東方怪獣娘ー怪獣を宿す幻想少女達ー   作:ちいさな魔女

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前回の結末がどうなったのか?それは、読者に委ねることにしました。


日常編・その4:蟲の王・前編

リグル「此処がナラク・・・此処がザ・キングダムなのかな?こんな世界見たこと無いよ!?」

 

リグルは睦美に案内されて、ナラク経由でザ・キングダムの拠点にやって来た。其処は大きな町となっているが、科学的な町と自然豊かな森を組み合わせた不思議な世界となっており、怪獣に加えて様々な種族が暮らしている。

 

睦美「ようこそ。私達の拠点、ザ・キングダムへ。ザ・キングダムは私達組織の名前であり、この科学と自然の共存する都市の名前でもあります」

 

そして、睦美が案内したのは嘗て睦美が住んでいた町を模したエリア、名付けるとするなら『巨蟲エリア』である。此処には睦美の他にも、蟲の支配する島から抜け出せた者達が此処で暮らしている。生き残ったクラスメイトも、このエリアで現在暮らしているのだ。

 

そして睦美の要望により、此処には多数の蟲達が居る。とはいえ見た目の問題もあり、睦美の所属する『巨蟲エリア』の研究所にしか見た目のグロい虫は居ない。大抵見る虫はカブトムシやクワガタ、蝶々に無害な蟻といった蟲達だ。

 

リグル「わぁ!蟲がいっぱい!」

 

睦美「此処に居る蟲達は、私達が嘗て出会った蟲達とは違います。クラスメイトの皆さんも、此処に居ますよ」

 

そして、睦美は一件の建物にやって来てカードを翳し、扉を開ける。

 

睦美「ただい「お帰りなさいませ睦美様ァ♥️!」きゃああ!?」

 

睦美「あ、青山さん!」

 

望「睦美様ァ♥️ぶべっ!」

 

青山と呼ばれた少女は頭を叩かれる。叩いたのは眼鏡を掛けたロングヘアーの少女だ。

 

千歳「全く青山さんは・・・睦美、お帰り」

 

睦美「ただいま、千歳ちゃん」

 

千歳「もしかして、その子が睦美の言ってた蟲の王?」

 

睦美「うん。まだ覚醒してないけど、皆にも紹介しようと思ったの。リグルちゃん、此方ですよ」

 

リグル「う、うん」

 

リグルは家の中に案内される。出迎えてくれたのは、数人の男女だった。天然パーマの男が一人、他は個性的な髪型を持つ少女達だ。

 

和彦「それで、睦美ちゃん。彼女に何をする気なんだ?」

 

睦美「此からある人達に会って貰います。恐らくリグルちゃんにとって、乗り越えなくては行けない壁となるでしょうから」

 

真美「・・・睦美の言ってた彼奴等よね。大丈夫かしら?」

 

香住「大丈夫じゃありませんわ・・・気が狂いそうですわよ」

 

睦美「大丈夫。リグルちゃんなら乗り越えられます。リグルちゃん、貴女には此からある人達に会って貰います。彼等と向き合って、リグルちゃんには彼等を通じて、本来なる筈だった自分の姿を思い出して欲しいんです」

 

リグル「本来の自分・・・」

 

睦美「大丈夫です。私も付いてます。それに、他にもザ・キングダムのメンバーは居ますから」

 

リグル「・・・ありがとう睦美。私の為に此処までしてくれるなんて・・・」

 

睦美「いえ、貴女が本当に凄い存在だと、貴女自身に分かって欲しいだけですから」

 

──────────────────────

 

睦美「この建物に入ります」

 

リグル「本当に誰と会うの?」

 

睦美「ある世界の、征服王、英雄王、騎士王と呼ばれた男女です。ですがその前に、貴女に超えなくてはならない存在が二人居ますよ。二人は昆虫の特性を持ちますが、その内の一人は貴女が嫌う性格です。向き合う覚悟が無くなったならば、引き返して構いません」

 

リグル「・・・此処まで来たら引き返せないよ!やろう!」

 

睦美「では、行きますよ」

 

こうして二人は、とある建物の中へ入っていく。其処は暗闇の中ではあるが、何者かの気配が強く漂っていた。

 

???「突然連れて来られたと思えば、お前達が僕の相手になるんだね?」

 

暗闇がライトに照らされて、部屋の正体が闘技場であると知ったリグル。そして、闘技場の中心にはピンクのおかっぱ頭で、背中に蟲の羽を生やす男が居た。痩せてるせいかかなり細身である。

 

睦美「私は此方に居ます。何かあれば、私だけでなく周りの皆さんが手助けしますので」

 

リグル「・・・ありがとう睦美」

 

睦美は掌から糸を出して、その場から離れて観客席に座り、リグルを見守る事にした。

 

リグルはマザーレギオンを纏った怪獣娘形態となり、男に問い掛ける。

 

リグル「私はリグル。リグル・ナイトバグ。君は?」

 

トミーロッド「僕はトミーロッド。美食會の副料理長だ。クロマド様を倒したと思ったら、突然連れて来られたんだよ。そしたらいきなり、此処で『蟲の王を待て』って言われてさ。何の事かと思ったけど、君がそうか!」

 

すると、トミーロッドの頬が膨らむ。

 

トミーロッド「はやく死んでええええ!!」

 

そして、口から尋常ではない蟲達を吐き出した。体内に宿す寄生昆虫の卵を、喉元で成長促進エキスによって孵化させて昆虫に成長させ、吐き出して居るのだ。

 

リグル「・・・一つ聞いていい?この子達は君にとって何なの?」

 

