東方怪獣娘ー怪獣を宿す幻想少女達ー   作:ちいさな魔女

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白蓮の過去編です。それが終われば、次はドロンボー一味対星&ムラサ戦、霊夢対白蓮戦にになります。


第187話

霊夢は白蓮と向き合う。釈迦が此れから始まる二人のモンスターバトルの審判を行う事に。

 

「モンスターバトルのルールは大方理解しました。お釈迦様が審判を務めてくださるなんて、光栄です」

 

「申し訳ありませんお釈迦様。お釈迦様に審判をお務めさせてしまって……」

 

「良いよ。俺がやりたいだけだし」

 

釈迦はその場にある岩に座り、キャンディーを舐めながら二人を見つめる。

 

「霊夢さん。私も魔界で何もしてこなかった訳ではありません。対峙する以上は、全力で戦わせて頂きます」

 

「それは私も同じよ。それに、白蓮さんだったかしら?一つ聞いて良いかしら?」

 

「何でしょうか?」

 

小傘から、白蓮が虐げられた妖怪達を救う為に動いていた事を聞いていたが、白蓮自身から妖怪達を救う理由を直接訊きたかった。

 

「戦う前に白蓮さんの事、教えてくれない?白蓮さんの事、全く知らないから」

 

「……分かりました。なら何処から話しましょうか…………私とて、初めは弟の死を切っ掛けに死ぬのが怖くなり、魔力や妖力を用いた若返りと不老長寿を手に入れて、その魔力を維持する為に妖怪を助けていました。笑えますよね。こんな私が、嘗ては自分の欲のために動いていたなんて」

 

霊夢は思った。

 

(何だ……案外人間らしい所もあるのね)

 

「ですが、私は見てしまったのです。人間から不当な迫害を受けて虐げられた弱い妖怪達を。そして私は決意しました。人間だけじゃなくて、虐げられた妖怪達も守ろうと。ですが、当時の人々にとって私はかなりの異端者でした。私は、人間も妖怪も両方を助け続けてきました。ですが、私は裏切られました。嘗て助けた人達によって、助けた妖怪達を殺されてしまいました………」

 

――――――――――――――――――――――――

 

白蓮の頭に蘇る。

 

人間からの罵倒。投げ付けられた石。吐きつけられた唾。助けた人達からの拒絶。見せつけられた妖怪達の死体。

 

『この女は妖怪達を助けたんだ!』

 

『人間の敵が!』

 

『妖怪尼!』

 

『お前なんかこの世に生まれなきゃ良かったんだ!』

 

『裏切り者!』

 

今も耳に残っている。人々から浴びせられた罵声の数々。

 

白蓮は絶望した。妖怪達を救えず、人々の心も救えず、救った人達からも罵倒され、そして白蓮自身の頼みとはいえ人妖問わず信仰を受けていた毘沙門天代理である寅丸星によって魔界へ封印された。

 

魔界に封印され、神綺に拾われた白蓮は彼女の暮らす屋敷へ招待された。しかし、白蓮は部屋に籠もってしまった。其処から白蓮は、何も食べない、何も話さない状態が何年も続いた。何も食べない状態が続いたにも関わらず生きていけたのは、白蓮自身が魔力によって肉体の不老長寿を保っていたからだ。それ以前に空腹を感じなくなる程に精神が追い詰められて、更に何もやる気が起きなくなったからだ。とはいえ、流石の白蓮でも何も食べない、話さない状態が続けば弱り果てていく。夢子()()()()の前日に白蓮を見に部屋を訪れた時には、白蓮は見る影もない程に痩せ細り、最早骨と皮だけの状態となっていた。体にも酷い匂いが立ち込めて、髪も手入れされてない上に部屋の床を埋め尽くす程に伸びていた。

 

夢子は流石に見てられなくなり、急ぎ乳粥を作って持ってきた。しかし、白蓮は横に倒れてしまい、肩で息をし始めていた。夢子は乳粥を食べさせようとするが、白蓮は全く口に付けない。

 

『白蓮様!もういい加減何かお食べください!』

 

『いえ………良いのです……もう私は……』

 

その時、家の扉が突然開く。上がり込んで来たのは、タンクトップにサンダル、サングラスに大きな耳飾りといった全体的に緩い服装をした男が入ってきた。その男こそ、現在白蓮の傍に居る仏教の開祖である釈迦本人であった。

 

『貴男、何者…ひっ!?』

 

夢子は言葉を失った。現れた釈迦が本人である事を見抜いて驚いたから、だけではない。その背後から現れた者の存在にも驚いたからだ。釈迦の背後に立つ女性は、無限に広がる魔界の全てを創造した神『神綺』だ。銀髪で波打つロングヘアーにサイドテールを一つしており、肩口のゆったりした赤いローブを身に着けた女性。

