Forth Wall   作:諸星可夢偉

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こんにちは、諸星可夢偉です。
前回の投稿からかなり間が空いてしまいましたが何とか投稿することが出来ました。第1話は初めての執筆だったのでどのくらい書けばいいか分からず短めでしたが今回は少し長めに執筆しました。文字数がバラバラになりそうですが温かく見守っていただけたら幸いです。


始まりの物語(前編)

ゴブリンの報復とか特に何も起こることなく二人は無事に絹ヶ原高校に到着した。しかし、教室に入ると琉生の机は使い物にならない程にボロボロに荒らされていた。鋭いもので「死ね」や「殺す」と刻んでいたり鼠の死骸が机の上で散乱したりと典型的ないじめの手口そのものだった。

 

「またあいつらか…」

「オタク君!先生に代わりの机があるか聞いてくるよ!」

「頼んだ!」

 

足早に小絵が教室を出ると突然後ろから嫌な気配を感じた。振り向くと水が入ったバケツを持った同年代の男が今にも水を掛けようと構えていた。とっさの判断で琉生バケツのふちを掴み、何とか掛からずに済んだ。

 

「お~い~。放せよ~。」

「毎回毎回、いい加減にしろよ鷹森!」

 

二人の取り巻きを連れて一連の犯行を行っていたのは同じクラスの鷹森藤郎(たかもり ふじろう)だった。過去にも琉生の教科書とノートを切り刻んだり私物をごみ箱に捨てたりと琉生に対して卑劣な仕打ちを行ってきた最低な人間である。

 

その取り巻きの羽田と飯野も鷹森と共に卑劣な仕打ちを行ってきた最低な人間だ。

 

「汚らわしい人種はこの水で清めてやろうっていうのに拒否るんじゃあねぇよクズ!」

「今まで俺に対してひでぇことしやがったくせに善人ぶってんじゃねぇよ!」

 

藤郎は舌打ちした後、油断しきった琉生に向けて水を掛けた。

 

「ぴゃ~ははははぁ!」

「ぐぅっ…」

「お前がこうなったのは俺の父さんへの感謝が足りないからだ!孤児だったお前を拾って今こうして生きてるのは俺の父さんのお陰なのに感謝の"か"の字も無いほど感謝していないなんて生意気なんだよ!」

 

琉生の実の親はこの世にもういない。そのため、孤児だった琉生を当時孤児院の院長を務めていた藤郎の父の鷹森常光(たかもり つねみつ)が引き取って育てていた。しかし、琉生に対する仕打ちはお世辞にも良いといえるものではなく常光を始めとした職員や一緒に過ごした同じ孤児達もみんな当時の琉生を目の敵にしていた。その後に起きた不思議な事件を機に琉生は孤児院から逃げ、唯一の親戚である片桐に見つけられるまで鷹森の孤児院の子供だった。現在はその孤児院は取り壊され無くなってしまったものの藤郎のいじめは収まらないどころか父親に感謝しろと一方的に言われる始末である。ましてや今はオタク文化が危険という思想が琉生のようなオタクをいじめても良いという風潮ができたせいで、さらに拍車をかけてしまっている。少なくともクラスの中で琉生の味方をしているのは小絵だけである。

 

「さぁ今日こそやってもらおうじゃないか。俺の靴を舐めろ。そうすれば父さんの代わりに俺が全てを許してやってもいい。」

「絶対に断る。」

「そうか、ならお前に付きまとわっているあの女を嬲ろうかな~?あの女、ちゃらちゃらしてるけど体は良さそうだからなぁ~?」

 

藤郎は平然と下衆なことを口にした。すると、廊下から何人かの足音が聞こえてきた。小絵が担任の松沢と机を運んでいる生徒指導の阪東を連れてきた。三人とも怒りの形相をしていたが藤郎はそんなことで怯むような男ではなかった。

 

「お前達!また机をダメにしやがって!今度という今度は許さねぇぞ!」

「鷹森!羽田!飯野!今すぐに生徒指導室に来なさい!」

「おっとぉ~先生。そんなことしていいんですか?今先生がかばっているのはフィクションを肯定している犯罪者ですよ?それにぃ俺に対して変なことしたら、俺の父さんが黙ってないですよ?」

「高校生がみだりに親の権力を振りかざすんじゃない!とにかく来い!」

「ぷぷぷw松沢と阪東終わったなw」

「あーあwまぁ身の程知らずな先公だから自業自得じゃない?w」

 

