特に差はないんですけどそっちでも応援して貰えたら嬉しいです(露骨な宣伝)
↑
規約確認して宣伝は問題なさそうなのでしましたが、もし引っ掛かりますよとかそう言うのあったら教えてください。
ステルラ・エールライトは絶好調だった。
犠牲者も出たあの戦いから約二年、幼馴染で想い人でもあり大好きな男の子の思考をこの世界でただ一人知る事が出来る権利を手に入れ、課題でもあった人間不信コミュニケーション能力不足を強制的に解消する力技で人生を豊かにしている。
────ロアが私の事をわかってくれるならもう良くない?
いや、何も解決していない。
解決はしてないが、ロアただ一人の考える事が全部わかるようになったのでもうどうでもよくなった。
ロアがステルラのためだけに生きてきたように、ステルラもまた、ロアの事が好きだから頑張って来た節がある。
だから究極的に言ってしまうと、ステルラはロアさえいればいいのだ。
それに今は親しい友人も数人いる上にその中で超越者となった者もいる。確かに寿命の問題は解決できないけれど、それでも楽しく生きていこうとステルラが思えるくらいには充実していると感じていた。
残り限られた学園生活も、あの戦い以降更に周囲と距離を置かれたような気がしたけど全然気にしていない。だって隣のクラスに行けばロアが居るし。気にしてないったら気にしてない。
今日も今日とてルンルン気分で鼻歌を歌いながら歩いていく。
昼休憩の時間はロアと触れ合える貴重な時間であり、放課後も本当は独占したいけどそれは止めろと当人に言われているので抑えている。ステルラは依存気質な女の子だ。
ニコニコと可愛らしい笑顔で舞うように歩き、目的地である教室の前に辿り着く。
そのまま躊躇うことなく扉を開き、中に入っていった。
「ロアー、こんにちはっ!」
「────だからメグナカルト先輩っ! どうか認知してください! お願いします、これから生まれる赤ちゃんの名付け権も上げますから!」
「要らないし俺の風評に傷がつくから却下だ。さっさと教室に帰れ」
「そこをなんとか!! 私の事も好きにしていいのでお願いしますうううぅぅ!」
「困ってない。帰れ」
「私達の未来はどうするんですか!?」
「そんなものはまず無い。というか現時点で既に俺は風評被害を受けつつある」
「う、ううっ! お母さん、お父さん、私……傷物にされちゃいました」
「おいバカやめろ。そういう事を言った途端悪い方向に話が進みがちで……げ、ステルラ」
────なんか知らない女と乳繰り合ってる。
絶望に心が染まりそうだ。
目眩と吐き気が同時に襲ってきて、しかしそれでもステルラは覚束ない足取りで前に進んだ。
問いたださねばならない。
その使命感だけが、ステルラ・エールライトの身体を突き動かしていた。
「…………ロア、その子、だれ?」
「あー……俺が責任を取らなくちゃいけない女」
ステルラは めのまえが まっくらになった!
◇
「なーんだそういう事か~!」
あっけらかんと笑ってステルラはあははと声をあげた。
先程意識を失いながら俺に同化した女と同一人物とは思えないくらいだが、まああんな会話いきなりしてたらそれは驚くだろうな。
仮にステルラがやってたら男を殺してると思う。
「良かったなマクウィリアムズ、ステルラじゃなかったら殺されてるぞ」
「えっ」
「ルーチェ辺りだったら(俺が)殺されててもおかしくないな」
「ええっ」
「あー……確かに(ロアが)殺されててもおかしくないね」
もしかして頼る相手間違えたのかと言わんばかりに不安そうな顔をするマクウィリアムズだが、今日の朝暴露された色んなことを踏まえて少しばかりは話を聞いてやる事にした。
現在こいつが頼れる親族はほぼおらず、天涯孤独に近い状況にある事。
そして家を失くしてしまった分は被災者向けの無賃立て直しでなんとかなったが、家財とかが軒並み消失してしまった所為で色々な保険証とかを紛失したこと。
上級魔法使いとは言え別に裕福だったわけではないので底をついた財産をどうにかするためグラン家に借金したこと(←これが一番驚いた)。
はい、学生の身分でどうにか出来る事ではありません。
首都魔導戦学園はしっかり成績優秀なまま収めれば将来は確約されてるみたいなもんだし、ここに入学したのは正解だ。その分すら奨学金として借金してるのは可哀想だけど。
「まあ入学するかどうかを決めたのは私ではないんですが」
「……そうなのか」
「はい。グラン家当主様がここに入学するのが条件だと」
…………ふーん。
なんかきな臭いな。
「そして、卒業時に最優秀生徒になっていた場合のみ、返却義務を棄却すると」
「……………………アルベルト、言え」
「僕だって知らない事はある。青田買いじゃないかな?」
マクウィリアムズ家は代々上級魔法使いを輩出している優秀な家系で、その生き残りであるアランロドにわざわざその条件を出す理由…………
まあ純粋に将来的な戦力を期待していると考えた方がいいのか?
