東方怪獣娘ー怪獣を宿す幻想少女達ー   作:ちいさな魔女

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番外編・2:ザ・キングダム

翌日。麟は人里で二胡の演奏を行っていた。現代で言えば路上ライブと言った所だろう。彼女の演奏は人里でも評判が良く、特に妖怪や高齢の人間達から人気があった。

 

そして、麟の演奏が終了して観客から拍手が鳴り響いた。

 

「ありがとうございました!また聴いてください!」

 

麟は観客に向かってお礼を言った。二胡の演奏で稼いでいるが、こうして自分の演奏で皆が楽しんでくれるのは大好きだ。観客が帰路に着いた後、麟は二胡を肩から下げて再び歩き出す。

 

「さて、ミスチーの店に行きますか」

 

この世界では、さほど幼い年齢で無ければ未成年でもお酒が飲める。最近参拝客が増えた博麗神社の霊夢が出すお酒も美味であり、紅魔館の住人が所持していたワインというお酒も高級品なだけあって人里でも絶賛であった。そして、ミスチーこと夜雀の妖怪『ミスティア・ローレライ』の出すお酒もまた、幻想郷の名物であった。

 

麟はミスティアの店にやって来た。店は人里で大きな建物を使ったり、移動式屋台を使ったりと、日によってミスティアの店は代わるが、それでもミスティアの八ツ目鰻は幻想郷の名物であるのだ。

 

今回のミスティアの店は、移動式屋台である。なので、現在の客は麟だけだ。

 

「ミスチー。八ツ目鰻をお願いね」

 

「はーい。何時もありがとね。麟さん」

 

「ミスチーの八ツ目鰻は美味しいからね」

 

「でもごめんね。やっぱり外の世界にある海の魚は無いんだ」

 

「仕方ないさ。無い物ねだりしてもしょうがないし。霊夢や魔理沙が言ってた『八雲紫』に頼む手もあるけど、何処に居るか解らないらしいね」

 

麟がミスティアの八ツ目鰻を食べながら、海の魚が食べてみたい事をミスティアに打ち明ける。しかし、やはり力になれなくて謝るミスティア。幻想郷に海は存在せず、自分が取り扱ってる魚は霧の湖や森の川で取れた魚だ。海の魚も、是非とも捌いてみたい。

 

無い物ねだりしても仕方無い。そう思った、その時だった。

 

「海の幸が喰いたいか?」

 

麟の隣に、ある者が座った。誰かが麟の隣に座った事を認識し、二人は隣の客を見た───瞬間に顔を驚愕に染める。其処に居たのは小柄な体格ではあるが、二本の長く大きな捻れた角を頭に生やすオレンジ色のロングヘアーを先っぽで一つに纏めた少女だった。白のノースリーブに紫のロングスカートを着ており、頭に麟や霊夢のような大きなリボンを身に付けている。左の角にも青いリボンを着けている。腰には紫の瓢箪を装着しており、両手首に鎖を繋げている。

 

それは、見ただけで解る。彼女が鬼である事が、一目で解った。

 

「ひっ!?す、萃香様!?」

 

ミスティアが怯えている。麟は緊張して表情が強張っている。

 

「そう堅苦しくするなよ。私は()()()()()()()()()。特にお前に協力を頼みに来たんだよ」

 

萃香が麟を指差す。麟は驚いた。まさか鬼から勧誘を受けるとは思わなかったからだ。

 

「・・・僕に何の用?勧誘なんて、僕は此処で二胡の演奏をするのが好きなんだ」

 

「別にお前の生活を脅かしたい訳じゃ無いんだ。まあ私は面白そうだから力を貸してる。それに、お前にとっても悪い話じゃない。海の幸、喰いたいんだろ?」

 

「・・・それは、まあ。でもそれは、僕に宿ったゴジラの本能で食べたいと思って・・・まあ僕も食べたいと思ってるけど」

 

「なら」と萃香はミスティアに注文をした。ミスティアは良い焼き加減の八ツ目鰻を皿に乗せて、萃香に手渡した。萃香は八ツ目鰻を豪快に、リスのように頬を膨らませて頬張った後、飲み込んだ後に話を続けた。

 

「話は早い。なあに、あの人からの任務を引き受けてくれればいいんだ。嫌なら断って構わないしな。代わりは私もやるし、他にいくらでも替えは効く。まあ海の幸も無しだがな」

 

鬼は嘘を嫌う。故に今話した事は真実だろう。ならば此は、麟にとって滅多に無いチャンスだった。麟は迷ったものの、海の幸が食べたい欲求と、昔からある好奇心に負けてしまった。魔理沙程ではないが、自分もアクティブな事は大好きだ。幻想郷には無い海、つまり外の世界に行けるチャンスかもしれないのだ。

 

「・・・解ったよ。受けるよ───受けます、萃香様」

 

「堅苦しいのは無し!それと様も良い!此れから仕事を共にやる同士なんだ!」

 

「・・・うん!ありがとう萃香!」

 

