東方怪獣娘ー怪獣を宿す幻想少女達ー   作:ちいさな魔女

124 / 261
勧誘編を挟んで置きます。


勧誘編・その6:累、羽鳥智世、藤沢彩菜

~累編~

 

綾木累は身体の弱い少年であり、外を数歩進むだけでその場に倒れてしまう程に病弱な体質だった。同年代の子供達と遊びたくても出来ず、家で寝たきりの生活を送っていた。

 

「・・・また、倒れちゃった」

 

「・・・ごめんな。俺達が不甲斐ないばっかりに」

 

「本当にごめんなさい・・・」

 

両親は抱き締めてくれた。累にとってはその温もりがとても嬉しかった。

 

何時の日か、累は川に落ちた子供を命懸けで助けた親の話を聞いて、最終的に親は子供を助けて死んでしまうが、“家族の絆”が強い糸で結ばれたような硬い繋がりから出来た行動に心から感動し、その話と今の自分を重ねた。そして、この窮地から救ってくれる相手を想って深く考えるようになった。

 

そんなある日、累の元へ一人の女性が現れた。

 

「綾木累、ね?」

 

「・・・君は?」

 

「私は究極生命体アブソリューティアンの戦士アブソリュートタルタロスの契約者、ヘカーティア・ラピスラズリ。貴男の運命を見せてあげるわ。此れが、貴男が本来行く筈だった未来よん」

 

ヘカーティアは両手を交差させ、そのまま左手の人差し指から黄金の波を放って累の頭に当てる。その時、累はその視界に未来の自分を見た。

 

『貴男は鬼無辻無惨によって鬼に変えられ、家族を自らの手に掛けて殺した。その後貴男は無惨に気に入られて居たのね。血を与えた者を鬼に変えられるようにしてもらい、それで家族を作った』

 

更に累の未来の光景は続く。今度はある山にて、鬼を狩る『鬼殺隊』の少年少女達と出会う。一人をサイコロ状にした後、家族にした鬼達と共に『竈門炭治郎』とその妹の『竈門禰豆子』と戦う。

 

『貴男は二人を後一歩まで追い込むけど、炭治郎は自分が受け継いだヒノカミ神楽の繰り出す技と、禰豆子の繰り出した血鬼術『爆血』によって、貴男は糸も頸を斬られて絶命したわ』

 

その時の光景も見た。禰豆子の燃える血によって糸が燃やされてしまい、軈て自らの糸で折った炭治郎の日輪刀が自らの頸に届いた。

 

『俺と禰豆子の絆は、誰にも引き裂けない!!』

 

そして、炭治郎によって頸を斬られてしまった。その後、累は霊となってあの世で家族と再会を果たし、笑い合って抱き締めあった所で、ヘカーティアの見せる未来の映像は終わった。

 

「っはぁ!ハァ・・・ハァ・・・此れが・・・未来の僕なのか?」

 

「そうよ」

 

ヘカーティアは口角を上げる。実際の最期はもう少し後になるのだが、其処は敢えて見せてない。

 

「でも安心しなさい。貴男は死後に家族と再会したわよん。貴男の事を嫌ってなかったわ。鬼となってしまった貴男の事を、家族は愛していたのよ」

 

「・・・でも、今の僕は鬼じゃ・・・」

 

「私と一緒に来なさい。そうすれば、鬼になんかならなくても、自由が手に入れられるわよん」

 

「・・・父さんと母さんは?」

 

「一緒よ。そして向こうには、両親を含めた貴男に似た境遇の子も沢山居るわ。貴男は此から彼等と友達になり、家族にもなるのよん」

 

「・・・分かった」

 

「ふふっ。ようこそ累。私達の『ザ・キングダム』へ」

 

その時、累を抱えたヘカーティアは、自らの背後に開き続ける穴へ入っていく。

 

また一人、運命が変わった者が生まれた。後日談ではあるが、無惨と呼ばれる男は突然現れた黄金の穴を通じて宇宙空間に放り出され、太陽に身を落とされてしまうのだが、それを知る者は誰も居なかった。

