東方怪獣娘ー怪獣を宿す幻想少女達ー   作:ちいさな魔女

14 / 261
番外編最後の話です。へカーティアの計画と任務、そしてへカーティアが集めたメンバーが明らかとなります。


番外編・3:ザ・キングダム

『ナラク』。部屋全体が金色に輝いているが、麟の目にダメージを与える事は無かった。それは、へカーティアや萃香、そして部屋にある円卓を囲むように椅子へ座っている五人のメンバーも同じだ。

 

「おっ?あんたは確か、人里で評判の良い二胡の演奏家だな?私も人里へ来て聴いてるよ」

 

「妹紅さん!貴女も来てたんですね!」

 

一人目は『藤原妹紅』。かつて『蓬莱の薬』を飲んで、不老不死となった少女。現在は幻想郷に存在する迷いの竹林の案内人を務めながら、人里の自警団団長として活動している。

 

「あら?それは興味があるわね。私も貴女の二胡を聴きに行って良いかしら?」

 

「勿論!僕も幽香さんに聴いて貰えるなら、全力でやりますよ!」

 

二人目は『風見幽香』。幻想郷にある年中向日葵が咲く『太陽の畑』を管理する妖怪だ。妖怪という枠には収まらない実力を兼ね備えている。

 

「アタイの役に立つんだろうな~?足手まといはごめんだぜ!」

 

(なんか変な格好してるね。ぴえろ?って言うんだっけ?小さい頃に『香林堂』で読んだ外の世界の本に乗ってたね)

 

三人目は『クラウンピース』。地獄の妖精にして、へカーティアの部下でもある。傲慢な態度が目立つが、それ以上に無邪気で子供らしいといった、妖精らしさも持ち合わせている。

 

「まっ、アタシは萃香に誘われて来たんだけどねぇ。これまた面白くなりそうだな」

 

四人目は『星熊勇儀』。萃香と同じ『山の四天王』の一人である鬼で、力ならば萃香より圧倒的に上である。その為、『力の勇儀』という異名を持っている。

 

「へカーティア・・・悪いわね。私の復讐の為に、此処までしてくれるなんて」

 

五人目は『純狐』。かつて夫に息子を殺されて、夫を殺害した後に夫が密かに関係を持っていた『嫦娥』を憎んだ哀しき神霊。彼女の計画をより壮大にする為に、へカーティアが動いたのである。

 

「友人の頼みだもの。それに私も、嫦娥に対して物申したい事もあるし。それより、私達『ザ・キングダム』の新入りを紹介するわよん。新入りの『冴月麟』ちゃんよ。皆、仲良くして頂戴」

 

「冴月麟です。此れから宜しくお願いします」

 

麟は挨拶をした。それを見た勇儀は、先程萃香が言った事と同じ事を言う。

 

「かったくるしいねぇ!呼び捨てで構わねぇよ!此れから共にやってく仲間なんだからよ!あっ、アタシは星熊勇儀だ。勇儀で良いぜ」

 

「う、うん。宜しく、勇儀」

 

「あらあら。こんなか弱そうに見えるお嬢さんが、私達の任務をこなせるかしら?」

 

幽香が麟の髪を撫でる。麟は強い人妖に囲まれて緊張で心臓の鼓動が早く鳴り響くのを感じていた。

 

「そうだよなあ!新入りにはなぁ、それなりの洗練って奴が居るよな!」

 

クラウンピースが何かを取り出そうとしたが、純狐が彼女の手を制する。

 

「やめなさい。どうしても不安なら、私達でサポートすれば良いだけの話でしょ?」

 

「でもー友人様~・・・」

 

「まあ良いじゃない。初めての任務じゃ麟ちゃんだけじゃなく萃香にも行かせるつもりだったし」

 

へカーティアは初めから、麟が上手くやれるとは思ってない。その為、初めての任務には萃香を同行させるつもりなのだ。

 

「でも、僕はどうすれば良いの?」

 

「そうね。任務を説明するわよん。任務は『異世界に散らばった“スフィア”、“ゴーデス細胞”、“スペースビースト”の駆除』よん」

 

へカーティアが答える。麟が質問を続けた。

 

「スフィアって何?」

 

