東方怪獣娘ー怪獣を宿す幻想少女達ー   作:ちいさな魔女

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勧誘編・その7:シズエ・イザワ、大和、更木小夜・後編

鎮守府は突然襲撃を受けた。甘味処『間宮』と図書室は火の手が回っておらず、それ以外は火の手が回り、爆発が次々と起きてしまう。

 

その中心に居るのは、二人の男女。

 

「こんだけやりゃ、艦娘も駆け付けるだろう」

 

「あの、やっぱり重いです!」

 

「ハハハッ!お前の姿、最早面影もねぇな!」

 

「笑わないでください!」

 

なのの姿、それは武器人間と呼ぶに相応しい姿であり、全身に様々な武器が搭載されていた。いや、搭載され過ぎてなのの姿が見えなくなっていた。頭のプロペラ機に加えて下顎にはドリル、四本の腕に鎌と槍がそれぞれ二本ずつ、増幅コアを搭載した固い装甲、脚には槍を搭載し、背中には鋭い歯の付いた開閉式装甲が取り付けられ、正に全身武器人間である。

 

「だが気に入ってるだろ?」

 

「・・・まあ、そうですが」

 

そして、騒ぎを聞き付けた艦娘が二人の前に立ちはだかる。

 

「お前ら何者だよ!?」

 

「ん?俺達はお前等艦娘を拐いに来たぜ」

 

「ハイゼンベルクさん!誤解されちゃいます!違います!私達は貴女方を助けに来たんです!」

 

「拐う事は変わらねぇだろ?」

 

なのが代弁するが、ハイゼンベルクに反論されて言葉が詰まるなの。

 

二人に話し掛けたのは、眼帯を着けた剣持ちの艦娘である天龍であった。その後ろから、多数の艦娘が走ってくる。

 

「拐うだと!?お前彼奴の、提督の刺客か!!」

 

「お前等を苦しめてる奴の?勘違いすんじゃねえよ。俺はそいつの四肢を引きちぎりに来ただけだぜ。テメェも気に食わねえんなら、俺が提督を瀕死にする所を見届けろよ」

 

「・・・っ!」

 

天龍は言葉に詰まる。自分達は今まで提督に苦しめられてきた。ならば、それを見逃してやるのが最大の報復だろう。

 

『お前等!!何してやがる!!早く侵入者を殺せ!!』

 

そんな時、スピーカーから声が響く。艦娘達は複雑な表情になりながらも、ハイゼンベルク達に砲塔を向けた。しかし、此処で全員は驚愕してしまう。なんと自分達の武器が手元を離れてしまい、ハイゼンベルクの周りで浮き始めたのだ。

 

「どうやら多少は痛い目に遭って貰う必要がありそうだな。悪いがお前等の武器は使えねえよ。少なくとも俺が居る限りはな」

 

剣や薙刀、艤装さえもハイゼンベルクの周りを回るだけだ。

 

そして、ハイゼンベルクが鎚を振り下ろし、地面を強く叩いた。その瞬間、ハイゼンベルクの周りに浮いていた艤装や装備が全て艦娘達に向かって飛んでいき、彼女達を押し潰す。中には砲口が当たって腕が折れた者も居た。

 

「悪いがお前等は暫く眠ってて貰うぜ。朝になればあの男の四肢を無くした姿を拝ませてやるよ」

 

「ま、待て・・・」

 

天龍だけでなく、戦艦『長門』もハイゼンベルクに手を伸ばした。すると、駆逐艦の艦娘達が一斉に駆け付け、状況を見てハイゼンベルク達の仕業と理解した。

 

「な、何なのよこれ!?あんた達がやったの!?」

 

「す、すみません!ですが、皆さんの為なんです!貴女達を悪い大人から解放する為にも!」

 

「ふざけるな!天龍さん達をこんな目に遭わせて!!」

 

駆逐艦達がハイゼンベルク達に砲塔を向ける。すると、再びハイゼンベルクの周りに駆逐艦達の艤装が飛んでいき、彼の周りを回りながら浮き始める。

 

「人の話を聞けよな。俺は今からお前等の提督の四肢をブッ飛ばしてやるんだよ。お前等が憎い奴に、此までのお返しをしてやれるんだぜ?おい、なの」

 

「は、はい!」

 

