あの日に会った君は愛しくて   作:レイ1020

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花火大会編終了です。


全員で五等分!

 

 

視点 三人称

 

 

 

結果として、全員で花火を見るという願いは叶うことは無かった。風太郎が何とか六人全員を揃えようと奮闘していたものの、やはり時間も状況も厳しいものがあり、無理があった。それに、一花を見つけた時も、なぜか本人には花火を見ることは出来ないと断りを入れられ、話を聞いたところどうやら一花は女優関係の仕事をしているらしく、今日は大きな映画の代役オーディションに行かなければいけなかったらしかった。それもあって、風太郎は一花を無理に引き止めようとはせずに最後に『頑張れよ』とだけ言って一花を送りだした(その間に一花にパートナーと言って顔を赤く染めたことは内緒だ)。

 

 

 

 

「ふぅ・・・・・・あ〜あ、花火みんなで見たかったな・・・・・・みんな怒ってるよね・・・・・・」

 

 

 

 

その一花は、オーディションを良好な形で終え事務所の外へ出ると、ふと下の妹達と姉のことを思った。自分の勝手で今日と言う大事な日を壊してしまったことに後ろめたさを感じているのだ。

 

 

 

「よぉ。遅かったな?」

 

 

 

「え!?フータローくん!?・・・・・・なんで?」

 

 

 

「あいつらから一花を連れて来いって言われたんでな。仕方ないから来てやった」

 

 

 

それを聞いた一花は、ふと首を傾げながら、歩き出す風太郎の後をついて行った。風太郎が来たことにもそうだが、他のみんなが”連れて来い”と言ったところにも引っ掛かりがあったからだ。

 

 

 

「早く行くぞ。あいつらも待ってる」

 

 

 

「待ってる?みんなまだ会場にいるわけ?」

 

 

 

「違うな。この近くの公園にだ。多分もう全員集合してるはずだ・・・・・・っとそんなこと言ってる間に着いたな」

 

 

 

「え?・・・・・・あっ・・・・・・」

 

 

 

 

意外と近くにあった目的の公園に着き、一花は公園内を見渡すと、そこには・・・・・・・・・・・・。

 

 

 

 

「あ!一花に上杉さん!遅いからもう始めちゃってますよ〜!」

 

 

 

二乃、三玖、四葉、五月、百合香が手に小さな花火を持ちながら楽しんでいる光景が目に映る。らいはは疲れたのか、近くのベンチで眠りについていた。

 

 

 

「お前が買った花火がこんな時に役立つなんてな。ある意味驚いた」

 

 

 

「えっへんです!」

 

 

 

風太郎からのお褒めの言葉?に四葉は胸を張った。実はこの花火は元々四葉が屋台で買っていたもので、せっかくあることだしとのことで、この公園で一花を含めて全員で花火をしようと言う話になったらしい。そんな中、二乃が風太郎の元に歩み寄る。

 

 

 

「・・・・・・あんたに一つだけ言いたいことがあるわ」

 

 

 

「っ・・・・・・な、何だ?」

 

 

 

「お・つ・か・れ!」

 

 

 

何とも紛らわしいお礼を言われ、拍子抜けする風太郎を尻目に二乃は再び花火を楽しむ。そんな中、今まで黙っていた一花が口を開いた。

 

 

 

「あの・・・・・・みんなごめんね?私の身勝手で・・・・・・花火見れなくて・・・・・・」

 

 

 

「・・・・・・なんで連絡くれなかったのよ?今日のことはあんたにも原因はあるからね?・・・・・・後、アタシもごめん。目的地伝えてなかったし・・・・・・」

 

 

 

「・・・・・・え?」

 

 

 

もっと罵詈雑言的なことを言われると思っていた一花は、急な二乃の謝罪に目を見開いていた。

 

 

 

「そうですね。私も今日は方向音痴で道にずっと迷ってましたし・・・・・・」

 

 

 

「私はずっと失敗で迷惑かけてた・・・・・・」

 

 

 

「私も屋台とかばっかり見てて、全然周りのこと気にしてませんでした。だから私も悪いです!」

 

 

 

「みんな・・・・・・」

 

 

 

次々と上がる妹達の今日の反省を一花は釈然に似た様な気持ちで聞いていた。

 

 

 

「この中には、一花を咎め様だなんてする子は一人もいないわよ?だから、気にしないで?」

 

 

 

「百合香・・・・・・・・・・・・みんな、ありがとう!」

 

