東方怪獣娘ー怪獣を宿す幻想少女達ー   作:ちいさな魔女

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第106話

霊夢は走り出して、諏訪子の触手を炎で焼き払う。しかし、触手は大地から次々と生えていく。リグルが槍からマイクロスピアシェルを放って触手を焼き、巨大化した諏訪子の胴体に直撃させる。

 

霊夢とリグルは巨大化した諏訪子と戦う。諏訪子は巨大化したにも関わらず、素早い動きで二人を圧倒した。

 

しかし、そんな一時間も続いた戦いに、終止符が打たれようとしていた。

 

諏訪子は金属の輪を振り下ろし、霊夢はお祓い棒を『炎刀・夢想封印』で金属の輪を真っ二つに裂いた。

 

「馬鹿な!?」

 

諏訪子は驚愕した。地球上の金属を生み出して生成した世界最高の硬さとなった金属の輪を、いとも容易く斬られた事に。どれ程の熱と切れ味があればこんな事が出来るのか。

 

「霊夢だけに気を取られないでよ!」

 

リグルがそう言った瞬間、諏訪子の体に無数のソルジャーが群がっていく。諏訪子は振り払おうとしたが、ソルジャー達は足を強く食い込ませて離れない。

 

リグルが宿した影響か、リグルはソルジャーレギオンを時間差も無く何度でも胸元の『レッグチェンバー』から産み出せるようになった。無制限に産み出せると言っても過言ではない。

 

その為、数百メートルもある諏訪子の体はあっという間にソルジャーレギオンの大群によって覆い尽くされてしまう。更に、ソルジャーレギオン一匹一匹には地球上の蟲達の特性がそれぞれ備わっている。蝶や蛾の羽を持つ者は華麗に舞い、蜂や蟻の特性を持つ者は毒針や噛み付きで攻撃したり、蝉やキリギリスの特性を持つ者は騒音を耳元で響かせる。しかし、彼等は共通して大型の生き物に対して一斉に群がり、電磁波を発生させて電子レンジのように相手を蒸し殺す攻撃を行う。まるで蜜蜂の一斉攻撃だ。

 

流石の諏訪子も耐えきれない為か、ソルジャーレギオンが体に群がられて蒸された事で背中から体を倒してしまう。枯れた妖怪の山の表面を潰すように倒れた諏訪子は、起き上がって拳を握り締める。

 

「『マグマアーマー』!」

 

諏訪子は全身にマグマを纏い、ソルジャーレギオンを剥がす。

 

「っ!霊夢、お願い!」

 

「ホントに慈悲深いわね。でも、リグルの分までやってやるわよ!」

 

そして、霊夢は全身を無数の陰陽玉で囲んだ。陰陽玉は虹色に輝き、虹色の炎を纏っている。

 

霊夢は諏訪子の頭に向かって飛んでいき、虹色の輝きと共にその技を叫ぶ。

 

博麗の巫女の切り札にして、ガメラとジラの本気の一撃が込められた究極奥義。

 

「『『夢想天生』!!』」

 

『空を飛ぶ程度の能力』により何者にも縛られぬ存在となれる霊夢と、『祈る程度の能力』によって祈りの力で対象を強化し続ける麟。誰にも干渉されず、麟から祈りを受けて信仰を得続ける事で強くなり続ける。

 

「な、何だとおおおおお!?」

 

諏訪子は触手で捕まえようとするが、プラズマ火球とフィリウスの熱線を合わせた熱線を放って、霊夢に直撃させる。しかし、霊夢への攻撃はすり抜けた。

 

「『此れで終わりよ!!』」

 

『いっけえええええええ!!』

 

麟は精神世界で祈る。霊夢の勝利を。

 

そして、霊夢が諏訪子の額に触れた。まるで悪い子供を戒めた後に宥める母のように、優しく触れた。

 

その瞬間、諏訪子の体が虹色の光に包まれていき、その体が粒子状に分解されていき、虹色の光の粒が妖怪の山に降り注ぐ。

 

