【本編完結】英雄転生後世成り上がり   作:恒例行事

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皆さまの感想めっちゃ嬉しいです。
なんだかんだ英転(勝手に呼んでる略称)のキャラクターもシナリオも面白いと思って書き続けて来たので、それを他人に肯定されるとホッとしますね。

活動報告で見たい話を募集してるので、なんかこんな話~ってのがあったら教えてください。

今回はルーナさん回です。


嫉妬の炎は燃え上がる

 

「────という訳でロアくん、合体(・・)しましょう」

「嫌ですが……なんですかいきなり」

 

 あの戦いからおよそ三ヵ月、未だに復興作業が完遂していない首都ではあるが、生活基盤は整ったらしいのでようやくまともな生活がスタートした。

 

 魔力を十全に扱えるようになったから最新の魔道具を搔き集め(十二使徒特権で師匠に取り寄せさせた)快適なスローライフを目指した結果、最強の生活空間が完成した。三ヵ月前の俺が見たら咽び泣いてるだろうな。

 

「ズルくないですか? ステルラさんだけずっと一緒なの……」

『え、こわ……』

「聞こえてますからね」

 

 ぴ。

 

 こいつは学習しないバカなので仕方ないが、それはそれとしてルナさんの言う事も一理あるだろう。

 

 ステルラと融合した結果未だに分裂不可能だし、研究は続いてるし、最近なんてもうなんの進展も無いから遊び始めてるからね。同じ領域にいるテリオスさんなら同じ事が出来るんじゃないかと思って合体しようとしたら複数人に強制的に止められた。

 

 俺はただテリオスさんと男同士の友情の地続きで遊ぼうと思っただけなのに……

 

「しかも寄りにもよって男と合体しようとするなんて余計許せません。ゆえに、私と合体する他ないでしょう」

「どうしてその結論が出たのかが甚だ疑問だが?」

「黙って合体すればいいんです! ウオオ────合☆体!!」

 

 暴風のように吹き荒れる魔力が熱風となって俺を焼き焦す。

 部屋があれては困るのでステルラと意思を取り合い(この行動にタイムラグは一切生じない)障壁を張り、部屋中を防護する事で事なきを得た。

 

「……………………なぜ……」

『私とロアの運命だったからじゃないかなぁ』

「坩堝丸ごと焼けばよかったですね」

「俺も死ぬから巻き込むな。やれやれ、こっちに来てくださいルナさん」

 

 魔力を収めたルナさんがトコトコ歩いてくる。

 

 あの決戦が終わって以来益々嫉妬深くなったルナさんは、時折こうやって何かを爆発させるように俺の元に現れる。

 

 それを不快だとは思わないし面倒だとも思わない。

 寧ろ俺に対して依存しているからしめしめと言ったところではあるが、その原因を考えるとそう簡単にも言ってられん。だってこうやって一個人に依存するの、明らかにエミーリアさんが亡くなったのが原因だし。

 

 元々頼られたいという願望を抱いていたルナさんは、最後の最後まで頼られることは無かった。

 

 それは力不足だとかそういう意味ではなく、真の意味で心配していたからだと思う。

 エミーリアさんは長寿で、元公爵家という血筋で、それでいて人の痛みや心の脆さを理解できる優しい人だった。だから子供に迷惑なんてかけられないと奮起したんだろうし、子供の為に全てあそこで取り払うつもりで残ったんだろう。

 

 俺の命を救って、他の数多の命も救って、あの人は死んだ。

 

 それを乗り越えるには時間がかかる。

 

「残念なことにステルラが強制的に付いてくるので二人きりとはいきませんが、少しだけ歩きましょう。金は無いので歩くだけで勘弁してください」

「その一言が無ければ最高なんですが、その一言があるからロアくんって感じですね。喜んで同行します」

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 夏が終わり、秋も過ぎ、既に季節は冬に移行し始めている。

 

 暖房が無いと肌寒く感じるようになったし、半袖は無いね。

 長袖のシャツに軽いジャケットを羽織って準備を終えて、俺とルナさんと+一名は外に出た。

 

『邪魔者扱いしてる? もしかして』

 

 俺はそんなこと無いが、ルナさんから見れば邪魔だろうな。

 お前もデートの時にずっと師匠がいたらちょっと嫌じゃないか? 

 

『別にそんなことないけど……』

 

 例が悪かった。アルベルトが居たら嫌じゃないか? 

