東方怪獣娘ー怪獣を宿す幻想少女達ー   作:ちいさな魔女

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第134話

一部変わって、地底への入り口。其処から数十名もの妖怪達が地上へ姿を現した。それを先頭で率いるのは、妖怪の総大将であるぬらりひょんである。第一形態の老人姿だ。

 

「ぬらりひょん。貴男が地上に戻って来られるとは思いませんでした」

 

「ホントにぬらりひょん様が来ましたね四季様。アタイの仕事が増やされますかねぇ?」

 

ぬらりひょん達の前に現れたのは、映姫と小町だ。

 

「久しいのう映姫。閻魔が態々動くとは、お主等も事の重大さに気付いておるじゃろ?覚り妖怪の妹が、幻想郷を滅ぼす存在になりかけている」

 

「承知の上です。幸いにも私と小町は今日は非番なので、各勢力に事の重大さを伝える為に動き回るには打ってつけでした」

 

「そうじゃろうな。で、映姫。ワシとしては久々にお主と共に闘う事が出来て光栄じゃ」

 

「・・・そうですね、ぬらりひょん。いえ、お師匠様。嘗て地蔵が信仰を得ただけの私を鍛え上げ、こうして閻魔になる事が出来たお礼です」

 

映姫のカミングアウトに妖怪達や小町は驚き、中には腰を抜かす者も居た。

 

「四季様の、お師匠様!?」

 

「幻想郷の閻魔大王様が、ぬらりひょん様の御弟子様!?」

 

小町は映姫に尋ねた。さとりも驚いている。映姫の代わりにぬらりひょんが答える。

 

「勿論、あの頃のワシには今より遥かに力があった」

 

「そうですね。栄枯盛衰は文明の法則。お師匠様にはもう、嘗てのような力は残っておられないのでしょう」

 

「ああっ。歳は取りたくなかったが、妖怪の命も永遠ではない。じゃが、ワシは善き孫と、孫の親友達を持ったわい」

 

「ええっ。さあお師匠様、いえ、ぬらりひょん。私達も地底に赴きます。ぬらりひょんは八雲紫及び幻想郷各勢力と同盟を結び、古明地こいしに備えてください」

 

「勿論じゃ。映姫」

 

そして、映姫と小町は、入れ替わるようにぬらりひょん達と擦れ違う。そして、同行しているさとりとユウキがぬらりひょんに尋ねる。

 

「ぬらりひょん様・・・こいしはもしや、殺されるのでは・・・」

 

「大丈夫。麟達を信じよう。でもぬらりひょんさん、その古明地こいしって娘に其処まで警戒するのは、それほどまでに強いんですか?」

 

ユウキの問いに、ぬらりひょんは答えた。

 

「ああっ。仮にも地底を統治する覚り妖怪じゃ。さとりは闘いが苦手じゃが弱い訳ではないし、こいしはそんなさとりよりやや力は上なんじゃ。訳あって話せんが、こいしは心を閉ざして無意識を操る能力を得てしまった。じゃが、こいしは良い子じゃ。それは保証する」

 

その時のぬらりひょんの声は、飄々とした物ではなく真剣その物だった。

 

「・・・じゃが、こいしは宿してしまった。ワシの長い人生に置いても、あんなに恐ろしい物は初めて見たわい。あれは全ての妖怪所か、八百万の神々が揃ったとして立ち向かえるかどうか・・・」

 

ぬらりひょんが冷や汗を流す。表情も険しくなっており、身体も僅かに震えていた。ぬらりひょんが此処まで恐怖を感じたのは、神々やタイタン達と闘った時以来だ。いや、震えはその時よりも遥かに強い。

 

「・・・私には分かります。ブルトンを宿した私だから分かるんです。こいしが宿したあれは、怪獣でも生き物でもありません。名前は『グリーザ』。あれを言葉で表すなら・・・“無”です」

 

──────────────────────

 

「・・・ハァ」

 

紫はスキマから通じる空間の中で、地底のある場所へ境界を繋げようとした。

 

しかし、境界を繋げる事が出来なかった。次元干渉を遮断されているのだ。

 

「恐らく、あの覚り妖怪、それも姉の方の仕業ね。ぬらりひょんとの会話を盗み聞きしてみたけど・・・事態は最悪ね」

 

さとりが宿した怪獣の力で、妹を封印しているのだろう。前のフランのように。いや、話を聞く限りこいしという覚り妖怪が宿した怪獣は、フランのデストロイアとは比べ物にならない。

 

「・・・もう、地上とか地底とかの隔たりに拘る理由は無いわね」

 

紫はそう感じた。閻魔大王が部下の死神を連れて事態の対処に向かう程だ。

 

「・・・モルド達の居る人里には隠岐奈を、永遠亭や白玉楼には藍を、守矢神社と光の三妖精には橙を向かわせたわ。皆、動いて欲しいわ・・・」

 

幻想郷の各勢力に声を掛けた。それほどまでに、こいしが宿した存在が脅威だと理解し感じた紫。

 

──────────────────────

 

ギナの働く定食屋にて、隠岐奈から詳細を聞いたグア三姉妹。

 

「モルド姉上!奴を宿す者が現れたとなれば、今すぐ始末すべきかと!!」

 

「落ち着けジュダ!だがもしそれが真ならば、我々が元に戻れぬ事を覚悟せねばなるまい!ジュダ!ギナ!覚悟を決めよ!」

 

「ハッ!」

 

モルドはバットアックスを布で磨く。ギナはバットウィップスを引っ張る事で音を鳴らす。ジュダは石でバットキャリバーを研ぎ始める。

 