粒は大地に降り注ぎ、生命を芽生えさせる。枯れた木は腐り果てた後に土へ還り、草を生やして大樹へ成長させる。花畑を咲かせ、枯れ果てた大地に恵みをもたらす。

 

「・・・ありがとう・・・私を解放してくれて」

 

諏訪子は目から涙を流す。巨大化したその体は無数の虹色に輝く光の粒となり、枯れ果てた妖怪の山に降り注ぎ、新たな生命を与えて芽生えさせる。

 

そして、巨大化した諏訪子が消えた後、その中に居たであろう諏訪子が大地に落下していく。

 

(ごめんなさい・・・神奈子・・・早苗、そしてガメラに霊夢・・・・・・イリスも・・・)

 

力を大幅に失い、自分は消えてしまう。信仰が無くなれば弱まるだけでなく、自分は消えてしまう。このまま落下すれば自分は死を迎える。信仰で形作られた神である自分が死んだら、輪廻転生の輪にも加われず、このまま消えてしまう。完全なる無だ。

 

自分はもう必要無い。神奈子と早苗の二人なら、この幻想郷でやっていけるだろう。もし自分が消えたなら、神奈子に守矢神社を明け渡すつもりだった。どうせ負けた身だ。

 

(でも・・・出来れば・・・嘗て早苗の先祖を産んだように・・・また恋とかしたかったなぁ・・・)

 

そんな未練を抱えた諏訪子だが、消える運命を受け入れようと目を閉じた。体から力が失われていくのを感じる。

 

しかし、諏訪子は突然頬に何者かの手が触れる感覚を覚えた。

 

諏訪子は目を開いた瞬間、ある者の顔が目の前に現れ、そして諏訪子の唇にキスをした。

 

(・・・えっ?)

 

諏訪子の体に力が入る。諏訪子の体に霊夢とガメラ、麟とジラの力が入ってくる。

 

それだけではない。諏訪子の体にある物が流れ込んでくる。

 

(信仰!?それも一人分じゃない!?何千・・・いや何万人!?いや下手したら・・・私の全盛期以上の!?)

 

諏訪子は驚愕した。霊夢から受け取った信仰。それは霊夢からと言うより、霊夢の精神世界にて神楽を舞う麟からの祈りの力によるものだった。神楽は元々神を祭る時に奏する舞楽の事だ。諏訪子と相性の良さもあり、諏訪子にとっては数億人分もの信仰を得たように感じたのだ。

 

『霊夢・・・本当に良いの?』

 

(良いのよ。何だかんだほっとけないわよ。それに、こいつも怪獣の力に呑まれた訳だし)

 

『口移しで自分から力を与えるなんてね。輝夜さんなら兎も角、ルーミアちゃんやアリスさん、こあさんはキレちゃうよ?』

 

(ちゃんと説明するわ。この子も私の元に居させるって)

 

そして、霊夢は諏訪子をお姫様抱っこの要領で抱き抱え、守矢神社の境内に降り立った。

 

「・・・ありがとう霊夢。それと、中に居る子もね」

 

「『・・・まあ、アンタは私にキスしたんでしょ?イリスの影響のせいにしないで、私の事をきちんと愛してくれる?私はハーレム築いちゃったけど、責任はちゃんと取るし、皆愛するって誓うけど、アンタもそうしなさい』」

 

すると、霊夢の体が光り、軈て二人の少女に分かれた。一人は二胡を背中に担ぐ麟であり、もう一人は諏訪子を抱き抱える霊夢だった。二人とも通常形態に戻って居る。

 

「・・・霊夢ったら此れで五股だね」

 

「うっさい!」

 

「でも、別に良いんじゃない?霊夢がちゃんと責任取れるなら、だけど?」

 

「・・・罪深いのは承知よ。でも、責任取って皆を愛するわ。それは本当よ。こいつのお陰で、改めて皆が大好きだって自覚したんだもの」

 

「・・・本当に何で?私は消えても良かったんだよ?」

 

すると、霊夢は諏訪子を抱き締めた。片腕で器用に抱き締めた霊夢は、諏訪子に対して激昂する。

 