「俺が時間を稼ぐから、お前はその提督の元へ行きな。俺の相棒としてしっかりやれよ?」

 

「分かりました!四肢の切断は無理ですが、上手く殺ります!」

 

なのは重い身体のせいで身軽に動けないものの、建物の壁を体当たりで破壊した。そして、廊下を走れない代わりに早歩きで提督室へ向かって行った。

 

「では親愛なる艦娘の諸君!長く待たせる事になるが、なのが提督連れて戻ってきたら見ておけよ!此から始まる人間解体ショーをな!」

 

「人間解体って、何をするのです!?」

 

駆逐艦『電』が訊いた。

 

「お前等にも参加して貰うぜ。お前等を辱しめて来た男が、お前等の目の前で四肢を切断されて泣き叫び、お前等にどんなに謝っても石をぶん投げられる!これ以上無い位の公開処刑という奴だ!奴に石、いやこの場にある金属ボールを投げ付けたい、或いは蹴り飛ばして当てたい奴は、此処へ集まって球を持ちな!!」

 

ハイゼンベルクが袖からその場に無数の金属ボールを溢すように落とした。野球ボールサイズからバスケットボールサイズまで、それぞれ違う大きさを持つ金属玉がその場に激しい金属音と共に転げ落ちた。

 

「・・・確かに憎いし、私もセクハラは受けたわ。だけど、私はそんなのやりたくない!そんなことしたら、彼奴と同じになるだけよ!」

 

「私もだよ暁ちゃん・・・ごめんなさい!やっぱり私も出来ません!」

 

反対する者は居た。駆逐艦『暁』と『吹雪』を筆頭に十数名。しかし、それ以外は賛同の声を上げた。中には『殺せ!!』と叫ぶ者も居る。

 

すると、再び壁を破壊してなのが出てきた。その手に白い軍服を身に付けた男を担いで。

 

「見つけました!」

 

「ほう。此は此は。随分ふくよかになってるもんだな?こんなかには溜まってんだろうな?人肉好きな奴は喜びそうだし、臓器も売れば金になるだろうぜ。まあ殺すの許されてねぇから後で生きたまま臓器を幾つか抜き取ってやるよ」

 

そして、ハイゼンベルクは壁に男を押さえ付け、無数の鉄棒で男の四肢を突き刺し、壁に固定した。男が絶叫を上げた。

 

「では艦娘共!!此処でよく見ておけ!!十秒数える!!数え終わったらこいつの四肢のどれかが千切れちまうぜ!!十秒の間に手に持ってる奴と地面の球を使って好きなだけこの男にぶちかましな!!さあいよいよ幕開けだ!!此から殺さない公開処刑を行う!!」

 

そして、ハイゼンベルクは男の顔を覗き込みながら告げた。

 

「それじゃあ良い悲鳴を期待してるぜ。艦娘共がお前の悲鳴を聴きたがってるからな!」

 

そして、ハイゼンベルクが鎚を振り下ろして地面を叩いた。その瞬間、なのが片腕を取り換えてドリルに変えた。

 

「気が引けますが、すみません!やらせて頂きます!」

 

「じゃあ行くぜ!!十・・・九・・・八・・・」

 

そして、賛同した艦娘達が鉄球を投げ付けようとした。その時だった。

 

「「「皆!!やめて!!!」」」

 

提督の前に一人の女性が、更に彼女が立つよりも速く、暁と吹雪が提督の前に立って大の字になる。まるで提督を守るかのようだが、彼女達は提督を守りたいのではない。

 

「何でよ!!何で邪魔をするのよ!!」

 

「そうです!!そんな奴は痛めつけてやらなくては!!」

 

「第一大和に吹雪、暁も!!貴女達が一番、提督からの虐待を多く受けてるじゃない!!そんな貴女達が何でこのクズを庇うのよ!!」

 

復讐をしようとした艦娘達からの罵倒に、大和達は答えた。

 

「今の貴女達はまるで、この男のようです。この男と同じになりたいのですか!?」

 

「私は嫌よ!!このまま妹や友達が、例え憎い奴でも誰かを傷付けて痛め付けるのを嬉しくなってしまったら、私もう、皆を友達や姉妹と思えなくなる!!そんなのは嫌よ!!皆がこいつみたいになってしまうなんて!!」

