人里は大騒動となった。上空に巨大な複数の触手が出現して幻想郷の大地に伸びてきたのだ。人里が大騒動になる中、橙が嘗て人里に存在した極道組織である人間会が使用していた井戸を開けて、全員に避難を呼び掛ける。何故井戸の中なのか?それはあの触手から逃げるには建物に隠れるだけでは意味がないと判断した為だ。
「皆さん!早く井戸へ避難してください!」
そして、人々が慌てて橙の開けた井戸に走り出す。その中に居た慧音や妹紅も避難誘導を始める。
「落ち着け!慌てずに地下へ逃げるんだ!」
「自警団の皆!人里の皆を各地の井戸へ避難させろ!」
『『はい!』』
妹紅の指示により自警団が動く。更に、自警団だけではなかった。嘗て鳥獣鬼人やプリズムリバー四姉妹が打ち上げをしていた焼肉店の忍び又はくノ一店員達も、全員動いて避難誘導に移る。
「此方で御座る!決して慌てぬように!」
「全員入れる事は確認済みで御座る!」
「妹紅殿!慧音殿!ご助力致す!」
忍び達やくノ一達も加わった避難誘導は順調に進む。その中で、エルは上空の巨大な怪獣を見上げていた。
「エルお姉さん!?どうしたの!?」
「早く逃げようよエルお姉ちゃん!」
柚葉と義郎はエルに逃げるよう促すが、エルは巨大な怪獣を見上げながら二人に話し掛ける。
「お前達はすぐに避難しろ。ドゴラは集合細胞生物という無数の単細胞生物が合わさって出来た化け物だ。この世のあらゆる炭素元素を持つ生き物や無機物を食らい、如何なる攻撃も意味は無い。攻撃が通じたとしても奴を倒せるとは思えんがな」
エルは空の怪獣について知っていた。あまりの恐ろしさに彼女自身も嘗ては迂闊に手を出せなかった宇宙怪獣。
それが今、幻想郷に現れたのだ。
「エルお姉ちゃんはどうするんだよ!」
「俺が時間を稼ぐ!お前達はすぐに避難しろ!早く!」
義郎は心配するが、柚葉が義郎の肩を掴む。
「義郎!エルお姉さんに任せよう!私達も急いで避難しないと!」
「お姉ちゃん……うん!エルお姉ちゃん!お願い!」
こうして姉弟も避難を始めた。エルは姉弟が避難した事を確認した後、空へ浮き始める。
「とはいえどうしたものか」
エルは空を飛びながらドゴラに向かって飛んでいく。ドゴラはエルも迂闊に倒せない怪獣だ。弱点は知っているが、もし空に浮かぶドゴラが幻想郷の影響により普通のドゴラより進化を遂げているならば、蜂の毒は意味が無くなっているかもしれない。そんな疑問を抱きながら、エルはどうするか考えながら空を飛んでいた、その時だった。
「むっ?あれは……」
エルは、自分と同じ様に空を飛び始める三姉妹を見つけた。グア三姉妹だ。
「モルド!ギナ!ジュダ!お前達もドゴラの討伐に向かっているのか!」
エルが三姉妹に話し掛けた。
「無論!我等の力でドゴラを潰す!」
「無理に突き進むな!モルド、奴は下手に攻撃を加える事は奴の増殖に繋がる!その上奴が幻想郷より力を吸い上げているならば、下手な攻撃は却って危険だ!先ずは奴の弱点を探る事を優先しろ!」
「弱点だと!?ならば戦い続ければ自ずと弱点が出るものよ!」
「「然り!!」」
グア三姉妹は止まらない。グア三姉妹はドゴラに向かって飛んでいき、それぞれの武器を構えたグア三姉妹が、攻撃に移ろうとしていた。
「ええい、あの脳筋三姉妹が!ギナも最近料理人になったとはいえ武人気質なのは変わらんか!むっ?」