「ギナさん・・・気を付けて行ってきてね」

 

卓夫は、ギナに話し掛ける。その顔は不安を表していた。目も悲し気だ。

 

「・・・卓夫。心配するな。私はモルド姉上やジュダと共に必ず戻る」

 

「・・・うん!戻ってきたら、最高の賄い飯をご馳走するからね!」

 

「ああっ、期待してる」

 

そしてギナは、必ず帰らなくてはならない目的が出来た。

 

(フフフッ。あのグア三姉妹・・・いや三兄弟が変わったな。此も幻想郷のお陰か・・・・・・にしてもモルドにジュダか・・・良い身体だぁ♥️!私の物にしたい♥️!鎧に隠されているが、隠れ巨乳である事は明白♥️!おっぱいモミモミしたいぞぉー♥️!)

 

隠岐奈は手をワキワキとさせながら、モルドとジュダを見ていた。モルドとジュダはその時に悪寒を感じたのは、言うまでも無い。

 

「隠岐奈様がまた他の女に色目を向けたわね」

 

「あんなに幸せな隠岐奈様を見ちゃったら、僕達も嬉しいなぁ」

 

「ええっ、ホント」

 

「でもさ~」

 

「「隠岐奈様の惚れた女はコロソ♥️そして隠岐奈様を私/僕が励ましてあげなくちゃ♥️欲しい欲しい欲しい欲しい♥️隠岐奈様の子供♥️欲しい隠岐奈様の子供欲しい隠岐奈様の子供欲しい隠岐奈様の子供───♥️」」

 

里乃と舞は社交ダンスとバレエのように舞い、お互いの身体を合わせて躍りながら語る。そして隠岐奈に迫り、彼女の肩を掴んで離さない。

 

(そして頼む!!この二童子達の魔の手から私を助けてくれぇ!!)

 

隠岐奈は涙目になりながら、心の中で訴えた。もし口にすれば、この二童子達に何をされるか分からないからだ。

 

──────────────────────

 

「それは、確かに不味いわね」

 

永遠亭。其処で永淋と輝夜、鈴仙とてゐ、そしてギャラクトロンを纏った兎達、そして玉兎達に加えて綿月姉妹が、藍の話を聞いて驚愕した。

 

「永淋、私は地底に向かうわ。永淋には地上を任せて良いかしら?」

 

「姫様!私も同行します!姫様は私が命に変えてもお守り致します♥️!」

 

「依姫が行くなら私も行くわ。だって姫様を愛する者同士、だものね♥️」

 

「・・・よし、分かったわ。私と優曇華、てゐに兎達で地上は守るわ。万が一“グリーザ”を宿した覚り妖怪が現れたら、殺すつもりで対処する。そのつもりよ」

 

永淋は裁断を下す。

 

「てゐ。貴女は永遠亭の周囲に罠を設置してきて。私は兎達と一緒に防衛陣を形成するわ」

 

「分かった鈴仙!鈴仙も気を付けるウサ!」

 

てゐはその場から跳んだ。輝夜と依姫、豊姫の三人も上空へ向かって飛び去った。

 

「優曇華。万が一の時は、貴女だけでも逃げなさい」

 

「そんな!?お師匠様を置いて行くなんて!」

 

「私はもう長く生きたわ。もし生きていられるなら、此れからも薬師として幻想郷に貢献していきたいわ。でも、それが叶わないなら、せめて貴女達に未来を与えたいの」

 

「お師匠様・・・」

 

鈴仙は瞳に涙を浮かべた。永淋は鈴仙の頭を撫でる。

 

「そんな顔をしないで。貴女には地上の人妖に加えて、輝夜に豊姫、依姫も居る。てゐに兎達、そしてあの可愛い剣士さんが居るわ。貴女は一人じゃないのよ」

 

「っ!はい!」

 

鈴仙の顔に活気が戻る。その笑顔は太陽のように温かく、マグマの如く強い覚悟が宿っていた。

 

こうして、永淋達も守りを固めていく。

 

(何も起こらなければ良いんだが・・・)

 

藍はそんな不安を抱えながら、次の勢力へ情報を伝えに向かった。

 

──────────────────────

 

「成る程。橙ちゃん、態々ご苦労様ね」

 

「すまないな、橙」

 

「紫様と藍しゃまの頼みです!お二人のお力もお貸しください!」

 

白玉楼にて、橙は幽々子と妖夢の二人にも声を掛けた。

 

「妖夢。今回の異変は、地上と地底の縛りに囚われる必要は無いわ。貴女の力、存分に奮って行きなさい。冥界は私に任せて頂戴」

 

「えっ!?しかし幽々子様が・・・」

 

「私は既に死んでるから大丈夫よ。それに、妖夢だってあの可愛い軍人兎ちゃんを護りたいでしょ?」

 

「っ!!はい!!幽々子様、行ってきます!!」

 

こうして、妖夢も動き出した。

 

幻想郷各地にも伝わり、たった一人の為に緊急事態宣言が幻想郷全域に広まった。

 

そしてそれは、天界にも訪れた。

 

「・・・衣玖。お前の力、貸してくれないか?」

 

「総領娘様。何卒、私の力をお使いくださいませ」

 

「良い返事だ!さあ、私達も行くぞ!!」

 

天子と衣玖も動き出す。

 

幻想郷全体が動き始めた。

 

たった一人の、心を閉ざし、虚空の存在を宿した哀しき覚り妖怪を倒す為に。

 

そして地底では、それに対抗しうる武器を、麟は入手しようとしていた。

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