【本編完結】英雄転生後世成り上がり   作:恒例行事

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第三話

 ルーチェ・エンハンブレは偉大な両親の元に誕生した。

 

 魔祖十二使徒第四席、第六席。

 かつての大戦を生き延びた伝説的な魔法使いの愛の結晶、その三女として満天の祝福を受けながら産声を上げたのだ。

 

 齢が三つになる頃、魔法に触れた。

 母親の扱う()魔法を見て、その真似をした。

 

 ────当然、発動しない魔法。

 

 その年齢では当たり前、教えられたばかりの魔法を独学で発動した人類は片手で数える程しかいない。常識を理解していた母親はにこやかに、ゆっくり教えればいいと考えていた。

 

 ルーチェが成長し七歳になった頃。

 少しずつ魔法の使用が可能になり魔祖十二使徒の娘として注目を浴びていた。……と言っても、上から数えて五番目。一番上とは二十も年齢が離れている。

 

 世間的な注目度は低く、彼女に対する期待度が低かったと言ってもいい。

 

 無論両親はそんな事は無い。

 他の子供達と変わらず愛を注ぎ分け隔てなく育てて来た。

 いずれ訪れる災厄に備えつつも、魔法に関すること以外にも注力していた。

 

 ────しかし。

 

 ルーチェ・エンハンブレ十歳。

 

 彼女は、初めての挫折を味わった。

 

 

 

 

 

 

 ♯ 第三話

 

 

「これまでの兄妹が問題なく発動してきた魔法が、私には使えなかった。才能無かったのよ」

 

 自嘲するような表情で吐き捨てながら、手に持ったカップを握り締める。

 その自分の手を一度見て、ゆっくりと力が抜けていく。

 

「そして傷心してる間にステルラに会って、か」

 

 控えめに頷くルーチェ。

 幼い頃から僅かながらに『兄妹たちに比べれば期待されてない』事を理解しつつ、それでも諦めずに努力した。両親はそれならそれでいいと別の道を推奨しても、それは無価値だと考えただ真っ直ぐに鍛え続けて来た。

 

 その結果出会ったのがステルラ(チート)だった。

 

「おまえ運無いな」

「……わかってる」

 

 俺も物心ついた時には既に隣にいたからそこまでの落差は存在しなかったが、そういう背景を持っていたならそりゃあ嫌いにもなる。

 俺だったら嫉妬心で気が狂うね。間違いない。

 

「でも首都学園に入れてるだろ。それはお前の努力の証じゃないか」

「こんなの、何の意味もない。何の意味も無いのよ」

「少し嫌な言い方をするが、お前が否定する事で否定される連中も居る」

「…………知ってる。わかってて言ってるの」

 

 だったらそういう顔するなよ。

 ハ~ア、根がまともでどこまでも努力家だからそういう風に捻れるんだよ。自分の言動の結果すら想像できる奴がここまで捻れたのって俺達が原因だよな。

 マジでステルラに近づくなって言ってて正解だった。俺は多少の積み重ねがあるから話をしてくれるが、手遅れになるところだったな。

 

「最低値が保証されてる分、運があるのかないのか。お前自身が認めない功績でも誰かは認めてる。わかってるんだろ、そういう事も」

 

 だからこそここまで来た。

 親の期待に応えたい、ではない。

 親の力を証明して見せたいのだ。

 

 自分は出来損ないと自嘲する癖に認めたがらないその姿勢はそういう事だ。

 

「親御さんの事好きなんだな」

「……うるさい」

「その上他人を恨むのも良くないと理解してる。自分を卑下する事で正当性を保ちたいが、それをしてしまえば自分で自分の信じる事を裏切る事になる。だからしたくないのに、現実は甘くない。俺にはわからんが、その心意気はいいんじゃないか」

 

 俺にこれだけ言われても激情に駆られないのがその証拠だ。

 おまえ、人を憎むのに向いてないよ。俺みたいに『かつての英雄の記憶』なんて特別なモノを抱えてる訳でもなく、人の悪意がどれほどのモノか明確に悟ってる訳でもない。

 