 

 

「さて・・・・・・はい、花火」

 

 

 

二乃から渡された一本の花火を一花は受け取り、花火を楽しむ輪の中に入った。そんな光景を風太郎はベンチに座りながら見つめていた。

 

 

 

「誰かの失敗は全員で乗り越えること、誰かの幸せは五人で分かち合うこと。・・・・・・お母さんがよくそんなこと言ってましたね?」

 

 

 

「そうね。・・・・・・喜びも」

 

 

 

「・・・・・・悲しみも」

 

 

 

「・・・・・・怒りも」

 

 

 

「・・・・・・慈しみも」

 

 

 

「「「「「私たち全員で五等分だから!」」」」」

 

 

 

どんなに一人で乗り越えることが困難でも、五人ならば乗り越えられる。どんなに幸せなことがあっても、独り占めはせずに五人で分け合う。母から教わったその時の言葉を、五つ子達は改めて復唱する。

 

 

 

「ふふ、本当にあなた達は成長したわね。もう何があってもあなた達五人ならやり遂げられるんじゃないかしら?」

 

 

 

そんな五つ子達を見て、どこかほっとしたかの様な・・・・・・どこか寂しげな様な表情をした百合香はそうぼやく。

 

 

 

「何言ってるんですか?百合香にはまだまだ教わりたいことがあるんですよ?もちろん五人でもがんばりますが、やはり百合香にはいてもらわないと困ります!」

 

 

 

「・・・・・・そうかしら?」

 

 

 

「うん。私たちには百合香が必要・・・・・・」

 

 

 

「ふふ、全く・・・・・・甘えん坊なところはみんな変わらずね〜・・・・・・」

 

 

 

成長したと思っていたが、そう言ったところは相変わらずな妹達に苦笑いを浮かべる百合香。その後は、五つ子と百合香で花火を存分に満喫し、一夏の思い出を作ることに尽力した。

 

 

 

 

「俺・・・・・・帰って良いかな・・・・・・」

 

 

 

「もうちょっと見てあげても良いんじゃない?あの子達が楽しむ姿を」

 

 

 

「百合香・・・・・・」

 

 

 

ベンチに座り、らいはの様子を伺っていた風太郎は、花火の輪から抜け出て来た百合香に目をやり、体をずらして隣に座らせた。

 

 

 

「風太郎くんは、今日は楽しかった?」

 

 

 

「さあな?いろいろありすぎて疲れたことは事実だ。明日とかに支障が出ないと良いがな・・・・・・」

 

 

 

「そうは言っても、顔は満更でもなさそうね?・・・・・・ふふ、楽しかったのなら何よりだわ」

 

 

 

「お前な・・・・・・」

 

 

 

百合香に茶化され、少々不機嫌になってしまう風太郎だったが、事実そこまで悪くないと思っていた。普段勉強しかしてこなかった風太郎にとってはこうした大きな行事ごとはまさに新鮮そのものだったからだ。

 

 

 

「ごめんなさいね。ねぇ、風太郎くん。・・・・・・あの子達には、今後はいろいろ大変なことや悲しいこと、辛いことが待ち受けているかも知れないわ。それでも、あの子達なら・・・・・・乗り越えられると思う?」

 

 

 

「知らん。それはあいつら次第だ。あいつらが俺の授業をまともに受け、勉強に真剣に向き合うって言うなら乗り越えられるんじゃないか?と言うか乗り越えさせる!それが俺の仕事だ!」

 

 

 

「そっか・・・・・・」

 

 

 

風太郎からのその言葉は百合香に深く刺さった様で、百合香はそっと笑みを浮かべた。風太郎もそれにつられて微笑む。

 

 

 

「あの子達も成長したものね。あの子達と貴方ならきっと乗り越えられるわ。だから・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私がいなくなっても大丈夫そうね・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、その刹那・・・・・・百合香の表情が”非常に悲しいもの”になったことに風太郎は気がつかなかった。

 

 

 

「ん?最後何か言ったか?」

 

 

 

「何でもないわ。・・・・・・あの子達をお願いね?風太郎くん・・・・・・」

 

 

 

「・・・・・・?ああ・・・・・・」

 

 

 

いつも通りにそう言ったつもりの百合香だったが、その表情はいつもの様な自然な笑顔では無く、作られた偽造の笑顔だったことに風太郎はおろか、百合香自身も気がついていなかった・・・・・・。

 

 

 

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