。」

 

Dは食事を再開しようとしたが…。

 

「……。」

 

残しておいたサツマイモの天ぷらがない。

 

「うま〜。」

 

「……。」

 

吸血鬼が食べていた。口いっぱいに頬張っていた。

 

「…出せ…。」

 

「ふぇ!?も、もう無理だって!」

 

「…出せ…。」

 

「ふぇ!ふふふ…!ちょ!今食べてるから…!ふごっ!」

 

Dが吸血鬼の脇腹をくすぐっている。嫌がっているが、やめない。

 

「ほ、本当に出ちゃう!」

 

「…わかった…。」

 

Dはすぐにやめた。

 

「ふぅ〜…。本当に出るかと思った…。」

 

「……。」

 

次はDのアジの天ぷらがない。

 

「……。」

 

「……。」

 

狼女がこれでもかと、見せるように咥えていた。期待している目だ。

 

「……。」

 

スッ

 

「にぇ!?」

 

しかし、何もせずに食事を再開するD。狼女の尻尾と耳が垂れ下がった。

 

「後でな…。」

 

「!」

 

ボソリと呟いた言葉を聞き逃す狼女ではない。耳もピンと伸びて、尻尾を振る。

 

「えぇー!今日はあたしと遊ぶ約束ー!」

 

「……。」

 

砂女が言い、機械人が見る。そんなこんなで皆が食べ終わる。

 

「…というか…。疲れた…。食い終わったから寝る…。良い子にしてくれ…。」

 

「「「はーい。」」」

 

サキュバスとハーピーは寝室へフラフラ行くDを見ていた。アルラウネ達は各々の部屋に入って行った。

 

「…大丈夫なの?アレ。」

 

「狼女が行くまではね。ふふふふ。」

 

サキュバスが聞き、鬼が半笑いする。すると、狼女がいつのまにか、獲物を狩るように伏せながら部屋に行こうとしているではないか。

 

「あれは狩りのポーズね。ふふふ。」

 

「狩り?」

 

「そう…。ふふふ。」

 

狼女がDの部屋に侵入しようと、ドアを開けるが…。

 

「…分かっていたぞ…。」

 

「…え、えへへ…。」

 

「リビングにいろ。」

 

「む〜…。」

 

Dに襟を掴まれて、リビングに下ろされた。そして、狼女が悔しそうに仰向けでゴロゴロする。

 

「あれは失敗した時の癖ね。」

 

「……。」

 

「ハッ!」

 

サキュバスとハーピーに見られていることに気づいた狼女。

 

「…ゴホン、ど、どうしたのかな〜…?」

 

慌てて取り繕うが、もう遅い。

 

「狼姉さんって、いつも何か癖とかあるの?」

 

「え、えーっと…。何を言っているのか分からないなぁ〜…?」

 

「いつもあるわ。ふふふ。」

 

鬼が言う。狼女は鬼を見ながら頬を膨らませていた。

 

「ところで、Dの部屋ってどうなっているの?」

 

サキュバスが疑問に思い、聞く。

 

「んーっと…。わかんない。」

 

「え…?」

 

「この家に来て2年くらい経つけど、全くわかんない。掃除も断られるし…。」

 

「何か秘密が…。」

 

「でも、分かったことはあるよ…。無断で入ろうとしたら、罠でやられちゃう…。前、掃除機でうっかり開けちゃった時に、ドアの中からボウガンの矢が5本、急所に当たるようになってて…。その時は、掃除機が当たっちゃっただけだから私自身に傷はなかったけど…。壁に刺さって…。」

 

「……。」

 

サキュバスがDの部屋に何かあるのか不思議に思った。すると…。

 

コッコッ

 

窓を硬いもので突いている音が聞こえる。

 

「…あれ?」

 

狼女がカーテンを開けると、闇色のカラスがいた。

 

「ご苦労様。」

 

「カー。」

 

狼女に手紙を渡した後、飛んでいった。

 

「…本部からの手紙…。」

 

直筆と書かれており、印鑑まである手紙だ。つまり、最高峰の幹部の上層部が書いたと言うことだ。

 

「……。」

 

Dが開けるまで見ちゃいけないと教えられてきたが、ハーピーの命運を分ける手紙だ。開けられないわけもない。

 

「…ホッ…。」

 

安堵した息を吐く。

 

「なんとか、死ぬことはないみたい。」

 

書かれていたのは保護観察処分の主旨と期限だ。

 

「4ヶ月の保護観察を強いられるみたいだけど…。この家だともう流石に…。」

 

狼女が狭い家を見る。

 

「…うん。Dさんが起きたら、少し相談してみる。」

 

「そうね。私からも頼んでみるわ。ふふふ。」

 

「……。」

 

サキュバスも、傷ついたハーピーを見て、頷いた。




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