「去年の最優秀生徒はテリオスさんだね」
「ああ、なるほどそういう事か……条件は?」
「順位戦一位、学力成績一位、魔導成績一位の三冠だ」
はい、クソです。
「そもそも獲れてる世代が少ないだろ、それ」
「少なくともテリオスさんが在籍している期間中は一人も出てないね」
とんでもない条件を押し付けられたアランロドに同情の目線を送った。
アランロドは涙目で見返して来た。
「……もしかして私、結構詰んでる?」
俺とステルラは視線を逸らした。
アルベルトはニコニコ楽しそうにしている。それを見てアランロドは猶更涙目になった。
「せ、先輩いぃ~~……」
「俺にどうこう出来る領域ではない。諦めろ」
よよよ、とアランロドは崩れ落ちてしまった。
昼休みもあとちょっとで終わるのにこいつは学友とか居ないんだろうか。
居ないんだろうな、朝一番で男の家に突撃してくるような奴だし。
ステルラと同じ気配を感じるぞ。
「不名誉な呼び方された気がする」
「気のせいだろ、コミュ障は自意識過剰で困る」
「言い過ぎだよ!」
ぷんすか怒りながらステルラは教室を出て行った。
どうせ放課後になったらロア~、なんて言いながら入ってくるからクラスメイトも慣れた様子を見せている。俺に対して殺意のようなものが向けられているのは気のせいじゃないと思うけど。
「ああ、終わった…………このまま一生お金返すだけの人生やるんだ……もう、何も頼れない……終わった……私の人生……」
崩れ落ちたアランロドがブツブツ呟いてて怖い。
アルに視線を送りどうにかしろと伝えたのに返って来たのはお前がどうにかしろという視線。俺を面倒事に突っ込もうとするな、世界で一番面倒が嫌いな男だぜ。
「お父さん、お母さん…………ごめんなさい、マクウィリアムズ家はここで途絶えます……借金まみれの女なんて誰も貰ってくれないし…………」
うわ、現実的で嫌な悲観の仕方だ。
周りからもお前がどうにかしろと言わんばかりの視線が飛んできている。それら全てを無視してルーチェの膝に飛び込むのも悪くないが、目の前でこうも陰鬱にされると流石に気分が悪い。
そしてそれを止める事が出来る奴が周りに一人もいないのならば、俺がやるしかないだろう。
溜息を吐きながらアランロドの目の前に仁王立ち。
目の前まで近づいて来た俺に気が付いたのか、顔を上げた。
「いいか、アランロド・ミセリコ・マクウィリアムズ」
頬には涙の痕が刻まれている。
苦労しているのはわかるし、その苦労の大元を辿れば俺がいる。責任を取れと言われれば吝かでは無いが、それはアランロドにとって選ばざるを得ない選択肢である。
俺なんぞに頼りきりになる人生より明るい未来はきっとある筈だ。
まったく、こういう役回りは俺にやらせないでほしい。
他人を導けるほどまともな人間じゃないと常々言い続けていると言うのに気が付けばまた逆戻りだ。どいつもこいつも俺に何もかも押し付け過ぎだし俺に何もかも収束しすぎ。
そういう星の下に生まれたのは否定しないけどな。
そうじゃなけりゃこんな
「俺にはお前を助ける義務と責任がある。英雄の記憶なんて大層なものを持っていながら最初の邂逅で決着をつける事が出来なかった俺の落ち度により首都は災禍に落ちたのだから、お前の肉親の死に関与していると言っても過言ではない」
少なくとも、あの戦いで巻き込まれて亡くなった一般人の名前はすべて覚えている。
軍の人間も教えて欲しいと頼んだら『彼らは職務を全うした』とテオドールさんに拒否されたが、それくらいの事は最低限するべきだと思っている。
「首席入学は並大抵の事じゃないし、お前の努力も理解できる。だからここで諦めるというのなら、それはそれでいい」
今の俺はただのヒモじゃなく、お金をたんまり持ってるタイプのヒモだ。