「俺は弱いからな。すぐに他人に頼るし誰かの所為にするし出来るだけ頑張りたくない」

「でも、恵まれてるじゃない」

「ああ。恵まれて生きて来た。マジで地獄みたいな日々を過ごしてきたし、誠に遺憾ながらその努力は実を結んだ。魔法なんざ一個も使えないが、それなりの場所には辿り着いたよ」

 

 前提として誰かの力を必要とするが。

 ……いや。俺は全て誰かの功績を利用している。

 この剣技も俺が磨き上げたモノではなく、かつての英雄の記憶を参考に鍛えただけに過ぎない。ヴォルフガングとの戦いで熱くなってしまったのは師匠の目を証明してみせたかったから。

 

 俺は何時だって誰かを頼っている。

 

 ルーチェが求めてるモノを俺は持っていて。

 俺が求めていたモノをルーチェが持っている。

 

「なんで俺の話は聞いてくれたんだ」

「……気分よ」

 

 ふーん、気分か。

 なら仕方ないな、そういう日もある。

 今日一日適当に過ごして、また明日学校で話せばいい。

 

「明日も話してくれるようにご機嫌取りしないとな」

「慰めなんか要らないわ」

「俺が飯を作ってやる。任せておけ、ゲテモノを扱うのには慣れている」

「待ちなさい。人の家で何作ろうとしてんよ」

「何って……焼肉だが?」

 

 魔獣って案外美味いんだよ。

 お前にはそれを教えてやる。

 

「俺がある程度強くなったのは魔獣の肉を食い続けたからだ。山に監禁され八年間、俺はひと時たりとも文明を忘れたことはない。あの苦しみと憎しみが俺を強くしたんだ。やるぞルーチェ、俺とお前ならきっとステルラを越えられる」

「出て行きなさい」

 

 若干冷気が滲み始めた。

 ふっ、まだまだだな。師匠の紫電を毎日受け続けた俺に死角はない。

 

「エプロン借りるぞ」

「駄目に決まってるでしょ!」

 

 台所に侵入しようとしたら止められた。

 今思えばルーチェも立派な女性なので、俺のやっている事はそれなりにアウトなのではないだろうか。いや、友達の悩みを解消するためだからセーフだな。

 でも異性の私物を勝手に見ようとしたのはアウトでは。

 

 ……………………。

 

「ルーチェ様、大変申し訳ございませんでした。全ては私の不徳の致すところですので勘弁してください」

「どういう思考回路してるのよ……」

「止めないでくれ。俺は今懺悔をすることで現実の罪を帳消しにしてる所だ」

「罪状はなにかしら」

「すべては神のみぞ知るって感じだ」

 

 頭が高かったのか、艶やかな感触の地面へと這いつくばっていた。

 俺は仮想神へと祈っていた筈だが目の前に降臨した怒りの日からは逃れる事が出来ないらしい。もしかして謝らなかったらバレなかったんじゃないか。

 

「ル、ルーチェ。俺にはわかるぞ、お前は心優しいから本当はこんな事したくない筈だ」

「あら、変質者が喋ってるわね。私は人間にはこんな事しないの」

「俺はペット扱いか。なるほど、そういう……ぶべっ」

 

 俺の口は止まる事を知らない。

 猪突猛進を体現するこの姿勢を普段ならば認めたいところだが、今ばかりは静まる事を覚えて欲しい。

 

「ゲテモノの調理には慣れてるんでしょう? 腕の一本や二本くらい」

「待てルーチェ。待ってくださいルーチェさん。流石にそれはヤバいだろ」

 

 口元から冷気漏れてるんですけど。

 いよいよ怖くなってきたんですけど。

 くそっ。俺じゃこの程度が限界か……! 

