三人はヤマノケの巣らしき場所にやって来た。三人が感じたのは、吐き気を催す空間に充満する不快感。
「此れは凄いな・・・吐きそうだ」
「うん・・・この中にヤマノケが居るんだね」
「ああっ。ヤマノケはこの辺りによく出るからな。ほれ見ろ」
萃香が巣穴に指を差す。其処から一本脚で跳ねながら移動する、胴体に顔が付いた頭のない妖怪が、何体も現れた。
「取り敢えず、オリジナルで充分!」
麟は怪獣娘形態となり、二人が手を離した瞬間に分身体に向かって跳んだ。エリスと萃香が、麟の足を掴んで跳ぶのを手助けした。
そして、麟は指先に向かってお経を唱えた後、ヤマノケの分身体を足で踏み潰した。分身体は潰されて消えた。
「そらよっと!」
更に麟は分身体を尻尾で薙ぎ倒し、続いてもう一体の分身体を爪で引き裂いた。
「まあ麟なら大丈夫か!だが本体を仕留めなきゃ切りが無いぞ!」
「麟さん!手伝うよ!」
萃香とエリスも、地面に降り立ち、ヤマノケの分身体を蹴散らしていく。エリスは開始早々『イーヴィルショット』を放って分身体の大群を一掃した。萃香もマガオロチを纏って怪獣娘形態に変身して、手甲を纏った拳で分身体を地面に叩き付けるように殴った。その瞬間、地面が飛び出してヤマノケの分身体を吹っ飛ばした。
『テン・・・ソウ・・・メツ』
巣穴から巨大な人間の指が五本も出てきて、穴の淵を掴んだ。そして、穴から先程の分身体よりも巨大なヤマノケが姿を現した。
『テン・・・ソウ・・・メツ』
ヤマノケが三人に向かって炎を吐いた。三人はその場から跳んで火炎を避けた。火炎は地面に当たって爆発を起こす。
「『イーヴィルガン』!」
エリスがカラータイマーに手を翳した後に、ヤマノケの胴体に開いて翳した掌から光弾を飛ばした。ヤマノケの胴体に当たって爆発が起きて、ヤマノケの身体を貫通するようにヤマノケの背中から爆発が起きて火花が飛び散る。
「『マガキック』!」
萃香は空中へ浮かんだ後にヤマノケの頭に向かって急降下し、マガ迅雷のエネルギーを足に纏わせて空中から蹴りの体勢を取った。
ヤマノケは萃香に向かって口から火炎を放つが、萃香には通用せず、火炎を掻い潜った萃香に顔を蹴り飛ばされ、森に背中から倒れたヤマノケ。
『イタイヨ・・・イイタイイヨオオオオオ!!』
ヤマノケが絶叫を上げる。
すると、ヤマノケの体に無数のビームが降りかかり、更に火炎がヤマノケを襲う。
「来たか、白狼天狗達」
「無事か!?ヤマノケが動き出したから様子を・・・って萃香様ァ!?」
「よぉ椛!久し振りだな!」
其処へリーダー格の白狼天狗である椛が現れた。
「此れは萃香様!よくぞお越しくださいました!えっとそちらの方々は・・・・・・っ!!」
椛はエリスを見て驚愕した。何故ならエリスの姿は、椛(正確には椛が宿したガーディー)が知っている戦士の姿だったからだ。
「えっ!?まさかの犬耳!?凄い!本物だぁ!」
「ひゃっ!?な、何を・・・うぅ・・・振りほどけないです・・・」
エリスは椛に抱き着き、耳を弄る。今は緊急事態の筈なのに、何故か振りほどけない。椛が喜んでいるのは、尻尾が激しく左右に揺れてる様子から、簡単に想像出来た。それは椛が喜んでるだけでなく、ガーディーとしての喜びの感情も沸き上がっている。
「よっと!」
麟がヤマノケの振り下ろした手を跳んで避けた後、ヤマノケの掌に乗った後に懐から取り出したジラライザーを掴んで、トリガーを引いて目の前に展開された四角い穴に入る。それは、外での一秒がその中では一分と時間の流れが違う『インナースペース』という異空間だ。
麟は既にカードをセットしており、メダルを三つ懐から取り出してセットする。
「ゴーレム!ガーゴイル!ぬりかべ!」
『ゴーレム!ガーゴイル!ぬりかべ!』
そして、麟の背後に二代目ジラが姿を現す。
『グオオオオオオオオッ!!』
「土の力よ!今ここに!ジラァッ!!」
トリガーを押した麟。そして、無数のレンガみたいな体をしたゴーレム、石像で出来た悪魔のような姿の怪物、そして石の壁のような妖怪が麟に重なり、麟の姿が変化する。
『ジラ・ギガントマッド!』
