そして、研究者達に囲まれたティアーユは、此れから微生物を倒す為の抗体薬を生成し続けた。見た目に反して並の機械より役に立つ書籍や人員の協力も相まって、薬は数時間掛かって完成した。
「完成したわ!」
「でも、実験が済んでないわヨ?」
「実験なんてしてる暇は無いわ。今は、完成した薬を届けないといけない」
ティアーユは腕輪に人差し指で触れて、麟に繋げた。
「麟!薬が出来たわ!今からそっちへ向かうから、待ってて頂戴!」
『急いでティアーユさん!もう手に負えないです!』
「ええっ!皆さん、ありがとうございました!」
ティアーユは出入口に向かって走る。しかし、階段で靴の爪が引っ掛かって躓いて転けてしまい、薬を落としそうになる。しかし、ティアーユは薬の入ったフラスコを握り締めており、床に落ちないようにフラスコを持つ手を上へ上げていた。
「ううっ!でも今は!」
ティアーユは出入口から跳んだ後、背中の翼をはためかせて空を飛び始めた。
――――――――――――――――――――――――
一方、龍結晶の地で戦う麟達は、マイクローブの成長の速さによって追い詰められていた。麟は上半身裸になりつつも、胸を隠しながら距離を取って戦っていた。
エレンは巨人の体から抜け出してマイクローブから距離を保ち、再び手を噛んで傷を与えた後に巨人化した。
シズさんやはたても服がボロボロになっており、苦戦した様子が見て取れる。はたての服装はくノ一と呼べる妖艶な忍の格好をしており、太股が露出したズボンを着用している。額には二つの目玉が付いたゴーグルを身に着けており、背中には翼の形をしたマントを肩から羽織っている。ゴーグルは半分掛けており、ズボンは片方が生足を露出していた。シズさんのスーツはお腹や両腕が破けているが、他の三人と比べて破けた箇所はかなり少ない。
はたてが纏って変身したのは、ヤプールが送り込んだ超獣である二次元又は忍者超獣『ガマス』だ。焼き増しされた写真の枚数だけ自分を増やせるという厄介な特性を持ち、更に焼き増しされた数だけ武器も増えるという、滅茶苦茶な能力もある。もし現代社会に出たら、本当に数億匹にも増殖しかねない危険な超獣だ。はたてもカメラを裏で焼き増ししまくって分身を密かに増やしており、自身の戦闘力に加えて数の暴力で圧倒するという戦法も取っている。はたても実力ある鴉天狗の一人である為、尚更質が悪い。しかし、マイクローブ相手では焼け石に水である。
アリスとメアリーには一度撤退してもらい、受付嬢と総司令の待つアステラに戻ってもらった。
すると、麟が通信を切ってティアーユから来た朗報を教えた。
「薬が出来たってティアーユさんから連絡来たよ!」
「やったわ!」
「後はそれを打ち込めば良いんだね!」
四人が見つめる先に居るマイクローブは、殆どの結晶を取り込み、更に龍結晶の地の火山を取り込んだ事でより遥かに大きくなっていた。その体格は縦で500メートル、その天辺は人間の女の体になり始めていた。麟に纏わり付いた影響により、女性の体へ変貌していたのだ。女体の下半身はドレスのような形状をしているが、その規模は徐々に拡大していく。女体の頭部は口が形成されており、その中を無数の触手が蠢いている。
『ウオオオオオオオオッ!!』
エレンは再び進撃の巨人となり、デストルドスの姿を模した装甲を全身に纏う。そして、胸元のマジャバの顔を砲口として放つ次元破壊光線『デストルドD4レイ』を、マイクローブに向けて放った。マイクローブの女体に命中し、次元ごと崩壊させて爆発と共に消滅させた。しかし、マイクローブは次元崩壊と共に消滅した部位を即座に再生させて、女体に再び変形した。
そしてマイクローブは、全身の触手から先程エレンが放ったデストルドD4レイを放ち始めた。更に麟のパワーブレスを触手の先端から放っていた。恐らく麟やエレンの細胞を一部取り込んだ事で、麟とエレンの技を使えるようになったのだろう。
(俺達の技を使えるのか。流石に此れは勝てないな…)
しかし、エレンには聴こえていた。ティアーユがどうやらマイクローブを倒す薬を完成させたようだ。流石は生物学において、ザ・キングダムでは右に出る者は居ない天才だ。
「皆ー!!此処よー!!」
