OP『OMEN(暁Records)』
第172話
地底の穴から光と共に船が浮かび上がり、軈て上空へ飛び出した。
「さあ、向かいますよ」
「準備は出来てるよ。ご主人」
「ええっ、ナズ。皆さんも宜しいですね?」
星の問いに、全員が頷き、中には歓声を上げる者も居る。数多の妖怪達が船の甲板に乗っている。更に、翼を持つ妖怪達は羽ばたきながら、船の周囲を飛び回っている。
そして、船の周囲を飛んでいるのは、妖怪だけではなかった。頭部に羽が生え、更に胴体に鰭が付いた体の体長150メートルの蛇のような怪獣が、五体も船の周りを飛び回っている。また、鳥の頭部を持ち、翼竜の翼を持った生物が何十匹も船の周りを飛行しており、中には船の甲板に立っている者も居る。船の甲板には、数体もの大型甲殻生物もおり、青いフードを被る少女になついている様子が見て取れる。更に、以前に幻想郷へ迷い込んだスカルクローラーが一体、ナズと呼ばれた鼠の耳と尻尾を持つ少女を背中に乗せている。
船の周りを飛ぶ生物達や船に乗っている生物達は、星達が仲間にしたタイタン達だ。地底から通じるタイタン達の住む地底から迷い込んで来たタイタン達を、星達が仲間にしたのである。地球空洞説は真であった。其処に広がるのはタイタン達が織り成す未知の生態系だ。以前、ザ・キングダムが足止めしたタイタンの一体であるコングの、本来の住処である。幻想郷から入るには、地底からでなければ辿り着けない。
しかし、生身で通れるのはタイタンのような存在であり、人間では特殊な機体に乗らずに行けば即死。妖怪だとしても、その身体がボロボロになってしまう。しかし、星達は平気な様子だ。
簡単な理由だ。彼女達もまた、タイタンにも負けない“怪獣の宿主”なのだから。
では、地底世界のタイタン達を連れて来てまで何がしたいのか?目的はただ一つ。あるお方を迎えに行く為だ。
「もうすぐ会えますね。聖」
──────────────────────
「ッ!また、何か起き始めたわね」
霊夢は掃き掃除をする最中に、何かが起きた事を直感で見抜いた。
『霊夢様!』
ユウコが納屋から出てきた。彼女も嫌な予感を感じたようだ。
「ユウコ。今日は留守番をお願い出来るかしら?」
『しかし、霊夢様の身に何かがあっては!』
「大丈夫よ。私は必ず帰ってくるわ。貴女には博麗神社を守って欲しいのよ」
『・・・ビルサルドの地球在住データの中に、この様な物がありました。“『必ず君の元に帰る』『生きて帰ってくると約束する』と言った者は皆死ぬ。それが死亡フラグである”と。霊夢様がこのまま───』
「行ったら死ぬかも知れない?それがどうしたのよ?私は博麗の巫女よ。例え私が死ぬかも知れない異変でも、行かなくちゃならないのよ。それに・・・貴女が博麗神社を守ってくれるから、私は安心して帰ってこれるのよ。アリスが作ってくれた貴女だから、此処を託せるの」
霊夢はユウコを正面から抱き締めた。ユウコは胸の奥から沸き上がってくる喜びの感情によって、胸の鼓動が早くなるのを感じていた。
「“帰ってくると約束した奴が死ぬ”なんて、一つの可能性でしょ?未来なんて一つじゃないの。もしそれが私の未来だって言うなら、そんなの、何度だって変えてやるわ。だって私は、博麗の巫女だから」
『ッ!!』
ユウコは、霊夢の強さを肌で感じた。実力としてだけでなく、心の強さも。霊夢も成長している。それを抱き締められただけで感じる。
『・・・分かりました!博麗神社は任せてください!霊夢様!どうかお気を付けて!風邪を引かれませんように!』
「ええっ!行ってくるわ!」
こうして、霊夢はユウコの手を強く握り締めた後に、彼女を境内に残して上空へ飛び去った。ユウコは飛び去って行く霊夢に、巣立ちした子を見守る母のような目で見つめていた。
『・・・霊夢様、博麗神社は私がお守り致します!幸運を!』
──────────────────────
一方、守矢神社でも動きがあった。神奈子と諏訪子が早苗と共に本社の中で、お互いに正座をしながら向かい合っていた。諏訪子だけは胡座をかいて座っているが。
「早苗。お前を呼んだ理由、解っているな?」
「はい。神奈子様」
「先程、地底から強いエネルギーを持った船が出てきた。それだけではなく、地底から通じるタイタン達の巣窟から、地下空洞に住むタイタン達までもが地上に出てきたのだ」
「強さは一体か二体だけなら私や神奈子でも充分対応出来るし、ゴジラやコング、他にも神話に名を残してる奴等の名前を持ったタイタンと比べればそれなり程度だけど・・・数が多いんだよねぇ。いや、ヘルホークやロッククリーチャーは、どんなに数が多くても平気だよ。だけど、スカルクローラーやワーバットはね。数が多いと厄介なんだよねぇ。特にワーバットは、タイタンの方のケツァルコアトルの同族だしさ」
「・・・でもそれなら、私が行っても返り討ちに遭うのでは?」
神奈子や諏訪子でも難しい問題に、自分が対応出来るのか?