「消えて良いとか軽々しく言うんじゃないわよ!アンタが消えて悲しまない奴が居ないって言いたいの!?」

 

「・・・あっ」

 

諏訪子は気付く。思えば幻想郷に来たのは、神奈子の独断ではあったが、自分が存在出来るよう幻想郷で新たな信仰を得させる為だ。そして早苗は、自分達に着いて来た。再会出来ずに別れた姉も、家族も、友も、世界も、早苗は全てを捨てて、自分達の為に着いて来てくれた。

 

「・・・そうだった。私が消えたら神奈子や早苗は悲しんじゃうよね・・・ごめんね霊夢。私、そんな大切な事に気付かなくて」

 

「謝る相手が違うでしょ」

 

「博麗の言う通りだ諏訪子」

 

そして、三人の前に二人の少女と一柱の女性が近寄った。神奈子は無傷のままだが、魔理沙と結芽はボロボロだ。

 

「すまん霊夢・・・負けちまった」

 

「ああっ、もう悔しい!絶対強くなってリベンジしてやるんだから!」

 

魔理沙は申し訳無さそうにしているが、結芽は悔しがっている。

 

「この二人は実に良い健闘を見せてくれた。だが諏訪子よ。私がお前の為にこの地へ来たというのに、勝手に死のうとしたのは感心せんな」

 

「・・・うん」

 

諏訪子は霊夢に降ろしてもらい、境内に立つ。

 

「諏訪子。お前は罰として一ヶ月間、守矢神社への帰還を禁止する。博麗の元で暮らすと良い」

 

「っ!神奈子・・・」

 

「博麗よ。一ヶ月の間だが、諏訪子をお前の元で過ごさせてやってくれ。お前の元で暮らせば、諏訪子も問題無くイリスを制御出来るようになるだろう」

 

神奈子の提案に、霊夢は首を縦に振った。

 

「分かったわよ。諏訪子だったわね?一ヶ月間、ただで住まわせないわ。神様だからって、私の神社に住む以上は働いて貰うわよ。家事も手伝って貰うし、修行にも付き合って欲しいし、参拝客集めとか依頼解決とか、手伝って貰うわよ」

 

「勿論だよ。宜しくね、霊夢!」

 

霊夢と諏訪子は手を握り合う。

 

その時、リグルは守矢神社からこっそり去ろうとした。しかし、神奈子はリグルの元を向いて、リグルに話し掛けた。

 

「お前も功労者だ。我々からも奮闘を称賛させて貰うぞ。蟲の王よ」

 

「えっ!?ひゃ、ひゃい!」

 

リグルはあまりにも緊張し、返事を噛んでしまう。

 

全員で話し合う中、霊夢は魔理沙と結芽に尋ねた。

 

「そう言えば、アンタ達は神奈子さんとどれ位凄い戦いをやったの?」

 

「まあ聞いてくれ。変身させたは良いけど、私達は一方的に弄ばれたよ」

 

「悔しいったらこの上無いもん!」

 

「私は見てただけだけど・・・ホントに凄かったよ」

 

魔理沙と結芽、そしてサチは語る。軍神である神奈子との戦いを。いや、神奈子の無双劇を。

 

(いやースクープ撮れて満足したしー、マジ卍~)

 

上空から見ていたはたては、カメラに撮れた写真を眺めて、数々の戦いを撮れた画面に写る写真を全て見た。

 

(あの神奈子って神と、炎を纏った女の子と魔理沙の戦いも良かったわね~)

 

はたても注目した、神奈子と戦った魔理沙と結芽の奮闘。それは、一時間前に遡る事になるのだった。




オリジナル怪獣

シン・ソルジャーレギオン
体長50㎝

地球上の様々な昆虫の能力を持つソルジャーレギオンの大群。しかし、あくまで珪素生物の為、ソルジャーの食べ物はシリコンであり、ソルジャーは食べられない。

新技集

『マグマアーマー』
使用者:諏訪子
マグマを体に纏う。熱を与えれば武器になり、冷やせば鎧となる。
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