一輪と雲山が魔理沙に向かって飛び出した。魔理沙と成美も向かってきた二人の拳に自らのぶつけ合い、試合の開始が始まった。
「私が審判を務めるわ!思いっ切り戦って頂戴!」
遥か上空からラステルが浮遊しながら四人に向かって叫びながら告げた。巨神兵の怪獣娘形態となって、上空から四人のモンスターバトルの審判を務めている。
「『剛力不動打』!」
成美が魔力と光エネルギーを込めた右拳で雲山を殴る。しかし、装甲を纏ってる雲山の体には全く当たらず、すり抜けるだけである。雲山の体は煙のように広がり、すぐに元の形状に戻る。
「っ!?お前、ただの見越し入道じゃないな!?此奴も怪獣を宿してるの!?」
雲山の拳が迫るが、成美は後ろへ下がって避けた。
「このっ!」
成美は光弾を掌から放ち続けるが、雲山の体をすり抜けるだけだ。
「やっぱり効かない!?」
すると、雲山の片手が巨大化し、成美を掴んだ。
「なっ!?此方は掴めないのに向こうが掴めるとか狡いな!」
成美は必死に藻掻くが、力が強くて振り解けない。怪獣の力というのもあるのだろうが、見越し入道の巨大化能力による力の増幅も大きな原因だ。いくら地蔵が元である成美でも、体格差による力の差は簡単には覆せない。ただの見越し入道なら成美でも勝てるが、相手が怪獣を宿しているのならば話は別だ。
「成美!ぐっ!」
「仲間より自分の心配をしたらどうかしら?」
魔理沙は一輪の平手打ちを真上に飛んで避けた。巨大な手から繰り出す平手打ちは魔理沙の非対称性透過シールドで防げるのだが、衝撃までは防げない。
魔理沙は一輪の拳を避けた後にミニ八卦炉を一輪に向けるが、一輪は両腕の袖から『バーニングウイング』というミサイルを放ち、魔理沙を狙い撃つ。
魔理沙はミサイルを避けていくが、一輪が正面から殴り掛かってきた。一輪に腹を殴られ、吹き飛ばされた後に地面へ叩き付けられそうになる魔理沙だが、すぐに体勢を立て直した。
先程の一撃で、今の疲労した自分では分が悪いと確信した魔理沙は、神降ろしを発動してポセイドンを降ろす。
「ポセイドン!」
魔理沙はミニ八卦炉を変形させて、ミニトライデントに変えた。先が三つに分かれたトライデントが光り、一輪を魅了する。更に魔理沙の格好も神々しい物に変化している。金色の冠に青と白のギリシャ神話風の衣装を身に着けている。
(何あの槍?綺麗)
一輪は柄に陰陽玉が描かれたミニトライデントに惹かれる。そして、ミニトライデントの力を思い知る事になる。
「行くぜ!アクアスパーク!」
魔理沙は背鰭から放った電光をミニトライデントに集束させて、青い水流と共に矛先から放った。一輪はアクアスパークを横に移動して避けたが、アクアスパークは川の流れのように軌道を変えて、避けた一輪に向かっていく。
「くっ!」
一輪は高熱火炎を口から放ち、アクアスパークを相殺しようとした。しかし、火炎はあっという間に押し返されて、熱線と水流が合わさった攻撃に脇腹を貫かれた。幸いにも横へ体をズラした為、脇腹の貫通は浅く済んだ。
「ぐっ……流石に強すぎるわね」
「どうだ!」
「……その気配、神を降ろしたのね。流石に反則よ」
「悪いな。疲れてる以上、ポセイドンの力を借りなきゃお前に勝てないんだよ」
「……参ったわ。でも、雲山は簡単に行かないわよ」
「ありがとな。んじゃ、此処で待っててくれよ」
魔理沙は箒に乗ったまま、成美の元へ向かう。
「……雲山、勝って頂戴」
一輪は地上に降りて、雲山の勝利を願った。
一方、成美と雲山は一方的な戦いとなっていた。
成美が光弾を連続で放ち、雲山を攻撃し続けた。雲山の体を擦り抜けて、光弾は明後日の方向へ飛んでいく。
「やっぱり当たらない!?きゃあっ!」
成美は雲山の拳で全身ごと殴られ、地面へ叩きつけられた。
「成美!食らえ、アクアスパーク!」
魔理沙はミニトライデントの先端から水流を合わせた熱線を放ち、雲山の頭を貫通させた。しかし、雲山に当たっても擦り抜けるだけで攻撃は通用しない。
「おいマジかよ!?」
『お前等に俺は倒せん!』
「「喋った!?」」
『レッドスモーギを纏っている間だけだがな!』
雲山は拳を大量に作り出し、魔理沙と成美に拳の連打を浴びせ続けた。魔理沙と成美は降り注ぐ拳の雨を受け続けてしまい、終わりの無いラッシュによって体にダメージが蓄積していく。
シールドが機能してるにも関わらず、雲山の拳は魔理沙にダメージを与えていく。
「ハッ!」
成美がソルジェント光線を放ち、雲山の頭を貫いた。雲山には効かないが、狙いは雲山を倒す事では無かった。
『ぬぅ!?前が見えぬ!?だが見えぬだけで大した――』
「魔理沙!」
「ああっ!ありがとうな、成美!『トライデントカウンター』!」
魔理沙はミニトライデントを回転させた。ミニトライデントの先端から水を生み出していき、水の円を形成した。その瞬間、先程の攻撃で頭部が一瞬だけ霧散した雲山は、頭を戻した後に再び攻撃に入る。先程よりも拳を大きくし、更に数も百倍に増やした。そして再びラッシュを開始した雲山。