 

『し、神綺様!!何故この御方が魔界へ!?』

 

『夢子ちゃん。シッダールタ君は私が呼んだんじゃないの。彼は自分の意志で魔界へ来たのよ。白蓮ちゃんを助ける為に』

 

そして、釈迦は白蓮に近付いて乳粥の入った皿を取る。そしてそれを白蓮に近付ける。白蓮は何も口にしてない為か、自分に食べ物を与えようとする者が何者なのか認識出来なかった。

 

『………どなた様かは存じませんが………私の事は……放って置いて……ください………私は……もう……』

 

しかし、男は白蓮の言葉を否定する。

 

『五月蝿え。俺はお前に喰わせてやりてえ』

 

『……そんな……私は………妖怪達も救えず、助けた人達にも裏切られた………救われる価値の無い……』

 

『なら俺が救う。誰も救わぬなら俺が救う』

 

『……何故?何で……こんなに……余計な事ばっかりするの!?私の事はもう放っといてほしいのに!もう誰とも話したくないのに!もう誰とも関わりたくないのに!何でよ!何で!何で………私にこんなに……優しくしてくれるのよ!?』

 

涙を流しながら放たれる白蓮の心無い言葉にも、釈迦は屈しない。釈迦は、白蓮の頬から流れる涙を撫でながら彼女に語り掛ける。

 

『自己こそ己の主である。びゃっちゃん。自分を愛するんだよ』

 

『自分を……愛する?っ!』

 

その時、白蓮は釈迦より森林浴のような安らぎを感じた。そして、果てしない宇宙のように広く大きな神々しさを、釈迦から感じた。その瞬間、自らを助けようとする目の前の相手が何者なのか全てを理解した。

 

『ほら、食べなよ』

 

釈迦から受け取った乳粥入りの皿を受け取り、白蓮は皿に口を付けて中の乳粥を食べ始める。何年も心を閉ざし、肉体も魔力も限界を迎え、空腹も限界に近付いた白蓮が久々に口にする料理の味。乳粥の味が白蓮の口の中に広がる。再び皿に口を付けて乳粥を食べる。そして咀嚼。それを繰り返す。その度に白蓮の目から溢れる涙が増え始める。そして白蓮は、今まで泣かなかった分、泣き始めた。

 

白蓮は泣き続けた。釈迦は泣き続けながらも乳粥を食べ続ける白蓮の背を撫で続ける。神綺と夢子はその様子を見守り続けた。特に夢子は、白蓮を心配していた為に漸く彼女が救われた事に涙を流した。

 

そして、白蓮は泣き止み、布団に入って暫く安静にする事になった。白蓮はベッドで横になりながら、釈迦に謝罪と感謝を述べる。

 

『お釈迦様…先程は失礼な発言をしてしまい、申し訳ありませんでした。ですが、私に生きる希望を与えてくださり、ありがとうございました』

 

『ん』

 

そんな釈迦はというと、風船ガムを噛んで膨らませていた。先程自分を救ってくれた仏様とは思えない様子に、思わず白蓮は笑う。

 

『でもびゃっちゃん。今、とってもいい顔してるよ』

 

『お釈迦様もですね。フフッ』

 

そして、釈迦は立ち上がって白蓮の看病をする夢子や神綺に向かってある事を告げる。

 

『神綺ちゃん。夢子ちゃん』

 

『何かしら?』

 

『どうかされましたか?』

 

『俺、暫くびゃっちゃんと魔界に居るんで、(よろ)

 

『えっ?』

 

白蓮は釈迦の言葉に思考が追い付かず。

 

『『ええええええええええええええええええええっ!?』』

 

釈迦の事を知っている神綺や夢子でさえ、今の発言は予想する事が出来なかった。

 

――――――――――――――――――――――――

 

そして現代に戻る。

 

「ハァァァッ!?何よそれ!?」

 

「ふふっ。私も驚かされました。ですが、お釈迦様は自らの意志で魔界に留まり、自らの意志で私を鍛えてくれました。私が目指すべきやり方を、あの方に教えられたのです」

 

「……でも、道理で白蓮さんが人間臭い訳ね。私、白蓮さん尊敬出来ちゃうわ!」

 

霊夢は白蓮を褒める。

 

「ありがとうございます。さて、長話はこの辺にしましょう。さあ、戦いましょうか!」

 

白蓮は拳法の構えを取る。その周りを魔人経典が開いた状態で浮いており、白蓮の全身に行き渡る。

 

霊夢も片手にお祓い棒を持ち、もう片方の手に札を沢山持った。

 

(見させてもらうよ。君達の思春期を)

 

釈迦が二人を審判を務めつつ見守る中、霊夢対白蓮のモンスターバトルが始まった。

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