町に戻った結芽達が見たのは、地獄だった。浮島神社に向かう道中で、無数の古きものによる殺戮が町で起きていた。
「ッオオエエエエエ!!ゲホッ!ゲホッ!ゴホッ!!」
結芽は地面に四つん這いになって吐いた。こんな光景は流石に惨すぎたのだ。結芽は確かに此まで様々な戦いを繰り広げて来たが、人間が殺戮される末に捕食される光景は見慣れてないのだ。どれ程強くなったとしても、どんなに天才だったとしても、結芽はまだ十二歳の少女である事は変わらない。古きもの達による大量の殺戮の光景に、彼女の精神が耐えきれなくなったのだ。
「結芽、しっかりしなさい!」
「・・・くそっ!!」
「待って小夜!此を!」
彩菜が結芽の背中を擦る。小夜は折れた刀を手に走ろうとするが、彩菜はある物を投げて、小夜に渡す。小夜は彩菜の投げたある物を受け取った。
「ゲホッ!ゲホッ!彩菜おねーさん・・・今投げたのって・・・」
「ヘカーティアの言ってた『アーマードダークネス』の入ったホイポイカプセルよ。名前からして投げる必要がある筈だけど───」
すると、小夜は説明を聞かなくともカプセルのスイッチを入れて、その場に投げた。そして、煙が発生したと同時に巨大な鎧がその場に出現した。
小夜は手を伸ばす。
「嘘・・・」
「小夜、私達は先に行くわ!結芽、動ける?」
「・・・うん、もう大丈夫」
結芽は起き上がり、彩菜と共に走り出した。結芽は再び炎の侍姿になり、彩菜は今度纏った姿は、金と銀を基調として黒も所々に混ぜた妖艶なスーツだ。上腕から伸びる羽衣状の装飾が着いてる。足元は女性らしくヒール型となっており、爪先は先端がカールしている。スーツは見た目も妖艶だが、彩菜のスタイルの良さをより強調して妖艶さを更に醸し出す。
「おおっ!エロいねぇ彩菜おねーさん♥️いてっ!」
「今度余計な事を言ったらぶっ飛ばすわよ」
「ええ~良いじゃん。彩菜おねーさんのお嫁さんになりたいなぁ~♥️そしたら彩菜おねーさんに酷い事してきた奴等よりもっと良い事してあげるのにな~」
「・・・それより早く行くわよ」
「あっ!逃げるなぁー!!」
彩菜と結芽は走り出す。古きもの達が人間を殺戮していく光景。結芽は一度嘔吐したものの、覚悟を決めて古きもの達に立ち向かう。
そして小夜は、目の前に現れた鎧に手を伸ばした。その瞬間、鎧の目が赤く輝き、全身を真っ黒なオーラに変えて小夜の全身を包み込んでいく。
そして、小夜の姿は変化していた。まるで日本の侍と西洋の騎士が合体したような和洋折衷の鎧を身に付けていた。巨大な角を持つ兜、両肩からもそれぞれ二本の角を生やして、左腰には長剣『ダークネスブロード』が小夜の刀の代わりに装備されていた。背中には、三ツ又の刃を両端に付けた伸縮自在の槍『ダークネストライデント』を背負っている。
「・・・何だ此は。だが・・・違和感は無い。寧ろ馴染んでいく・・・力の使い方が頭に入る・・・」
そして、小夜はその場で歩き始めた。
それは、古きもの達と戦う彩菜や結芽、そしてヒュドラムにカルミラ、ダーゴンにスルトも感じていた。
「ッ!!此って・・・スルト!」
『凄まじい力だ・・・あの時抵抗した女神より上やも知れぬ』
結芽がトワイライトで黒い影の古きものを斬り、炎で焼いて焼き殺しながら、小夜の力の強さを知る。
「歩いてくるだけでこの重圧・・・あの女、どれだけの素質があればあの鎧を着こなせるのよ・・・」
『アーマードダークネスねぇ。確かに凄まじい力だよ。まるであの時のトリガーみたいだねぇ!それを纏える彼奴も、実に情熱的じゃないか!』
『・・・いや、この力の波動・・・もしやトリガーよりも・・・そしてそれを纏える彼女も実に素晴らしい!我が好敵手となるやもしれぬ!』
『んん~!エクセレント!実に素晴らしい力を感じますね!それを纏える彼女も実に素敵ですねぇ!』
彩菜が棒状の武器『カルミラバトン』を具現化して、バトンのように中央を持って振り回し、女の生首に首の骨を生やして髪を操る古きものを吹き飛ばす。更に背後から迫る犬型の巨大な古きものを、カルミラバトンから伸ばした鞭状の光線『カルミラウィップ』を振り下ろして叩き倒す。
彩菜に宿るカルミラ、ヒュドラム、そして彩菜と共に戦うダーゴンも、アーマードダークネスの力とそれを纏った小夜に注目していた。ダーゴンは小夜に注目しながら、デコピンの要領で指を動かし、それだけで兎型の古きもの達を吹き飛ばした。
「行くぞ。文人おおおおおお!!!」
小夜は走り出した。兎型の古きもの達の中から、本体らしき存在を見つけて、数百メートルも離れてるにも関わらず、結芽や彩菜も視認出来ない速度で本体まで辿り着いた小夜。そして、左腰の鞘からダークネスブロードを抜いて、兎型の本体の首を斬る。更に、他の古きもの達も、小夜が跳んだ後に一回転するだけで全て首が吹き飛んだ。
「いや強すぎない!?」
「確かに・・・」
そして、小夜が床に降り立った所で、一人の青年が小夜の前に現れた。
「・・・まさかこんなにも早く目覚めるなんて思わなかったよ。でも、その姿も実に綺麗だよ。小夜」
「ッ!!文人!!」
それは、小夜にとって憎い相手である青年『七原文人』であった。