 

「まったく。我儘だな、お嬢様は」

「ぶっ飛ばすわよ」

 

 ぶっ飛ばすわよ、という言葉は忠告であり『殴る』と宣言する訳ではない。

 ルーチェはそこら辺が甘いな。隣の部屋に響いたりしないかが心配だが、壁が凹んでる様子はないしかなり頑丈に造られている。俺の身体は悲鳴を上げているが。

 

「ぐおお……!」

「……はぁ。バカみたい」

 

 人が元気づけてやろうとしてるのになんて言い草だ。

 俺だってやろうとすればかつての英雄みたいな事言えるんだぞ。『君はもう救われていいんだ』なんて言いながら聖なる劔を振りかざせばそれはもう完璧。

 でも駄目だな。ルーチェは救われたがってるのではなく乗り越えたいと思ってるタイプだと思う。俺もそうだし、ずっとそのままだろうな。本人が納得できるラインを越えない限りはな~んにも解決しない。

 

「解決、解決か…………」

 

 原因を取り除かなければルーチェはこれから病んだままである。

 それはめんど……ン゛ンッ。いや、違う。ちょっと一緒に過ごしていくのが面倒くさいよね。配慮するのは構わないんだが、それだと本人も息苦しいだろう。俺もめんどくさいし。

 

「あ、思いついたぞルーチェ。お前の悩みをすべて解消する方法を」

「は? 何言ってんの」

「まあ聞け。これは恐らく一番いい」

 

 いや~~、自分の頭脳が良すぎて困っちゃうな。

 こんなに頭の回転が良いってのが比例して魔力系は駄目なんだろう。今になって思えばその通りだ。やはり天は二物を与えず、か。

 

「ステルラと順位戦やって勝てばいいんだよ」

「………………は?」

「そうすればお前の根底から覆せる。これほど完全な手は無いな」

 

 目を見開いて驚きを示す。

 なんだよ、これが綺麗で手っ取り早いだろ。

 ステルラ・エールライトは一般出自でありながら天才で魔祖十二使徒第二席の弟子でありその名を継ぐ程の実力を持つ。既に学園全体でも上位に君臨しつつあるので、そのネームバリューはトップクラス。

 

 それでいて過去の確執を振り払う事も出来る。

 

「何言ってんのよ。勝てる訳……」

「諦めるのか?」

 

 意地悪くなるがそこは飲み込む。

 ここは勝負に出る。ここで決めきるべきだ。時間を置いて冷静にしてしまえばまた思い詰める可能性が高い。他人の人生を左右するかもしれない選択なんて俺に委ねないでくれよ。自分自身だけで手いっぱいなのに、誰かを導けるような立派な人間じゃない。

 

 かつての師匠を救った英雄のようにはなれない……が。

 

「勝てる見込みが本当にないのか。

 お前の努力の引き出しはそれだけか。

 人生の積み重ねはどれくらいの厚みなんだ。

 それは、ステルラ・エールライトに完膚なきまでに叩きのめされるモノか?」

 

 一人で立ち上がろうとしている友を見捨てる事は出来ない。

 何故なら、俺がそうだったから。立ち上がる為の方法を、力を、何もかも授かって来たのだから。

 

 俺が否定する訳にはいかないんだよ。

 

「自分の価値を決めるのは自分じゃない。他人だ」

 

 自身がどれだけ願っても、他人が決める絶対的な評価。

 異名なんてシステムが如実に表している。自分で決めた訳でもないのに他人からの呼ばれ方が変わる、評価値が変動するのだ。

 

 ヴォルフガング、ステルラは正当な後継者として。

 俺は魔祖達から認められた所為で強制的に“英雄”。

 

 では、今のルーチェは。

 一体誰に決められた、一体何時決められた。

 

「覆すなら今だろ。その絶好のチャンスが転がってるのに、掴まない理由があるか」

「…………アンタは、私が勝てると思うの?」

「戦ってるところ見たこと無いからわからん」

「じゃあ何でそんな事言うのよ」

「お前だからだ」

 

 ふん。

 自分で言うのも何だが、俺は他人がステルラに勝てると一ミリも思っていない。師匠はスタート地点が違うから比べようがないが、それ以外の同世代・今の大人達にステルラ・エールライトという少女を打ち倒せる人間は居ないと思っている。

 

