東方怪獣娘ー怪獣を宿す幻想少女達ー   作:ちいさな魔女

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第127話

霊夢は上空を飛び回り、地底に向かう洞窟を探っていた。前に迷いの竹林が消滅した時に大穴が空いたのだが、それは既に紫と隠岐奈、そして彼女の式神達や二童子によって塞がれた。地上に地底の妖怪が迷い込んで来ないようにする為だ。

 

「・・・一体何処から向かえば良いのかしら?」

 

すると、飛んでいた霊夢の目の前に、上半身が鷲で下半身が馬となっている幻獣が現れた。その背中には、少女のように見える美青年が乗っていた。

 

霊夢は空中で止まって浮きながら、同じく空中で止まって浮いている幻馬に乗る男に話し掛ける。

 

「・・・アンタ、もしかして男?」

 

霊夢は直感で言い当てた。

 

「あっ!やっぱり分かるんだね!そうだよ!確認してみる?」

 

「いや、いいいいいいわよ!!其処までやらなくても!!//////」

 

霊夢は慌てて拒否した。一体この男は何を言うのだろうか?

 

とはいえ、霊夢も一目見た時は本当に女かと思ったのだ。もしかしたら、自分より可愛いかもしれない。麟は「自分の方が可愛い」と言って張り合うかもしれないが。

 

「それより、アンタはどうして此処に?あっ、私は博麗霊夢よ。霊夢で良いわ」

 

「ありがと霊夢!僕はアストルフォ!シャルルマーニュ十二勇士の一人!そしてこの子は僕の愛する『この世ならざる幻馬(ヒポグリフ)』だよ!ヒポグリフって呼んでね!あっ、同じか」

 

「えっ、ええっ、分かったわ。アストルフォ、ヒポグリフ」

 

(シャルルマーニュ?十二勇士って何よ?)

 

「で、僕は君の異変解決の手伝いに来たんだ。僕以外にも来てる人達が居るから、あの金髪の魔女や鋼の女の子も、今頃その人達と合流して地底に入ってるよ」

 

「・・・まさか魔理沙より先に出たのに、後から来た魔理沙とユウコに先を越されるなんて思わなかったわ」

 

霊夢は落ち込んだ。暴走してるかもしれないから急いで出てきたのに、まさか先を越されるとは。

 

「まあ急がば回れっていう日本の諺があるじゃん。僕もさっき地底への入り口を見つけてさ。君も行くかい?」

 

「ええっ、宜しく頼むわ」

 

「よおし!僕のヒポグリフに着いて来れるかな?」

 

「負けないわよ!私とガメラさんの力なら!」

 

霊夢は怪獣娘形態となって、甲羅から炎をジェットの要領で噴射した。アストルフォの乗るヒポグリフが高速で飛んだ瞬間、霊夢もヒポグリフと同じタイミングで飛び始めた。

 

──────────────────────

 

場所は変わって、地底の開けた洞窟内。本来なら暗闇で見えないのだが、ユウコがナノメタル製のドローンを複数飛ばしており、ドローンにはライトが取り付けられており、此もナノメタルで構成されている。

 

魔理沙とユウコは、合流したある少女達と共に洞窟内を飛んでいた。一人は狂三で、もう一人はユウキだ。

 

「それにしても、ザ・キングダムだっけ?そっちからも援軍を出してくるなんてな」

 

「ええっ。ヘカーティアさんは何やら嫌な予感を抱えて居られましたわ。わたくしも、洞窟に入ってから嫌な胸騒ぎが収まりませんのよ。『トモダチ』ななれるかもしれませんわ。キヒヒッ」

 

狂三すら冷や汗を流している。しかし、宿した怪獣の影響故か、『トモダチ』とやらになれると感じていた。

 

「狂三、殺しは駄目だよ」

 

「妖精なら構いませんわよね?」

 

「だーめ」

 

「わたくしは命が懸かってますのよ!?」

 

『まあお二人とも。それより、霊夢様の反応は先程から検知出来ません。エコーロケーション及び赤外線センサーによる探知も意味を成しません。その上霊夢様の霊力反応もありません。恐らく、まだ洞窟に入られては無いのでしょう』

 

「・・・先に出といて遅れて来るのかよ。ん?あっ、皆下がれ!何か降ってくるぞ!」

 

魔理沙はフィリウスの探知能力により、真上から降ってくる何かを探知した。それは、炎を纏った何かであった。

 

「『鬼火隕石地獄』!」

 

「させるか!『マスタービーム』!」

 

魔理沙はミニ八卦炉を取り出した瞬間に怪獣娘形態に変身し、背中の背鰭から展開した電光をミニ八卦炉に集束させて、落下してくる物に向かって熱線を放つ。

 

落下物と熱線がぶつかり合い、軈て爆発を起こして落下物は爆煙と共に姿を現した。それは、桶に入った白装束を身に付けた少女だった。

 

「いったぁぁぁい!よくもやってくれたなお前!」

 

桶に乗る少女は、魔理沙達を指差してそう叫んだ。

 

「何だ彼奴?桶に入ってるぞ?」

 

『あの妖怪は、釣瓶落としです。先程の落下によって人の頭に落下し、押し潰す事を目的とした妖怪です』

 

魔理沙の問いに答えるユウコ。すると、ユウコの答えを聞いた桶に入った少女は、自己紹介後に姿を変えた。

 

桶は赤いトゲを無数に生やし、少女の両肩からは鳥の頭がそれぞれ生えてきた。その口からは炎を発しており、熱によって周囲の景色も揺れだした。

 

「私はキスメ!悪いけど、人間達を通す訳には行かないんだ!通してしまったら勇儀姐さんやさとり、()()に大目玉食らっちゃうからね!」

 

「魔理沙さん。もしかしたら、あの子が宿す怪獣は『パンドン』ですわ。強敵ですわよ」

 

「大丈夫だって。私とフィリウスなら負けねぇよ。皆、下がっててくれ」

 

そして、魔理沙はミニ八卦炉を構えて、キスメとのモンスターバトルに入るのだった。

 

審判は公平さを出す為にユウコが務める事になった。

 

その頃、霊夢とアストルフォは既に洞窟へ侵入出来たのだが、ある光景を見てしまっていた。

 

─────────────────────

 

「何よ・・・これ・・・」

 

「うぅ!?何この生臭さ!?」

 

アストルフォやヒポグリフがそれぞれ鼻を摘まむ。アストルフォは指で、ヒポグリフは翼で鼻を覆う。

 

二人と一匹が見ていたのは、何かに汚染されて溶かし尽くされた妖精達と妖怪達、そして腐った肉片で壁が覆われた光景だった。悪臭が立ち込めており、霊夢も遅れて鼻を摘まむ。

 

「・・・ふーん。アンタ等が私の相手なんだね」

 

現れたのは、巨大なクモの巣の上に座って乗る少女だった。クモを思わせるファッションであるが、その体からは触れれば危険な気配が漂っている。

 

「私はヤマメ。黒谷ヤマメ。どうか仲良くしてねー」

 

ヤマメは手を振りながら、霊夢達を見下ろすのであった。

 

そして、霊夢とアストルフォが思い知る事になる。ヤマメがある意味今までの戦いで、最も危険で最悪な敵であると。




新技集

『鬼火隕石地獄』
使用者:キスメ
桶ごと火炎地獄で身を包み込み、相手に向かって落下する。炎の噴射及び落下による爆発と炎熱によって周囲を焼き尽くす。

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