そして、麟の怪獣娘形態が変化した。両手両足は無数のレンガで覆われた鎧に包まれ、背中には石の翼、腰からは石の尻尾を生やしている。胸は平坦になっており、まるで壁のようである。
「さあ行くよ!」
麟がヤマノケの腕の上を走り、ヤマノケの顔を殴った。岩の拳で殴られたヤマノケは、巨体にも関わらず麟のパワーによって吹き飛ばされた。
「必殺!『岩石キック』!」
ヤマノケから跳んだ後、麟は両足を岩石で覆い、そのまま落下してヤマノケのお腹を押し潰す。押し潰されたヤマノケは地面に叩き付けられ、腰が地面に埋まった。
「『
麟は大地に降り立ち、地面から泥で出来た醜悪な見た目をした土の巨人を生み出した。土の巨人はヤマノケに襲い掛かり、津波のようにヤマノケに乗っかった。
『テン・・・ソウ・・・メツ』
ヤマノケは火炎を吐くが、土の巨人は焼けない。更にヤマノケは異変に気付く。
『・・・アアアッ!』
ヤマノケは全身から力が抜けていく感覚を覚えた。自分が蓄えてきた力が、土の巨人によって吸い取られていくのだ。そして、ヤマノケの体は石になっていく。
「此れが土の力か・・・」
麟も土の力を見て驚いていた。他の属性も強力だが、吸収と質量の強さでは土属性が上だ。もし集団戦闘になった場合、土属性が適任だろう。
そして、ヤマノケが完全に石化した。
「よし!皆一斉に攻撃しよう!」
麟が叫んだ。その瞬間、萃香達が攻撃態勢に入る。
「『マガ迅雷』!」
「『イーヴィルショット』!」
萃香が口から光線を、エリスがイーヴィルティガの必殺技を放つ。
「『オルタナカリバー』!」
『機銃一斉照射!!』
「火炎を食らえ!!」
椛は剣を振り下ろして光線を放ち、白狼天狗達は左手の機銃から砲弾を放ち続け、リーダー格の白狼天狗が口から火炎放射を放つ。
そして、石化したヤマノケに全ての光線が直撃し、ヤマノケは爆発を起こして石化した体がバラバラに吹き飛んだ。破片が周囲に飛び散り、岩石の雨が地面に落ちていく。
すると、周りに居た妖精達の様子が変化した。ヤマノケにとり憑かれた状態から元の状態に戻って、その場で眠った。
「妖精達が戻ったって事は、人里も大丈夫だね」
「ああっ。っ!!」
萃香は突然、ヤマノケとは比較にならない禍々しい気配を感じて、冷や汗を流した。
「な、なんだこの嫌な感じは!?」
「・・・っ」
エリスは緊張して息を飲む。
「霊夢達の所からだよ・・・なんなの?」
麟は周りを見渡す。椛達はその禍々しさに耐えられないのか、その場で膝を着いていた。
「どうしよう・・・あっ!」
麟は気付いた。このままでは霊夢の元に迎えない。ではどうやって霊夢の元へ向かうか?それは、麟の能力と陰陽道の術を利用した移動方法だった。
麟はその場で、神楽を舞う。
「僕の祈りを霊夢に届ける!この体も、共に送る!」
「っ!?麟、それは!?」
「大丈夫。僕が死ぬ訳じゃない。肉体を一時的に分解して、霊夢に祈りを届ける。距離は関係無い。祈りは届くから!『疑似・泰山府君』!」
そして、麟の体が金色の光へ変化して、無数の螺旋に変化した後に山頂へ向かって行った。
この祭りが、後に霊夢を救う事になるのだが、それは本編にてご覧頂きたい。
オリジナル怪獣図鑑
名前:ヤマノケ
別名:怨念怪獣
身長:65メートル
体重:4万トン
山に捨てられた女の怨念が集まって出来た妖怪。女に憑依して一族を滅ぼすのが目的。憑依した女の数だけ強くなる特性があり、放っておけば憑依される女が増えてヤマノケが強くなる。口からは火炎を吐いたり、一本足にも関わらず跳ねて移動する機動力は高い。また、分身を生み出す能力があり、分身を放って女を探し出す。分身にも本体と同じ憑依能力があり、分身が憑依しても本体は強くなり続ける。
オリジナル技
イーヴィルガン
使用者:エリス
イーヴィルビームと似た性質の光弾だが、放ち方は手を開く事。イーヴィルビームが威力に特化してるが、この光弾は貫通力に特化している。
疑似・泰山府君
使用者:麟
本来なら命を分け与える祭りだが、麟は能力を利用して何処に相手が居ても祈った対象と融合する為の技に変化させた。この技で、本編で苦しむ霊夢の元へ一瞬で向かった。神が遠く離れた場所からの祈りをすぐに感知したように、麟は祈りと共に霊夢の元へ向かったのだ。