『貴女は残された生徒達と共に島へ移され、其処で鶴岡からコハルを殺すよう指示された貴女は、それを実行に移し、そして鶴岡から真実を知らされたわ。それはそれは残酷な話よん』
ナナは、未来で本来自分が歩む筈だった真実を知らされた。今まで自分が信じていた相手が、実は自分を騙していた事を、そして超能力者に関する事も全て明かされた。
『そう。鶴岡は貴女の両親を殺した犯人よ。鶴岡は、超能力者への隔離政策を批判した貴女の両親を殺害し、貴女に強盗が侵入して殺害したと、お前が戸締まりしなかったせいだと嘘を言い聞かせた。あの島での異能者達の推定殺害人数も、鶴岡を含めた委員会からのでっち上げだった。委員会はただ単に、貴女が超能力者達をどれだけ殺せるかでゴルフの会員権を賭けていた』
そして、未来のナナが全てを知って、銃を自分の頭に突き付けて引き金を引いた瞬間に、ヘカーティアはナナの額から指を離した。ナナは、固まってしまった。
「そんな···じゃあ、今まで自分が···殺して来たのは······」
「超能力があるだけで、貴女と何も変わらない少年少女だったって事ねぇ〜」
「両姫。でも、それならこうとも言えるわ。貴女は、自分の両親を殺した男の為に、無意味な殺人を行い続けたのよ」
両姫と彩菜がそう告げた時、ナナはその場で膝を着いた。
「あ···ああ······そんな、そんな······私は、あの男の思想も見抜けず、ミチルも死なせて···ああっ·······うわああああああああああ!私は!!私は!!あああああああああああああああああああああああああ!!!」
視界に、ミチルの笑顔が映る。自分には眩しいが、それでも漸く手に入れた世界で唯一人の友達がくれる、汚れなき笑顔。そんな笑顔を見せてくれた、世界で優しく大好きな初めての友達。そんなミチルを利用しようとしただけでなく、自分の命を犠牲にして救ってくれたミチルに対して、とても一人では背負い切れない罪悪感が募る。
それは、彩菜に潜む闇の巨人達も見ていた。
『······全く反吐が出そうだよ。下等な人間風情が』
『······』
『全く、話を聞くだけでも実に酷い物ですねぇ』
闇の巨人達ですら、ナナを哀れんでいた。何処か丸くなった印象があるカルミラ、ダーゴン、ヒュドラムの三人。
すると、彩菜がその場で膝を着いた後に正面からナナを抱き締めた。
『ッ!?』
全員が驚愕した。ヘカーティアは驚いたものの、まるで予想してあったかのようにすぐに冷静になった。
「私もよ。貴女と似た未来を見せられたの。本来そうなる筈だった所をヘカーティアに救われたわ。そして私は願ったわ。全て殺す。私を虐げて来た奴等に地獄を見せてやると」
「だから何だ!?何が言いたい!!」
ナナは声を上げるが、彩菜は近距離で叫ばれても臆する事無く話を続ける。
「私はヘカーティアから、闇の巨人達を宿して貰い、私は復讐を果たしたわ。晒し者、首だけにして吊るしたり、彼奴等を人間の意志にあるままの化け物に変えて、自分が大切な奴等を喰い殺させた!私は全部やり終えて、私はやっと歩み出せたのよ」
彩菜は話を続けた。
「ナナ。鶴岡や委員会を滅ぼしましょう。今まで騙して利用してきた奴等に復讐をするのよ」
「·······そうだな。ミチルを、今まで死なせてしまった人達を殺させた彼奴等に、地獄を見せてやる!!」
「そうね。もし奴等が何か言っても、聞く耳を持たないで。『こんな事して許されるか』『復讐は虚しい』なんて言われても、そんな言い訳に聞く耳持っちゃ駄目よ。やるなら最後までやり遂げなさい」
「当たり前だ!!」
「分かったわ。ヘカーティア、お願い」
彩菜はヘカーティアに、ナナに力を与えるよう願う。
「そうね。此方よ。貴女に相応しい力を持つ者と、会わせてあげる」
ヘカーティアはそう言った後、ナラクへの穴を展開した。其処へ四人一緒に入る。
「···何処へ向かうつもりだ」
「貴女に相応しい力が待つ所」
そして、ナラクを経由した先で四人は、一体の巨人と遭遇した。その巨人は、全身から途轍もない闇の力を放っていた。
「えっ!?」
「嘘!?」
『『『ッッッ!!??』』』
「·····な、何だ···此奴は!?」
「彩菜に両姫は分かるわよね〜。恐らく彩菜に宿る巨人達もね。そう。ナナに此れから宿させるのは、マナカ・ケンゴに出会わなかった並行同位体のウルトラマントリガー。本来の闇の巨人であるとはいえ、此処は『トリガーダーク』と名付けるわ」
「私が、此奴を?」
ナナはトリガーダークを見上げる。その時、トリガーダークがナナ達を見た瞬間、両腕を広げた後にL十字の形に構え始めた。
「っ!」
