中村恵里。父親を自分の不手際による交通事故で亡くし、母親から虐待を受けしまう。父親を愛し過ぎていた母親は、あまりの悲しみに恵理に虐待を続けた。母親は恵理の肉体に痣が残るような事をしなかった。
恵里は当然の罰として受けた。しかし、その罰を受けていく内に暗い雰囲気を纏い、軈て交友関係は減って行った。
九歳となった時、恵里はまた母親から虐待を受けて、部屋で寝転がっていると、突然頭に女性の声が響く。
『お前の運命を変えたくは無いか?強大な力を手に入れて、欲望のままに生きたくはないか?』
「・・・だれ?」
恵里は声がしたために周りを見る。しかし、部屋には誰も居ない。
そして九歳になった時、母親が新しい男と再婚したのだが、その男は典型的な屑だ。恵里に性的な目を向けてくるその日常の末に、恵里は自らを『僕』と呼び、髪も男のようにバッサリと切ってショートヘアーにし、より暗い性格になってしまった。そのせいで、日常会話をしていた子達も離れていった。
それでも、恵里はそんな日常に耐え続けた。しかし、ある日の放課後、恵里は周りから陰口を叩かれてる内に、またあの声を、言葉を聞いた。
『お前の運命を変えたくは無いか?強大な力を手に入れて、欲望のままに生きたくはないか?』
「あぁ・・・まただ・・・誰かが僕に何時も話し掛けてる。誰?誰なの?」
恵里は不安だった。
更に、帰宅した瞬間に恵里の頭に声が響く。今度は前と少し違った言い回しだった。
『お前はこのままだと、間違った相手に着く事になる。私が力を与えよう。お前の好きなように生きる事が出来る力を』
「まただ・・・何時もと違ってたけど、あの声は間違いなく同じ声だ・・・・・・そうだよ。力だ・・・力があればお母さんを正してやれる・・・僕が幸せになれる力が欲しい・・・そうすれば・・・・・・僕の運命も変えられる!!」
母親は、自分が父親を事故によって死なせたせいでああなった。もし自分が何か行動すれば、母親もきっと目を覚ましてくれる。そしてまた、あの幸せな日々を取り戻せる。
その時の恵里の姿は、母親に屈する奴隷ではなくなっていた。瞳が赤く染まり、その顔も邪悪な笑みに変わっていた。
そして、恵里は男に襲われた。母親が夜の仕事に出向いた時だ。彼女は男の片目をカッターで刺して、近所に助けを求めた。男は逮捕されて、母親と共に事情聴取を受けた。しかし、自宅に帰った瞬間に母親から張り手を受けた。
その時に恵里は知った。もう母親は以前の母親には戻れないのだと。
「うわあああっ!!」
恵里は母親の脇腹に深く包丁を突き刺した。
「きゃああああっ!!」
母親は突然の事に対処出来ず、包丁を刺された箇所を両手で押さえながらその場で倒れた。
瞬間、母親の頭には、彼女が今まで犯してきた罪と、夫や娘との幸せな日々が映った。
「・・・お母さん・・・いや、お前なんかもうお母さんじゃない!お前なんか死んじゃえ!!」
この時、母親は初めて恵里に虐待した頃を思い出した。そして、目の前に自分を哀しむ目で見る亡き夫の姿が映る。
(ああっ・・・私は・・・なんて事を・・・)
そして、恵里は脇腹から大量出血をしながら倒れる母親を放置して、玄関に向かって走り出した。
「あっ、待って・・・恵里・・・」
しかし、恵里に言葉は届かない。恵里は靴を履かず、家に死にかけの母親を残して走り去ってしまった。
「・・・恵里・・・貴方・・・・・・ごめんなさい。待って恵里・・・行かない・・・で・・・貴方……恵里……ごめんなさい」
母親は薄れ行く意識の中で、恵里や亡き夫に謝罪をしながら、最期に恵里の出ていった玄関に手を伸ばしながら謝罪の言葉を述べた。
そして、恵里は母親の最期を知らぬまま、誰も居ない森の中へ入って行った。小枝が足に刺さり、石で足を怪我しながらも、恵里は山中を走り続けた。
そして、草原に出た所で倒れてしまい、恵里は泣き出した。
「・・・ぁぁあああああっ!!うあああああ!!」
恵里は泣き出した。当然だ。母親に酷い事を抜かし、更に包丁で刺して殺害してしまった。ショックで泣き出した。今まで泣かなかった分だけ泣いた。
それ故に、背後からやって来た人物に気付かなかった。
「まさか母親を刺し殺すなんて思わなかったわ。まあ貴女が手に入るならそれで良いのだけど」
「・・・誰?誰なの?」
恵里は警戒した。
「私は究極生命体アブソリューティアンの戦士アブソリュートタルタロス。いえ正確には、タルタロスの契約者であり、地獄の女神『ヘカーティア・ラピスラズリ』。遥か数万年後の未来からやって来たのよん。この先に待ち受ける貴女の運命を見せてあげる」
そして、ヘカーティアは恵里の頭に人差し指を当てて、未来の光景を見せた。
『貴女は天之川光輝に助けられ、それ以降彼に依存するヤンデレに変わってしまった。しかし彼に別の好いてる女が居ると知った貴女は、用意周到ながらも排除しようとした。しかし、異世界に飛ばされて、エヒトに利用され続けた挙げ句、最期は神域にて親友である鈴達と戦って敗北。自爆して巻き込もうとしたけど、失敗して貴女一人だけ最期を迎えた』