 

──────────────────────

 

~羽鳥智世編~

 

彼女の勧誘は簡単だった。生まれつき人ならざるモノを視たり惹き付けたりする体質を持ち、そのせいで家族を失い親戚からはたらい回しにされた。そして、セス・ノエルの勧めで自分自身をオークションへ出品する。その時に出会った。本来の流れとは全く違う、それも遥かに格上の女神に買われた。

 

「私がこの子を買うわ」

 

それは、頭に惑星を乗せた女性だった。彼女は大金を支払って智世を受け取り、彼女の目の前で黄金の穴を展開した。

 

「ようこそ。ザ・キングダムの拠点にしてあらゆる世界への出入口である、『ナラク』へ」

 

「此処は・・・」

 

「さて、貴女も今日からザ・キングダムの一員よん。貴女には此からある男に会い、契約を交わしてもらうわ」

 

「契約?何をするの?」

 

すると、彼女の目の前に一人の異形が現れた。

 

『このガキか?俺と契約して力を与えてやる女は?』

 

「そうよジャグラスジャグラー。かつて()()()()()()()()と戦った貴男を見込んでるのよ?」

 

『おい女、名前は?』

 

ジャグラーは智世に名前を訊いた。智世は迷いながらも答える。

 

「・・・羽鳥智世(はとりちせ)

 

『よおし智世。俺はお前を鍛えてやる。俺は厳しいぜぇ?女でも徹底的に鍛えてやるよ。それでも構わねぇか?』

 

「・・・うん」

 

『なら良いぜ。ほら、契約すっぞ。俺の力、使いこなしてみせろよ』

 

「分かった」

 

(ジャグラーって前から監視してて思ってたけど、言葉はキツいけど根は良い奴よね。闇も善人になれるって事で良いかしら?)

 

ジャグラーを見て、隠れてはいるが善人の気配を感じたヘカーティアであった。

 

──────────────────────

 

~藤沢彩菜編~

 

「・・・何時まで続くのかしら?」

 

藤沢彩菜。クラスメイトから壮絶な苛めを受け続けて、全身には血が滲む包帯が巻かれている。

 

「何で私なの・・・私が何をしたのよ・・・」

 

その時、彩菜の頭にある声が響く。

 

『力が欲しくないか?何者にも屈しない、欲望のまま生きる事が出来る。そんな力が・・・』

 

「・・・幻聴まで聴こえるなんて。そんな甘い誘惑なんか、ある筈無いじゃない」

 

彩菜はそんな言葉を聞いた。家に帰り、母は保身に走って苛めに遭ってるにも関わらず助けてくれない。

 

風呂に入り、傷だらけの身体で入浴していると、今度はハッキリと頭の中に直接響いてくる。

 

『力が欲しくないか?何者にも屈しない、欲望のまま生きる事が出来る。そんな力が・・・』

 

「っ!?やっぱり幻聴じゃない!誰よ!私に話し掛けてくるのは!?」

 

彩菜は入浴を中止して、母にその事を尋ねた。

 

「彩菜にそんな声をかけてないわよ?」

 

「でも、私は確かに聴いたわ。力が欲しくないか?って・・・でも、力があれば・・・」

 

「彩菜」

 

母は彩菜の手を握る。

 

「彩菜、私が言えた事じゃ無いかもしれないけど、貴女がやろうとしてる事は悪い事なのよ?」

 

「・・・悪い事って、今まで私を助けてくれなかった癖に!」

 

「きゃっ!」

 

母は吹き飛ばされた。彩菜の身体からは信じられない程の力であり、テーブルやキッチンを粉々に砕く程であった。

 

「私がこんな事になってるのに、お母さんは助けてくれなかった!そんなお母さんなんかもう要らない!そんなに自分が娘より大切なら勝手にして!私の事なんかどうでも良いんでしょ!?」

 

彩菜はこの時点で、もうこの世界に自分の味方は居ないと知り、家を出ていく決断をした。

 

