「中野百合香です。よろしくお願いします」
「中野五月です。姉共々よろしくお願いします!」
「女子だ!」「二人とも可愛いな!」「あの制服って黒薔薇女子だよな?」
「あいつら・・・・・・俺と同じクラスだったのかよ・・・・・・けど、これはチャンスだ!」
今俺たちのクラスの教壇の前で自己紹介をしているのは、さっき食堂であった姉妹だった。その二人の姉妹が同じクラスになることは予想外だったが、好感度アップ作戦をするには絶好の機会だった為、内心ではガッツポーズをしていた。
そうこうしている内に二人の自己紹介が終わり、席へと案内されていた。どうやら妹の方は俺の二つ後ろの席に、姉の方はその隣に座る事になったようだ。席に向かう際に俺の前を妹が横切ったが・・・・・・。
「や、やぁ・・・・・・!」
「ふんっ!」
「だ、だよな・・・・・・」
第一印象が悪すぎたこともあって、もはや取り付く島も無さそうな状態だった。完全に俺のことを毛嫌いしている様子だ。
「よろしくね。・・・・・・確か風太郎くんよね?五月とも仲良くしてあげて頂戴ね?」
「へっ?あ、ああ・・・・・・よろしくな・・・・・・」
だが、唯一に救いなのは、彼女の姉であるこの中野百合香がいることだ。こいつはどうやら俺に対してはそこまで悪い感情は持って無さそうだし、物腰も柔らかそうだったから、もし妹の説得に困ったらこいつを頼ろうと思っている。だからまずはこいつと話をして、味方になってもらおう!・・・・・・にしてもあって間もない俺のことをいきなり名前呼びかよ・・・・・・随分とフレンドリーな姉だこと。
風太郎 視点 終了
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結果として、風太郎のその思惑は失敗に終わった。あの後、休み時間などを利用して何とか百合香に接触を試みるものの、転入生恒例ともいえる質問攻めに百合香や五月はあっていた為、風太郎が近づける状況ではなかったのだ。
「中野さんって向こうの妹さんとは同い年なの?」
「違うわよ?私の方がひとつ年上なの」
「え?じゃあ何で同じ学年なの?」
「私って昔から病弱な体でね?ちょっと前まで学校に行かないでアメリカで療養してたのよ。だから勉学が追いついてないだろうと言われて、妹と同じ学年にしてもらったのよ」
「そうだったの!?な、なんかごめんね?」
「気にしてないわ。勉学に至っては、病院にいる時も励んでいたのだから問題ないはずなのだけれどね・・・・・・」
「そうなんだ〜。あ、それからさ?」
こんな感じで、ひっきりなしに質問をされている為、風太郎は休み時間での接触は諦める事にするのだった。次に狙うは・・・・・・・・・・・・。
「昼食時にアタックだ!」
今度は食堂で昼食を摂っているところを狙おうと、翌日の昼、必死に百合香のことを探していた。側から見れば周りをギョロギョロ見回している変な人のようにしか見えない風太郎だったが、当の本人は必死になっていた為、気がついていなかった。
そして、ようやく見つけた百合香を追って、声をかけて見ようとするが、そこでまた風太郎は絶望をした。何と百合香は他の女友達5人(5つ子)とともに昼食を摂っていたのだ。さすがにそんな中に入って声を掛けられるほど風太郎の肝は座っていなかった。
「(なんてこった・・・・・・まさか友達と一緒に昼飯を食ってるだなんて・・・・・・)」
すると、百合香の隣に座っていた五月が呆然と立ち尽くしている風太郎を見つけ、昨日のお返しとばかりに口角を上げながら風太郎に忠告した。
「残念ですが、もう席は空いていませんよ?」
「み、見ればわかる!」
「あら?風太郎くんじゃない。どうかしたのかしら?」
「い、いや何でもない。気にすんな・・・・・・」
その後、一花が『一緒に食べていきなよ』と誘ってみるが、男1人、女6人の状況は流石に理性が崩壊しそうなのか、全力で拒否をしつつ、その場を去って行った風太郎。その時点ですでに疲れていた風太郎だったが、さらにその後、四葉にテストのことで色々と絡まれてしまったこともあって、結局その後も百合香に接触することはできなかった。
「仕方ない!こうなったら帰宅しているところに狙いを絞るしかねぇ・・・・・・。この際、姉でも妹のでもどっちでも良いから会わねーと!」
風太郎は最後の手段として、帰宅途中を狙う事にした。百合香が校門から出て来るのを物陰から待っていた風太郎だったが、なぜかいくら待っても百合香は出てこなかった。
「何してんだ?一向に出て来る気配が・・・・・・お!出てき・・・・・・・・・・・・妹の方かよ。・・・・・・でもこの際仕方ない!こうなっら直接話してやる!」
ようやく出てきたと思ったら、出てきたのは五月だった。それも、二乃と三玖と共に。そのまま3人は風太郎には気が付かずに帰路へとついていった。風太郎は3人にはバレないよう、こっそり後をつける事にした。その姿はまさにストーカーそのものだった。