そして、恵里は未来の光景を見せられ、更にヘカーティアの説明を受けて、恵里はその場で乾いた笑いを口から出した。
「此は笑い話だ!好きになった相手は結局僕に振り向かず、エヒトに散々利用されて自爆しても僕だけが死ぬんだ!アハハハハハ・・・・・・何でだよ!!何で僕だけが!!」
恵里は地面を殴った。
「何で僕だけがこんなに惨めなんだ!!何で僕は幸せになれない!?何で!!何でだよ!!何で僕だけがああ!!」
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も。
そして、十五回目。血が噴き出した拳で地面を殴ろうとした時、ヘカーティアがその手を掴んで止めた。
「私と一緒に来なさい。この世界に貴女の居場所は無い。あの天之川に着いて行ったって貴女に未来は無い。でも私達ザ・キングダムは違う。貴女に力を与えてあげる」
「・・・じゃあ何でお母さんも助けてくれなかったの?」
「ごめんなさい。でも、私が欲しいのは貴女だけ。それに貴女が刺した以上、もう連れて来れないわ。でも、貴女はまだやり直せる。この世界に貴女の居場所は無い。私達がザ・キングダムに導いてあげる。貴女と似た境遇の子も沢山居るわ。私達が貴女の母となり、父となり、姉となり、兄となり、家族となってあげる。中村恵里。さあ、私と一緒に来なさい。新たな家族『ザ・キングダム』として」
「・・・」
恵里は考えたが、答えは直ぐに出た。もう自分には居場所が無いと思っていた。
しかし、居場所が出来るのならば、もう迷いは無かった。今まで欲しかった幸せが手に入る。
それに何より、ヘカーティアは悪い人ではない。
「・・・うん、分かったよ。此れから宜しく!ヘカーティア!」
「ええっ。ようこそ、『ザ・キングダム』へ」
「それで、ザ・キングダムって何処にあるの?」
すると、ヘカーティアが両手の宝石を光らせて、黄金の穴を開けた。
「『ナラク』を経由して行くわ。そしてメンバーに挨拶を済ませたら、貴女には幻想郷で人生をやり直すチャンスを与えるわ。其処で寺子屋教師をしている冴月麟って子に会い、事情を話しなさい。きっと便宜を図ってくれるわよ」
「冴月麟かぁ。どんな人なの?」
「きっと貴女を受け入れてくれるわよん」
こうして、ヘカーティアは恵里と手を繋いで、ナラクへ向かって行った。こうしてまた、一人の少女の運命が変わった。
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ステラ・ルーシェ。地球連合軍・第81独立機動群所属のエクステンデッドの少女。幼少の頃から、ロドニアの研究所でナイフや重火器を扱った実戦訓練、シミュレーションでの戦闘訓練、定期的な薬物投与及び記憶操作の調整が行われた少女で、軍隊からは『生体CPU』と呼ばれるMSのパーツ扱いであり、パーソナルデータは消去済み。
そんな彼女の元に、一人の女性が現れた。ヘカーティアだ。ヘカーティアは軍を瞬く間に蹴散らして、ステラを連れてナラクへ向かった。
「あの・・・貴女は?」
「ふふっ。私は究極生命体アブソリューティアンの戦士アブソリュートタルタロスの契約者、ヘカーティア・ラピスラズリ。地獄の女神にして、貴女の運命を告げに来たのよ」
そして、ヘカーティアはステラの額に指を置き、未来の結末を見せた。
ステラはとある休暇中にダンスの途中で崖から落ちた所をシンと呼ばれる青年に救助され、「君を守る」という言葉を受けて、心を通い合わせるようになる。軍による『最適化』によって『余計な記憶』として消されてしまう。
『貴女はその後様々な任務をこなして行く内にシンの事を思い出し、再度心を通わせたけど、『最適化』が必要な貴女は徐々に弱り始めた。そして貴女は暴走してシンと交戦し、体は限界を迎えてしまった。最期は自分が愛した男、シンに抱き締められながら、想いを伝えて息を引き取ったのよん』
「っ!!此れが・・・未来の私・・・」
「彼氏さんを呼ぼうかしら?」
「・・・いえ、彼には他にも彼を好いてる人達が居るのよ」
「あっ、そう」
ステラはストレッチャーに寝かされており、ある病室に運ばれていた。
「貴女を此れから、前の体よりずっと良い人造人間にするわよん。貴女のその体は、前より良いものに生まれ変わるわ」
「本当に?」
「ええっ。ある世界の人造人間研究と、優秀な生物有機学の天才が居るから。貴女を救えるわ」
そして、ストレッチャーとヘカーティアはとある一室に入る。
「頼んだわよん。ティアーユ」
「はい!貴女がステラね?私はティアーユ・ルナティーク。貴女の事を必ず助けてみせるわ」
「・・・はい」
こうして、ステラの運命が変わった。彼女はある世界の科学により、人造人間として生まれ変わるのだが、それはまだ先の話である。
あの母親を生かしたままでは、彼女は永遠に救われないまま。なら、せめて楽にしてあげる方が幸せでしょうねと思い、ああしました。