東方怪獣娘ー怪獣を宿す幻想少女達ー   作:ちいさな魔女

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第129話

闇霊夢は吹き飛ばされた後、壁に着地した後に地面へ空中を三回転した後に降り立った。ヒポグリフが隣に立ち、その背中に乗るアストルフォが闇霊夢に話し掛ける。

 

「霊夢・・・君の事・・・オルタって呼べば良いのかな?」

 

「あらぁ?違うわよぉ。私は霊夢のもう一つの人格よぉ。そうねぇ・・・“闇霊夢”と呼んで欲しいわぁ」

 

「闇霊夢・・・確かに、禍々しい感じがするよ」

 

先程、アストルフォすら押し負けたあのヘドリューム光線の爆発に吹き飛ばされても、一切ダメージを負ってなかった。余裕にも見える態度に加えて、服も皮膚も焦げ目すら付いてない。

 

「まあ貴女は下がってて頂戴。私ならあの土蜘蛛ちゃんをいとも容易く倒してみせるわぁ」

 

「忠告しておくよ。いくら自分が相手より強くても、油断すれば仕留められるなんてよくある事だからね」

 

「はいはぁ~い」

 

(大丈夫かな?)

 

アストルフォは不安になった。闇霊夢が何かをやらかすかもしれないと感じたからだ。

 

そして、ヤマメはどうなったのか?

 

ヤマメが吹き飛ばされた所には煙が立ち込めており、彼女がどうなったのか見えない。

 

「ゲホッ!ゴホッ!」

 

ヤマメは壁に叩き付けられて、咳き込んでいた。

 

(あんなに凄い威力だったなんて、このままじゃ私が負けちまうなぁ・・・あんまし使いたくなかったけど、奥の手を使わせてもらうよ!)

 

その時、闇霊夢が目の前にやって来て、ヤマメの腹を踏み潰す。本来ならかのゴジラの腕をも白骨化させる猛毒のヘドロを纏っている筈なのに、闇霊夢の足は溶けない。

 

「あらあらぁ?こんなものかしらぁ?」

 

「・・・おい、あんまり油断してると・・・」

 

「なぁにぃ?」

 

「ガハッ!・・・フフフッ。忠告したよ」

 

闇霊夢が踏む力を強くする。しかし、ヤマメは激痛に絶叫を上げながらも、勝利を確信した邪な笑みを浮かべている。

 

「予言するよ。あと何回か呼吸する内に、お前は負ける」

 

「あらぁ?あと何回か呼吸を?今は私が・・・勝っているの・・・よ・・・・・・あっ!?あぐあっ!?」

 

闇霊夢は、突然意識が朦朧とし、腹の底から激痛が走る。血の涙を流し、血の泡を口から吐き出し始める。

 

「霊夢!」

 

アストルフォはヒポグリフから跳んで、全身から光を放って怪獣の力を身に纏う。男が怪獣を纏った形態である『怪獣装甲形態』となり、彼の背中に蝶のような美しく輝く羽が生える。更に四肢の間に鋭い蝶の脚を生やし、頭部は蛾のようなヘルメットとなっている。

 

「『モスラネット』!」

 

アストルフォのヘルメットの口から糸が吐き出されて、ヤマメの全身を拘束した。闇霊夢を昆虫の脚と両手で掴んで、ヤマメから引き離した。

 

「大丈夫!?ほら言わんこっちゃない!油断すれば仕留められるなんてよくある事だって言ったのに!」

 

「ガフッ!ゴガバアアアッ!イダイイダイイダイ!」

 

闇霊夢の全身の色が消えていき、元の通常形態の霊夢に戻ってしまった。しかし、霊夢は目や口から血と泡を吐き出し続け、全身の痙攣に加えて全身の激痛を訴え始める。

 

「まだやるかな?」

 

ヤマメはフラつきながらも立ち上がり、両腕から腐臭に満ちた液体を垂れ流している。

 

「・・・やるしかないかな」

 

アストルフォは柄が蝶の形になった剣を構える。槍でも良かったが、機動力を考えると剣の方が効率が良いと判断したからだ。槍は貫通力があるが、刺さったままになれば隙は大きいしその間に攻撃されれば御陀仏だ。

 

そして、アストルフォはヤマメに向かって駆け出し、ヤマメも液体が滴る片腕を振り上げて液体をアストルフォにぶっかけようとした、その時だった。

 

「其処までじゃ!!」

 

ヤマメとアストルフォはその言葉と共に動きを止めた。アストルフォの剣先がヤマメの額に当たる前に止まっており、ヤマメの腕がアストルフォの身体に液体が当たりそうになるギリギリまで迫っていた。

 

そして、二人は声のした方向を向いた。

 

其処には、松葉杖を両手で持っているが、身体は猫背になっておらず、活発な印象のある、頭が後ろに伸びるように大きくなった老人男性の姿があった。因みに眉毛は太くて青い。

 

