《大蟻塚の荒地》
「宜しく頼む」
大蟻塚の荒地に建てられた洞窟内のキャンプで、エリスとエミリーは太刀を背負う歴戦の気配を纏う全身鎧の男と出会う。
「宜しく。ソードマスターさん」
「でも、戦闘は私達に任せて下さい。今から戦う相手は、何の対策もなく接近戦をするのはご法度な相手ですから」
「ハッハッハッ。だが拙者も長く闘った身。足は引っ張らぬ」
そして、三人はキャンプを出て女王の巣を通り抜けて砂で覆われた砂地に出た。無数の翼竜が空中を飛んでおり、何かを警戒しているようにも見える。
「……エリス!」
「分かってるよエミリー!」
そして、二人はそれぞれの怪獣娘形態に変身し、戦闘態勢に入る。ソードマスターは二人の変わった姿を見て、驚くあまり声を上げるが、すぐに冷静になった。
「うむ、見事。しかし、警戒は捨てておらぬな?」
ソードマスターも背中の太刀を抜いた。
「ソードマスターさん。この錠剤を二粒上げます。もし闘うのであれば、それがソードマスターさんの力になりますよ」
エミリーがカオスヘッダーの錠剤二粒をソードマスターに手渡す。ソードマスターは錠剤を受け取り、懐に仕舞う。
「っ!来た!」
エリスが気配を感じ取る。その瞬間、砂地の真ん中で火山の噴火のように砂埃が噴き上がり、その中から三本の巨大で鋭い角を持つスフィア合成獣が姿を現した。
『キシャアアアアアアアアアアッ!!』
ディアブロス。大蟻塚の荒地の生態系の頂点に立つ凶暴なモンスター。しかし、そのサイズと姿は以前と異なっていた。先ずディアブロスは二本の角を持つが、鼻先にトリケラトプスのような角を生やしており、その大きさがディアブロスの体の半分近くまでの長さと太さである。そして、胴体には融合したであろうスフィアが何体も蠢いており、軈て胴体と一体化するように消えた。そして極め付けは、ディアブロスの体の大きさだ。ソードマスターから見てもディアブロスの大きさが異常であり、まるで砂地をも埋め尽くし兼ねないデカさとなっていた。スフィアが憑依した事で、ディアブロスは突然変異を起こして巨大化したのだ。
更に、角からは細長い光線を放ち、光線が当たった砂場が盛り上がって新たなモンスターが産まれた。全身が砂で構成されたモンスターで、古代樹の森に生息するドスジャグラスのような見た目をして、更に大きさも同じであった。
「彼奴、スフィアを生み出す器官を備えてるの!?」
「早々錠剤を使う事になるなんてね。仕方ないか!エリス!カオスヘッダーの錠剤を!」
「うん!ソードマスターさんも錠剤を飲んで!」
「うむ!」
そして、エリス達は錠剤を飲み込み、全身にカオスヘッダーを行き渡らせてカオス怪獣形態に変化させた。エリスとエミリーの目は赤くなり、ソードマスターは背中に赤い棘を生やした鎧を身に纏い、両足の靴に赤い鳥のような翼を生やしている。
カオスヘッダーによるカオス怪獣形態。それがあれば、ゴーデス細胞、スフィア、スペースビースト感染を完璧に防ぐ事が出来る。
「さあ行こう!」
「うん、エリス!」
「承知!」
こうして、エリスとエミリーの大蟻塚の荒地での狩りが始まった。ソードマスターもカオス形態となり、ディアモノスに向かって走り出した。ディアモノスは角から光線を放って岩やハコビアリ、砂もスフィア合成獣に変えながら咆哮を上げた。
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《陸珊瑚の台地》
無数のクラゲが浮いている、陸に出来た珊瑚で構成された台地。其処に辿り着いたのは累とユウキだ。二人は見たことのない美しい自然ノ景色に見惚れていた。
「凄い……こんな世界があったなんて……」
「凄い……世界ってこんなに不思議な景色で溢れてるんだね!」
すると、二人の腕輪から音が鳴る。そして、二人が通信に出ると、腕輪から人の顔サイズの画面が出てきて、ティアーユが映像に映る。
『陸珊瑚の台地に着いたわね?其処にはスペースビーストがモンスターに取り憑いて、その台地を根城にするテトルーを狙ってるのよ。研究所の所長さんから聞いたけど、テトルーも人間に近い生活環境を整えてる知的生命体らしいわ。テトルーの住処に行って、彼等を救出して!』
「分かったよ!任せて!」
ユウキは通信を切った後、その姿を怪獣娘形態に変身させた。王国を滅ぼした邪竜スマウグの怪獣娘形態。両腕が西洋のワイバーンのような翼となっており、鱗は赤みがかった黄金の鎧はまるで擬人化した竜のような西洋甲冑である。
「累!掴まって!」
「分かった」
