「家庭教師になった上杉風太郎だ!これからは楽しく勉強を・・・・・・・・・・・・って、何で誰もいないんだ〜!!!」
静まりかえったリビングに俺の声が響き渡った。そう、俺が家庭教師になり、早速勉強を教えようとしたところ何故か誰も俺の目の前にいなかったんだ。どういうことだこれは!?
「みんな部屋に戻りましたよ?でも上杉さん!私は授業を受ける気はありますから安心してください!」
「四葉だったよな?・・・・・・抱き締めていいか?」
「さ、早速みんなを呼びにいきましょう!」
俺の適当なボケを無視した四葉は、他の姉妹がいる二階の部屋へと登っていった。俺もその後に続いた。二階には部屋のドアが6つあり、四葉曰く、手前から百合香、五月、四葉、三玖、二乃、一花の順らしい。・・・・・・そういえば。
「そういえば百合香はどうした?まだ帰ってきてないのか?」
「百合香は今は週に一度の検診をしに病院に行ってます。もうすぐ帰って来ると思いますよ?」
「身体でも悪いのか?」
「いえ・・・・・・百合香は昔から体が弱くてですね、そのせいもあって頻繁に風邪や病気を引き起こす事があったので、こうして毎週一度だけ健康診断みたいな感じで検診を受けているんですよ」
そのように言う、四葉はどこか悲しげに見えたが、状況を知らない俺が口を挟むのはよくないな。とりあえずそれに対しては適当に相槌を打つだけに留めておいた。そして俺たちは、他の4人の生徒達の説得に乗り出していくのだった・・・・・・。
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結果としてはだが、何とか五月以外はリビングに集める事は出来た。・・・・・・集めることだけは・・・・・・。
「一花〜?何でまた部屋があんなに散らかってるの?ついこの間百合香が片付けていたはずなのに?」
「ん〜、わからないけど、自然的にかな?」
「あ、みんなクッキー食べるー?」
「二乃・・・・・・何で私のジャージ着てるの?」
こんな感じでこいつらはただ集まっただけで、勉強する気など微塵もないらしい。唯一四葉だけはやる気みたいだが・・・・・・。
「あ、あんたもクッキー食べる?」
「え?あ、おう・・・・・・(毒なんて入ってないよな?)」
「そんな顔しないでよ?別にクッキーに薬なんて入れてるわけじゃないから。・・・・・・食べてくれたら授業受けてもいいわよ?」
「あ、ああ・・・・・・」
二乃のさっきまでの攻撃的な態度とはうって変わった人懐っこい態度に俺は少なからず疑問を浮かべたが、俺の誠意を見せるチャンスだと踏み、遠慮なくクッキーを口に含んでいった。ちなみにそのクッキーは美味しく、二乃の言った通り、薬みたいなのは入っていなかった。
「・・・・・・パパと何の約束をしたのかは分かんないけど・・・・・・・・・・・・ぶっちゃけ家庭教師なんていらないのよね〜?」
「・・・・・・はっ!?」
「な〜んてね?はい、お水」
一瞬二乃が出した剣呑な雰囲気に俺は顔をしかめるが、すぐに元の調子に戻った為、気のせいだと割り切り、俺は二乃から渡された水を一気に胃の中へ流し込んだ。・・・・・・すると、途端に目の前がぼやき始め、意識が朦朧とし始めた・・・・・・。
「ご愁傷様〜・・・・・・」
二乃が不敵な笑みを浮かべながら何かを発する中、俺の意識は静かに落ちていった・・・・・・・・・・・・。
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視点 百合香
「ただいまー」
私は病院での検診を終えた後、足早に家に戻ってきた。だが、家に入ると何やら騒ぎ声がリビングから聞こえてきた為、私はすぐに向かった。・・・・・・そこで私が見たのは・・・・・・何故か机に突っ伏して寝ている風太郎くんと、それに対して妹達が何やら言い合いをしている何とも珍妙な光景だった。
「え〜と?これはどう言う状況なのかしら?」
「あ!百合香!お帰りなさい!実は・・・・・・」
