魔界のとある家。家と言っても実際は西洋風の大きな屋敷であり、人が五十人も暮らせそうな程の大きさである。その中にある五十人ぶんの広さのある食堂で、一人の麗しき女性が円形テーブルに用意された椅子に座り、テーブルに置かれた皿の上に乗る山積みのポップコーンを食べていた。隣に眼鏡を掛けたチャラい風貌の男が座っており、キャンディーを舐めている。因みにポップコーンはうすしお味である。
その女性は金髪に紫のグラデーションが入ったロングウェーブに金の瞳を持ち、服装は白黒のゴスロリドレス風である。表地が黒で裏地が赤のマントを羽織り、黒いブーツを履いている。そして彼女の腰に付けたベルトには、紙のない『魔人経巻』という特殊な巻物が取り付けられている。
「此れがぽっぷこーんですか?穀物を使った西洋のお菓子ってこんなに美味しいんですね」
「ん、そうだね。びゃっちゃんも気に入ってくれて良かったよ」
キャンディーを舐めるその男は、テーブルに膝を付き、顎を片手で抑えている。その服装はファンキーなファッションでサンダルを履いており、更に眼鏡を掛けている。
びゃっちゃんと男に呼ばれた女性こそ正に、星達が聖輦船で迎えに行く予定である聖白蓮本人である。
すると、食堂の扉が5回ノックされる。
『白蓮様。シッダールタ様。夢子です』
「「どうぞ」」
扉越しに話し掛ける女性は二人に促された後、扉を開けて食堂に入ってきた。ロングスカートの赤い半袖メイド服を着た女性が。
「白蓮様。シッダールタ様。此方へ向かって来る方が見えました。恐らくアリスが最近恋をしたという博麗の巫女かと」
「博麗の巫女?何故此処へ来たのでしょうか?」
白蓮は部屋に入ってきたメイドの女性に尋ねた。
「魔界の入口を見張るサラとルイズから報告を受けました。そしてもう一つご報告が。白蓮様のお仲間と思われる毘沙門天様代理と船幽霊の少女が、巨大なメカに変形した船に乗って魔界に来られました。白蓮様を迎えに来られたのでしょう。更に、謎の特殊空間を伝ってクマのメカも姿を現し、緑の巫女と氷の妖精と共に、メカとなった船と交戦を開始しました」
「毘沙門天様代理……船幽霊……あの子達が来てくれたのね!それに……聖輦船がメカに?えっ?メカ?えっ?」
白蓮が驚いているのは情報の多さにではなく、星達が乗る聖輦船がメカに変形した事である。
「それで、白蓮様はどうなさりますか?」
「……まだ混乱してはいますが、博麗の巫女という方に会ってみたいと思います」
「畏まりました。では、シッダールタ様は?」
「……」
シッダールタと呼ばれた男は、口の中の飴を舐め終わったのか口に加えていた棒を指で摘んで、近くのゴミ箱に投げた。外れる事なくゴミ箱に入るキャンディー棒。そして、シッダールタは皿を片手で掴んだ後に、皿の中のポップコーンを全て平らげる。暫く咀嚼した後に飲み込んだ後、白蓮と共に立ち上がる。
「オレも見に行くよ。びゃっちゃんが何処まで強くなったか、見せてもらうよ」
「すみませんお釈迦様。本来貴男は私などに縛られるようなお方ではないというのに」
「君に喚ばれたからじゃない。オレが行きたいから行くだけ。夢子ちゃん、世話になったよ」
夢子と呼ばれたメイドの女性は、シッダールタと白蓮の二人に一礼をする。
開いたままとなっていた扉から、白蓮と彼女からお釈迦様と呼ばれたシッダールタ――釈迦は一緒に食堂を出て行った。
夢子は頭を上げた後に、その場で倒れるように崩れ落ちた。両膝を床に着けて、全身から冷や汗を流しながら両手で体を支える。夢子は暫く跪いたままであったが、入れ替わる形で入ってきた二人の少女のお陰で再び立ち上がる事が出来るようになった。