ナナは身体を守るように両腕を突き出した。
「ちょっ!?彩菜ちゃん!」
「冗談じゃないわ!カルミラ───」
その瞬間、彩菜の体から闇のオーラが放出された。
そして、その場にカルミラが姿を現し、トリガーダークの片腕を掴んだ。
『待ちなトリガー!!』
『ッ!?』
トリガーダークはカルミラを見て驚いた。まさかカルミラに止められるとは思わなかったのだ。
『お前とこうして情熱的な再会を出来た事を喜びたい位だけど、今は其処の柊ナナについて説明してやる』
その後、カルミラから詳細を聞いたトリガーダーク。ナナを見た後にカルミラを見て、首を縦に振る。
『承諾したね?なら、其処の人間!トリガーがお前との一体化を望んだよ!早くやりな!』
「っ!感謝する!」
ナナはカルミラに感謝を述べた。
「トリガーと言ったな!私の名前は柊ナナ!私に力を!私をこんな目に遭わせた奴等に、私が死なせてしまった犠牲者やミチルの為にも、奴等は死を持って償わせてやる!」
『ッ!』
トリガーダークは頷いた。そして、ナナはトリガーダークに向かって歩きながら、トリガーダークに手を伸ばす。トリガーダークもまた、しゃがみながら腕を伸ばしてナナに人差し指を差し出す。トリガーダークがしゃがんで膝が地面に着いて揺れが発生し、ナナが尻餅を着いた。しかし、ナナは腕を伸ばして人差し指をトリガーダークに向けて伸ばす。その光景を、何処かで見た事がある彩菜。
「あら?まるでアダム誕生みたいな」
『彩菜。それは何だ?』
ダーゴンが尋ねた。
「旧約聖書にはね。最初の人類であるアダム誕生の話があるのよ。神は自分を模した人間であるアダムを創造したの。その絵があるのだけど、この光景がそれにそっくりなのよ」
そして、ナナとトリガーダークのお互いの人差し指が触れ合った。
その瞬間、トリガーダークが闇のオーラへ変化していき、ナナを包み込んで行く。
「ハハハハハハッ!!」
そして、闇のオーラが霧散した後に、怪獣娘形態となったナナの姿があった。ナナの怪獣娘形態は、実にシンプルであった。ピンク色の髪は灰色に変わり、体には先程のトリガーダークの身体を模した鎧を身に着けている。
「······さあ行くぞおおおおお!!鶴岡あああ!!委員会共も皆殺しだあぁぁぁ!!」
「あらあら。予想以上にピッタリね」
彩菜がそう言った後、カルミラがしゃがんで彩菜に提案する。
『彩菜!私達も同行するよ!久々に愛しのトリガーと暴れられるなんて情熱的じゃないか!』
「勿論よ。ナナ、良いかしら?私達も協力するわ。両姫も一緒に来る?」
「私は彩菜ちゃんの友達だし、それ以前に部下なのよぉ?当然引き受けるわ」
彩菜も加わり、両姫も加わった。
「それじゃあナナちゃん。元の世界に戻してあげる。復讐を果たしたら、私達の所へ来ない?私達ザ・キングダムへ」
「···全てが終わったら、喜んで行こう」
こうして、ナナは元の世界に戻り、彩菜や両姫も同行する事になる。
そして、超能力者達への隔離政策を提案した委員会のメンバー全員が、翌日には虐殺された死体となっていた。特に鶴岡と呼ばれた男は、最早狂気の遺体となってた。自分の心臓や臓器を口の中に詰め込まれながら、全身を焼かれていたのだ。焼かれた顔は恐怖で歪んでいた。
此れを機に、超能力者達がどの様な行動を取り始めたのか、それは誰にも解らない。
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ナナが勧誘されてから一週間後。
「ごめん。ミチルちゃん。こんな形で埋葬する事になって。こんな事をした私を、許さないだろうな」
ザ・キングダムの居住区。其処にある墓地は、西洋の土葬をモチーフにしており、その内の一つの墓には犬飼ミチルの名前が日本語とローマ字で刻まれている。その墓の前で、両手を合わせて合掌を行う少女が居た。柊ナナである。
「…ミチルちゃん。私、頑張るよ。君の分まで、私は生き続ける。今度は間違えない。君の優しさから学んだ事は、必ず活かしてみせるから」
そして、ナナを呼ぶ声が響いた。
「ナナー!駒王町にゴーデス細胞か撒かれたそうよ!出撃よ!」
呼んだのは彩菜だ。彼女の周りには、両姫を始め、エレンやエミリー、更に結芽の姿がある。特に結芽は、頬を膨らませて顔を赤くしながらナナを睨む。
「ああっ!今行く!」
そして、立ち上がったナナは墓に一言告げた。
「行ってくるよ!ミチルちゃん!」
そして、ナナは彩菜達の元へ走る。
此れからも、ミチルより学んだ意志の強さを、そして自分の犯した罪を背負いながら、それでも前へ進み続ける。
新しくスマホ変えました。