「ヤマメ。今お主は何をやろうとした?凶暴化した妖精や魔物なら兎も角、目の前に居るのは博麗の巫女と肉体を持った霊体じゃ。雌雄を決めるモンスターバトルも行わず何をしようとしておる?」

 

老人はヤマメに問い掛けた。ヤマメは先程までの血気盛んな雰囲気から、たじたじとしてまるで親に叱られる子供のように怯えた様子もある。

 

「ぬ、ぬらりひょん様、じゃなくて大将・・・それはその・・・侵入者が来たから、地底に入って来ないよう追い出すつもりでやっただけで・・・」

 

「博麗の巫女が死にかけておるが?」

 

「・・・ごめんなさい。博麗の巫女が思ってた以上に強かった為、つい空気を毒で・・・」

 

「・・・全く、紫にどやされちまうわい!おい其処の女の格好した青年。早う博麗の巫女を運べ。ワシの屋敷に案内してやる」

 

ぬらりひょんと呼ばれた老人は、アストルフォに霊夢を助けるよう告げた。

 

「う、うん分かった!ほら霊夢!すぐに治療してあげるから、頑張って!」

 

怪獣装甲形態を解いたアストルフォは、霊夢をお姫様抱っこの要領で抱えた後にヒポグリフの背中に乗せて、自分もヒポグリフに乗る。

 

「ほれヤマメ、お主も来んかい」

 

「は、はい・・・」

 

こうして、ヤマメ対霊夢&アストルフォの対決は、横から入ったぬらりひょんの介入によって止められた。

 

そして一方、魔理沙達の闘いも終わろうとしていた。

 

──────────────────────

 

魔理沙とキスメは暫く闘っていた。魔理沙の熱線をキスメは横に移動して避けた後、両肩の鳥の頭が鳴き声を上げた後に口から炎を吐き出した。魔理沙の身体に炎が当たるが、魔理沙は体表の内側に張った非対称性透過シールドによってキスメの放つ『地獄火炎』を防いでいく。

 

そして、魔理沙は箒の後ろにミニ八卦炉を着けて、更に電光を背鰭から放ってミニ八卦炉に集束させ、一気に解き放った。

 

「『ブレイジングプラズマスター』!攻撃してる今なら素早く無い!」

 

「し、しま───」

 

そして、流星の如く迫った魔理沙の突撃がキスメの桶を破壊し、キスメの胴体に当たった。キスメは白目を向き、嘔吐物を口から吐いた。そして、魔理沙が通り過ぎた後にキスメは天井に叩き付けられて、そのまま地面へ落ちた。

 

『この勝負、魔理沙様の勝ちとします!』

 

「・・・ふぅ。それなりに強かったが、まあ私の相手じゃなかったな。皆、終わったぜ」

 

魔理沙は通常形態に戻り、控えていたユウキや狂三にも勝利を伝えた。

 

「うん!おめでとう魔理沙!」

 

「キスメさんもお強いですが、難なく倒されましたわね魔理沙さん」

 

「まあな。でも、こいつもかなり強い部類だと思うんだ。とはいえ気絶しちまってるからな。命令は紙に残しておくか」

 

魔理沙はメモ帳を取り出し、ページを破いた後に破り取ったページへ命令内容を書き込んだ。そして、破り取ったページをキスメの胸元に置いた。

 

『さあ、行きます・・・っ?あああっ!!』

 

ユウコが悲鳴を上げた。魔理沙達は驚いてユウコを見ると、ユウコの顔が青ざめており、慌てた様子も見せていた。

 

『霊夢様のバイタルサインが消えかけています!もしかしたら、命に関わる危険な目に遭っている可能性が強いです!』

 

「なんだと!?霊夢は何処だ!!早く探さねぇと!!」

 

『この先です!急ぎましょう!』

 

ユウコと魔理沙が全速力で飛んで、洞窟の奥へ進む。

 

「あっ!待ってよ!」

 

「此処へ置いて行かないでくださいまし!」

 

ユウキは怪獣娘形態へ変身し、胸の真ん中が輝いて、両腕にドラゴンのような翼を生やし、ドラゴンの鱗で構成された神々しくも禍々しい西洋甲冑を身に付けた。狂三は変身しないまま、空を飛んで魔理沙とユウコを追った。

 

キスメの胸元に置かれた命令内容は、以下の通りである。

 

『私達は此処を通して、地底に向かわせて貰うぜ!』




新技集

『ブレイジングプラズマスター』
使用者:魔理沙
『ブレイジングスター』をフィリウスの熱線と合わせる事によって、流星の如き速さで突撃する事が出来る。但し、真っ直ぐにしか飛べなくなる為、下手すれば自分も壁に激突する危険な技であるのだが、魔理沙は非対称性透過シールドによって何処かにぶつかってもダメージを負わない。

ぬらりひょんの紹介は、また今度に回します。オリジナル怪獣枠として。その理由もまた今度出しますので。

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