 なぜなら俺が倒す相手だから。

 天才が極みに至り、やがて覇を貫いたとしても。

 ただ一人俺だけは追い続けると決めたからだ。重ねすぎた敗北が、俺のプライドを何度も何度も叩き直す。

 

 俺の心を理解できる人間はいない。

 そしてまた、ルーチェ・エンハンブレの心を理解できる人間も居ない。

 だが、俺達には共通点がある。自身が才能に恵まれないと思っていて、他人からの評価を気にしていて、自らの大切な人間の事を軽視などさせたくない。

 

「俺はステルラ・エールライトに勝とうと意気込むお前を知っている。意志が揺らいでも、現実に打ちのめされても、その事実がある限り俺はお前を信じるよ」

 

 俺はスーパーヒーローじゃないからな。 

 人の感情全部読み取って手助けする事なんて出来ないし、罵倒してくるような屑を救う聖人君子ではない。

 だが、自分の感情と向き合い立ち上がろうとしている人間位は否定したくない。

 

「ま、勝てるかはお前次第だ。その責任は俺に要求されても困る」

「アンタね……」

 

 なんだよ。

 しょうがないだろ、結構憶測で喋ってるんだから最後に保険位掛けとかないと不安になるし。こちとら八年間ほぼ他人と触れ合ってこない生活してきたんだぞ。なのに人生相談に乗るの、おかしくないか。

 

「まったく。隣の芝生は青くて嫌になるな」

「…………そうね」

 

 すっかり冷めてしまったお茶を一口含んで喉を潤す。

 一人分の隙間が開いた俺とルーチェの距離だが、存外友人としては適切かもしれない。結局俺とルーチェは同じなのだ。どこまでも自分自身に卑屈な感情を抱いていて、誰も彼もが羨ましく見えて、それでも自分の積み上げてきた人生で対抗するしか無いと理解している。

 

 俺は運が良かった。

 こいつは運が無かった。

 

 それくらいだ。

 

「いい考えが、私にも浮かんだわ」

「楽しみにしてる。俺としてはさっさと振り切って欲しいからな」

「ええ。楽しみにして頂戴」

 

 無事と言えるかわからないが少しは気分が晴れたみたいだな。

 これなら大丈夫だろ。

 

 これにて一件落着、俺の役目は終わり! 

 いや~今日もいいことしたな。有意義な一日だった、問題は学校をサボったことをどう言い訳するかだ。

 傍目から見ればめちゃくちゃ鬱になってる同じクラスの女子生徒を引っ張り出して家に乗り込んだヤバい男になってしまうので、これ、どうにかしなければならん。

 

 師匠は何だかんだ許してくれるだろうし、ステルラも気にしないだろうな。

 周りからの目線もその内収まるだろう。

 

 ヨシ! 

 

「じゃあ帰るぞ。ま、楽しくやれよ」

「そうね。楽しく(・・・)やりましょう」

 

 ニコリと笑顔で微笑むルーチェ。

 まだ何も振り切ってないが、やっぱお前は強いよ。

 心が強い。どれだけ苦しくても辛くても前に進める、俺にはない強さが確かにある。

 

 借り物が無いと土俵に立つことすらできない俺とは、大違いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、教室にて。

 

「おっ、来たね色男」

「ぶっ飛ばすぞ」

 

 茶化してきたアルに返答しつつ教室に入る。

 

「お姫様の調子はどうだった?」

「まあまあだろ。少しは元気になったと思うが」

「泣いてる女の子は放っておけないか、流石だね」

「そんな高尚なモンじゃない。単に友人として付き合いを続けたいから話を聞いただけだ」

 

 まあ俺は紳士だからな。

 他人を気遣える上にむやみやたらと刺激する事はないのだ。多分、きっと。

 ……刺激しまくってたのは俺達なんだが。

 

「揃いも揃って強い癖に問題抱えすぎなんだ。

 俺みたいな誰かを頼らないと生きて行けない人間と違うんだ、もう少し俺を怠けさせて欲しい」

「でも友人が困ってたら手を差し伸べるんだろ」

「そりゃあ友達だからな」

「……君、そういう所だよ」

 