累は空を飛び始めたユウキの足に、掌から出した黄色の糸を絡めてぶら下がる。そして累の姿は、背中から二対八本の蜘蛛のような脚を生やし、頭部から全身に掛けて蜘蛛のような全身装甲を纏った。累が纏ったのは、X星人に操られていたクモンガの怪獣装甲形態だ。
そして、ユウキが累を連れて空を飛びながら台地のかなで族の住処に向かう間に、累はユウキに話し掛けた。
「ユウキ、この大自然、とても綺麗だね」
「うん!ゲームより本物の方が素敵!だってこんなの、ゲームじゃ絶対に味わえないよ!」
「げえむ?」
「あっ、累の時代にはそういうの無かったんだよね。でも僕達って……やっぱり似た者同士だよね。病気になって、自分の力で外の世界を歩けなくて………沢山の人に迷惑掛けちゃって………」
「………でも、ヘカーティアが僕達を救って、そして新しい力と人生を与えてくれた。それに……同じ境遇の人達と出会えて、友達も出来て……僕はユウキとこうして外を歩けるだけで、幸せだよ」
「………うん!////」
この時、ユウキは累の澄ました笑顔に惹かれるが、累はユウキにぶら下がりながら台地のかなで族の住処を見つけた。
「っ!ユウキ!!」
「っ!見つけた!!危ない!!」
ユウキは累を背中に乗せて、急降下を始める。二人が見たのは、スペースビーストに憑依されて氷の化身と呼べるようなビーストとなった翼竜であった。甲高い咆哮を上げて、全身から冷気を放っている。テトルー達に咆哮を上げて、彼等を食べようとしている。スペースビーストは知的生命体を食べる。いや正確には知的生命体の恐怖と絶望を喰らうのだ。
二人は急降下しながら、それぞれカオスヘッダー入りの錠剤を懐から取り出して飲み込み、それぞれカオス怪獣形態に変化した。
ユウキはうなじから尻尾の先端まで赤い刀のような背鰭を無数に生やし、尻尾の先端が紫色に輝く刃となった。累も蜘蛛のような脚の関節が赤く染まり、ヘルメットは紫色の触手を無数に生やした形に変化した。共通しているのは、二人の瞳以外の目が赤く染まった事である。此れが二人のカオス怪獣形態だ。
そして、ユウキは口から炎を吐き、ビースト化した翼竜の全身を焼き尽くす。そして、ユウキと累は共に地面へ降り立ち、翼竜とテトルー達の間に割り込んで翼竜を見つめる。
「ッ!!?」
台地のかなで族は、突然現れたユウキ達に驚くが、助けに来てくれた事に感謝した。但し、言葉は通じてない。しかし、ユウキと累はテトルー達の言葉が解らなくても、何を言ってるのかは理解していた。
「言葉は解らないけど、感謝は要らないよ!」
「そう。今はコイツを倒すのが先」
そして、炎が冷気によって掻き消されて、中からユウキに焼かれた筈の翼竜が姿を現した。
『気を付けて!其奴はレイギエナ!冷気を操るモンスターだけど、ビースト化して暴走してるわ!幸い、其奴は陸珊瑚の台地のテトルーを襲いに来ただけで、この研究所に来なかったのは幸いね!』
「うん!此処は任せて!」
「レイギエナか。でも、僕とユウキなら狩れる!」
そして、二人はビースト化したレイギエナに向かって走り、レイギエナは咆哮を上げながら全身に冷気を纏い、二人に向かって走り出した。
そして他の地域でも、それぞれ変異したモンスターと戦い始めていた。
オリジナル怪獣
『ディアモノス』
別名:三角竜合成獣
体長:85メートル
体高:34メートル
体重:4万6千トン
大蟻塚の荒地に生息するディアブロスにスフィアが憑依する事で誕生した突然変異のディアブロスで、モノブロスの角を鼻先に生やしている。。ディアブロスの攻撃に加えて角にはスフィアを生成して光線状にして放つ器官があり、周囲に放って当たった物体に憑依させる。そして、新たなスフィア合成獣へと変身させる。驚異はスフィア合成獣を生み出す光線を放つ3本の角であり、スフィアを無限に生成している。この角を一つ失う毎に生み出せるスフィア合成獣の数が減り、3本全て破壊すれば再び再生するまで二度と生み出せなくなる。
『レイギリオン』
別名:ワイバーンタイプビースト
体長:35メートル
体高:40メートル
体重:1万2千トン
陸珊瑚の台地に生息するレイギエナがスペースビースト化した突然変異のレイギエナ。元のレイギエナの全身が氷のような水色に染まり、羽や爪が氷を纏っている。しかし、全身からは絶え間無く冷気を放ち続けており、元のレイギエナよりも遥かに体格や戦闘力が増している。氷を生成して武器を生成、何もない箇所から冷凍ビームを放って当てた相手を凍らせたり、触れた対象から熱を奪って凍らせるといった知的な行動も見られるようになった。