エルは他にも飛んでくる者達を見つけた。それは、博麗神社及び博麗温泉で見掛けるメイドのロボットで、時折整備の為に魔法の森に住むアリスの元にも訪れている、ユウコというメイドロボットだ。ロボットにしては感情的であるのだが。
『あっ!エルさんですね!貴男も危険を感じて来たんですね!?私も同じですよ!!』
そして、その後から白銀の鎧を纏ったアリスが飛んできた。アリスの周囲には無数の人形が、ヴァルチャーの武装をした状態で浮いている。
「ユウコ待ちなさーい!あっ、エルさんも来てたんですね!」
「アリス・マーガトロイドか。魔法と科学を組み合わせた魔法科学を編み出した人形使い。その人形達、武装しているのか」
「ええっ!それより、あれは一体何ですか?」
アリスはエルにドゴラについて尋ねた。
「あれはドゴラ。元々は小さな単細胞生物であったが、単細胞生物が合体してあのような巨大な姿に……むっ?」
「単細胞生物が合体しただけで二千六百メートルまで大きくなるなんて信じられないわ……自然の法則に反して……えっ!?」
エルとアリスは、ドゴラの大きさが更に変化した事に気付く。ドゴラは周囲の雲を取り込み始めた。いや正確には、雲の上に存在するとある畑を雲ごと取り込んでいる。それは、天界でのみ取れる特別な桃が取れる畑であった。桃を大量に取り込んだドゴラは体全体が艶々に輝き、更に体の大きさが増していく。更に、天界に住んでいた妖精達を体から生やした触手で捕まえて、その体へ触手ごと取り込んだ。妖精達を取り込んで八千メートルにまで巨大化していく。
「馬鹿な!?ドゴラは炭素しか取り込まん筈!?」
「行きましょうエルさん!霊夢達も遅れて来る筈!」
アリスは人形達と共にユウコを追い掛け始める。
「どいつもこいつも!ええい、もうどうにでもなれ!」
エルはドゴラに向かって飛び始めた。
ドゴラは幻想郷全体に触手を伸ばし、大地、建物、岩石、草木に水、あらゆる物質を取り込み、更に野生の妖怪達や妖精達も触手から取り込んで更に巨大化していく。
「ぬぅん!」
「ハァァッ!」
「喰らえ!!」
グア三姉妹がそれぞれ斧で、鞭で、剣でドゴラの胴体らしき部位を攻撃した。しかし、吹き飛んだ肉片から2秒でそれぞれ別々のドゴラが誕生した。
「なぬぅ!?」
「モルド姉上!攻撃を続けましょう!攻撃を続ければいずれ弱点が見える筈!」
「ギナ姉上の仰る通りです!モルド姉上!攻撃を続行しましょう!」
「そうであったな!我等グア三姉妹の力を思い知らせてやる!」
グア三姉妹は攻撃を続けようとするが、突然背後から無数の砲弾が飛んできた。しかし、砲弾はドゴラに直撃せず、ドゴラに当たる直前で閃光を放った。一瞬だけの閃光であったが、グア三姉妹がドゴラから距離を離すには充分であった。
「「「誰だ!?」」」
『モルドさん!ギナさん!ジュダさん!無事ですか!?』
「マトモに攻撃しては駄目だと言われませんでしたか!?彼奴、下手に攻撃したら増えていくんですよ!先ずは弱点を探す事を優先してください!」
それは、メイドのユウコと銀の鎧を纏ったアリスだった。アリスの周りを漂う武装人形達の砲塔から煙が垂れ出ており、先程の閃光弾はアリスが人形に撃たせた物だと三姉妹は理解する。
「だから戦い続けねばならんのだろう!?」
モルドが反論する。
「脳筋ですか貴女達は!?だからこそ下手に攻撃しないほうが良いんです!先ずは一度退いて、作戦を練らないと!」
「むぅ……しかし放って置く訳にも………」
モルドは悩む。此処は一度退いた方が良いのは分かるが、だからといって増殖したドゴラを放って置くわけには行かない。すると、ギナがある場所を見つけた。