 やれやれじゃないが。

 肩を竦めるアルに腹が立ったが、俺はすぐに暴力を振るう連中とは違うからな。紫電で毎日ズタボロにされ続けた俺にとってはこの程度子守歌と同じだ。

 

 いや、待てよ。

 俺が寛大すぎるのが駄目なんじゃないか。ラインを越えればそりゃあ怒るが、そうでない限り許している俺の心が皆を増長させているのではないか。

 

 なんて……ことだ。

 やさしさという概念を勘違いしていた。

 俺は絶対にしてはいけない間違いを犯していたのだ。

 

「俺は今この瞬間から心を鬼にする。手始めに“英雄”なんて呼び方をしてきた魔祖を手に掛ける事を定めた」

「それは新しい女性を狙うって宣言?」

「バカが表出ろ」

 

 完全にキレた。

 俺の寛大な心が縮小して胃袋程度の大きさに変化する前であってもぶっ飛ばすラインの発言だ。

 青春らしく泥臭い殴り合いをしようじゃないか。魔法使用のない生身でのぶつかり合いなら大体負けない、格闘技とか習ってる連中を除き。

 

「邪魔よ、どいて」

「ちょうどいい所に来た。ルーチェ、俺と一緒にこの愚か者に天誅を下そうじゃないか」

「いやよ面倒くさい。そんな事よりこれに名前書いてくれるかしら」

「婚姻届けか? 気が早すぎるんじゃないだろうか」

 

 机の感触は中々に悪くない。

 大地のゴツゴツ感、虫が身体を這いずる感覚とかに比べれば俺はここが寝室と言われても疑えない程度には。

 なお、高速でぶつかったことによる顔面の痛みは考慮しない事とする。

 

「な…………んだ、その紙は」

「良いから書きなさい。怪しいモノじゃないから」

「それは怪しい詐欺の謳い文句だ」

 

 仕方ないから紙を受け取って内容に目を通す。

 順位戦申請用紙、ね。両名の署名を書いて教師に渡し不備が無ければ受理され、空いていれば都合のつく時間で戦えるのか。こういう手間が必要なのに捻じ込んだあの妖怪共には呆れざるを得ない。

 

「なんで俺の名前を?」

「そんなの一つしかないでしょ。私とアンタが()るのよ」

 

 …………ん? 

 

「すまん、もう一回頼む」

「私、ルーチェ・エンハンブレはロア・メグナカルトに順位戦を申し込みます。正々堂々一対一で、胸を借りるつもりで挑戦するわ」

 

 引き攣った笑みとともにルーチェの顔を見てみれば、それはもう楽しそうな顔をしていた。

 おま、おまえ…………確かにな。いや、うん。言われて見れば合理的ではある。

 

 俺も魔祖十二使徒の弟子だし、先日力を見せつけたし、英雄なんて呼ばれ方をしてる。

 

 ソイツに勝てば証明できるだろうな、そりゃあな。

 

「チャンスを掴まない理由があるかしら」

 

 あぁ~~~~~、もお~~~~。

 俺はただ友人の人生相談に乗っただけだ。それもちょっとしたアドバイスを出しただけで、俺は戦いたいなんて一言も言ってない。寧ろ戦うのが嫌いまである。

 

「私を信じているんでしょ?」

 

 昨日の発言を撤回させていただきたい。

 う、オ、アァ……ッ! 

 

「あーあ、修羅場ってヤツ?」

「うるさいだまれ、俺は今過去の負債を帳消しにする方法を脳内で検索している」

「いいから書きなさいよ! あれだけの事をしといて無かったは許さないわ」

 

 ルーチェさん。

 あなたの発言で俺のヒエラルキーは急降下しています。

 昨日、俺がお前を連れ出してサボった。家にまで乗り込んだ。これは揺らがない事実であり、俺が君に何かしたという事を一切否定できないのだ。

 

楽しく(・・・)やりましょう、私と貴方で」

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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