「宇宙の全ての生命を自分達と一つにしようとする宇宙生命体よん。何体にも分離・再合成する事が出来、スフィアを核として融合した生物や物質は『スフィア合成獣』になってしまうわよん。本体である『グランスフィア』はかつてある戦士に倒されたのだけれど、生き残ったスフィア達は未だに活動を続けているわ。そして何者かによって、スフィアが外の世界だけでなく異世界にまでばら蒔かれているわ」

 

「・・・じゃあゴーデス細胞って?」

 

麟の問いに、今まで無口だった妹紅が答える。

 

「ゴーデス細胞は、ゴーデスという邪悪生命体から産み出される細胞でな。宇宙の全ての生命を取り込んで滅ぼそうとした悪魔のような存在だよ。そして、ゴーデス細胞は取りついた生物を怪獣に変える事が可能で、ゴーデス細胞の意のままに操られる存在となり、別の生き物にゴーデス細胞を感染させようとする。本体であるゴーデスは倒されたが、その細胞が何者かによって他の世界に持ち込まれているんだ」

 

麟は緊張した。話を聞く限り、マトモに戦って上手く対処出来るとは思えないからだ。

 

「・・・スペースビーストって何?」

 

麟の問いに、今度は純狐が答える。

 

「ビースト因子というのがあって、それが生物や物質に取りつく事で誕生する謎の生物群の事よ。見た目が恐ろしいものばっかりで、中にはグロテスク過ぎてSAN値が削られるのも居るわ。種族全体の学習能力と進化速度が速い上に生命力も尋常じゃないからしぶといのよ。中にはバラバラに爆散しても復活する個体も居る位だし。そして、生物を捕食して成長・進化を行う性質を持ってて、特に人間といった知的生命体を好んで居るわ。おまけにビーストへの恐怖心が、更なるビーストを呼び寄せるという厄介な性質があるわ。更に、体内にある器官から『ビースト振動波』という特殊な波動を出して、他のビーストと情報を共有するのよ。だから、例えビーストを倒したとしても、後から出てくる個体が環境や外敵に対して強くなって出てくるのよ」

 

麟は純狐の説明で全てを理解した。自分達の任務とは、ゴーデス細胞やスフィア、そしてスペースビーストを駆逐する事だと。

 

「でも、どれも生き物を取り込んで強くなるんだよね?僕達の力も覚えられてしまったらおしまいじゃないか。戦えば戦う程に、僕達が不利になるだけだと思うけど」

 

麟の考えは当たっていた。ゴーデス細胞も侵食されれば、どんなに抵抗してもいずれ取り込まれて支配される。スフィアも一度融合されたら、スフィア合成獣となってしまう。スペースビーストに関しては、ビースト因子に取りつかれたらスペースビーストに変貌する。更に、進化と成長が速くて外敵や環境に対して強くなっていく。普通に考えれば、どれも戦えば戦う程此方が不利になるだけである。自分達は怪獣の力を宿しているが、それ故にゴーデス細胞やスフィア、スペースビーストは寧ろ天敵と呼べる存在だ。特にスペースビーストに捕食されたら、知的生命体である自分と怪獣の力を取り込まれて、もう手に負えなくなる。

 

「大丈夫だよ。へカーティア様が何の対策もしてない訳が無いだろ?」

 

勇儀が口を開く。

 

「ご主人様。もう此処に呼んで大丈夫ですよね?」

 

「ええっ。私はそんな連中に対抗する為に、ある助っ人を呼んで居たのよ。生命溢れる豊かな遊星ジュランを護る、神々しい存在になった光のウイルスの集合体。さあ、入ってきて」

 

へカーティアが両手を握り締めて、掌の宝石を光らせた。その瞬間、ナラクの空間に再び門が開いた。そして其処から現れたのは、まるで天使のように神々しい姿をした黄金に輝く人型生命体であった。

 

『私はカオスヘッダー0。彼女の頼みを受けて、皆に力を授けに来た』

 

麟も思わず言葉を失った。カオスヘッダーの神々しい姿に見とれてしまったからだ。

 

「カオスヘッダーも、紹介した三体の種族と同じで進化し続けて弱点を克服する特性があるのよん。そしてカオスヘッダーを構成するウイルスを、今の彼は体から産み出せるの。そしてそのウイルスを内包した錠剤が此れよん」