 

「皆お願い・・・こんな事はやめて・・・」

 

その時、艦娘達はあるビジョンを見た。今の自分達の様子と、拘束された提督の様子。そして、その提督の姿が自分達と重なってしまった。提督に暴力を振るわれ、逆らう事が出来なかった自分達のようだ。

 

今からやろうとしてるのは、拘束された提督と同じ事。もしこのまま提督をなぶり殺しにしてしまったら、自分は彼と同じ存在になる。

 

言われてみればそうだ。そんなのは誰も望んでいない。クズ提督と同じ奴になんてなりたくない。

 

「・・・」

 

艦娘達は鉄球を手放した。全員が辞めたのだ。憎いのは変わらない。しかし、クズ提督のような汚れた者になりたくない。

 

しかし、ハイゼンベルクは止まらない。彼は元より止めるつもりは無い。

 

「・・・三・・・二・・・一・・・やれ!なの!」

 

「う、うわああああっ!!」

 

なのはドリルを回転させて、提督の右腕を狙った。しかし、それはヘカーティアが掴んで止めた。ドリルを掴むだけで止めてしまうヘカーティアの力に、ハイゼンベルクは改めて戦慄した。

 

「おいおいヘカーティア。そりゃねえだろ?折角俺が責任取ろうとしてんのにさ」

 

「もう良いでしょ。証拠は集めて大本営や某新聞社やテレビ局各地に流したから、もうこいつは終わりよん」

 

「あーあ、全員を楽しませるショーも白けちまった。おいなの。こいつ等連れて戻るぜ」

 

「は、はい!」

 

そして、ハイゼンベルクやなのが黄金の穴に入った瞬間、大和がヘカーティアにお礼をした。

 

「あの、ありがとうございました。私達を助けてくれて」

 

「お礼は良いわ。この先に待ってる新しい世界を貴女達にあげるわよん。艦娘達、ようこそ私達の『ザ・キングダム』へ」

 

こうして、大和達艦娘達は虐げられる人生を終えて、自由が約束された新たな組織へ介入した。彼女達を新たに勧誘したザ・キングダム。艦娘達はザ・キングダムの『ナラク』で沢山のご馳走を食べて、全員が多く涙を流したそうだ。

 

そしてもう一人、運命に翻弄された少女が、ザ・キングダムに勧誘される事になる。

 

──────────────────────

 

~更木小夜編~

 

「~♪」

 

小夜は何時ものように通学路を歩いていた。お気に入りのカフェである『ギモーグ』に立ち寄り、店長の『七原文人』からコーヒーと四角くて赤いお菓子『ギモーグ』をご馳走してもらい、歌いながら通学路を歩いていた。

 

そしてその様子を、黄金の穴から姿を現した三人の女が見ていた。

 

「へぇ。あれが更木小夜。確かにあの子、人間でもなければ『古きもの』でもない、超越的存在ね」

 

「あれがそうなんだ。で、ヘカーティアおねーさんどうするの?」

 

「私達に何をさせるつもりかしら?」

 

ヘカーティアと共に、小夜の様子を見ていたのは、二人の少女。一人は結芽。背中にスルトの冠を鎖で自身の身体に繋いでリュックのように背負っている。もう一人は藤沢彩菜。彼女は目を赤く光らせて、その後に元の色に戻す。

 

「貴女達には、あの小夜って子に接触して欲しいのよん。私がやっても良いけど、此からエレン達とプリカーサーの拠点を叩き潰しに向かうの。でも大丈夫よん。この世界の戸籍、ザ・キングダムでも指折りのハッカーや贋作屋に頼んで作成してもらったから。このリュックに全部入ってるわ。後、カオスヘッダー要りの錠剤。危なくなったら使いなさい。もし成功したら、このホイポイカプセルに挿れたあるアーマーを更木小夜に渡しなさい。きっと適合する筈よ」

 

「ありがとね。じゃあ彩菜おねーさん。行こう」

 

「そうね。結芽、飛び級学生として宜しく頼むわ」

 

こうして、小夜の勧誘が始まった。成功したら渡すアーマーとは何なのか気になる結芽と彩菜だったが、転校生として彼等の学園に潜り込む事に。




次回、『勧誘編特別版:更木小夜編』始動。

小夜を勧誘
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