国の法律上堂々と報酬を与えたりとかは出来なかったらしいが、俺がじゃあ金でよろしくと伝えたらすごく微妙な顔をして魔祖が個人財産を渡してくれた。
滅茶苦茶微妙な顔だった。
「お前は俺に助けてくれと言った。だから特別扱いしてやろう」
ていうか多分、アランロドの場合さ。
色々正規の手順踏み外して借金してんじゃないのかな……
俺に被災者達の悲しい現実を敢えて聞かせないようにしていた可能性は勿論あるけど、それにしたって国はもうちょい補助金とか出してると思うよ。
エミーリアさんが携わってたんだぜ。
でもそれを今言うのは追撃になるからやめておく。
あとで一緒に確認しに行こうな。
「俺の手を取れ。お前の諦めた全部、俺が掬い上げてやる」
教室で一体何を言ってるんだか、もう教師入って来てるし。
なんで何も言わないんだよ。そりゃ今この場面で割り込める奴は早々居ないだろうけど黙々と授業の準備を進めてるんじゃあないよ。
差し伸べた手におずおずと合わせようとして、躊躇って、また伸ばして、アランロドは俺の手を掴むのに逡巡している。
じれったい奴だな。
だが、俺はあくまで手を差し出しているだけだ。
積極的に拾い上げようとした奴なんてそんなに多くないぞ。……多分。
「…………メグナカルト先輩って、本当に……底抜けに優しい人ですね」
「助けてくれと言う奴を見捨てる程ではないというだけだ」
「それでもです。……そっか、そうですよね。『諦める』んだ……」
そう呟いて、アランロドは俺の手を取ることなく立ち上がった。
その瞳には先程までのような絶望しておちゃらけたような感情は見られず、真っ直ぐで力強いものに変化している。
「ありがとうございます、先輩。わたし、大事な事を忘れてました」
何が琴線に触れたのかわからないが、どうやら俺の手助けは必要なくなったみたいだ。
ほれみろ。
どいつもこいつも俺の助けなんて必要ない位強いんだ。
ルーチェもルナさんもアイリスさんもステルラも師匠も、どいつもこいつも強い奴ばかり。
俺がしてるのはそんな人たちの心の隙間に潜り込む行為だけ。
「
「……そうか。何かあったら言えよ、比較的楽なことなら手伝ってやる」
「心配ご無用です! あなたの後輩ですからっ!」
そう言ってアランロドは走り去っていった。
もう授業は始まってるだろうけどな。
隣の席から感じる視線が妙に刺々しい。誰が発しているかと言えばルーチェなので、いつも通りでもある。
「メグナカルト、一つだけ大人として言っておく。責任は取れよ」
「教師として止めろよ」
「十二使徒のお気に入りにデカい態度取れる奴がいるか」
大分いい態度してるけどなアンタ。
担任という事もありそれなりに世話になっているので(かつて魔法実技がゴミカスだった名残)仲はいい。
溜息一つ吐きながら授業を始めるその背中からはどこか哀愁が漂っていた。
胸の高鳴りが抑えられない。
ドキドキと、まるで初恋を知った時のような緊張感。
呼吸を乱しながら廊下を駆け抜けて、本来ならば一年生の教室に戻らなくちゃいけないのを無視して、私は一人坩堝に足を運んでいた。
「はぁ、はっ、はぁっ────」
胸を抑えて息を整えながら、観客席に座り込む。
あーあ、なにやってるんだろ。
普段から真面目に、それでいて親しみやすく、誰に見られても好印象を持たれるような優等生になる。
そう決めて、メグナカルト先輩の性格も考慮して、彼が見捨てないような人格に緩やかに自分を変えたのに。せっかくのチャンスを無駄にして授業をサボって何がしたいんだろうか。
自嘲しつつ、思考を落ち着かせるためにも一息。
「…………『諦めない』、かぁ……」
まだお父さんもお母さんも生きていたあの頃。
二人とも、私にとっていい経験になるからと軍部のツテを利用して首都魔導戦学園のトーナメント観戦券を確保してくれた。
