~セル編~
フューチャーアースに乗り込む前の時間に遡る。ある世界にヘカーティアとティアーユは現れた。ティアーユを呼んだのは、研究者としての知識が必要だからである。
「此処が話に聞いていたドクター・ゲロの研究所ですか?」
「そうよ。人造人間を製造する研究所は壊されたけど、地下の研究所は生き残ってたわね」
ヘカーティアとティアーユが訪れた場所には、研究資料と地球製の装置、そして大型カプセルに眠る小さなセルの姿があった。
「凄い・・・永久式エネルギー炉なんて、私達の宇宙でもまだ発明されてない永久機関その物です!」
「そうよね。資料見ても、ゲロがどれだけ天才なのか想像しにくいわ。どうやってこんなサイボーグ達を造ったのよ本当に」
「あっ、ヘカーティアさん。これを見てください」
ティアーユが資料を見せた。其処にはセル以外に更に地下深くに開発されている人造人間がある事が記されており、その正体はゲロの妻である事も記されている。
「成る程。じゃあこのセルと人造人間21号の回収も行うわよん。資料も研究所も、根こそぎ取り尽くすわよん」
「はい。私も永久式エネルギー炉に興味があります。悪人でなければ、地球で言うノーベル賞を獲得していたかもしれません」
「そうね。あの二人が来る前に回収するわよん」
こうして、ヘカーティアとティアーユは研究資料から装置に至るまで全て回収していく。
漁っていくだけでも、ゲロの天才ぶりには驚かされる二人であった。
「この中にゲロさんの奥さんが・・・悪人とはいえ人格変えて良いのでしょうか?」
「良いの良いの。どうせ生き返るなら善人の方が良いじゃない。ティアーユも良い助手が出来るじゃない」
「助手の方が強く賢く何でも出来そうなんて、そんなのありなんですか?」
こうしてティアーユとヘカーティアは、研究所をもぬけの殻にしてやった。
後にある二人が研究所に到着したのだが、何も無い状態になってた事に驚いた。しかし、もうこの時代にセルが現れない事に安堵した。
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~さとしお編~
とある二人が居た。一人は女子高生と思われる少女で、もう一人は8歳の少女であった。彼女達は手を繋いで、燃え盛るマンションの屋上にやって来たのだ。
女子高生の少女は松坂さとう。8歳の少女は神戸しお。二人は燃え盛る炎を掻い潜り、屋上へやって来たのだ。
「ごめんね・・・新しいお城には行けなくなっちゃった・・・」
「ううん、良いの。私はやっぱり、さとちゃんと一緒に居る時が幸せだなぁ」
「しおちゃん・・・」
二人は煙が蔓延する中、お互いに抱き締めあった。
だが、二人の頭に思わぬ声が響く。
『二人で愛し合えるお城へ行きたくないか?』
二人は始めこそ気にして居なかった。
『何者にも邪魔されない、世界も家族も全てを捨てて、二人が幸せに暮らす事が出来る。そんなお城に』
「「っ?」」
二人は謎の言葉に疑問を抱く。
「しおちゃん、何か言ったの?」
「ううん・・・でも、さとちゃんと一緒に居られるお城に行けるって・・・」
「・・・」
さとうは、又しても邪魔者が来たと思った。しかし、またあの声が聴こえ、その上ある女が現れた。
『二人で愛し合えるお城へ行きたくないか?何者にも邪魔されない、世界も家族も全てを捨てて、二人が幸せに暮らす事が出来る───そんなお城へ」
二人は、声が自分の耳にも伝わってると理解し、声のした方向を向いた。其処には黄金の穴の中心に、一人の女性が立っていた。
「・・・さとちゃん」
「・・・誰なの?しおちゃんに手を出すなら・・・」
ヘカーティアは、クスクスと笑って自己紹介を始めた。
「私は究極生命体アブソリューティアンの戦士アブソリュートタルタロス。いえ正確にはその契約者にして地獄の女神ヘカーティア・ラピスラズリ。貴女達の運命を変えに来た者よ。そして、貴女達を勧誘しに来たの。私達『ザ・キングダム』へ」
二人はヘカーティアの言葉を信じられなかった。この屋上に来る前から、色々妨害を受けたのだ。今更助けてあげようと言われても、信じる訳には行かない。
「貴女達の最期を見せてあげる」
ヘカーティアは二人に近付くと、二人の額にそれぞれ人差し指を当てた。
その瞬間、さとうとしおの脳内には、自分達がこの後どうなったのか見せられていた。さとうはしおと共に屋上から落下し、さとうは死亡。しかししおは生き残ってしまった。しかしさとうに染まったしおは、もう元のしおには戻らなくなった。