「でもそれは、前の私ならの話。早苗。君には私達の力を降ろして使ってもらうよ」
「私達の能力は、簡潔に言えば天と地の二つを創造する能力だ。そして、ギドラ族の皇帝と邪神。だが、それを制御するには今のお前では心許ない」
「其処で、私達が河童と共に協力して、早苗にパワーアップアイテムを造ったんだよ。河城ちゃん!」
諏訪子が手を叩き、にとりを呼んだ。すると、にとりが賽銭箱の横を通って現れた。
「はあい!待ってました!」
「河城、例の物を」
「うん!此だよ!気に食わないけど、
河童とは違い、川ではなく山に住む河童である山童であるたかねと呼んだこの場に居ない者と手を組んだにとりは、両手で持ってる三方を早苗の前に置いた。そして三方には、銃の形をしたアイテムが乗っており、緑のカラーリングをメインとしている。更に、アイテムの隣には四つのマガジン型のアイテムが、ピラミッドのように重ねて置いてある。神奈子や諏訪子、モンスターXにイリスの絵が四つに分けて描かれている。神奈子が緑、諏訪子が黄色、モンスターXが赤、イリスが青とそれぞれ分かれている。
早苗はアイテムを見つめた後、にとりに質問をする。
「にとり、此は何かしら?」
「此は『ハイパーモリヤガン』だよ。普通に銃としてエネルギー弾を発射出来るけど、この四つのアイテム『ハイパーモリヤキー』を使えばそれぞれの能力を使った攻撃を放てるんだ。そして極めつけが、ハイパーモリヤキーをハイパーガンにセットして、銃の部分を開けて『モリヤレンスモード』にした後に、トリガーを引く事でキーに込められた能力に合わせた形態に変身出来る機能だよ!」
「な、何よそれ!?SFロボットみたい!!ワクワクするじゃない!そうですよね!?神奈子様!諏訪子様!」
((早苗・・・))
苦笑いを浮かべた神奈子と諏訪子。昔からロボットアニメが好きだった早苗。キングジョーストレイジカスタムを初めて宿した時も、大喜びし過ぎて疲れた挙げ句三日間も寝込むという事態が発生。
(早苗・・・最近じゃあ、チルノっていう氷の妖精の所に行ってるらしいよ)
(ああっ、早苗はどうやら機龍とやらに興味があるようだ。かなり興奮していたな)
「・・・まあ兎に角、河城と山城の作ったその装置があれば、私達の力を使う事が出来る。とはいえ、変身するにしても三分が限度だ。乱用してはいかんぞ」
「神奈子はそう言ってるけど、私達はこの守矢神社を護るから、思う存分戦ってきてね」
「・・・ありがとうございます!神奈子様!諏訪子様!それに、にとりも!山城さんって人にも「ありがとうございました!」って伝えてください!」
早苗は三方に乗るハイパーモリヤガンを受け取り、更にハイパーモリヤキーを取る。そして、本社を出た後に空へ飛んだ。
「神奈子様!諏訪子様!それににとり!行ってきます!」
「「「行ってらっしゃい!!」」」
こうして、早苗も動き出した。敵の元に向かって、真っ直ぐ飛び始めたのだった。
ED:『聖人の調律(幽閉サテライト)』
あの甲殻生物みたいな小型タイタンは、今後のモンスターバース次第で変えるかもしれませんが、それまではロッククリーチャーで統一します。
フィッシャーズのシルクさん、助かって良かったぁ・・・。