「……ハァ!ハァ!あの御方はやはり、格が違う……神綺お母様が丁重にお持て成しをするよう仰られる訳ね!」
「夢子姉さーんってどうしたの!?」
「マイ。何よそんな大き――ィなァ!?夢子姉!?何で此処でへばってるのよ!?」
食堂へ入ってくる二人の少女。一人は黒い帽子に黒い服を着た金髪ショートヘアーの黒魔術師の少女。もう一人は白く短い翼を背中に生やす白いドレスのような服を着た白魔術師の少女。夢子は慌てた二人に問い掛けられたお陰で我に返り、立ち上がって説明をする。
「………お釈迦様とあの御方を降ろした白蓮様のお相手をしていたのよ。ユキとマイも何度も会ってるでしょう?」
夢子が問い返すと、ユキとマイと呼ばれた少女達は顔を青ざめる。しかし、すぐに顔色が良くなり、白蓮と釈迦について話し始める。
「……そうだったんだね。まあ、あの御方は何者にも従わないからね。あの僧侶ちゃん、お釈迦様が来てから色々変わったよね」
「初めて此処に来た時はあんなに絶望に染まった顔をしてたのに、今じゃ釈迦と同じで悟りを開いたんだもの」
「そうだね。吹っ切れたって感じだよね」
夢子は神綺の命で、神綺や自分、ユキやマイの四人が住む屋敷で白蓮の世話をして来た。この屋敷に来た白蓮は何処か抜け殻となっており、顔も絶望に染まっていた。食事もマトモに手を付けず、話し掛けても答えてくれなかった。マイの言う通り、絶望に顔を染めて心ここにあらずと言った様子だった。そんな状態が数年も続いた頃、白蓮の元に一人の男が現れた。それがあのゴータマ・シッダールタこと釈迦である。
「……でも、良かったわ。お釈迦様と出会った白蓮様は、全盛期以上の思春期を迎えた事でしょう。話に聞いてた封印される前の頃より、ずっと輝いているわ」
夢子は、白蓮と長く暮らしてたお陰で彼女の事を理解していた。彼女の過去も、仲間達の事も、弟の事も、全て聞いた。それを聞いた夢子は、白蓮に幸せになって欲しいと心から思った。それが叶ったのだ。どんなに幸せを与えても絶望から目覚めなかった白蓮は、釈迦と出会い、自分の意志で幸せに至れたのだから。
そしてこの後、白蓮と釈迦は霊夢と出会う。
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霊夢は魔界の上空を飛んでいた。
(何かしら?この澄み切った気配は……まるで森林浴に来たみたい……)
近付く気配が濃くなるのを感じる度に、霊夢は何処か心が安らぐように感じた。但し、危険な甘さは無い。何処か見窄らしい。しかし、それを悪いと感じない。満ち足りて行く。そんな気持ちが込み上げてくる。
「……あっ」
霊夢は向こうから自分に向かって来る2つの気配を感じた。二人から感じる気配が、先程感じた心が安らぐ気配の正体だと霊夢は理解した。
そして、三人は出会いを果たす。
「始めまして、よね。私は博麗霊夢よ」
「ご挨拶ありがとうございます。私は聖白蓮です。この御方はゴータマ・シッダールタ様。あのお釈迦様本人です」
「と言う訳で、
釈迦はキャンディーを新たに取り出し、再び口に咥える。その様子を見た霊夢は、釈迦が本物であると見抜いていた。
(ほ、本当にお釈迦様じゃない!?聖白蓮、どれだけ徳が高けりゃこの御方を降ろせるのよ!?)
原作の旧作では、全員がとんでもない力を持っていて、星を破壊する力を持つという、タイタン涙目の奴等が多かったと聞きました。よってこの小説でも、魔界組を含めた実力者達は本来ならタイタンより格上で、魔界の広さは地球と同等と考えてます。
その内設定集も出そうかな。