次の世代を測るためという建前と、私の将来のライバルになるであろう人達。
そこで行われたとんでもない戦い。
私と少ししか違わないのに人体を超越したような戦いと、それに食らいつく強者達の絶対的な意思を肌で感じた。
「私なんかが勝てる人達じゃないって、そう思ったっけ」
それは憧れだった。
紅蓮に迸る焔、荒々しく猛る嵐、黄金に煌めく炎、全てを無に帰す破壊の魔法、相反する闇と光、人智を越えた怪物、紫電を越えた星光、そして────それら全てを乗り越える紫電を身に纏った英雄。
あんな風になりたい。
あんな格好良くて綺麗で輝かしい人達に、私もなりたい。
首都魔導戦学園に入学して、この舞台に立って、戦いたい。その上で勝ちたい、誰も彼もに認められるような存在に──なりたいって。
叶う訳のない妄想だった。
私は一族の中でも飛び抜けて優秀という訳でもなく、平均的な才能の持ち主だったから。それでも上級魔法使いにはなれると思うし、それくらいの実力はある。
それでも。
あの超越者達の輪に入れるかと言われれば、そんな事はあり得ないって。
「…………だから、貴方の事を知った時は、本当に驚いたんですよ?」
私以外誰もいない坩堝で、贅沢に観客席に座り込み。
膝を組み肘をついて、少し前屈みになるような格好で顎に手を当てながら想起する。
「魔力が無いのに、そんな、『諦めない』なんて言われたら……みんな、憧れちゃいますよ」
この大陸の歴史全てを統合した中で、恐らく五本の指に入るであろう実力者相手にそんな啖呵を切った上で勝利を収める。
ああもう、思い出しちゃった。
かっこよくて、凄くて、熱を感じて、今抱いているこの感情と全く同じ高鳴り。
それこそまるで────初恋を知った時のような、緊張感だった。
「何も変わらなかったなぁ、先輩。かっこいいままじゃん」
それなのに私は何をやっていたんだろうか。
両親が亡くなったことは悲しくて辛いことだった。
今でもそれは尾を引いてるし、完全に乗り越えられた訳では無いんだと思う。
決戦を前にワクワクしてたら乱入してきた白い人型と、それと相対する先輩の姿を最後にその場からテレポートで強制離脱させられて、そこから私は不幸に見舞われて。
どうにもならない現実に勝手に絶望して、諦めてしまった。
「…………よし!」
確かに未来は曇ってる。
私の人生はきっと、借金返済に追われながら過ごす事になるんだと思う。
それが嫌で、もっと自由にやりたいことをやって生きたいのにと言い訳をして、努力を怠ってしまった。
諦めない。
私はそれを学んだはずなのに忘れてしまった。
――――だから、諦めていた私とはここでお別れしよう。
「まずは先輩に責任取ってもらおうかなっ」
最優秀生徒になるための第一歩として、順位戦に一桁入りしないといけない。だから手始めに先輩と戦って勝って見せよう。
きっとあなたなら受けてくれる。
だって先輩は、私を助ける義務と責任があるんだから。
アランロド・ミセリコ・マクウィリアムズ
第一回トーナメントを見てロア達の戦いに目を焼かれた少女。あの頃に抱いた憧れは嘘では無かったが、その後に起きた悲しい現実の出来事に疲弊し自分の力を諦めてしまっていた。手を取る直前に『諦めない』と力強く言っていたロアの姿を思い出し、かつての願いと情熱を胸に宿してロアへの恋心か羨望かよくわからないごちゃまぜの感情を自覚する。この後順位戦の申し込みをしてロアの顔を滅茶苦茶に歪ませた。
ロア・メグナカルト
ステルラの脳を破壊するのが最近趣味になってきた。一々面白いリアクションをするので可愛いと思っている。アランロドに順位戦を申し込まれ死ぬほど断りたかったが前もって責任を取るなどと言っていた上にクラスメイトにさっさと受けろと睨まれたため承諾。嬉しそうに感謝を告げるアランロドに死んだ目で頑張ろうと発言した。