〜リインフォース編〜
ある世界の海鳴市の公園にて、黄金の穴が開く。其処から現れたのはヘカーティアと、ウェーブの掛かったボブの青髪で髪の一部を∞の形に結んで結び目を簪の代わりに
彼女は一目見れば誰もが絶世の美女として惚れてしまうのだが、素人には分からない邪悪な気配を漂わせている。
そしてその隣には、顔に札を貼られており、両腕を前方に真っ直ぐ伸ばす少女が居た。帽子を被るその少女は肌に青みが帯びており、目には生気がない。
「さあ
「勿論ですわ。貴女が宿してくれたレイバトスの力、使わせて貰います」
「貴女の弟子になって、愛しい人の復活を待ち続けてる亡霊の為、だったわよね?」
「太子様と布都ちゃんが復活するまでは時間がありますものね。その時までに力を蓄えて置きますわ。特に、太子様を愛しているあの亡霊ちゃんの為にも」
「尸解仙になれなかったのはちょっと可哀想ね」
「いえいえ、私に考えがありますわ。だから貴女の勧誘も受けたんですもの。芳香ちゃんと一緒にね」
青娥は芳香と呼んだ少女の頭を帽子越しに撫でる。
「せいがーがんばれー!」
「ありがとう芳佳ちゃん♥ふふっ♥」
そして、撫でるのを終えた青娥は光と共に怪獣娘形態に変身した後、両掌を2回も上下変えながら交差させながら呪文を唱える。
「“ウジュイカ レエガミヨ”!」
蘇れ怪獣。この言葉をほぼ逆から読んだようなこの呪文を唱えた青娥は両手を突き出し、両掌から紫色の煙状のオーラが放たれる。
そして、オーラは目の前で人の形を形成し、軈てある一人の女性の姿となっていく。幻想郷の美少女達にも負けない美少女であるが、仰向けに横たわりながら眠っていた。
「ふふっ。彼女がリインフォースね。本体はこの手に握る本だなんてね」
「おーしんでるー」
「こら芳香ちゃん。失礼な事を言わないの。それに生き返った以上、もう死んでないわよ」
宮古芳香。邪仙の霍青娥によって蘇らせられ、青娥の手先となったキョンシーだ。芳香は平安時代前期の官人・文人・大峰山で仙人となった。そして死後、青娥が蘇生してキョンシーとなった。
そして青娥が宿した宇宙人の力によってリインフォースと呼ばれた女性は、生前の完璧な状態で生き返らせた。
因みに、レイバトスを宿した青娥の姿は、不気味な青が基調のローブを肩から羽織り、その下には灰色が基調の不気味な鎧を身に着けていた。頭部にはウルトラマンの角に似た角を生やす兜を被っており、肩には揺らめく炎のような青い突起物が付いている。それが、レイバトスの怪獣娘形態となった青娥の姿であった。
「……ん」
すると、リインフォースと呼ばれた少女は目を覚ます。そして、リインフォースは上半身を起こした後に周囲を見渡す。そして、ヘカーティア達の姿を見て驚いた後に立ち上がる。
「んなぁ!誰だお前達は!?そもそも、私は破壊され――」
「はいストップ」
リインフォースはヘカーティアが人差し指を横に振るのを見た途端、突然口が開かなくなる。
「リインフォース。貴女は自身に組み込まれた防衛システムであるナハトヴァールの暴走の再発を止める為に、高町なのは、フェイト・テスタロッサ、そして守護騎士達の手で破壊された。そして今、貴女は蘇った。悪意ある改変を受ける前の、本来の姿となってね。その命、ザ・キングダムに捧げなさい」
「っはぁ……ザ・キングダムだと!?何だそれは……」
ヘカーティアが人差し指で空中をなぞるように、人差し指を横に振る。そのお陰でリインフォースは話せるようになり、ヘカーティアに質問をした。
「簡単に言えば、アウターヘブン&ヘルよ。天国と地獄の外側。貴女のようにこの世界で役目を終えた者、私が面白いと判断した者、そして貴女のように哀しい運命に翻弄された者が集まる場所よ」
「勝手に私を哀しいと――」
「貴女はこのまま消えるには惜しいわ。その力を貸してほしいのよん。ナハトヴァールの件なら先程蘇生された時に取り除かれてるから問題は無いわよん。貴女の事は全て調べたわ。その力で多くの世界を、困っている人々を救う為に、使ってみないかしら?」
「………そうだな。私は既に一度滅びた身だ。こんな私で良いならば、是非とも協力したい」
まだヘカーティアを信じた訳ではないが、それでもヘカーティアからは悪人やはやて以外の歴代の持ち主とは違って、悪意は一切感じられない。