トミーロッド「ハァ?」

 

リグル「・・・・・・そう。もう良いよ」

 

リグルは分かった。分かりたくなかったけど、分かってしまった。

 

トミーロッドは自分が産んだ昆虫達を何とも思ってない。それはつまり、もし今此処でリグルが昆虫達を殺そうが生かそうが、トミーロッドにとってはどうでも良い事なのだ。

 

しかし、それはリグルにも解る。睦美からも聞いていたが、ある意味人間よりも個体の多く、しかし個性がほぼ皆無とされる蟲────正確には蜂と蟻の社会では、それが当たり前なのだ。

 

働かざるもの食うべからず。それは人間にも共通しているのだが、蜂と蟻の場合は蟲達の中でも特にその言葉が特化した社会性昆虫。女王の為に働き、巣を形成し、女王も毎日美味しい物を食べながら子供を産み続けて種族を繁栄させていくという、大変な仕事をこなしている。但し、怪我をしたり死んだりして働けなくなったら、役立たずとして捨てられる。

 

リグルはそんな蟻や蜂をいくつも見てきた。死んだ者達を見つけたら自分が丁寧に埋葬してあげる。生きてる場合は怪我をしてても自分だけが寄り添ってあげる。他の蟲達が死を見送らないなら、自分が見送ろう。最期を見届けて上げよう。

 

だから、トミーロッドの考えを間違ってるとは言わない。役立たずはゴミという考えは、自分だって持ってない訳じゃないし、人間や妖怪、神にさえその考えを持っている者は多い。

 

でも、役立たずだったとしても、少しは彼等の生き様を労ってあげて欲しい。

 

彼等だって生きている。君の為に戦う為に産まれ、精一杯生きてきた。君にも思考があるなら、彼等を埋葬してやって欲しい。

 

リグル「・・・・」

 

トミーロッド「行け」

 

トミーロッドの指示通り、蟲達はリグルに向かって突き進む。その時、リグルのエッグチェンバーからソルジャーレギオンが産まれてきた。ソルジャーレギオンは一匹一匹が地球上の昆虫の能力を、それぞれ一つ宿している。

 

しかし、リグルはソルジャー達を止めた。ソルジャー達はリグルの指示で動くのを止めて、待機している。

 

リグル「大丈夫」

 

そう言った後、リグルは自分に襲い掛かる蟲達に向かって、手を広げた。

 

トミーロッド「っ!こいつ・・・」

 

トミーロッドは気付く。リグルから、ある気配を感じたからだ。

 

それは、王の威厳。この世全ての蟲達の頂点として君臨しながら、蟲達の一匹一匹の死を悲しみ、健闘を褒め称え、最期を手厚く見届けてくれる、慈悲深き王。

 

リグルの顔は、満面の笑みであった。見るだけで、蟲だけでなく人間をも魅了する、慈愛の王の慈しみの笑顔だった。

 

すると、トミーロッドの産み出した蟲達が止まる。感情の無い蟲達だが、顎を動かしたり、口をパクパクさせたりしている。彼等が何を思っているのか、それはトミーロッドかリグルの二人にしか、全く分からないだろう。

 

睦美「凄い・・・」

 

千歳「ええっ・・・」

 

望「ムキーッ!何よもう小娘の分際でぇ!」

 

和彦「君、まだ睦美ちゃんの連れてきた子に嫉妬してんの?」

 

真美「でもなんか、私達にも解る気がするわ。リグルって子。もしあの時、あの子が居れば私達は・・・」

 

香住「無い事ねだりをしても仕方ありませんわ」

 

睦美達もリグルの慈悲王としての素質を見抜いていた。

 

そしてそれは、トミーロッドも同じだ。彼は笑みを浮かべた後、四肢の特殊バンドを外し、筋肉隆々の大男へと変身する。

 

トミーロッド「良いだろう。僕が戦ってやるよ。お前の王としての在り方に敬意を表し、僕がお前をぐちゃぐちゃに叩き潰してやるよ」

 

リグル「・・・やってみなよ」

 

リグルは構える。槍を構えて、トミーロッドと向かい合う。トミーロッドを倒して、自分を認めてもらう。トミーロッドの考え方も、出来る限り変えてやりたい。

 

リグルはそんな思いを抱えたまま、トミーロッドと向き合う。

 

睦美「・・・では、審判は私が務めさせて頂きます。リグル・ナイトバグ対トミーロッドのモンスターバトルを行います。開始の合図は、コインが地面に着いた時です」

 

睦美がコインを投げる。普通のコイントスでは、表か裏かで決めるのだが、この場合は地面にコインが着いた瞬間に、モンスターバトルが始まる。

 

睦美達の居る観客席は、闘技場の地面から十メートルも離れている。コインが地面に到達する時間は短い。そして、コインが地面に着くまで約0.1㎝になった時、トミーロッドとリグルは再び会話する。

 

トミーロッド「君は僕を殺すつもりかい?」

 

リグル「モンスターバトルだよ?そんな事しないよ。それにモンスターバトルじゃなかったとしても、私はトミーを殺したりしないからね」

 

トミーロッド「・・・あっそ」

 

リグル「・・・若干嬉しくなってない?」

 

トミーロッド「・・・それより、始まるよ」

 

リグル「・・・私が勝ってみせる」

 

感情の無い蟲のように冷徹なトミーロッドの僅かな感情の揺れを、リグルは見逃さなかった。

 

そして、コインが地面に着いた時だった。

 

リグルとトミーは、闘技場の地面を吹き飛ばしながら走り出した。トミーは拳を、リグルは槍を、それぞれ振り下ろすのだった。

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