「待って彩菜ああ!!」

 

母が叫ぶが、彩菜は構わず家を飛び出した。

 

走り、走り、走り、走り続けた先にあったのは、夜の海岸だった。

 

「・・・ううぅうあああああああ!!ああああああああああああああっっ!!」

 

彩菜は泣いた。此まで溜め込んでいた物を、吐き出すかのように。

 

そして、彩菜の元に一人の女性が現れ、声を掛けた。その女性は、背後に黄金の穴を展開しており、それが何処かへ通じる穴である事を彩菜に理解させた。

 

「力が欲しくない?何者にも屈しない、欲望のまま生きる事が出来る。そんな力が」

 

「・・・貴女は誰?」

 

「私は究極生命体アブソリューティアンの戦士アブソリュートタルタロスの契約者、ヘカーティア・ラピスラズリ。遥か彼方の未来からやって来たのよ。貴女のこの先訪れる未来を見せて上げる」

 

そして、ヘカーティアが見せた未来を見た彩菜。そして、彩菜は最期に冷たくした仲間から突き落とされて死んでしまう光景を見てしまう。

 

「・・・ハハッ!アハハハハハハハハ!!ハハハハハハハハハハハハ!!此は笑い種ね!復讐を行った結末が、仲間に裏切られる未来なのね!!アハハハハ!!」

 

彩菜の笑いは乾いていた。その目からは涙が流れており、結末を見た事で完全に精神が壊れてしまった。

 

「力を上げようかしら?貴女のその心に抱く怨念、この世界でやり残した事、全てを晴らしたく無いかしら?」

 

「・・・ええっ、この際よ!力でも何でも欲しいわ!私にこんな目に遭わせた彼奴等に地獄を見せてやる!」

 

彩菜の瞳は赤く染まる。怒り、憎しみ、あらゆる怒りが込められたその瞳を見たヘカーティアは、彩菜にある物を見せた。それは、三体の像である。その三体の像は、男が二人に女一人の石像であった。

 

「彼等の像に触れなさい。貴女なら絶対に適合するわよ」

 

「ありがたいわ!」

 

彩菜は手を伸ばす。その瞬間、石像から赤黒いオーラが流れ込んでいき、石像も赤黒い煙となって彩菜の身体と一体化するように入り込んでいく。

 

『面白いねぇ!お前の思うままに力を振るってみなよ!』

 

『我が力、存分に振るうが良い!』

 

『ではでは、見届けさせて頂きますよ』

 

「・・・カルミラ、ダーゴン、ヒュドラムね。私に、今まで虐げてきた奴等を滅ぼす力を!!!」

 

そして、彩菜の全身を赤黒いオーラが包み込んだ。ヘカーティアは闇の巨人と人の怨念が合体した強さを目の当たりにして、冷や汗を流した。

 

(人間はやはり侮れないわね。でも、良い闇具合で良かったわ)

 

 

 

 

 

 

 

後日、その世界で大量殺戮が起きた。共通しているのは、全員が藤沢彩菜のクラスメイトであり、彼等は見るも無残な姿の遺体になって発見された。ある者は道路へ首を晒され、ある者は裸にされて杭により両腕と片足を貫かれながら十字架にくくりつけられた者も居た。更には自宅にあら金目の物も全て盗まれており、破壊された家の前で張り付けにされた者達も居た。

 

尚、わざとやったのかは知らないが、その場には藤沢彩菜の私物が大量に置かれており、全ての被害者の遺体には彼女の筆跡で、藤沢彩菜が今まで受けた苛めの詳細とその証拠映像が全て収められたビデオカメラやUSBメモリが置かれていた。

 

『容疑者の藤沢彩菜は未だに行方不明であり、警察は全国に指名手配を行った後、国際指名手配の手続きも踏むとの事です。尚、現場に置かれていた紙やビデオカメラ、USBメモリに残されていた藤沢彩菜の受けた苛めの詳細に着いて、学校側は返事を全く返して居ないとの事です』

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。