 

『それは……そうかも……』

 

 悪いアルベルト、お前のこと売っちまった。

 でも俺達の友情はこんなことじゃ砕けないし揺らがないからいいよな。いや~青春最高! 

 

「絶対二人でコソコソ話してますよね」

「ステルラが邪魔だという話をしていました」

『ひどいっ!?』

「邪魔ですし……意識オンオフとか出来ないんですか?」

 

 出来たら俺は簡単に性欲の処理とか出来たんだが……

 

『あ、あああ~~~ちょっとやめてほしいな~~~っ!?』

 

 もういい加減慣れろよ、何か月一緒に居るんだ。

 俺はもう諦めた。お前に対してどれだけ情けない姿を晒しても大丈夫だと思ったが、流石にそういう面で筒抜けになるのは心が痛む。ていうかもう痛み過ぎて感じなくなった。好きな女にトイレしてる所見られるの、普通に拷問だろ。

 

『べ、別にみてないから! ちゃんと指で覆い隠してるから! ……隙間から見えた分はノーカウントだよね

 

 聞こえてんぞオイ!! 

 絶対に見るなって言ってんだろうが!!! 

 

「ロアくんロアくん。寂しいです」

「あ、すみません。合体してもデメリットばかりですよ」

「それはなんとなくわかってますが……それでも、羨ましいんですよ。正真正銘、二人だけ全てを分かり合えてるのは」

 

 そうか……? 

 このまま行けばステルラが特殊性癖を患う未来が見えるんだが。

 

「じゃあそういう方向性なのはステルラさんに任せるので、私はノーマルで行きますね。アブノーマル専門の女になってください」

『と、特殊性癖なんて持ってないし!! 私だって普通にロアの手とか好きだもん!』

「…………?」

 

 ??? 

 

『いや、これはその……あの……ゴツゴツした手に撫でられた時とか、握った時とかすごい「男の子」って感じがして好きなだけで……別にそんな不思議な意味はなくて……あ、あうあう……』

「……やっぱり合体はしなくていいので、早く分離出来るようになってください」

「ようやく悟りましたね、このデメリットを」

 

 そう、この身体になってからステルラは睡眠を必要としなくなったのだ。

 

 俺が寝てる間一人で寂しい思いをさせているので、せめてその間くらいは自由にしてていいぞと言った結果がこれである。

 

 これはもう十分拗らせてるよな。

 幼馴染が変態になったが俺は元気だ。

 

 寝ている間に何をされているのかは怖いので何も聞いていない。布団に汚れも何もついてないから、まだプラトニックな関係で済んでいるのだろう。信じたい。

 

「知らないうちにロアくんが変態に蹂躙されている……」

『変態じゃ無いもん!!』

 

 蹂躙されてるのは昔からだけどな。

 

 ふう、と一息吐き出してから、ルナさんの横顔を覗き見る。

 

 いつも通りの無表情、幼い頃から動かなくなったそれと付き合って何年目だろうか。

 言動による感情表現がとても豊かな人だからわかりやすいが、それでも顔がほぼ動かないのはどういう感覚か。俺達に言わないだけで今の立場に悩み苦しんでるのはよくわかるから、それの軽減くらいはしてやりたい。

 

 親が亡くなってその弔いすら出来ないまま今に至るんだ。

 

 ルナさんは優しい人だからな。

 表に出ないだけで、心の中でどれくらい傷付いているのか。

 

「おや、どうしました。ついに私に惚れましたか?」

「元々ルナさんの事は好きですよ」

「…………そうですか。ステルラさん、今の本心?」

『え、あ、はい。本心です』

 

 むふーと満足げなルナさんと低めのテンションで答えたステルラが嫌に印象的だった。

 

「……ちなみにお伺いしておきたいんですが」

「なんですか。答えられることなら答えますよ」

「では率直に────ロアくんは今、どういう状態なんですか?」

 

 ……ふむ。

 

 これは真面目な話になりそうだ。

 現役の十二使徒なんだし見ようと思えばいくらでも閲覧可能だとは思うが、わざわざ俺に聞きに来たって事はつまり、そういうことなんだろう。

 

「借り物の心臓は完全に定着して、俺に魔力を十全に与える器官になっています。ステルラは座する者として覚醒していますが、俺はそうではない。あくまで人智を越える事はないでしょう」