「っ!ああっ、宜しく頼むな!えっと・・・名前聞いて無かったな」

 

「あっ。僕は冴月麟。麟って呼んで」

 

「おう!麟!」

 

その時の萃香は、とても嬉しそうであった。引き受けてくれた事を喜んでいたのもあるだろうが、それ以上に対等に呼んでくれた事を喜んで居るように見えた。麟やミスティアには、少なくともそう見えたのだ。

 

そして、ミスティアにお代を支払った後、二人は人気の無い場所に移動して話の続きを行う。

 

「にしても、麟の二胡は凄かったな!あれ、家訓なのか?」

 

「ううん。僕の独学なんだ。元から音楽に興味があったから、自分で始めたんだよ」

 

「なら丁度良いな!外の世界の音楽は凄いぞ!それに、此れを使えばわざわざ見に行かなくても、お前さんの音楽を聴いて貰えるぞ!」

 

萃香が自分の瓢箪『伊吹瓢(いぶきびょう)』の飲み口を口に加えて酒を飲む。萃香は伊吹瓢から口を離した後に、懐から小さな掌サイズの箱の装置を取り出した。

 

「何これ?」

 

「まあその説明は後さ。今は此処で、二胡を聴かせてくれないかい?」

 

「う、うん」

 

箱が何か気になった所だが、麟はぶら下げた二胡を手にして、早速演奏し始める。観客に披露したように、二胡の演奏を始める。

 

演奏が始まると同時に、萃香は箱のあるスイッチを入れる。

 

そして、四分もの演奏が終わり、麟はやりきった表情を見せた。萃香も聞き惚れていたが、箱のスイッチを押した後に感想を述べる。

 

「良い演奏だったよ。江戸時代にも此処まで上手いのは居ないな」

 

「う、うん。なんか嬉しい」

 

「そしてよーく見ておけ」

 

萃香は箱のスイッチを再び押した。すると、箱の中から見える二つの輪のような物が回り始める。その瞬間、箱から流れてきたのは、麟が二胡で演奏した音楽であった。

 

「えっ!?なんで!?どうなってるの!?」

 

「此は外の世界で言う“カセットテープ”って言うんだ。此れに音楽を聴かせて、音楽を残してくれるんだ。今やったようにな」

 

「それは凄い!」

 

「もっと知りたいなら、改めて訊くよ。私達の任務、引き受けないか?勿論修行はさせるし、何時も通りの日常を歩ませる。そして、任務を受けるのが嫌なら断っても構わない。約束するよ。鬼との約束だからな」

 

「うん!僕、萃香達に協力するよ!」

 

「よし言ったな?ようこそ、私達の『ザ・キングダム』へ。人間でも歓迎するよ」

 

萃香が麟と握手をする。その瞬間、二人の元へ黄金の円形の門が開く。そして其処から、『Welcome Hell』と書かれた黒いTシャツに赤と青と緑のルービックキューブのようなスカートを身に付け、スタイリッシュな爆乳の女性が現れた。頭には紫色の惑星を乗っけており、鎖で首輪と繋がっていた。他にも地球や月も左右に浮かせており、それぞれも鎖で首輪と繋がっている。

 

「ふふっ。勧誘お疲れ様」

 

「まあ危険な任務ではあるけど、麟にとって良い経験にはなるさ。もし麟がやるなら、私達でサポートするよ」

 

「そうよねん。あっ、冴月麟ちゃんね?私は地獄の女神『へカーティア・ラピスラズリ』よん。究極生命体アブソリューティアンの戦士『アブソリュートタルタロス』と契約して、ある計画と異世界に渡った脅威を倒す為に動いているのよん」

 

「あっ、僕は冴月麟だよ。二胡の演奏が得意なんだ」

 

「ふふっ。フレンドリーで良いわねん。それじゃあ私達の事と、私と友人の計画と、私のやってる任務を説明するわねん。詳しくはこの『ナラク』の中で説明するわよん。着いて来なさい」

 

へカーティアと名乗る女性の言う通りに、麟は萃香と手を繋いだまま歩き出した。黄金の門を潜り、その中に入る。門が閉じて、軈てその場から誰も居なくなった。




というわけで、へカーティアを早く登場させました。

次回で、彼女の立てている計画と地獄での仕事を除いた任務の説明に入ります。麟はへカーティアの元に案内されますが、ちゃんと幻想郷で暮らせますし、任務を受けるかどうかは彼女が決められます。

計画に関しては、紺珠伝を知ってるなら説明するまでもありませんよね?まあ原作より大規模な攻撃にはなりますが。そして、へカーティア達が集めた幻想郷メンバーと、彼女達がやる任務は次回明らかになります。それらはコラボ編に繋げる為の話でもありますので。

そして、へカーティアのタルタロスと契約したという意味が明らかとなります。へカーティアは幻想郷の住人みたいに、タルタロスの力をただ纏ってる訳ではありませんので。遊馬とアストラルのような関係と思って頂ければ。
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