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一方その頃、百合香はと言うと、マルオが経営する病院に来ていた。今日は週に一回の検診の日だった為、学校が終わった後、すぐにここにきていたのだ。風太郎が百合香に会えなかったのはこれが原因だった。
いくら療養を終え、昔に比べれば幾分かマシになった百合香の身体だが、一般の人に比べればやはりまだ弱い部類に入る為、定期的に検診を受けることを義務付けられているのだ。
「お父さん。どうかしら?」
「うむ。身体に異常はないようだ。今のところは特に心配するようなことは無い」
「そう。・・・・・・良かったわ」
マルオに検診してもらった結果、特に異常は無いらしく、百合香はホッと息をつく。このていのことは
「そういえば、今日は家庭教師が来る日だったな。おそらくそろそろ到着してる頃だろう・・・・・・」
「そういえばそうだったわね。これで何とかあの子たちの成績が上がってくれれば良いのだけれど・・・・・・」
「・・・・・・そうだな。さて、今日はもう帰りなさい。百合香君もその家庭教師に挨拶はしておきたいだろう?」
「ええ。妹たちがお世話になるのだもの。姉の私がしっかり挨拶しないといけないわ。それじゃあお父さん。また来るわ・・・・・・」
百合香は最後にそう言い残し、薬を受け取った後、病院を出た。
「家庭教師・・・・・・どんな人なのかしらね?」
その家庭教師が、自分が知る人物だとはこの時の百合香には想像もつかなかった・・・・・・。
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視点 風太郎
「くそっ!何で俺がこんな目に〜・・・・・・」
高層マンションの長い長い階段を登りつつそうぼやく俺。ここに来るまでに俺にはいろいろなことが起こった。まず、コンビニ近くで中野・・・・・・五月を待ち伏せていたところ、五月と一緒にいた”何考えてるか分かんなそうな女子”に不審者扱いされて警察に通報されかけ、何とか五月が住まうと見える高層マンションの前までたどり着いたと思ったら、これまた五月と一緒にいた気が強そうな女子にいきなり因縁つけられたり、色々と大変だった。それだけでなく、何とかマンションの中に入り、エレベーターに乗る五月の姿が見え、急いで駆けつけるが間一髪で間に合わず、結局今のように最上階である30階まで階段で登る羽目となったんだ。今日だけで色々あって疲れていた俺にとってはこの階段は拷問以外の何ものでもなかった。
「それもこれも・・・・・・全部
そんな五月への恨みを次々と吐き出している内に、どうやら最上階へ到着したようで、ちょうどその時、五月がエレベーターから出て来るのが見えた。
「おい・・・・・・待て・・・・・・」
「え?・・・・・・貴方、何でここに?」
「いや・・・・・・その〜・・・・・・」
疲れと、会ったら何を言おうか考えていなかった事もあって、俺は口籠った。
「用がないのであれば私は失礼します。これから家庭教師の方が来る予定ですので・・・・・・」
「・・・・・・それは俺だ」
「・・・・・・・・・・・・は?」
五月は鳩が豆鉄砲を喰らったような表情をしながら俺のことを見つめていた。まるで、信じられない!とでも言わんばかりに・・・・・・。一応もう一度言っておくか。
「だから。不本意だが俺が家庭教師なんだよ・・・・・・」
「断固拒否です!な、何で貴方が!」
「仕方ないだろ!?もう決まったことなんだ!覚悟決めろ!」
「そ、そんな・・・・・・こんな人が、
「・・・・・・?
俺は何やら嫌な予感を感じ取り、五月に詳しく話を聞こうとしようとした時、目の前のエレベーターが突如開いた。そこから出てきたのは・・・・・・。
「あれ?五月と優等生くん?二人で何してるの?」
「ストーカー男!?何でここにいるのよ!?」
「えー!?上杉さんってストーカーさんだったんですか!?」
「二人とも早とちりしすぎ・・・・・・」
今日会った、俺を苦しめた奴らだった。いや・・・・・・逆に俺が聞きたい。
「何でこいつらがここに・・・・・・?」
「はぁ・・・・・・そんなの住んでるからに決まってるからじゃないですか・・・・・・」
「女友達5人でシェアハウスってか?仲がいいこった・・・・・・」
今時シェアハウスなんて珍しくもない。それならば納得だと思っていた俺だったが、次の五月の発言に俺は心底驚かされることとなる。
「違いますよ?・・・・・・私たちは・・・・・・
「なっ!?・・・・・・・・・・・・嘘・・・・・・だろ?」
この時俺は、心底家庭教師の話を受けたことを後悔した。
だが、この五つ子との出会いが、俺と”あの時のあの子”を引き会わすきっかけになることをこの時の俺は知る由もなかった・・・・・・。
「・・・・・・っと、暗くなっちゃったわね。早く帰らないと・・・・・・」
ここでようやく第一話が終了しました。このペースで行くと結構な話数になりそうですね・・・・・・。