「それはつまり、寿命が存在しているという事で間違いないですね」

「そういうことです。申し訳ありませんが、俺は数十年後に死ぬ」

 

 ステルラはこういう話題をすると無言になる。

 

 多分考えたくないんだろうな。

 俺も出来るだけ考えたくない。死ぬことは怖いし、それを回避できるのならば回避したい。あの空虚な感覚は何度も味わいたくないんだ。

 

 それでもやはり手が届かないものはある。

 俺にとって強くなる理由は既に消え失せて、後はステルラに勝つ事くらいだが……それはまあ未来の俺に丸投げする。

 だから何が言いたいかというと、もうこれ以上努力を積み重ねる意味が無くなったんだ。英雄は倒し遺産を清算し、決して軽くはない犠牲を伴って手に入れた今を険しいものにしたくない。

 

 きっと、俺は至ることなく死ぬだろう。

 

「でも、それで構いません。寂しいですが、そういうものだ」

 

 そう軽々と超えていい壁じゃないし、そもそも超えられる壁じゃない。

 

 俺にとってその壁は何よりも高いんだと思う。

 ステルラやルナさんにはその壁を乗り越えるだけの燃料があったけど、俺には無かった。

 

 ただそれだけの話だ。

 

「今に満足してしまいましたから」

 

 そう告げると、ステルラは勿論ルナさんも黙り込んでしまった。

 

 エミーリアさんの事だけが心に残り続けている。

 

 果たして俺が先に伝えていれば未来は変わったのだろうか。

 あの人が死ぬこと無く完全な戦力を持って戦いに臨んで、それで勝てたのだろうか。

 もしも過去に戻れるのならば、それだけは試しておきたい。いや、それで上手くいくかはわからないけど────少なくとも、チャンスがあるなら挑戦しなくちゃいけないんだ。

 

 俺はあの人に最悪な事をしてしまったから。

 

『……ルーナさん。あのね、ロアは…………』

 

 ステルラ。

 余計な事は言わなくていい。

 誰が何と言おうと、エミーリアさんが死んだ理由に俺が関わっているのは否定できない。

 

 これは一生俺が抱えて生きていかなくちゃいけない。

 俺が嫌がらせしてやろうと、最後の最後に伝えてやろうと意地悪な感情を持っていたから起きたことだ。それはわかるだろ。

 

『…………うん……でも……』

 

 でもじゃない。

 エミーリアさんを殺したのは、ルナさんの唯一の家族を奪ったのは俺だ。

 

 俺は、ルナさんに殺されても文句を言うつもりはない。

 

 それきりステルラは押し黙った。

 不気味な沈黙が俺たち三人を包み込み、夕暮れの首都に影が落ち始めるのを見ている。

 

 そのまま五分ほど居た堪れない空気の中、歩く事も止めて顔も見合わせる事が出来なかった。

 

 そして、そんな空気を換えることもなく、静かにルナさんは話を始める。

 

「…………やはり、羨ましいです。私も、ロアくんの事は何だって知っておきたい。なぜなら、知らないことがあればあるほど、私の事を置いていくかもしれないから」

「……そこはまあ、諦めて欲しいんですけど」

「いやです。これ以上誰かを失うのは、いやです」

 

 ルナさんは顔をこちらに向けない。

 だからその表情から何かを察する事は出来ないし、もしかしたら、それは俺に見せたくない何かなのかもしれない。

 

 それでもなお、この話をしようと決意したと言う事は。

 

「あの夏の日を覚えていますか?」

「もちろん。あの日に全てを暴露しておけばこうはならなかった」

「かもしれません。でも、そうはならなかった」

 

 二人だけの秘密だと嘯いたあの日。

 あの時点で大人達の戦いが始まっていたのならば、手遅れにはならなかった。だからもしも全てを避け得る最高のタイミングがあるとすれば、きっとそこになる。その後の戦いに勝てるかは不明だが、少なくとも、何かを変えようと藻掻くのならばあの日だ。

 

「もう、これで私の死を哀しむのはロアくんだけになってしまいました」

 

 そうで……………………ん? 