「あ、あの!モルド姉上!ジュダ!アリス!ユウコ!あれを!」
バットウィップスを巻いて戻したギナは、幻想郷のある場所を指さした。三人はギナが指し示した方向を向くと、その場所は無名の丘に存在する鈴蘭畑であった。鈴蘭畑は幻想郷中が被害を受けてる中で、其処だけが被害を受けていない。更に、鈴蘭畑に居座る一人の少女の妖怪が、空を慌てながら見つめていた。
「無名の丘?何で彼処は被害に遭ってないのかしら?」
「……何やら秘密があるやもしれぬ。よし!ギナ!ジュダ!アリス!今から無名の丘の鈴蘭畑に向かうぞ!」
「「はっ!」」
「私も行きます!上海と蓬莱以外の人形達は此処でドゴラを足止めして!」
『はい!お母様!』
しかし、現実は甘くない。アリス達に向かって分裂したドゴラの触手が伸びてきた。
しかし、触手はアリス達に届かなかった。エルが蹴りを放ってドゴラの触手を蹴り飛ばしたのだ。
「お前達!此処は俺が引き受ける!何か策があるなら早く行け!」
「すまぬ!助かるぞエタルガー!」
そして、四人と2体の人形が無名の丘に咲き誇る鈴蘭畑に向かって飛んでいく。
「さて、我々は此処で足止めをさせてもらうぞ!来い!ドゴラよ!」
『行きましょう!エルさん!』
エルと人形達が足止めを買う。そしてドゴラ達の触手が襲い掛かってくるが、エルと人形達はドゴラに向かって飛ぶ速度を上げるのだった。
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その頃、麟とエレン、シズさんとはたては幻想郷に到着した。ナラクを経由して人里に出てきたが、空を見上げて少し遅かった事を理解する。
「遅かった……」
「あんなに……だがうだうだ考えても仕方無い!早く行くぞ!」
「……だね!」
そして、麟はジラの怪獣娘形態へ。エレンは手に噛み付いて進撃の巨人に変身し、更にデストルドスの怪獣装甲形態へ変身した。シズさんはカオスウルトラマンの怪獣娘形態へ。はたてもガマスの怪獣娘形態に変身した。そして、四人は空に浮かぶドゴラ達に向かって走り出した。
オリジナル怪獣
名前:ファンタズムドゴラ
別名:幻想大怪獣
体長:測定不能
体重:測定不能
幻想郷に入り込んだ無数の単細胞生物が集まり、幻想郷から魔力や霊力、更に妖力等の力を吸収した事で突然変異して産まれたドゴラの亜種。普通のドゴラと違い、紫色に染まったクラゲとアメーバが合体したような姿である。ドゴラと違う点は有機物と無機物の炭素原子を取り込むだけでなく、それ以外の素粒子も全て喰らう事だが、一番大好物なのは魔力や霊力、妖力といった非科学的なエネルギーである。また、ドゴラと同じく物理的な攻撃は意味を成さず、攻撃を受けて体がバラバラになっても一つ一つの体の破片から2秒で再生して、同じ大きさのファンタズムドゴラが複数誕生する。しかし普通のドゴラと違い、あらゆるエネルギーを体全体で吸収出来る為、魔力、妖力、霊力の込めた攻撃すら意味を成さない。攻撃手段は触手で捕まえる、薙ぎ払う、更に全身から無数の触手を無限に生やすといった程度しか無いが、それ故に巨体から繰り出す攻撃は大地を抉り、山を粉砕し、湖も川も吹き飛ばす、正に大災害レベルである。また、触手からでも捕えた物と一体化する形で捕食出来る。
弱点:ドゴラと同じく蜂の毒に弱いのではなく、別の毒が弱点である。鍵は本編にある通り、メディスンが握っている。