そして、全員が上空を見上げた。其処にはティアーユが翼をはためかせ手空を飛びながら、フラスコを持って麟の元へ向かって飛んで来る光景があった。
ティアーユは背中の翼を広げて空気抵抗を殺し、麟達の前に辿り着く。
「待たせてごめんなさい!でも此れで、あのマイクローブを倒す事が出来るわ!」
「ありがとうティアーユさん!」
「けど問題があるのよ。突然変異とはいえこの龍結晶の地に住む微生物の性質上、薬は彼奴の体内に居る本体に直接植え付けないと感染しないの。外からぶっ掛けてもただ吸収されるだけ。この薬を体内に居る本体に植え付けて内部から崩壊させなきゃ、あのマイクローブは倒せないわ!」
「体内……」
麟がフラスコを受け取ると、はたてが再びある写真を見せた。
「あのマイクローブの弱点を検索したのよ。そしたらこの二つが撮れたわ。見て頂戴」
はたてが携帯型カメラの画面を見せる。画面にはマイクローブの頭部の口と、その口が開いて出た喉と思われる大穴。そして二枚目の写真には、喉奥に存在する巨大な異形の生物のが写っていた。その周りで微生物が増え続けており、真ん中の生物を中心に増えているのが写真でも解る。
「此れよ!きっと此れが奴の本体よ!」
「でも、体内に居たのは解ったけど、私達此方から結構攻撃して、体内の微生物諸共撃ち抜いたんだよ?それでも死ななかったから、その薬でも大丈夫なのかな?」
「大丈夫よ。それに、実験をしてる暇は無いわ。このままだと新大陸は此奴に飲み込まれて手に負えなくなるわよ。此れから奴を倒す為に、この薬を打ち込むのよ」
シズさんが尋ねると、ティアーユが自信満々に答える。つまり、ただ倒すだけでは再生されるだけで、マイクローブを殺す事は出来ない。ティアーユと研究者達で作った薬はマイクローブの体内に居る本体に直接植え付ける、つまりぶっ掛けなくては意味がないのだ。もっと簡単に言えば、経口投与する形で体内の本体に打ち込まなくてはならない。
「よし!皆、行こう!今度こそマイクローブを倒す!」
麟が指示を出し、それぞれ作戦を立てて動き出した。
「エレン!僕がティアーユさんに乗って彼奴の頭まで登る!君は援護お願い!」
麟の指示に進撃の巨人は頷き、両腕の翼をはためかせて空を飛ぶ。
「はたて!撹乱をお願い!君の速さなら振り切れる筈!」
「了解ー!」
「シズさんははたてを援護しながら、マイクローブを一緒に撹乱して!」
「任せて!」
こうしてそれぞれ作戦行動に移る。
はたては手裏剣型の弾幕を手から放ち、マイクローブを攻撃する。シズさんも光弾を放って触手を落としながらはたてを援護する。すると、マイクローブのヘイトが二人に向いたのか、二人に向かって触手を伸ばすマイクローブ。はたては触手の間を掻い潜り、触手から伸びた触手も刀で斬って叩き落とし、シズさんが伸ばしてきた触手に光弾を撃って相殺する。
その間に麟はティアーユの背中に乗って空に向かって行き、エレンは翼をはためかせながら二人を守るように飛ぶ。
「二人共!足止めありがとう!後は口か喉が開けば薬を打ち込める!」
「でも見て!彼奴、口を閉じたわ!」
ティアーユの言う通り、マイクローブの頭部が口を閉じていた。麟の作戦を見抜いたのか、それとも本能で口を閉ざさずにはいられなかったのか、どの道口が開かなくては薬を内部に打ち込めない。外側から別の場所へ穴を開けても意味は無い。口の中から体内へ打ち込まなくては、本体に薬を打ち込めないのだ。
「はたて!シズさん!口を開かせるよう攻撃して!エレンは僕達を援護しつつ、二人に合わせて攻撃を続けて!」
麟の指示通りに動くエレン達。しかし、マイクローブはどんなに攻撃を受けても即座に再生する。エレンが口から破壊光線を放つが、マイクローブの体の一部に当たっても、崩れて一部が剥がれ落ちるだけで、剥がれ落ちた部位を取り込んでしまうだけだ。はたてがハンマーや手裏剣、刀を含めたあらゆる武器で攻撃したり、シズさんが光線を放って頭部を攻撃しても、頭部が破裂するように爆発して砕け散るだけだ。しかも喉らしき穴も見えない。これでは薬を植え付けられない。
どうしようかと麟が思った瞬間、突然何処からともなく大砲の玉が飛んできて、マイクローブの頭部に命中した。
次回で本当に終わります。