 

「数十年後に貴方が亡くなったあと、私を止める者は誰もいません」

 

 なんか雲行きが怪しくなってきたな。

 先程までのしんみりとした空気はいつの間にか鳴りを潜め、いつの間にか重たくて絡みつく空気へと変貌していた。

 

「貴方が死んだら、私も後を追いましょう。私の死を哀しんでくれる人が誰もいないのなら、もう、生きていても仕方ありませんので」

 

 オイオイオイオイ話が違うじゃねーか。

 

 此方を振り返ったルナさんの眼は少しだけ朱くなっている。

 

「だから────私に死んで欲しくなかったら、死なないでください。ロアくん」

 

 …………お、重てぇ~~!! 

 

 せ、責任は出来る限り取るが、それでもこれは予想すらしていなかった。

 

 俺はルナさんの執着心を見誤っていた。

 この人は正真正銘俺の事を好きで、それでいて恨むような人格でもない事は理解はしていても万が一を考えていたんだ。ある日ふと「そういえばアイツの所為でお師匠死んだな」と思われて焼かれる可能性すら考慮していたので、この方向性に辿り着くとは……

 

「わかりますよねロアくん。もう私にはこれしかないんです、ロアくんがお師匠を奪ったので」

 

 あ゛あ゛ぁ゛~~~それを言われたら何も言えねぇだろうが! 

 

「……こうでも言わないと、容赦なく置いていかれますからね。何番目でも構わないので、ちゃんと私の事も見てくれないと────燃やしますよ?」

「…………胸に刻んでおきます」

 

 ニコリと微笑んで────えっ。

 

 ルナさんが笑ってる。

 柔らかく口元を歪めただけではない。

 朗らかに楽しそうに嬉しそうに、とても安心しきったような表情だった。

 

「おお、ロアくんのそんな顔はレアです。私の記憶フォルダに保存しておきましょう」

「いや…………かわいいっすね」

「ありがとうございます。結構頑張って練習したんですから」

 

 スン……といつも通りの表情に戻ったが想像していたよりも全然可愛らしくて正直驚いた。

 

「本当はロアくんにしか見せないつもりでしたが……仕方ありません」

「邪魔だってよ、ステルラ」

『う……すみません……』

 

 せめて意識のオンオフ出来るようになってくれ。

 ああでもそれで二度と浮上してこなかったらそっちの方が嫌だな。うーん、悩ましい所だぜ。

 

 仕方がない、俺がトイレとか風呂とか入ってる時は目を瞑ってろ。

 

 じゃないとお前の風呂毎回覗くからな。

 

『ロアの変態っ!』

「いや、お前の方が何十倍もヤバいが……」

「いくら私でもロアくんのトイレを覗く趣味はありませんね……」

 

 ステルラの絶叫と否定の言い訳が頭の中に響く中、ルナさんは僅かに微笑んでいた。

 

 結局さっきの発言が“ガチ”だったのかはわからんが、まあ、うーん……

 

 善処はしよう。

 その中で俺が死んでも生き続けられる理由を見つけて貰えれば、それでいい。

 ステルラ、お前に対しても言ってるんだぜ。お前は俺が死んでも絶対に後を追うなんてことは考えるなよ。

 

 いつの日にか、また会えるかもしれんのだから。

 

 その時お前が姿形を変えてない方がわかりやすいからな。

 

 

 

 

 




ルーナ・ルッサ

この後ステルラやルーチェとの間に生まれたロアの子供を見て自分も欲しくなるが、未成熟な身体で子供を作る事が不可能で絶望した。でもロアの子供たちがめっちゃ可愛かったのでロアが死んでからも生きていこうと言う感じになって欲しい。次に見せた表情はロアが死んだ後に墓前で大泣きした表情とかだったらめっちゃいいな~~!!!!(←なにもよくない、最悪)

ステルラ・エールライト

吉良吉影程ではないがロアと一緒に居すぎてロアの身体と触れ合うことに異常な興奮を覚えるようになった。一年程でそれは収まるが、その間に患った性癖のせいでボディタッチが苦手になったらしい。されたらめっちゃテンパりながら紫電を放出する。ロアはその度に怪我を負って欲しい。

ロア・メグナカルト

好きな女に何もかも見られて絶望した。四六時中死んだ目で生きるようになり益々心配したルーナが様子を伺いに来た、というのが今回の発端である。なおなぜか限界感情を叩きつけられて以前の約束を大きく飛び越えるクソデカ感情アホ約束をさせられることになりロアはますます顔が死んだ。笑ったルナさんの顔はめっちゃ好みだった。
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