私は四葉から事の顛末を聞かせてもらった。風太郎くんが妹達の家庭教師だと言う事、それを妹達が拒否した事、二乃が風太郎くんに対して睡眠薬を盛った事全てを・・・・・・。
「あらあら。私がいない間にそんな事になってたのね?・・・・・・とりあえず、風太郎くんは私が送っていくわ」
「はっ!?何で百合香が行くのよ?」
「妹がした悪戯は姉である私にも責任はあるからかしらね。とにかく、二乃は明日にでも風太郎くんに謝っておきなさい?いいわね?」
「・・・・・・わかったわよ。じゃあそいつは任せるわ。あ、五月、百合香だけじゃきついだろうから一緒に送ってあげて」
「わかりました」
二乃からの返事を聞き、満足した私は五月に手伝ってもらい、上杉くんをタクシーの中へ運び込んだ。
「それにしても、あの風太郎くんが家庭教師か・・・・・・。
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「・・・・・・ん?あれ、ここは・・・・・・」
「気がついたかしら?」
タクシーの乗る事、数十分・・・・・・タクシーは風太郎くんの生徒手帳に載っていた住所にたどり着いた。それと同時に風太郎くんが目を覚まし、外に出てあたりをキョロキョロとしていた。
「あれ?百合香?・・・・・・それと・・・・・・五月!?な、何で!?さっきまで俺は・・・・・・」
「二乃に一泡吹かせれたんですよ。これに懲りたら家庭教師は諦める事ですね?」
「五月・・・・・・ごめんなさいね?この子も悪気があって言ってるわけではないから・・・・・・」
「わかってる。・・・・・・だが俺には家庭教師をやらなきゃならない理由が『やっぱりお兄ちゃんだ!おかえり!』」
風太郎くんが喋ってる中、後ろから小さな女の子が抱きついてきた。
「あれ?その人達誰?もしかしてこの人達が生徒さん?あ、せっかく来たんですからご飯食べていってください!」
「ま、待てらいは!この人たちは忙しいんだから・・・・・・」
「良いかもしれないわね。・・・・・・らいはちゃんだったかしら?良ければお姉さん達もご飯食べていっても良いかしら?」
「もちろんです!どうぞ!」
「「百合香!?」」
私のこの行動は予想できていなかったのか、二人が私に詰め寄って来る。
「何を考えている?」
「そうですよ!何で・・・・・・」
「あら、あんな小さな子から可愛くお誘いを受けたのだから、乗っても構わないんじゃないかしら?それに、風太郎くんが何でそこまで家庭教師に執着しているのかも知りたかったから・・・・・・」
その後、何とか二人を言いくるめた私は、風太郎くんの家でらいはちゃん特製のカレーと卵焼きをご馳走になった。辛いものはあまり得意では無いのだけれど、辛さもほど良かったため苦もなく食べることが出来き、私は満足。そして、風太郎くんが何故家庭教師をする事になったのかも聞かせてもらった。
「借金を返すために家庭を教師を引き受けた。そう言うわけかしら?」
「ああ、だがお前達が気にする事じゃ無い」
夕ご飯をご馳走になった後、私と五月、風太郎くんは迎えのタクシーを待つ間に先ほどのことを話していた。
「貴方の家庭の事情は確かに理解しました。ですが、協力はしませんからね?貴方の力を借りずとも、やり遂げて見せますから・・・・・・」
「っ!!そうか!それだよ五月!!そうだよな!条件は卒業だもんな!何も全員を教える必要はない!」
「!?・・・・・・!?」
「明日、家にみんなを集めておいてくれ!良い考えがある!」
「ふふ・・・・・・そう言うことね。風太郎くん・・・・・・」
私は風太郎くんの考えていることが理解でき、ふと笑みを浮かべた。おそらく5つ子全員を教えるわけではなく、成績が乏しい子達だけを教えようと言う魂胆なのだろう。確かにそれは良い考えだ。・・・・・・だけどね?風太郎くん・・・・・・。貴方は知る事になるわ。
あの子達の壊滅的に酷い学力を・・・・・・・・・・・・。
百合香をどのポジにしようか迷う。