鷹森とその取り巻きはボロボロになった机を運ぶ阪東と共に生徒指導室へ向かった。残った担任の松沢は琉生の身を案じ始めた。

 

「大丈夫か?」

「俺は大丈夫です。ただ、あいつらがさっき小絵のことを嬲ろうかってことを言ってました。」

「はぁ!?マジであいつらそんなこと言ってたの!?」

「分かった。このことについては後で阪東先生に伝えておく。ただな…琉生。本当に申し訳ないがもしかしたらこれ以上は庇いきれないかもしれない。」

「…まぁそこまで行くだろうとは思いました。俺は大丈夫なので本当にあいつらがデカい犯罪を犯したときにだけ動くようにしてください。」

「本当に申し訳ない…まさか鷹森の父親が政治家という権力を使って俺の妻子に危害を加えようとは思わなくて…」

「本当にサイテー!何のつもりなのあいつら!」

「また先生方のお世話になってしまうときはよろしくお願いします。」

「あぁできる限り琉生の味方でいるつもりだがもしもの時は…」

「自分の心配をしてください。本当は松沢先生にこんなこと言うのは間違っていると思いますけどそれでも俺のせいで関係ない人を酷い目に合わせたくないので。」

「すまない…では行ってくる。」

 

琉生と松沢先生のやり取りは世間から見たらありえないものだが琉生の方はとっくに慣れていた。本当は慣れてはいけないのだが慣れるしかなかった。

 

「本当に良かったの?強く言わなくて?」

「いいんだよ。少なくとも渚ちゃんや中学の時の桝井先生のようになってほしくないから…」

 

琉生の言っていたその二人は琉生をかばってくれたがどちらも謎の事故死ですでに亡くなってしまっていたかつての味方だった。事故死とはいえ琉生を味方していた二人が死んでしまった事で学校中では琉生に味方すると死ぬという噂が流れてしまっている。唯一、小絵だけは生きているが友達からはしつこく琉生から離れろと言ってくるらしい。

 

「うん、とりあえず教科書とかは無事だったな。もうすぐ時間だから準備しようか。」

「ねぇ、今日家に家族がいないみたいだからオタク君んちに行っていい?」

「あぁ、いいよ。」

 

タオルで濡れた制服や肌を拭きながら話すと、始業ベルが鳴り始めた。先生が迅速に用意してくれたおかげで琉生は何とか授業を受けることが出来た。そして鷹森達は結局、放課後になっても戻ってくることが無かった。

 

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放課後、二人は琉生の家に帰り宿題をやりつつゲームをしようと考えていた。

 

「ただいまー!」

「おじゃましまーす!」

 

しかし、家の中は不気味と感じる程に静まり返っていた。

 

「あれ?片桐さんいないの?」

「おかしいな…今日は出かける予定とか無かったし出かけるなら鍵を掛けていくか連絡すると思うんだけどなぁ…」

 

片桐は琉生の唯一の親戚で琉生がオタクで中二っぽくなったきっかけの人物だ。彼はサラリーマンとして働いて琉生たちが帰る頃には大体家にすでに帰っているはずなのだが今日はなぜか家にいなかった。琉生にとっても片桐が突然いなくなってしまったのは初めてのことだった。

 

二人はまあいいやと思いつつ、琉生の部屋へ向かうとすぐ近くの片桐の部屋が空いていた。普段は鍵が掛かって入れない所だけに琉生は興味が湧いたので自分の部屋に小絵を待機させてから入ってみることにした。初めて部屋の中に入ってみると大量のフィギュアや漫画やポスターがしっかり整頓して片づけてあった。一見すると、ただのオタク部屋かと琉生は思った。

 

「いやー流石だなぁ。俺に何時間もアニメについて語ることが出来るだけのことはあるなぁー。あれ?確か壁の向こうは外なのになんでドアなんかあるんだ?ていうか家の外壁にこんなドアあったっけか?」

 

その部屋には奇妙な点もあった。部屋の隅には本来部屋とか無い所にドアがあったりポスターの中に見たことも無い文字が書かれていた紙が貼ってあったりと不思議な物がいくつかあったのだ。ちなみにベットの下を覗いてもエロ本とかエロゲーかやましいものはなかった。

 

「へぇー片桐さんて意外と恋愛モノのマンガ読むんだ。…ん?なんだこれ?」

 

琉生は本棚にあった恋愛モノの漫画をパラパラめくりながら片桐のノートパソコンの上にある古びた本に目を寄せた。本の表紙に何が書いてあるか分からなかったがゲームの世界の魔導書みたいでワクワクしながら手に取ってみた。

 

「へぇーよく出来ているなー。でも何のゲームのグッズなんだろう?」

 

適当に本のページを開いてみた、その時だった。

 

ブワッ!!!

