姉妹で感動の再会を果たした後、6人はリビングで仲睦まじくティーブレイクに入っていた。その間に百合香は自分がいなかった今までのことなどを妹たちから全て聞かせてもらっていた。・・・・・・だが、百合香が何より驚いたことが一つだけあった。
「落第?・・・・・・それで学校を移ることになったのかしら?」
「正確には落第しかけただけどね?それをパパが考えて、学校を移して貰ったのよ。・・・・・・全員で必ず卒業する事を条件にね・・・・・・」
この妹達が、全員落第しかけるくらいの頭の悪さだったと言う事だ。この事実にはさすがの百合香も驚きを隠せなかった。
「お父さんも随分と思い切ったわね。・・・・・・もし、わからないことがあれば言いなさい?あまり長い時間は出来ないけれど・・・・・・向こうでも勉強はしていたから、教えられると思うから」
「療養しながら勉強を?・・・・・・無理はしてなかったのよね?」
「程々にしてたから大丈夫よ一花。・・・・・・それにしても、随分髪を切ったわね・・・・・・?」
百合香は一花の髪を優しく撫で回す。一花はかなりのショートカットにしているが、昔は今の二乃ほどに髪を伸ばしていた。撫でられた側の一花は、どこか心地よいかのような表情になっていて、幸せそうだった。
「そうよ?よく姉妹で見間違われることがあったから、中学生の時にさっぱり切ったの。・・・・・・似合ってる?」
「似合ってるし可愛いわよ。・・・・・・もちろんみんなもね?」
「うん。・・・・・・ありがと」
「百合香は相変わらずですね・・・・・・」
「でもよかった!またこうして元気な百合香を見ることが出来て!」
その後、会話はさらに弾み、久しぶりに姉妹で楽しい時間が過ごせた6人は満足そうに、床へつくのだった。
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それから数日後、百合香と妹達は新しい学校【旭高校】へ、顔見せ兼手続きをする為に訪れていた。制服がまだ届いてない為、百合香以外はここらでは有名なお嬢様学校である黒薔薇女子の制服を来ていた為、かなり目立っていた。百合香は制服がなかった為、許可を取って特別に私服でくる事を許されていた。
百合香もマルオの計らいでこの学校に入ることとなったのだが、学年は五つ子の妹達と同じになった。理由は療養生活が長かったと言うこともあり、勉学が他の同い年の子に比べて遅れていると言う事を危惧した為だった。勉学を疎かにしていた訳ではない百合香にとっては、問題ないとマルオには伝えておいたはずだったのだが、なぜかこのようになっていた。
「ここの食堂は広いわね・・・・・・。迷子になりそうだわ」
現在、百合香は学校の食堂にいた。午前中に手続きと学校を見回った後、五月から『一緒に昼食を摂りましょう』とメールが来た為、百合香は先に売店でサンドウィッチを一つ買い、人混みでごった返した中、五月を探していた。・・・・・・その間、彼女にはどこか熱い視線が集まっているのだが、百合香は鈍いのか気がついていなかった。
「五月はどこかしら・・・・・・あ、いた!・・・・・・・・・・・・ん?」
ようやく五月を見つけ、ほっとした百合香だったが、何やら誰かと話し込んでいる様子に疑問を浮かべた。見たところ、相手は男で、五月とは接点がないような普通の男だった。何を話しているのか気になった百合香はさらに二人のもとへ近づいた。
「私が先だったんですから隣の席に移ってください!」
「ここは俺が毎日座ってる場所だ。お前にとやかく言われる筋合いはないな」
「良いじゃないですか!それにここにはもう一人来る予定なんです!」
「俺の知ったことか。・・・・・・はい、俺が先に座ったから俺の席な?」
「なっ!?〜〜〜!!」
五月は、席がたまたま被った男子学生と席の取り合いとなり、結果として負けた。大人気ない行動をした目の前の男子学生に不快な思いを募らせていると、五月が待っていた姉がようやく到着した。
「五月?どうかしたのかしら?声が向こうまで聞こえていたけれど?」
「百合香!聞いてください!この人が・・・・・・」
「・・・・・・」
百合香は五月の話を最後まで聞かせてもらった。そして、話を聞いたと思ったら、今度は百合香は男子学生の方へ顔を向けた。
「何だ?」
「妹がごめんなさいね?この子も別に悪気があって行った訳じゃないのよ。だから今回は許してあげてくれないかしら?」
「あ、ああ・・・・・・。別にそれは構わないが・・・・・・」
「百合香!?」
「私たちは隣に移りましょう?早く食べないと、時間に間に合わなくなっちゃうわよ?」
「どことなく不快ですが・・・・・・わかりました・・・・・・」
さすがに百合香にまで言われては従わざるを得ないのか、五月は渋々隣の席へ移った。
「じゃあ、いただきます」
「いただきます!」
「なっ!?(250円のうどんにトッピングで150円の海老天が2つ、100円のかしわ天といか天とさつまいも天に、デザートに180円のプリンだと!?昼飯に1000円以上かけるとかセレブかよ!?)」
男子学生が驚愕じみた視線を向けていた相手は、五月だった。その小柄な体格にしては似つかわしくないほどの量の昼食と値段総額に男子学生は驚きを隠せなかったようだ。