「っ!!此れが、私達の未来・・・」
「さとちゃんが死ぬの?そんなの嫌だよ!」
「っ!しおちゃん・・・」
ヘカーティアは笑う。「しおがさとうと来たい」と言えば、さとうを招くのは簡単だ。問題なのはさとうの戦略ぶりだ。しかし、しおがさとうと行きたいと望めば、勧誘は楽勝だ。
「私と一緒に来なさい。そうすれば、態々自殺なんかしなくても、貴女達が幸せに過ごせる新しいお城をプレゼントしてあげる。貴女達を歓迎するわ。此まで以上に甘くて濃厚で、リスキーな、二人のハッピーシュガーライフをね?」
「さとちゃん!一緒に行こう!変なTシャツのおねーさんはわるいひとじゃないよ!」
「・・・うん、分かった。ですが・・・もししおちゃんを危険な目に遭わせるなら・・・」
さとうの目が、言葉に出来ぬ怒りに満ちる。ヘカーティアはさとうに睨まれ、一瞬だが怯んだ。冷や汗を僅かに流してしまう程に。
(良い覚悟と気迫だわ。勧誘して正解だったわ。まさか私が恐怖するなんて、褒めて上げたい位よ)
『面白い。危険ではあるが、興味が湧いた』
ヘカーティアの中に居るタルタロスも、さとうとしおに興味が湧いた。
「じゃあ二人とも、此方へ──」
「待って!ねぇさとちゃん!あれやろう!」
「うん!」
そして、二人はお互いの小指を絡ませ、二人の“誓いの言葉”を唱える。
「「“病める時も、健やかなる時も、喜びの時も、悲しみの時も、富める時も、貧しい時も、死が二人を別つまで、私はさとちゃん/しおちゃんが大好きな事を誓います”」」
こうして二人は口付けを交わす。お互いの口を重ね合い、愛を確かめあった。禁断で、許されざる行為の筈なのに、だからこそ甘くて、濃厚で、だからこそリスキーで、とても美しく見えた。
赤く実って落ちる美味しいリンゴのように、美味しくなる薬品を使った危険なジャンクフードのように、一度ハマれば人を堕落させて快楽に堕とす麻薬のように、二人の愛は禁忌に満ちて、だからこそ美しかった。
「『美しい』」
ヘカーティアだけでなく、タルタロスも同じ言葉を吐く。お互いに感じたのは、二人への、惜しみ無き尊さと美しさ。
「・・・行こう、しおちゃん」
「うん、さとちゃん」
「・・・ふふっ。ようこそ、新しく美しき『ハッピーシュガーライフ』へ」
ヘカーティアが穴に入る。二人が後に続こうとした。
「何処へ行くんだしお!お前が行くべき場所は其処じゃない!!家に帰ろう!!俺が、母さんが護ってやるから!!」
「しおちゃああん!!俺の天使!!俺の天使ちゃん!!行かないで!!」
ある男達の声が響く。一人はフードを被り、ガーゼや包帯を皮膚に着けた男。彼の全身は所々焼けており、炎の中を突っ切って来たのだと理解出来る。もう一人は縛られた男で、全身が傷だらけになった所を見るに、此処まで自力でやって来たのだろう。さとうとしおは一度踏み留まり、叫んだ二人の方を向いた。
「しお!よかっ───」
「しお・・・ちゃん?」
男達が見たのは、自分達に対して言葉では言い表せない嫌悪と軽蔑、そして鬱陶しさに満ちた二人の目であった。しおはさとう程ではないが、男達にショックを与えるには充分だった。
「しつこいんだけど」
「もう私、さとちゃんと一緒に行くの」
「っ!?しお・・・駄目だ・・・」
「いや、嫌だああ・・・」
すると、しおとさとうは二人に向かって地面を蹴って砂利を飛ばした。屋上の砂利が、二人の男を襲った。男達は砂利を顔に受けてしまい、怯んでしまう。
「さとちゃん。行こう」
「うん、しおちゃん。行こう」
「「私達の、ハッピーシュガーライフへ!」」
こうして、二人は穴に向かって歩み始めた。二人が穴の中へ消えていき、穴は二人を歓迎し、この世界から消し去ったように、消える。
「しおおおお!!行くな!!しおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
「あ・・・ああっ・・・そんな・・・」
その場に残ったのは、絶望に打ちのめされ、その場に崩れ落ちる男達だった。
後日、マンションの放火はニュースになった。
『尚、放火の被害者であり幼女誘拐の容疑者でもある松坂さとうさんと、松坂容疑者に誘拐された神戸しのちゃんの行方は、現在も分かっておりません』
こうして、二人の少女の運命が変わった。分岐点が訪れる度に広がる、可能性世界。この世界にも、予期せぬ可能性世界が、加えられて行った。
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