 

カオスヘッダーからへカーティアに手渡されたカプセル状の錠剤。その中には、虹色に輝く無数の粒が動いていた。

 

「此れを飲めば、体内からカオスヘッダーのウイルスが取りついて、錠剤を飲んだ者を『カオス怪獣』に変化させるのよん。でも大丈夫。カオスヘッダーはかつてある慈愛の戦士の力を学習してるの。そのウイルスにもその戦士の性質が組み込まれているから、暴走の心配は無いわよん。そして『異界の私』と『地球の私』と『月の私』が改良を加えて、カオス怪獣化した者に外敵や弱点を克服して強くなる性質を持たせたわよん。つまり此で大丈夫って事。具体的に言うなら、ゴーデス細胞の侵食を受けても自力で抗体を生成して克服出来る。スフィアと融合されても克服して逆に取り込んで強くなれる。スペースビーストの進化と成長方法を学んで一気に倒す攻撃を編み出せる」

 

「凄い!それなら対抗出来る!」

 

麟は希望が持てた気がした。カオスヘッダーの錠剤を使えば、確かにあの三体の駆除を効率よく行える。

 

「但し、注意点が一つ。いくら慈愛の戦士の性質を持ってても、カオスヘッダーはウイルスよ?連続して服用したら何が起こるか解らないわ。だから、一回服用したら三分過ぎるまで服用しない事。それで良いのよね?カオスヘッダー」

 

『そうだ。コスモスの性質が加わり、へカーティアが改良した私のウイルスは、コスモスの地球での活動時間通り三分で死滅する。カオス怪獣化も三分過ぎれば元に戻る。しかし、そのウイルスが入った錠剤を連続して服用すれば、制限時間を無視したカオス怪獣となって暴走を始めて、周囲に破壊をもたらす存在となってしまう』

 

「そういう事。じゃあ、皆には十錠ずつ配るわ。奴等が現れたら服用しなさい」

 

こうして、麟を含めた『ザ・キングダム』の準備が整った。カオスヘッダーは門を通って元の世界へ帰って行った。そして、麟は解散前に、へカーティアにタルタロスと契約したとはどういう事なのか訊いた。

 

「あら、説明してなかったわね。貴女達と違って『異界の私』は怪獣を宿してる訳じゃないの。“他の私達”も怪獣を宿した幻想郷の人妖より異質なのだけど、私の場合はタルタロスと契約して、彼が私に宿っている。こんな感じでね」

 

へカーティアは両腕を左右に広げた。そして、へカーティアの体から黄金のオーラを纏った金色の巨人が姿を現した。

 

『我は究極生命体。アブソリューティアンの戦士『アブソリュートタルタロス』。異界のへカーティアと契約し、彼女に宿って力を与えているのだ』

 

「よ、宜しく。冴月麟だよ」

 

『彼女に協力したのは、私と同じく何者かによって目障りな奴等が解き放たれたからだ。私だけでは、いずれ負けてしまう。其処でウルトラマン達のようにへカーティアと契約し、今に至るのだ。報酬は約束しよう』

 

「そういう事。タルタロス。戻って良いわよん」

 

そして、タルタロスはへカーティアと再び一体化するように戻っていく。元の体勢に戻ったへカーティアは、麟に説明する。

 

「そういう事。理解出来たかしら?」

 

「うん」

 

「そして、この力で戦力を他の世界から集めて、純狐の計画が上手く行くよう・・・力を貸して貰えないかしら?頼みには来るけど、都合が悪かったり嫌なら、断っても構わないわ」

 

「解ったよ」

 

こうして、麟の『ザ・キングダム』としての活動が始まった。幻想郷での日常を過ごしつつ、異世界にまで侵食を続ける危険な存在を駆除する日々が、幕を開けたのだった。




次回、クレナイクレハさんの作品『もうやだ⋅⋅⋅⋅⋅⋅助けてバーサーカー!!!!』とコラボします!許可も頂けました!

スフィアか?ゴーデス細胞か?スペースビーストか?どれが放たれてますかねえ・・・どれにせよ、その世界にとって危険な存在でしょう。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。