「うおっ!?なんだなんだ!?」

 

本を開くとページがパラパラと勝手にめくり始めた。その瞬間本が直視できない程に発光し、琉生の手から離れて浮き始めた本は吹き飛ばされるくらいの風圧の様な耐え難い力を放ち琉生を襲う。風圧の様な力が家具や窓を揺らし部屋中がガタガタと大きな音を立てた。

 

「ちょっとオタク君!?一体どうしたぬぅお!?」

 

後からやってきた小絵も眩しい光と強い力に巻き込まれた。しばらくすると光と力は徐々に収束し魔導書みたいな本がトサッと落ちた。荒れまくった部屋にしばらく沈黙が流れると琉生がその沈黙を割いた。

 

「何だよこれ!何が起きたんだよ!」

「ちょっとオタク君!いったい何が起きたんだよ!?」

「これだ!この魔導書みたいなものを開いた瞬間、突然なんか起きたんだよ!」

「これが?ぐっ…あれっ…なんで開けないの?」

「え?さっきは普通に開いたけど…あれ?開けなくなってるだと!?」

 

さっきまで獣の様に暴れていた本は二人が力を込めて開こうとしても1ページも開けなくなってしまった。

 

「ていうかこれ何なの?この世界に流れた魔導書ならなんか呪いにでもかかったんじゃないのあたしら?」

「えっ…そうじゃん…迂闊だった…俺、死ぬのかな…」

「そ、そんなことあるわけ…」

 

その時、隅にあるドアが突然、ドアに体当たりした様な大きい音を立てながらガタガタと揺れていた。

 

「えっ?何?なに?なにっ!?」

「さっきの呪いが、俺たちを殺しに掛かってきてるのか!?」

「馬鹿!今こんな想像しないでよ!」

 

するとドアが強く開き、二人を吸い込もうとしていた。小絵はすぐに本棚に掴まったが琉生はなすすべなく吸い込まれそうになったが小絵がすぐに琉生の手を掴んだ。

 

「ぜ…たいに…離すなよ!」

「小絵!?そんなことして大丈夫なのか!?」

「今は自分の心配を…しな…さ…」

 

掴んだはいいもののお互いびくとも動けずに吸い込まれる力だけが勢いを増して遂に、

 

「「ぎゃあああああ!」」

 

琉生と小絵は手を繋ぎながらドアの奥へと吸い込まれてしまった。

 

----------------------

 

二人が目を覚ますと見慣れない部屋だった。そこはさっきまでのオタク部屋ではなく見慣れない資料やどこかで見たような地図が壁に貼ってあった。

 

「ここは?ていうか大丈夫?」

「…大丈夫だと思うか?」

 

琉生は小絵の下で下敷きになっていた。

 

「ひゃあ!?ごめんオタク君!」

「大丈夫…イテテ…」

「ちょ…オタク君!さっきあたしらを吸い込んだドアが開かなくなってる!」

「えぇ!?帰れなくなったのか…これが呪い?」

 

二人がどうにかしてドアをこじ開けようとしたがドアはびくともしなかった。

 

「こうなったら別の出口を探すか。」

「えぇー。本当に出られるのー?」

「もはや俺たちが出来ることはそれしかないからな…見つかる保証はないけどな…」

 

仕方がないので二人は見慣れない部屋を探索することにした。するとすぐに別のドアを見つけることが出来た。

 

「おぉ!このドア鍵が掛かってないぞ!」

「ホントに!?あぁ神様…どうかあたしらを帰らしてください…」

 

琉生は勇気を出してドアノブを回してドアを開けた。しかしドアの向こうはとんでもない光景だった。

 

「おい…嘘だろ…?」

「え…マジで…?」

 

二人の目の前に広がっていたのはモンスターがはびこっている草原だった。




最後までお読みいただきありがとうございました。遂に物語が動き始めます。ストーリーの流れはある程度考えていますが、それらを言葉に起こすのにまた時間が掛かりそうです…しばらくは第3話を執筆しつつキャラクターの設定を考えるのがメインになりそうなので首を長くして待っていただけたらと思います。

もし誤字脱字がありましたら是非ご指摘のほどよろしくおねがいします。
感想もよろしくお願いします。

それではまた!
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