しかし、雲山の拳は魔理沙が回転させて出来た水の円の中に取り込まれて行く。
『何っ!?ぐうおおおおぉぉっ!?』
更に雲山も取り込まれてしまい、魔理沙のミニトライデントの回転に巻き込まれてしまう。先端からの水だけでなく、周囲の水分も吸収し、回転で形成される円が大きくなっていく。雲山は見越し入道の中でも雲状の流動体だ。雲は水分で構成されている。それを自在に操れるポセイドンの力の前に、雲山には為す術は無かった。
「流石のお前も液体化したら避けられないだろ!」
そして、魔理沙は地面にミニトライデントの矛先を叩き付けた。水が周囲に弾け飛び、地面は底が見えない程に陥没した。
「おっと、やり過ぎちまったな」
「此れじゃああの見越し入道が参ったって言ったのか分からないよ。ん?」
成美は穴を覗き込む。すると、其処で雲山が元のピンク色の体に戻り、白旗を上げて振り回す様子が見えた。
「……あーあっ。雲山も降参したみたいね」
「……おっしゃ!」
「雲山は反則だよね〜。二人がかりだったらちょっと危なかったね」
今回の勝因は、一輪と雲山がそれぞれバラバラに動いた事にある。もし二人が共に動いていたら、結果は変わっていたかもしれなかった。一輪も強いが、雲山に頼る面が強い。しかし、雲山の不死性と攻撃方法の多さは強い武器だ。
雲山が穴から出てきた後、ラステルが魔理沙達に敗者への命令を尋ねる。
「二人共。モンスターバトルに勝ったから、この二人に何をさせるの?」
「そうだな。先ずはあの船が何なのか、知ってる事を話して貰うぜ」
「じゃあ私からは、貴女達の目的を教えて欲しい」
「…分かったわ。まず私達の聖輦船についてね。あの船にはシップモードとバトルモードの二つがあるわ。シップモードは航海や飛行に特化してて、どんな環境だろうと航行出来るようになっているわ。それでさっきの台風を乗り切れたの。二つ目のバトルモードは戦闘に特化させた形態なのよ。幻想郷の地底に幻想入りしてた巨大なメカを聖輦船に組み込んで、バトルモードにしたのよ」
一輪は聖輦船について話し続ける。
「そのメカは壊れてたから、地底に住んでるみとりって人達や鬼達の力を借りて直してもらって、船に組み込んだの。もしバトルモードになれぱ、船は無類の強さを発揮するわ」
「そのメカの名前は何だ?」
魔理沙が尋ねた。
「それは分からないけど、確かこう書かれていたわ。確か………
ビショップ………だったかしら?」
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その頃、魔界の上空で黄金の穴が開き、巨大なメカが侵入した。
悪魔の羽を背中に生やし、角を額に生やす巨大なクマのメカであった。
その目は窓になっており、其処から内部のコックピットがよく見える。
コックピットに居るのは新生ドロンボーであり、中心にドロンジョことレパード、左にボヤッキーことヴォルトカッツェ、右にトンズラーことエレパントゥスが椅子に座ってコックピットでメカを操縦していた。レパードの太腿に、レパードのペットであるオダ様が座っている。三人はドロンボーとしての衣装わ身に付けており、威風堂々としたオーラが三人から放たれている。
「ボヤッキー?聞き忘れてたけど、何で魔界に行くのにクマさんのメカで行くの?」
「それはですねドロンジョ様。魔界は悪魔が住む世界であるので、“あー困ったなー”と思ったらこのメカを思い付きまして!」
「……それでこのメカの名前が『アークマッタナー』なんだね」
レパードはヴォルトカッツェを睨む。ヴォルトカッツェは乾いた笑い声を上げた。
「しかし、何で俺達はメカで来たんだ?メカが無くとも、俺達は戦う力があるだろ?」
「スカポンタン!私達は義賊ドロンボー!義賊とはいえドロンボーならメカに乗ってナンボでしょうが!メカで行くのはドロンボーとしての礼儀なんだよトンズラー!」
「あ、ああっ!そうだったな!済まないレパード!いやドロンジョ様!」
三人はそれぞれ呼び名を改めている。ドロンボーとして活動する間は、それぞれの呼び名で呼び合っている。
「さあ、お前達!博麗霊夢と東風谷早苗を援護しに行くよ!」
「「アラホラサッサー!!」」
こうして、ドロンボーのメカ『アークマッタナー』は四肢を力強く使い、空中を蹴って進み続ける。
オリジナルメカ
名前:アークマッタナー
体長:40メートル
体高:30メートル
体重:7千トン
名前は『悪魔』と『あー困ったなー』を組み合わせた物。
両前足のヴィヴラニウム性の爪による切り裂き攻撃は、どんな硬い物質も切り裂ける。口の歯もヴィヴラニウム製であり、大概の物は噛み砕ける。更に口からは悪魔的に臭すぎる息を吐き、生物機械問わず臭すぎる匂いで倒す。更にからだはミサイルポッドやガトリングガンを搭載しており、遠距離攻撃もお手の物。また、大きさに似合わず素早さもあり、最高速度は時速600キロにもなり、麟の二代目ジラの通常速度を遥かに上回る。