ヘカーティアはリインフォースの前で両腕を立てると、ナラクに通じる黄金の穴を開く。
「さあリインフォース。いらっしゃい。そしてようこそ。私達のザ・キングダムへ」
(主はやて。本当に此処でお別れです。もしまた会える機会があれば……その時は、新たな主と共に茶飲み話をしましょう)
リインフォースは自分が去る世界に居る元主を思いながら、青娥や芳香が穴へ入った後に自身も穴の中へ入っていった。
そしてそれから、二週間後が経過した頃。
リインフォースがザ・キングダムに介入してから、彼女はある怪獣を宿したのだが、その力があまりにも強過ぎる為に任務に出ず、リインフォースを蝕んでいる。
ヘカーティアもその怪獣―――マガタノオロチをリインフォースが宿してしまうのは不本意であったが、それでもリインフォースやマガタノオロチの力が此れから戦う相手には必要である。
(彼女は嫦娥への復讐に反対だったし………でもヤプールやプリカーサー、そして暗躍するX星人を倒すには彼女の力が必要よ……でも………)
「ごめんなさい………貴女には不本意な存在を宿させて」
「………いいえ。確かにマガタノオロチは私を侵食しています。しかし、此れから戦うヤプールやプリカーサー、そしてX星人を倒すのに必須だと理解しております。我が主ヘカーティア。全てが終われば……」
しかし、ヘカーティアはリインフォースの両肩を掴んで叱る。
「馬鹿な事を言わないで。貴女が宿したマガタノオロチに侵食されないよう私達も頑張って研究するわ。だから、もう自分が消えようとか考えないで頂戴」
「……ありがとうございます。我が主。主はやてと同じ事を言ってくださって」
リインフォースは戦い続ける。あらゆる世界を侵略し続ける敵と。そして自分を蝕む怪獣の呪いとも。
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〜朝霧彩編〜
朝霧彩。その人生は最悪と言っても良い。学校ではクラスメイトの女子3名から酷いイジメを受けて、家でも性格が歪んだ兄から虐待を受けるという不幸な日々を過ごしていた。
周囲は誰も助けてくれない。本来ならば彩はとあるサイトと出会うのだが、彼女は運命が大きく変わる出会いを果たす。
「朝霧彩ちゃんよね?」
「……………だ、誰ですか!?」
彩は後ろを振り返り、其処に居た三人の女性を見て彼女達から飛び退くように下がる。ヘカーティア、彩奈、シズさんの三人だ。彩奈を連れてきたのは境遇が似てるからである。シズさんの場合は、彩がまだ14歳の子供なのでフォローの為だ。
「心配しないで。私達は貴女を助けに来た者よ」
「お願いです……帰ってください」
彩は警戒してるせいで三人に近寄ろうとしない。
「だ、大丈夫だから!大丈夫だよ。落ち着いて、ね?」
「そうよ。だから話を聞いて、ね?」
「…………」
彩は、三人からは自分をイジメてきた者達と違うように感じた為、一瞬警戒心を解いた。とはいえまだ信じる事は出来ない。
「この世界に居ても、貴女は運命に翻弄されるがまま。この世界に貴女の居場所は無い。無駄に我慢して生きれば貴女は殺される。此れが貴女の辿る未来よん」
ヘカーティアは両手の甲を重ねた後、彩の額に人差し指を差す。
そして、彩は見た。魔法少女サイトと呼ばれるサイトに出会い、イジメてきた者達を不本意な形で殺害し、その後に魔法少女サイトが真の敵である事を知る。しかし、魔法少女サイトを知って暴走した兄の手によって仲間を殺され、その兄も行方不明になってしまい、自暴自棄になって死ぬ未来を見せられた。
「っはぁ!そんな………」
彩は自分の未来を見せられて、深く絶望した。しかし、彩は知る由もないだろう。それは、彩が辿っていたかもしれないもう一つの未来であり、本来の流れとは異なる事を。
「私と一緒に来なさい。貴女の運命を変えてあげる」
「………はい」
彩は涙を流しながら、彼女はヘカーティア、彩奈、シズさんの3人に付いて行く。もうこの世界に居場所は無い。しかし、この3人は自分に優しくしてくれた。こんなに耐え難い不幸な日々が続くならば、もういっそのこと3人の元へ行く方が良い。そう思ったからであった。