「何見てるんですか?それと・・・・・・行儀が悪いですよ?」
五月が指さしたのは、男子学生が左手に持った単語帳だった。どうやら彼は勉強をしつつ食事を摂っていたようだ。
「テストの復習してるんだ。放っておいてくれ。・・・・・・そういえばあんたらって顔似てるよな?姉妹か?」
「ええ。そうよ」
「はい。私が妹で百合香が姉です」
「ふ〜ん」
話の興味が尽きたのか、再び勉強に集中する男子学生。その光景を見て、ふと思ったのか五月が口を開いた。
「食事中に勉強なんて・・・・・・よっぽど追い込まれてるんですね?」
「五月、失礼なこと言わないの」
「そいつの言う通りだぞ?・・・・・・ってかお前はお前でそれだけで足りるのかよ?サンドウィッチ一つって・・・・・・」
「ええ。私は少食だから、これだけでもお腹いっぱいなの」
そう言う百合香だが、未だにサンドウィッチひとつも平らげられていなかった。とはいえ、あまり早く食べすぎても彼女の体質ゆえ、戻してしまう可能性がある為なのだが、それを横の男子学生は知る由もない。
「何点だったのですか?見せてください」
「お、おい!」
男子学生はテーブルに置いてあった自信のテスト用紙を五月に取られ、戸惑うがそんなのお構いなしにと五月はテストの用紙をのぞいた。
「上杉風太郎くん・・・・・・点数は・・・・・・・・・・・・100点!?」
「あぁ・・・・・・まじで恥ずかしい!」
「わざと見せましたね!?」
「五月が勝手に見たのでしょう?そう言ってはこの人がかわいそうよ?」
二人がワーワーと騒いでいる中、百合香は五月を注意しながら黙々とサンドウィッチを頬張っていた。
「はぁ・・・・・・ごちそうさん」
「それだけで足りるのですか?良ければ私のを少し・・・・・・」
「満腹だ。・・・・・・ってかあんたの方が頼みすぎなんだよ。・・・・・・・・・・・・太るぞ?」
「なっ・・・・・・」
その男子学生もとい、風太郎は女子にとっては禁句とも呼ばれる単語を発しながらその場を離れて行った。
「〜〜!!あんなデリカシーのない人は初めてです!もう関わりたくもない!」
「落ち着きなさい五月。登校初日に変に目立ちたくは無いでしょう?・・・・・・はい。これ食べて良いから・・・・・・」
そう言いながら百合香が差し出したのは百合香が食べていたサンドウィッチの一切れだった。
「・・・・・・それ、百合香のじゃ・・・・・・」
「あまり食欲がなくてね?五月にあげるわ」
「いりません。と言うか、百合香はしっかりと食べてください。身体が弱いのですから・・・・・・せめて栄養の補給はきちんとしてください」
「ふふ・・・・・・わかったわ」
二人はその後、食堂を出て自分たちの教室へと向かった。なぜこの二人が一緒だったのかと言うと、この二人は同じクラスになった為である。同じクラスであるなら一緒に行動しておいた方が、楽で良いと言う五月の意見を採用した結果こうなった。
だが、二人はこの時は知る由もなかった。五月が先ほど言ったデリカシーのない男が、まさか自分たちの家庭教師になる事になるとは・・・・・・。
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視点 風太郎
俺はあの大食い女とその姉と別れた後、妹のらいはに連絡を入れていた。と言うのも、さっきあいつらと話している際に一度連絡は受けていたんだが、出る暇がなかったんだ。だからこうして今連絡を入れてるんだ。
「もしもし?らいはか?」
『あ、お兄ちゃん!ビッグニュースだよ!もしかしたらね?家の借金が無くなるかもしれないんだ〜!』
「はっ?どう言う事だ?」
『なんかお父さんが良いバイト見つけたんだって。何でもすごいお金持ちの家で娘さんの家庭教師を探してるんだって!アットホームで楽しい職場。相場の5倍の給料が出るんだって!あ、お兄ちゃんの高校に転入して来るって言ってたよ?』
「裏の仕事の匂いしかしないんだが・・・・・・」
俺はとりあえず、そのバイトについては断ろうと決めた。だが・・・・・・。
『成績が低くて困ってるんだって。大丈夫!お兄ちゃんならできるよ!えへへ〜、これでお腹一杯ご飯が食べられるね!』
「っ・・・・・・」
妹からのそれを聞かされたらさすがに断るなんてできるわけがないだろーが!?心の中でそう叫んだ俺は、家のためと思い、渋々受け入れる事にした。だが、俺には引っかかることがあった。
「転入生か・・・・・・。そんなやついたか・・・・・・・・・・・・あ、そういえばあの姉妹・・・・・・」
俺が思い立ったのは先ほどに会った姉妹だった。あの二人の装いを見る限り、転入生であるのは間違いないが・・・・・・・・・・・・もしあいつらが生徒だとすると問題があった。
「
そう。多分と言うか絶対にあいつは俺に対して良い感情は持っていない。少なくとも避けられる可能性は絶対にあった。だからこそ、俺に取れる行動はたったひとつ・・・・・・・・・・・・。
「好感度アップ作戦だろ!!」
「ねぇ?そういえば家庭教師っていつから来るの?」
「明日って言ってた・・・・・・」
「はぁ・・・・・・パパも余計なことなんてしなくてよかったのに・・・・・・」
視点なんですけど、今後は度々切り替えて行こうかなって思っています。三人称の時もあれば一人称の時もあるみたいな感じで。