そして、ナラクに到達した4人は彩に怪獣を宿そうとした。しかし、此処である者が意見を出す。
『失礼。そのことでお話がありますよ』
それは、彩奈に宿るヒュドラムであった。彼は彩奈の背後から音もなく出てきた。ヘカーティアやシズさんはヒュドラムの事を知っていたので突然話し掛けられて少々驚いた程度だが、彩は人ならざる人型生命体が現れた事に怯えてしまう。
「ひぃぃっ!?だ、誰ですか貴男は!?」
その様子を見たヒュドラムはその反応に困りながらも、自己紹介を始めた。
『此れはどうも。私はヒュドラムと言います。どうぞお見知り置きを、お嬢さん』
ヒュドラムは彩にお辞儀をして挨拶を済ませる。彩は彼の紳士的な態度に困惑するばかりである。
『私は朝霧彩さんに宿す怪獣に、『メツオーガ』をオススメしますよ。全てを喰い尽くす宇宙伝説魔獣。惑星、彗星に限らず近くにある物を徒に喰らい尽くしてしまうのです。強さとしては申し分ありませんし、彩さんならば使い熟せる筈です』
『馬鹿な!?それはあまりにも危険過ぎる!ヒュドラム、何を考えているのだ!』
彩奈の背後から現れたダーゴンがヒュドラムの肩を掴む。
「私も止めた方が良いよ。無理に強い怪獣を宿さなくても」
「私も同じ意見よ。ヒュドラム、そんなのを宿して彩が暴走でもしたらどうするつもりよ?」
しかし、ヘカーティアはヒュドラムの意見を採用する事に決めた。
「ヒュドラム、そのメツオーガは何処に居るのかしら?」
『ヘカーティア!?』
「ヘカーティア!アンタ何を考えてるのよ!?」
ダーゴンと彩奈がヘカーティアの胸倉を掴む。
『話が分かる方が居て助かりましたよ』
「ヘカーティアさん……どうして?」
ヒュドラムはヘカーティアが意見を汲んでくれた事を喜んだが、シズさんはヘカーティアがどうしてヒュドラムの意見を汲んだ理由が理解出来なかった。しかし、シズさんはヒュドラムとヘカーティアの考えを理解する。
「………確かに黒幕と戦うにはこの子が強くなる必要があるよ。でもヘカーティアさん、メツオーガって聞く限りじゃあ危険過ぎるよ。無理に危険な怪獣を宿さなくても、無難な怪獣を宿させる方が良いよ」
「ヒュドラムの話を聞く限り、それは事実ね。でもザ・キングダムや幻想郷には、それに似た脅威の怪獣を宿しておきながら日常を過ごせてる娘が沢山居るじゃない。この子もきっと大丈夫よ。ヒュドラムを信じて、とは言わないけど『えっ?』彩は暴走しないと思うわ」
「…………分かったわ。ヘカーティアが其処まで言うなら私も何も言わないわ。でも、彩はまだ精神が安定してないから私が暫く面倒を見るわ」
「ええっ。宜しく頼むわ」
そして、ヘカーティアはヒュドラムから本来地球に持ち込む予定であったメツオーガの卵が何処にあるのか教わり、穴を経由してメツオーガの卵をナラクに移動させる。その巨大な卵をダーゴン、彩も含めた5人は見上げた。
「さあ彩。貴女の新たな力よ。受け取りなさい」
彩は卵に歩み寄る。初めこそ恐怖で動けなかったが、徐々に近付いていき、軈て卵に片手で触れた。その瞬間、卵が光り輝いたかと思えば彩も光に包み込まれていく。
そして、彩は新たな姿となっていた。可愛らしい子供が着るような白いパジャマを着た彩の姿であり、頭に被るフードは一本の角が生えてる上に赤い2つの目があり、フード口には牙のような飾りが付いていた。また、腰には太い尻尾が付いている。
(可愛い………♥)
「あらやだ可愛い♥」
「うん!すっごく似合うよー!」
彩奈は顔を赤くしながら顔を反らし、ヘカーティアは和んでおり、シズさんは彩に抱き着いた。しかし、ヒュドラムとダーゴンは違った反応を見せる。
『ムムッ!?彩奈の時も我等三人を宿した事に驚いたが、朝霧彩というこの少女は何者だ!?あんな危険な存在を宿したにも関わらず何故暴走していない!?』
『やはりメツオーガは彩さんと完璧に融合しましたか』
そして、彩は自分の生まれ変わった様子に困惑していた。
「此れが、私?」
「……ふふっ。どうやら成功したようね。彩ちゃん。ようこそ、私達のザ・キングダムへ」
「う、うん………ありがとう」
こうして、一人の少女の運命は変わった。そしてまた、もう一人の魔法少女の運命が変わろうとしていた。
次回、まどか。